一般的な原因としては、B型およびC型肝炎ウイルス、特定の薬などがあります。
ほとんどの場合は無症状ですが、全身のけん怠感、食欲不振、疲労などの漠然とした症状がみられることもあります。
慢性肝炎は、肝硬変のほか、最終的には肝臓がんや肝不全に進行することがあります。
診断を確定するために生検が行われることもありますが、慢性肝炎は通常、血液検査の結果に基づいて診断が下されます。
抗ウイルス薬やコルチコステロイドなどの薬を用いたり、進行した症例には肝移植が必要になったりすることがあります。
(肝炎の概要 肝炎の概要 肝炎とは肝臓の炎症です。 ( 急性ウイルス性肝炎の概要と 慢性肝炎の概要も参照のこと。) 肝炎は世界中でみられる病気です。 肝炎には以下の種類があります。 急性(経過が短い) さらに読む 、 B型肝炎[慢性] B型肝炎(慢性) B型慢性肝炎は、B型肝炎ウイルスを原因とし、6カ月以上持続している肝臓の炎症です。 ほとんどのB型慢性肝炎患者では症状がありませんが、全身のだるさを感じ、疲れを覚え、食欲を失う場合もあります。 B型慢性肝炎があると肝臓がんのリスクが増大します。 血液検査の結果に基づいてB型肝炎の診断が下され、ときとして肝傷害の程度を確認するために肝生検が行われます。 B型慢性肝炎のすべての患者に治療が必要となるわけではありませんが、B型慢性肝炎によって... さらに読む 、 C型肝炎[慢性] C型肝炎(慢性) C型慢性肝炎は、C型肝炎ウイルスを原因とし、6カ月以上持続している肝臓の炎症です。 C型肝炎は、肝臓にひどい損傷を与えるまでは症状を引き起こさないことがよくあります。 C型慢性肝炎の診断は、血液検査の結果に基づいて下されます。 C型慢性肝炎によって肝硬変が生じた場合、6カ月毎に肝臓がんのスクリーニングを行います。 C型慢性肝炎の治療は抗ウイルス薬によって行います。 さらに読む も参照のこと。)
慢性肝炎は、 急性ウイルス性肝炎 急性ウイルス性肝炎の概要 急性ウイルス性肝炎は、肝臓の炎症で、一般的には5種類の肝炎ウイルスのいずれかの感染によって起こる炎症を意味します。多くの場合、炎症は突然始まり数週間続きます。 症状は、何もみられない場合から重症の場合まであります。 感染すると、食欲不振、吐き気、嘔吐、発熱、右上腹部の痛み、黄疸などの症状がみられます。 医師は、肝炎の診断を下しその原因を特定するための血液検査を行います。 ワクチンはA型、B型、E型の肝炎を予防できます(E型肝炎ワクチンは... さらに読む と比べてはるかに少ない病気ですが、数年間、ときには数十年間も続くことがあります。多くの場合かなり軽症で、重大な肝傷害は引き起こしません。しかし、一部の患者では、持続的な炎症によって少しずつ肝臓が損傷していき、最終的には 肝硬変 肝硬変 肝硬変は、機能を果たさない瘢痕組織が大量の正常な肝組織と永久に置き換わり、肝臓の内部構造に広範な歪みが生じることです。肝臓が繰り返しまたは継続的に損傷を受けると、瘢痕組織が生じます。肝硬変はかつては不可逆的と考えられていましたが、最近の科学的証拠から一部の症例では可逆的であることが示唆されています。 肝硬変の最も一般的な原因は、慢性的な アルコール乱用、 慢性ウイルス性肝炎、... さらに読む (肝臓の重度の瘢痕化)や 肝不全 肝不全 肝不全は、肝機能が大幅に低下した状態です。 肝不全は、肝臓に損傷が起きる病気や物質により引き起こされます。 ほとんどの患者は 黄疸(皮膚と眼が黄色くなる)になり、疲れて脱力を覚え、食欲を失います。 他の症状には、腹部への体液の貯留( 腹水)や、皮下出血や出血が起きやすい傾向などがあります。 医師は通常、症状と身体診察、および血液検査の結果に基づいて、肝不全の診断を下すことができます。 さらに読む に至り、ときに 肝臓がん 肝細胞がん 肝細胞がんは、肝臓の細胞から発生するがんの一種であり、原発性の肝臓がんの中で最も多くみられるものです。 B型またはC型肝炎、 脂肪性肝疾患、または 過度の飲酒は、肝細胞がんの発生リスクを高め、特に肝硬変がある患者では著しくリスクを高めます。 腹痛や体重減少がみられるほか、右上腹部に大きなかたまりを触れることがあります。 医師は血液検査と画像検査の結果に基づいて診断を下します。... さらに読む が発生することがあります。
慢性肝炎の原因
慢性肝炎の最も一般的な原因は以下のものです。
慢性肝炎の約60~70%はC型肝炎ウイルスに起因し、C型急性肝炎の少なくとも75%が慢性化します。
成人のB型肝炎のうち約5~10%の症例で慢性化し、ときに D型肝炎 D型肝炎 D型肝炎は、B型肝炎の患者だけに発生する肝臓の感染症です。 D型肝炎は、血液や他の体液への接触によって広がります。 D型肝炎の同時感染によって、通常はB型肝炎の症状が悪化します。 D型慢性肝炎の診断は、血液検査の結果に基づいて下されます。 D型急性肝炎に対して特別な治療法はありませんが、D型慢性肝炎の治療はインターフェロンアルファによって行われることがあります。 さらに読む の同時感染を伴います。(D型肝炎は単独では起こらず、B型肝炎との同時感染としてのみ起こります。)B型急性肝炎は、感染した新生児では最大で90%、幼児では25~50%で慢性化します。
まれですが、臓器移植の後に免疫系を抑制する薬を服用している人、がんの治療薬を服用している人、HIVに感染している人など、免疫機能が低下している人にE型肝炎ウイルスによる慢性肝炎がみられることがあります。
A型肝炎ウイルスは慢性肝炎を引き起こしません。
非アルコール性脂肪肝炎 脂肪肝 (肝臓の慢性炎症の一種)は、通常、過体重(肥満)や糖尿病の場合や、血液中のコレステロールや他の脂肪(脂質)の濃度が異常な場合に発生します。これらの病態はすべて、体内での脂肪の合成を増やしたり、脂肪の処理(代謝)や排泄を遅くしたりします。その結果、脂肪が蓄積して肝細胞に保持されます(脂肪肝 脂肪肝 脂肪肝は、肝細胞の内部に中性脂肪(トリグリセリド)が過剰に蓄積した状態です。 脂肪肝の患者には、疲労や腹部の軽い不快感が生じることがありますが、それ以外の症状はみられません。 脂肪肝は、線維化や肝硬変などの進行した肝疾患を引き起こすことがあります。 診断を確定するため、また損傷の原因と範囲を特定するために肝生検が必要になることがあります。 医師は、メタボリックシンドロームや過度の飲酒など、脂肪肝の原因をコントロールするか取り除くことに重... さらに読む )。脂肪肝は慢性炎症を引き起こし、最終的には 肝硬変 肝硬変 肝硬変は、機能を果たさない瘢痕組織が大量の正常な肝組織と永久に置き換わり、肝臓の内部構造に広範な歪みが生じることです。肝臓が繰り返しまたは継続的に損傷を受けると、瘢痕組織が生じます。肝硬変はかつては不可逆的と考えられていましたが、最近の科学的証拠から一部の症例では可逆的であることが示唆されています。 肝硬変の最も一般的な原因は、慢性的な アルコール乱用、 慢性ウイルス性肝炎、... さらに読む に進行する可能性があります。(大量の飲酒以外の状況で生じた脂肪肝は、非アルコール性脂肪性肝疾患[NAFLD]と呼ばれます。)
アルコールは、消化管で吸収された後、通常は肝臓で処理(代謝)されます。アルコールが処理される際には、肝臓に損傷を与える物質が生成されます。アルコール性肝疾患は、何カ月も、または何年も大量に飲酒する人に発生するのが典型的です。アルコール性肝疾患の特徴は、脂肪肝と広範囲の肝臓の炎症で、それによって肝臓の細胞が死んでしまうことがあります。飲酒を続けると、肝臓に瘢痕組織が形成され、最終的に肝臓の正常組織の大部分が取って代わられ肝硬変になる可能性があります。
まれに、慢性肝炎は以下のものに起因することがあります。
自己免疫性肝炎
薬剤
甲状腺の病気
自己免疫性肝炎は、身体が自己の組織を攻撃することによって生じる炎症(自己免疫反応 自己免疫疾患 自己免疫疾患とは免疫系が正常に機能しなくなり、体が自分の組織を攻撃してしまう病気です。 自己免疫疾患の原因は不明です。 症状は、自己免疫疾患の種類および体の中で攻撃を受ける部位によって異なります。 自己免疫疾患を調べるために、しばしばいくつかの血液検査が行われます。 治療法は自己免疫疾患の種類によって異なりますが、免疫機能を抑制する薬がしばしば使用されます。 さらに読む )に似た慢性の炎症です。自己免疫性肝炎は、男性よりも女性に多くみられます。
特定の薬剤は、特に長期にわたって服用する場合、慢性肝炎を引き起こすことがあります。そのような薬剤としては、アミオダロン、イソニアジド、メトトレキサート、メチルドパ、ニトロフラントイン、タモキシフェンなどがあり、まれな薬剤としてはアセトアミノフェンがあります。
同じウイルスや薬でも、実際に慢性肝炎を発症するかどうか、また発症した場合の重症度は人によって異なりますが、その正確な理由は分かりません。
慢性肝炎の症状
約3分の2の患者では慢性肝炎は徐々に発生し、多くの場合、肝硬変になるまで肝疾患の症状はみられません。残りの3分の1は、急性ウイルス性肝炎の発生後(多くは数週間後)に肝炎が持続するか再発して、慢性肝炎になります。
慢性肝炎では、漠然とした体調不良(けん怠感)、食欲不振、疲労などの全身症状が生じます。ときに微熱や上腹部の不快感もみられます。 黄疸 成人の黄疸 黄疸では、皮膚や白眼が黄色くなります。黄疸は、血中にビリルビン(黄色の色素)が多すぎる場合に起こります。この病態を高ビリルビン血症と呼びます。 ( 肝疾患の概要と 新生児黄疸も参照のこと。) 写真では、黄色に変色した眼と皮膚(黄疸)がみられます。 ビリルビンは、古くなった赤血球や損傷した赤血球を再利用する正常なプロセスの中で、ヘモグロビン(酸素を運ぶ赤血球の一部)が分解されるときに生成されます。ビリルビンは血流によって肝臓に運ばれ、胆汁... さらに読む (過剰なビリルビンの沈着によって皮膚や白眼が黄色くなる)は、肝不全が生じない限りまれです。慢性肝炎患者の多くでは症状がみられません。
多くの場合、最初の具体的な症状は、肝疾患が進行して肝硬変の所見がみられるようになると現れます。具体的な症状としては以下のものがあります。
脾臓の腫大
皮膚にみられる、小さなくものような形の血管(くも状血管腫)
手のひらの発赤
出血傾向(血液凝固障害)
脳の機能が低下する理由は、ひどい損傷を受けた肝臓が血液から有害物質を正常に除去できないためです。そうした物質が、その後血液中に蓄積し脳に到達します。肝臓は正常な状態では、血液中から有害物質を取り除いて分解し、無害な副産物として胆汁(消化を助ける緑がかった黄色の液)中や血液中に排泄しています(肝臓の機能 肝臓の機能 を参照)。肝性脳症の治療によって、脳の機能の低下が永続的なものになるのを予防できます。
損傷を受けた肝臓はもはや血液凝固を助けるタンパク質を十分に合成できなくなるため、血液が正常に凝固できません。
少数の患者で、 黄疸 成人の黄疸 黄疸では、皮膚や白眼が黄色くなります。黄疸は、血中にビリルビン(黄色の色素)が多すぎる場合に起こります。この病態を高ビリルビン血症と呼びます。 ( 肝疾患の概要と 新生児黄疸も参照のこと。) 写真では、黄色に変色した眼と皮膚(黄疸)がみられます。 ビリルビンは、古くなった赤血球や損傷した赤血球を再利用する正常なプロセスの中で、ヘモグロビン(酸素を運ぶ赤血球の一部)が分解されるときに生成されます。ビリルビンは血流によって肝臓に運ばれ、胆汁... さらに読む やかゆみがみられ、便の色が薄くなります。黄疸やかゆみが発生する理由は、損傷を受けた肝臓が血液から正常にビリルビンを取り除くことができないためです。そうしてビリルビンが血液中に蓄積し、皮膚に沈着します。ビリルビンは黄色い色素で、赤血球の正常な分解の際に老廃物として作られます。便の色が薄くなる理由は、肝臓から出る胆汁の流れが遮られ、便中に排泄されるビリルビンが減少するためです。ビリルビンは、便の色を典型的な茶色にする物質です。
自己免疫性肝炎では、そのほかにも、体の他の器官系を侵す症状が現れることがあります。具体的な症状としては、月経の停止、関節の痛みや腫れ、食欲不振、吐き気などがあります。自己免疫性肝炎の患者には、1型糖尿病、潰瘍性大腸炎、セリアック病などの別の自己免疫疾患や、貧血や甲状腺や腎臓の炎症を引き起こす自己免疫疾患も存在することがあります。
多くの人では何年もの間、慢性肝炎の進行はみられません。一部の人では慢性肝炎が徐々に悪化します。その後の見通しは、原因となるウイルスの種類と治療が可能かどうかによって異なります。
C型慢性肝炎は、治療しないでいると、約20~30%の患者で肝硬変を引き起こします。しかし、肝硬変の発生までには何十年もかかることがあります。肝臓がんのリスクは、通常は肝硬変がある場合にのみ増加します。
B型慢性肝炎は悪化する傾向があり、ときには急速に、ときには数十年かけて肝硬変に至ります。B型慢性肝炎も、肝硬変が発生してもしなくても 肝臓がん 原発性肝臓がん 原発性肝臓がんとは、肝臓から発生するがんのことです。最もよくみられる原発性肝臓がんは 肝細胞がんです。肝臓がんの初期には、通常は漠然とした症状(体重減少、食欲不振、疲労など)しかみられません。そのために診断が遅れることがよくあり、多くの場合、予後(経過の見通し)は不良です。 ( 肝腫瘍の概要も参照のこと。) その他の原発性肝臓がんはまれです。診断には通常、 生検が必要です。この種のがんを発症した人の予後(経過の見込み)は、ほとんどの場合... さらに読む のリスクを増加させます。(他の病気を原因とする肝疾患の患者では、通常、肝硬変が発生した場合にのみ肝臓がんのリスクがあります。)まれに、B型慢性肝炎は治療を行わなくとも自然に治まることがあります。
B型肝炎とD型肝炎の慢性的な同時感染では、治療しないでいると、最大70%の患者が肝硬変になります。
自己免疫性肝炎は、ほとんどの患者で効果的に治療できますが、一部の患者は肝硬変を発症します。
薬によって引き起こされた慢性肝炎は、その薬の使用を中止すれば、多くの場合完全に解消します。
慢性肝炎の診断
血液検査
ときに生検
以下の場合に慢性肝炎が疑われることがあります。
典型的な症状がみられる場合。
血液検査(他の理由で行ったもの)で肝酵素値の上昇が検出される場合。
過去に急性肝炎があった場合。
また、18歳以上のすべての人は、症状の有無にかかわらず、少なくとも1回はC型肝炎の検査を受けるべきです。C型肝炎は無自覚であることが多いため、そのような検査が推奨されます。
慢性肝炎の検査は、通常、肝酵素や肝臓で作られるその他の物質の濃度を測定する血液検査(肝臓の検査 肝臓の血液検査 肝臓の検査は血液検査として行われますが、これは肝疾患の有無をスクリーニングし(例えば、献血された血液に 肝炎があるかを調べる)、肝疾患の重症度や進行度と治療に対する反応を評価するための検査のうち、体への負担が少ない方法の代表例です。 臨床検査は、一般的に以下の目的に有効です。 肝臓の炎症、損傷、機能障害の検出... さらに読む )により開始します。この検査は、肝炎の診断の確定や除外、原因の特定、肝傷害の重症度の判定に役立ちます。
また、肝炎ウイルスが感染症を引き起こしているかどうかを特定するための参考にする目的でも、血液検査を行います。ウイルスが特定されない場合は、自己免疫性肝炎など、他の原因を調べる別の血液検査が必要です。
ときには、診断を確定するために 肝生検 肝生検 肝臓の組織サンプルは、試験開腹中に採取することもありますが、多くの場合、皮膚から肝臓に中空の針を刺す方法で採取します。このタイプの生検は、経皮的肝生検と呼ばれます。また、経静脈的肝生検と呼ばれる生検の方法もあります。 肝生検では、他の検査で得られない肝臓の情報を検出することができます。肝生検は、肝臓の過剰な脂肪( 脂肪肝)、慢性的な肝臓の炎症( 慢性肝炎)、 ウィルソン病(銅が過剰に蓄積する病気)や... さらに読む を行うこともあります。肝生検により以下のことも可能になります。
炎症の重症度を判定する
肝炎の原因の特定に役立つ可能性もある
しかし、新たな検査技術の開発が続くにつれて、肝生検が行われる頻度は減少しています。例えば、肝傷害の程度を判定したり、肝臓の他の問題がないか確認したりする目的で、以下の検査が行われる場合があります。
超音波エラストグラフィーや磁気共鳴エラストグラフィー 診断 などの特殊な画像検査
線維化の有無や程度を示す物質(マーカー)を測定する血液検査
超音波エラストグラフィーおよび磁気共鳴エラストグラフィーでは、腹部に超音波を照射することで、肝組織の硬さを判定します。
肝臓がんのスクリーニング
B型慢性肝炎(または何らかの肝疾患に起因する肝硬変)の患者では、肝臓がんのスクリーニングを6カ月毎に行います。次の2つの検査が行われます。
超音波検査
ときにアルファ-フェトプロテインの血中濃度の測定
肝臓がんがあると、アルファ-フェトプロテイン(胎児の未熟な肝細胞が正常時から作るタンパク質)の測定値が高くなることがあります。
慢性肝炎の治療
原因の治療(例えばB型またはC型肝炎に対する抗ウイルス薬)
合併症の治療
慢性肝炎の治療では、原因の治療と合併症(肝硬変患者の 腹水 治療 腹水とは、タンパク質を含む体液が腹部に貯留したものです。 腹水がたまる病気は多くありますが、最も一般的な原因は、肝臓につながる静脈(門脈)の血圧が上昇すること( 門脈圧亢進症)で、通常は 肝硬変によって起こります。 大量の体液が貯留すると、腹部は非常に大きく膨らみ、ときに食欲不振や息切れ、不快感を生じることがあります。 原因を確定するには、腹水の分析が役立ちます。 通常は、低ナトリウム食と利尿薬によって、過剰な体液の排出を促します。 さらに読む や 肝性脳症 治療 肝性脳症は、重度の肝疾患がある人において、正常なら肝臓で除去されるはずの有害物質が血液中に蓄積して脳に達することで、脳機能が低下する病気です。 肝性脳症は、長期にわたる(慢性の)肝疾患がある患者に発生します。 肝性脳症は、消化管での出血、感染症、処方薬を正しく服用しないこと、その他のストレスによって誘発されます。 錯乱、見当識障害、眠気が起こるとともに、性格、行動、気分の変化がみられます。... さらに読む など)の管理に重点が置かれます。
薬が原因である場合は、その薬の使用を中止します。他の病気が原因の場合は、その治療を行います。原因が アルコール性肝疾患 治療 アルコール性肝疾患は、長期にわたる大量の飲酒によって肝臓に損傷が起きる病気です。 一般に、飲酒の量、頻度、期間によって肝傷害のリスクと重症度が決まります。 最初は無症状ですが、次第に発熱、黄疸、疲労がみられるようになり、肝臓は圧痛や痛みが生じて大きくなり、やがて消化管出血や脳機能低下などの、より深刻な問題が現れます。... さらに読む である場合は、医師は生活習慣の変更、主に禁酒を勧めます。
B型肝炎とC型肝炎
B型慢性肝炎 B型肝炎(慢性) B型慢性肝炎は、B型肝炎ウイルスを原因とし、6カ月以上持続している肝臓の炎症です。 ほとんどのB型慢性肝炎患者では症状がありませんが、全身のだるさを感じ、疲れを覚え、食欲を失う場合もあります。 B型慢性肝炎があると肝臓がんのリスクが増大します。 血液検査の結果に基づいてB型肝炎の診断が下され、ときとして肝傷害の程度を確認するために肝生検が行われます。 B型慢性肝炎のすべての患者に治療が必要となるわけではありませんが、B型慢性肝炎によって... さらに読む が悪化しているまたは、肝酵素の値が高いかウイルス量が多い場合は、通常は抗ウイルス薬を使用します。B型肝炎には根治的な治療法がありません。
一部の患者では、薬物治療を中止するとB型肝炎が再発する傾向があり、さらに重症化することがあります。したがって、このような患者は抗ウイルス薬を無期限に服用する必要があります。
C型慢性肝炎 C型肝炎(慢性) C型慢性肝炎は、C型肝炎ウイルスを原因とし、6カ月以上持続している肝臓の炎症です。 C型肝炎は、肝臓にひどい損傷を与えるまでは症状を引き起こさないことがよくあります。 C型慢性肝炎の診断は、血液検査の結果に基づいて下されます。 C型慢性肝炎によって肝硬変が生じた場合、6カ月毎に肝臓がんのスクリーニングを行います。 C型慢性肝炎の治療は抗ウイルス薬によって行います。 さらに読む では、余命が非常に短い場合を除き、すべての患者に抗ウイルス薬による治療が推奨されます。治療は8週間から24週間続けます。C型肝炎の治療により、体内からウイルスを排除し、炎症を食い止め、瘢痕化や肝硬変への進行を予防することができます。
非アルコール性脂肪肝炎
非アルコール性脂肪肝炎の治療では、この病気に寄与している病態の管理に重点が置かれます。例えば、治療法には以下のものがあります。
体重を減らす
健康的な食事をとる(体重と糖尿病のほか、ときに脂質濃度のコントロールに役立ちます)
この病気に寄与する可能性がある薬(タモキシフェン、コルチコステロイド、合成エストロゲンなど)を使用しない
殺虫剤などの毒性物質を避ける
自己免疫性肝炎
自己免疫性肝炎の治療には、通常はコルチコステロイド(プレドニゾン[日本ではプレドニゾロン]やブデソニドなど)と、免疫抑制薬であるアザチオプリンを併用します。これらの薬は炎症を抑え、症状を和らげ、長期的な生存率を改善します。こうした治療を行っていても、肝臓の瘢痕は徐々に悪化することがあります。
治療を中止すると炎症が再発するため、ほとんどの患者は生涯にわたって薬の服用を続ける必要があります。しかし、コルチコステロイドを長期にわたって用いると著しい副作用が起こる可能性があります。そのため、医師は通常、徐々にコルチコステロイドの用量を減量し、患者が使用を中止できるようにします。その後、患者はアザチオプリンやミコフェノール酸(免疫系を抑制する別の薬)を無期限に服用します。
合併症の治療
慢性肝炎の原因や病型にかかわらず、 肝硬変 肝硬変 肝硬変は、機能を果たさない瘢痕組織が大量の正常な肝組織と永久に置き換わり、肝臓の内部構造に広範な歪みが生じることです。肝臓が繰り返しまたは継続的に損傷を受けると、瘢痕組織が生じます。肝硬変はかつては不可逆的と考えられていましたが、最近の科学的証拠から一部の症例では可逆的であることが示唆されています。 肝硬変の最も一般的な原因は、慢性的な アルコール乱用、 慢性ウイルス性肝炎、... さらに読む 、 肝不全 治療 肝不全は、肝機能が大幅に低下した状態です。 肝不全は、肝臓に損傷が起きる病気や物質により引き起こされます。 ほとんどの患者は 黄疸(皮膚と眼が黄色くなる)になり、疲れて脱力を覚え、食欲を失います。 他の症状には、腹部への体液の貯留( 腹水)や、皮下出血や出血が起きやすい傾向などがあります。 医師は通常、症状と身体診察、および血液検査の結果に基づいて、肝不全の診断を下すことができます。 さらに読む 、合併症に対する治療が必要になります。
例えば、 腹水の治療 治療 腹水とは、タンパク質を含む体液が腹部に貯留したものです。 腹水がたまる病気は多くありますが、最も一般的な原因は、肝臓につながる静脈(門脈)の血圧が上昇すること( 門脈圧亢進症)で、通常は 肝硬変によって起こります。 大量の体液が貯留すると、腹部は非常に大きく膨らみ、ときに食欲不振や息切れ、不快感を生じることがあります。 原因を確定するには、腹水の分析が役立ちます。 通常は、低ナトリウム食と利尿薬によって、過剰な体液の排出を促します。 さらに読む では、塩分の摂取を制限したり、腎臓から尿中へのナトリウムと水の排泄を促す薬(利尿薬)を服用したりします。