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胆石

(胆石症)

執筆者:

Christina C. Lindenmeyer

, MD, Cleveland Clinic

レビュー/改訂 2021年 9月
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やさしくわかる病気事典
本ページのリソース

胆石は胆嚢内で固形物(主にコレステロールの結晶)が集積したものです。

  • 肝臓はコレステロールを過剰に分泌することがあり、このコレステロールは胆汁とともに胆嚢に運ばれ、そこで過剰なコレステロールが固体粒子を形成して蓄積します。

  • 胆石は、ときに数時間続く上腹部痛を起こすことがあります。

  • 超音波検査では極めて正確に胆石を検出できます。

  • 胆石によって痛みなどの問題が繰り返し起こる場合は、胆嚢を摘出します。

胆嚢と胆管の病気のほとんどは、胆石に起因します。胆石の危険因子としては以下のものがあります。

  • 女性

  • 高齢

  • アメリカンインディアン

  • 肥満

  • 急激な体重減少(非常にカロリーの低い食事または減量手術によるもの)

  • 欧米型の食生活

  • 胆石の家族歴

米国では、65歳以上の高齢者の約20%、全成人の約10%に胆石がみられます。

胆嚢の中にある石(結石)は胆嚢結石と呼ばれますが、これがときに胆管に入り込むこともあれば、胆管の中で結石が形成されることもあります。胆管の中にある結石は胆管結石と呼ばれます。このような結石は、ときに胆管をふさぎます。

ほとんどの胆石は症状を引き起こしません。しかし、症状やその他の問題が生じた場合は、治療が必要です。米国では毎年50万人以上が胆嚢を摘出する手術を受けています。

胆石とは何か

胆石は通常、胆汁から結晶化したコレステロールでできています。それらは胆嚢の中で形成されます。胆嚢から出て、胆嚢管や総胆管、ファーター膨大部につかえることがあります。

胆石とは何か

欧米では、大半の胆石の主成分はコレステロールという脂肪(脂質)の一種で、これは正常な状態では胆汁に溶ける(水には溶けない)物質です。しかし、肝臓がコレステロールを過剰に分泌すると、胆汁内でコレステロールが過飽和状態になります。過剰なコレステロールは固体の粒子(コレステロールの結晶)を形成します。この微小なコレステロールの結晶が胆嚢内に蓄積し、胆石になります。

他の種類の胆石も同様に形成されますが、その固体粒子はカルシウム化合物またはビリルビン(胆汁中の主な色素)です。ビリルビンを成分とする胆石は色素結石と呼ばれ、黒(胆嚢で形成)または茶色(胆管で形成)のものがあります。黒色の色素結石は、 アルコール性肝疾患 アルコール性肝疾患 アルコール性肝疾患は、長期にわたる大量の飲酒によって肝臓に損傷が起きる病気です。 一般に、飲酒の量、頻度、期間によって肝傷害のリスクと重症度が決まります。 最初は無症状ですが、次第に発熱、黄疸、疲労がみられるようになり、肝臓は圧痛や痛みが生じて大きくなり、やがて消化管出血や脳機能低下などの、より深刻な問題が現れます。... さらに読む アルコール性肝疾患 の患者、高齢者、または 溶血性貧血 自己免疫性溶血性貧血 自己免疫性溶血性貧血は免疫系機能の異常を特徴とする疾患群で、赤血球をまるで異物であるかのように攻撃する自己抗体が生産されます。 症状がまったくない人もいますし、疲労感や息切れを覚えたり、顔が青白くなったりする人もいます。 重症の場合は、黄疸がみられたり、脾腫(脾臓の腫大)のために腹部に不快感や膨満感を覚えたりすることがあります。 血液検査を行って、貧血であることを確認し、自己免疫反応の原因を特定します。... さらに読む (体が赤血球を早まって破壊する場合に起こる)の患者によくみられます。褐色の色素結石は、胆嚢や胆管が炎症または感染を起こしたり、胆管が狭窄したりした場合にみられます。

胆石は、胆嚢内にとどまることもあれば、胆管に入り込むこともあります。胆石は、胆嚢管、総胆管、またはファーター膨大部(総胆管と膵管の合流部分)をふさぐことがあります。胆管内のコレステロール結石のほとんどは、胆嚢で形成されたものです。

胆管が狭窄(狭くなること)すると、閉塞を招き、胆汁の流れが遅くなります。胆汁の流れが遅くなったり止まったりすると、細菌感染症が生じやすくなります。

ときに、コレステロールやカルシウム化合物、ビリルビンなどの微細な粒子が蓄積しても、胆石が形成されないことがあります。こうして蓄積した物質は胆泥と呼ばれます。胆泥は、妊娠中のように、胆嚢に胆汁がかなり長い間滞留する場合に生じます。通常、妊娠が終わるなど、原因が解消されれば、胆泥は消失します。しかし、胆泥が胆石に変化したり、胆道に入って胆管をふさいだりすることもあります。

知っていますか?

  • 他の食べものに比べて、脂肪の多い食品が特に胆石による痛みを誘発するわけではありません。

胆石の症状

胆石が形成された人の約80%では、長年にわたって何の症状も起こりません。胆石が胆嚢内にとどまっている場合は、特にこの傾向がよくみられます。

胆石は痛みを伴うことがあります。痛みを生じるのは、胆石が胆嚢から出て、胆嚢管や総胆管、またはファーター膨大部に入り、管をふさいでしまった場合です。その後、胆嚢が腫れ、胆道仙痛と呼ばれる痛みが起こります。この痛みは上腹部、通常は右側の肋骨の下に感じられます。痛みの場所を正確に特定できないこともあり、糖尿病の患者や高齢者では特に困難です。一般に15分から1時間の間に痛みが強くなり、その後は長くて12時間、一定して痛みが持続します。この痛みは通常、救急医療機関に搬送されるほどの激痛です。痛みが引き始めると、30~90分かけて弱まっていき、後には鈍痛が残ります。吐き気を催して嘔吐することも、しばしばあります。

ボリュームのある食事をとると、含まれる脂肪分の量にかかわらず、胆道仙痛が誘発されることがあります。胆石が、げっぷや腹部膨満感を引き起こすことはありません。吐き気は、胆道仙痛が生じる場合にのみ起こります。

ほとんどの胆道仙痛は自然に消失しますが、毎年20~40%の人で再発し、合併症が生じることがあります。痛みが治まった後、次に発生するまで体調は良好です。

閉塞が長く続くと、胆嚢が炎症を起こします(急性胆嚢炎 症状 症状 と呼ばれる状態)。胆嚢に炎症が起こると、細菌が繁殖し、感染症が発生することがあります。この炎症は通常、全身の発熱につながります。

総胆管またはファーター膨大部の閉塞は、胆嚢管の閉塞より重篤です。胆管が閉塞すると、管が広がる(拡張する)ことがあります。場合によって、発熱、悪寒、 黄疸 成人の黄疸 黄疸では、皮膚や白眼が黄色くなります。黄疸は、血中にビリルビン(黄色の色素)が多すぎる場合に起こります。この病態を高ビリルビン血症と呼びます。 ( 肝疾患の概要と 新生児黄疸も参照のこと。) 写真では、黄色に変色した眼と皮膚(黄疸)がみられます。 ビリルビンは、古くなった赤血球や損傷した赤血球を再利用する正常なプロセスの中で、ヘモグロビン(酸素を運ぶ赤血球の一部)が分解されるときに生成されます。ビリルビンは血流によって肝臓に運ばれ、胆汁... さらに読む 成人の黄疸 (皮膚や白眼の部分が黄色くなること症状)も起こります。これらの症状の組合せは、急性胆管炎という重篤な感染症が発生していることを示します。細菌が血流に拡散し、体のどこか別の部位で重篤な感染症を引き起こす可能性があります(敗血症 敗血症と敗血症性ショック 敗血症は、 菌血症やほかの感染症に対する重篤な全身性の反応に加えて、体の重要な臓器に機能不全が起きている状態です。敗血症性ショックは、敗血症のために生命を脅かすほどの血圧の低下( ショック)と臓器不全が起きている病態です。 通常、敗血症は特定の細菌に感染することで起こり、病院内での感染が多くみられます。 免疫系の機能低下、特定の慢性疾患、人工関節や人工心臓弁の使用、特定の心臓弁の異常といった特定の条件に当てはまると、リスクが高くなります... さらに読む )。また、肝臓に 膿瘍 症状 (膿がたまった空洞)ができることもあります。

胆石が原因で生じた胆嚢の炎症により、胆嚢の壁が侵食され、穴があくことがあります(穿孔)。胆嚢の内容物が穿孔部分から腹腔全体に漏れ出すと、重度の炎症(腹膜炎)が起こります。大きな胆石が小腸に入ると、胆石イレウスと呼ばれる腸の閉塞を起こすことがあります。この合併症はまれですが、高齢者に起こりやすいようです。

知っていますか?

  • 胆石がげっぷや腹部膨満感を引き起こすことはありません。

  • 約80%の胆石は、症状やその他の問題を引き起こしません。

胆石の診断

  • 超音波検査またはその他の画像検査

上腹部に特徴的な痛み(胆嚢が腫れたことによるもの)が生じている場合は、胆石が疑われます。別の理由で行われた超音波検査などの画像検査で、胆石が検出されることもあります。

超音波内視鏡検査では、先端に小さな超音波装置を組み込んだ内視鏡を口から胃や小腸に通します。これを胆嚢や胆管に近づけると、標準的な超音波検査よりも良好な組織像が得られます。

ERCPでは、手術器具を取り付けた内視鏡(観察用の柔軟な管状の機器)を口から挿入し、食道と胃を経由して小腸に到達させます(図「 内視鏡的逆行性胆道膵管造影検査について理解する 内視鏡的逆行性胆道膵管造影検査について理解する 内視鏡的逆行性胆道膵管造影検査について理解する 」を参照)。この内視鏡から細いカテーテルを通し、小腸と総胆管や膵管との間にある開口部をくぐらせ総胆管に挿入します。次にカテーテルを介して放射線不透過性の造影剤(X線画像に写る物質)を胆管に注入し、X線画像を撮影して異常を確認します。

血液検査により、肝臓がどの程度機能しているかと、肝臓に損傷が起きているかどうかを評価します(肝臓の検査 肝臓の血液検査 肝臓の検査は血液検査として行われますが、これは肝疾患の有無をスクリーニングし(例えば、献血された血液に 肝炎があるかを調べる)、肝疾患の重症度や進行度と治療に対する反応を評価するための検査のうち、体への負担が少ない方法の代表例です。 臨床検査は、一般的に以下の目的に有効です。 肝臓の炎症、損傷、機能障害の検出... さらに読む )。胆石が胆管をふさいでいない限り、結果はたいてい正常です。胆石が胆管をふさいでいる場合、結果は異常であることが多く、肝臓に胆汁が滞留している(胆汁うっ滞 胆汁うっ滞 胆汁うっ滞とは、胆汁の流れが減少または停止した状態です。胆汁は、肝臓で作られる消化液です。 胆汁うっ滞の原因として、肝臓、胆管、膵臓の病気が考えられます。 皮膚や白眼が黄色くなり、皮膚にかゆみが生じ、尿の色が濃くなり、便は色が薄くなって悪臭がするようになります。 原因を特定するには、臨床検査と多くの場合は画像検査が必要です。 治療法は原因によって異なりますが、かゆみの軽減には薬剤が有用です。 さらに読む )ことが示唆されます。しばしばビリルビンや特定の肝酵素が増加しています。

胆石の治療

  • 胆嚢を摘出する手術(胆嚢摘出術)

  • ときに胆石を溶かす薬剤

  • ときに内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)検査での胆石の摘出

症状を引き起こさない胆石(無症候性胆石)は、治療を必要としません。胆石によって痛みが生じている場合、食事内容を変更しても(例えば低脂肪食など)効果はありません。

胆嚢内の胆石

胆石が激しい痛みを繰り返し起こしている場合には、胆嚢を摘出する手術(胆嚢摘出術)を勧められることがあります。胆嚢を摘出すれば、胆道仙痛の発生を予防できる一方で、消化には影響を及ぼしません。手術後に特別な食事制限は必要ありません。胆嚢摘出の手術中に、胆管内結石の有無もチェックすることがあります。

胆嚢摘出術の約90%では、腹腔鏡(観察用の管状の機器)が使用されます。この方法では、腹部を小さく切開し、そこから腹腔鏡を挿入します。さらにその切開部位から手術器具を挿入して、胆嚢を摘出します。腹腔鏡下胆嚢摘出術により、従来と比べて手術後の痛みは軽減され、必要な入院日数が短縮し、さらに術後に残る創痕も小さくなり、回復に要する期間も短くなりました。

それ以外の胆嚢摘出術は開腹手術であり、腹部をより大きく切開する必要があります。

手術の代わりに、ときに胆汁酸(ウルソデオキシコール酸)などの薬を服用して胆石を溶かすこともあります。このような薬を毎日2~3回服用すると、小さな結石であれば6カ月で溶かすことができます。大きな胆石は溶けるまでに1~2年かかることがあります。溶かすことができないことも多々あります。薬による胆石の溶解は、胆石の成分がコレステロールで、胆嚢の開口部がふさがっていない場合に最も効果的です。胆石の溶解に成功しても、この治療を受けた患者の半数は5年以内に胆石が再発します。この治療法が対象が限られていて、手術のリスクが非常に高い場合(例えば、重大な医学的問題がある場合)にのみ用いられます(手術のリスク 手術のリスク 手術とは、従来、病気やけが、体の変形を治療する目的で組織を手作業で切ったり塗ったりする処置(外科的処置といいます)を指すのに用いられてきた用語です。しかし、手術手技の進歩により、この定義はより複雑になっています。組織を切るのにメスではなくレーザーや放射線、その他の手法が用いられることもあれば、縫合せずに傷口を閉じることもあります。... さらに読む を参照)。

ウルソデオキシコール酸は、減量手術後に体重が急速に減っている肥満患者や、非常にカロリーの低い食事をとっている肥満患者において、胆石の形成を予防するのに有用です。

胆管内の胆石

胆管内の胆石は、ERCPの最中に除去できます。内視鏡的乳頭括約筋切開術と呼ばれるこの手技では、内視鏡を介して器具を挿入し、それを用いてオッディ括約筋(総胆管と小腸がつながる部分)を切開します。ときには、胆管の末端も切開して広げます。切開しても、胆石が自然に小腸へと出てこない場合は、先端に小さなかごのついたカテーテルを内視鏡を介して挿入します。それを用いて胆石を捕らえ、胆管から引っぱり出します。将来胆石が再びできた場合に小腸に出てきやすいように、胆管の末端を切開して開口部を広くしておきます。胆嚢内の胆石は、この方法で取り除くことはできません。

ERCPと内視鏡的乳頭括約筋切開術を併せて行う治療法は、90%の患者で成功しています。開腹手術よりも、はるかに安全です。この処置による死亡率は1%未満ですが、ERCPと内視鏡的乳頭括約筋切開術を受けてすぐに合併症が発生する割合は最大で7%とされています。そのような合併症には、出血、膵臓の炎症(膵炎 膵炎の概要 膵炎とは膵臓の炎症です。 膵臓は木の葉の形をした臓器で、長さは約13センチメートルあります。周囲を胃の下側と小腸の最初の部分(十二指腸)に囲まれています。 膵臓には主に以下の3つの機能があります。 消化酵素を含む膵液を十二指腸に分泌する 血糖値の調節を助けるインスリンとグルカゴンというホルモンを分泌する さらに読む )、胆管の穿孔や感染などがあります。やがて、一部の患者では、炎症を起こした胆管が狭くなります(狭窄)。胆管が狭いと、胆管内に結石ができやすくなって、胆管が閉塞する可能性が高くなります。

ERCPと内視鏡的乳頭括約筋切開術を受ける患者の大半が、後になって胆嚢摘出術を受けています(通常は腹腔鏡を使用します)。胆嚢が残っていると、胆嚢内の結石が胆管に入って、頻繁に閉塞することがあるためです。

さらなる情報

役立つ可能性がある英語の資料を以下に示します。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。

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