肝硬変の最も一般的な原因は、慢性的な アルコール乱用 アルコール性肝疾患 、 慢性ウイルス性肝炎 慢性肝炎の概要 慢性肝炎は、肝臓の炎症が最低6カ月以上持続する病気です。 一般的な原因としては、B型およびC型肝炎ウイルス、特定の薬などがあります。 ほとんどの場合は無症状ですが、全身のけん怠感、食欲不振、疲労などの漠然とした症状がみられることもあります。 慢性肝炎は、肝硬変のほか、最終的には肝臓がんや肝不全に進行することがあります。 診断を確定するために生検が行われることもありますが、慢性肝炎は通常、血液検査の結果に基づいて診断が下されます。 さらに読む 、 飲酒によらない脂肪肝 脂肪肝 脂肪肝は、肝細胞の内部に中性脂肪(トリグリセリド)が過剰に蓄積した状態です。 脂肪肝の患者には、疲労や腹部の軽い不快感が生じることがありますが、それ以外の症状はみられません。 脂肪肝は、線維化や肝硬変などの進行した肝疾患を引き起こすことがあります。 診断を確定するため、また損傷の原因と範囲を特定するために肝生検が必要になることがあります。 医師は、メタボリックシンドロームや過度の飲酒など、脂肪肝の原因をコントロールするか取り除くことに重... さらに読む です。
食欲不振、体重減少、疲労、全身のけん怠感などの症状が現れます。
腹部への体液の貯留(腹水 腹水 腹水とは、タンパク質を含む体液が腹部に貯留したものです。 腹水がたまる病気は多くありますが、最も一般的な原因は、肝臓につながる静脈(門脈)の血圧が上昇すること( 門脈圧亢進症)で、通常は 肝硬変によって起こります。 大量の体液が貯留すると、腹部は非常に大きく膨らみ、ときに食欲不振や息切れ、不快感を生じることがあります。 原因を確定するには、腹水の分析が役立ちます。 通常は、低ナトリウム食と利尿薬によって、過剰な体液の排出を促します。 さらに読む )、 消化管の出血 消化管出血 消化管からの出血は、口から肛門までのどの部分でも起こる可能性があります。出血は肉眼で容易に見える場合(顕性の出血)もあれば、量が少なすぎて見えない場合(潜血)もあります。潜血は、 特別な化学物質を用いて便のサンプルを検査することでしか検出できません。 吐血は、嘔吐物の中に目に見える量の血液が含まれている場合で、上部消化管(通常は食道、胃、... さらに読む 、脳機能の異常など、多くの重篤な合併症が起こる可能性があります。
診断は、みられる症状と身体診察および画像検査の結果のほか、ときに生検の結果に基づいて下されます。
医師は合併症の治療を行いますが、肝硬変によって生じた損傷は元に戻りません。
肝硬変の患者には肝臓がんのリスクがあるため、超音波検査のほか、必要に応じてMRIかCT検査、および血液検査を定期的に行い、がんの有無を確認します。
肝硬変は、世界的に一般的な死因の1つとなっています。米国では、毎年約35,000人(多くは入院患者)が肝硬変の合併症によって死亡しています。
様々な病気、薬、または毒素により、肝臓が繰り返しまたは継続的に損傷を受けることがあります。損傷が突然生じたもの(急性)で限局的であれば、肝臓の細胞(肝細胞)が死んで、残された網目状の結合組織(内部構造)に新しくできた肝細胞が付着することで、肝臓の自己修復が進みます。十分に長く生き延びれば、肝臓は修復され、完全に回復します。しかし、損傷が繰り返されると、肝臓は損傷した組織を新しい組織で置き換えることで修復するようになり、その結果として瘢痕が生じます(肝臓の線維化 肝臓の線維化 肝臓に異常に大量の瘢痕組織が形成されることを、線維化といいます。これは、肝臓が損傷した細胞を修復して新しい組織で置き換えようとする過程で生じます。 肝臓に損傷が起きる病態には多くのものがあります。 線維化自体は症状を引き起こしませんが、重度の瘢痕は 肝硬変につながり、それが症状を引き起こす可能性があります。... さらに読む )。瘢痕組織は何の機能も果たしません。線維化が広範で重度の場合、肝臓全体に帯状の瘢痕組織が形成され、肝臓の内部構造が破壊されて、肝臓の再生能力や機能が損なわれます。このような重度の瘢痕は肝硬変と呼ばれます。
肝機能 肝臓の機能 肝臓は、くさび形をした体内で最も大きな臓器で、いくつかの点で、最も複雑な働きを担っています。肝臓は、いわば化学工場のような役割を果たしており、体内の化学物質の量の調節から、出血が起こったときの凝固因子(血液を凝固させる物質)の生産まで、生命維持に必要な多くの機能を発揮しています。( 肝臓と胆嚢の概要も参照のこと。) 肝臓では、体内のコレステロールの約半分が作られています。残りは食物に由来します。肝臓で作られるコレステロールの大部分は胆汁... さらに読む が損なわれるため、肝臓は以下のことができなくなります。
薬、毒素、体内で作られた老廃物を分解して除去する
胆汁を処理する
血液凝固を促すタンパク質(凝固因子)を作る
アルブミン(血管からの体液の漏出を防ぐタンパク質)を作る
肝臓は多くの薬、毒素、体内の老廃物を処理しています。肝臓ではこれらの物質が、より毒性の低い形や体から除去しやすい形に解されます。肝臓では、これらの物質が胆汁(肝臓の細胞によって作られる褐色または緑黄色の消化液)中に排泄されることにより除去されます。肝臓がこれらの物質を処理する能力が低いと、これらの物質は血流中に蓄積します。結果として、多くの薬や毒素の作用(ときに重篤な副作用もあります)が増加します。肝硬変になると、以前は有害な作用が生じなかった用量でも、このような副作用が起こる可能性があります。薬の使用中止や、通常より少ない用量での慎重な使用が必要になる場合があります。例えば、オピオイドや、不安や不眠症の治療に用いられる一部の薬などが挙げられます。ビリルビンは、重要な老廃物の1つで、肝臓で処理されて除去されます。肝臓が速やかにビリルビンを処理できないと、ビリルビンが血液に蓄積して、皮膚に沈着します。これにより 黄疸 成人の黄疸 黄疸では、皮膚や白眼が黄色くなります。黄疸は、血中にビリルビン(黄色の色素)が多すぎる場合に起こります。この病態を高ビリルビン血症と呼びます。 ( 肝疾患の概要と 新生児黄疸も参照のこと。) 写真では、黄色に変色した眼と皮膚(黄疸)がみられます。 ビリルビンは、古くなった赤血球や損傷した赤血球を再利用する正常なプロセスの中で、ヘモグロビン(酸素を運ぶ赤血球の一部)が分解されるときに生成されます。ビリルビンは血流によって肝臓に運ばれ、胆汁... さらに読む (おうだん;眼や皮膚が黄色くなる症状)が生じます。
肝臓内では、作られた胆汁が細い管(胆管)に流れ込み、それらの管が集まって、大きな管が形成されます。この大きな管は、最終的に肝臓から出て、胆嚢(胆汁を貯蔵します)または小腸につながります。胆汁には、脂肪を腸で吸収しやすくしたり、毒素や老廃物を腸に運んで便中に排泄させたりする働きがあります。瘢痕組織によって胆管を通る胆汁の流れが遮断されると、脂溶性ビタミン(A、D、E、K)を含めた脂肪が吸収されなくなります。さらに、体から排泄される毒素や老廃物の量も少なくなります。
正常であれば、胆汁の大部分(胆汁酸塩)は腸から血流に再吸収されて、肝臓に戻ります。胆汁酸塩は肝臓で抽出され、再利用されます。しかし、肝硬変になると、肝臓で胆汁酸塩が正常に抽出されません。その結果、肝臓で生産される胆汁の量が減少し、消化機能と毒素や老廃物を除去する機能が、さらに妨げられます。
瘢痕組織は、肝機能を損なうだけでなく、門脈(腸から肝臓に向かう静脈)から肝臓へ向かう血流を遮断することもあります。門脈が閉塞すると、門脈の血圧が上昇します(門脈圧亢進症 門脈圧亢進症 門脈圧亢進症は、門脈(腸から肝臓に向かう太い静脈)とその分枝の血圧が異常に高くなる病気です。 欧米諸国で最も一般的な原因は、 肝硬変(瘢痕化により肝臓の構造が歪み、機能が損なわれること)です。 門脈圧亢進症は、腹部の膨隆( 腹水)、腹部の不快感、錯乱、消化管での出血につながります。 医師は、症状および身体診察の結果、ときには超音波検査、CT検査、MRI検査、または 肝生検の結果に基づいて診断を下します。... さらに読む )。門脈圧亢進症が起きると、胃、食道、直腸の静脈など、門脈につながる静脈の血圧が上昇します。
瘢痕化が進行するとともに、肝臓は縮んで小さくなります。
肝硬変の原因
米国や他の先進国における肝硬変の最も一般的な原因は、以下のものです。
飲酒によらない脂肪肝(非アルコール性脂肪肝炎)
慢性的なアルコール乱用によって肝臓に損傷が起きる仕組みの1つが、脂肪の蓄積(脂肪肝 脂肪肝 脂肪肝は、肝細胞の内部に中性脂肪(トリグリセリド)が過剰に蓄積した状態です。 脂肪肝の患者には、疲労や腹部の軽い不快感が生じることがありますが、それ以外の症状はみられません。 脂肪肝は、線維化や肝硬変などの進行した肝疾患を引き起こすことがあります。 診断を確定するため、また損傷の原因と範囲を特定するために肝生検が必要になることがあります。 医師は、メタボリックシンドロームや過度の飲酒など、脂肪肝の原因をコントロールするか取り除くことに重... さらに読む )です。飲酒によらない脂肪肝(非アルコール性脂肪肝と呼ばれます)は、通常は 過体重 肥満 肥満とは、体重が過剰な状態です。 複数の要因が組み合わさって肥満に影響を及ぼします。複数の要因が組み合わさった結果、体に必要な量よりも多くの カロリーを摂取することになります。 そうした要因には、運動不足、食事、遺伝子、生活習慣、民族的背景、社会経済的背景、ある種の化学物質への曝露、特定の病気、特定の薬の使用などがあります。... さらに読む の人、 糖尿病または前糖尿病 糖尿病 糖尿病は、体がインスリンを十分に生産しないかインスリンに正常に反応しないため、血中の糖分の濃度(血糖値)が異常に高くなる病気です。 排尿が増加し、のどが渇くほか、減量しようとしていなくても体重が減少することがあります。 糖尿病は神経の損傷をもたらし、触覚の問題を引き起こします。... さらに読む の人、 コレステロール値が高い コレステロールと脂質の病気の概要 成長とエネルギー供給のために、体には脂肪が必要です。体は脂肪を使って、ホルモンや体の活動に必要な他の物質の合成も行います。余分な脂肪は血管や臓器に蓄えられることがあり、その場合血流を遮断し臓器に損傷を与え、しばしば重篤な病気を引き起こします。 血液中にみられる重要な脂肪(脂質)には以下のものがあります。... さらに読む 人で発生します。
線維化 肝臓の線維化 肝臓に異常に大量の瘢痕組織が形成されることを、線維化といいます。これは、肝臓が損傷した細胞を修復して新しい組織で置き換えようとする過程で生じます。 肝臓に損傷が起きる病態には多くのものがあります。 線維化自体は症状を引き起こしませんが、重度の瘢痕は 肝硬変につながり、それが症状を引き起こす可能性があります。... さらに読む を引き起こす病気、薬、毒素(表「 肝臓の線維化を引き起こす主な病態と薬剤 肝臓の線維化を引き起こす主な病態と薬剤 」を参照)は、いずれも肝硬変を引き起こす可能性があります。具体的な原因の例としては、鉄過剰症(ヘモクロマトーシス ヘモクロマトーシス ヘモクロマトーシスは、鉄が過剰に吸収される遺伝性疾患で、体内に鉄が蓄積され、臓器に損傷を与えます。 米国には、100万人以上のヘモクロマトーシス患者がいます。男性の方が女性より多く罹患します。致死的となることもありますが、たいていは治療可能です。( 鉄過剰症の概要も参照のこと。) 鉄は摂取する食事から吸収されます。ほとんどの鉄は赤血球に収容されます。 この疾患では鉄が体のあらゆる場所に蓄積して損傷を与えます。... さらに読む )や銅過剰症(ウィルソン病 ウィルソン病 ウィルソン病はまれな遺伝性疾患で、肝臓が正常時のように余分な銅を胆汁中に排泄せず、結果として肝臓に銅が蓄積して肝臓が損傷します。 銅は肝臓、脳、眼やその他の臓器に蓄積します。 ウィルソン病の患者では、振戦(ふるえ)、発語困難、嚥下(えんげ)困難、協調運動障害、人格変化、肝炎がみられることがあります。 血液検査と眼の診察が診断の確定に役立ちます。 患者は、銅を除去するために薬を服用する必要があり、その後生涯にわたって銅の含有量が高い食品を... さらに読む )、 アルファ1-アンチトリプシン欠乏症 アルファ1-アンチトリプシン欠乏症 アルファ1-アンチトリプシン欠乏症は遺伝性の病気で、アルファ1-アンチトリプシンという酵素の欠乏または不足により、肺や肝臓が損傷を受けます。 アルファ1-アンチトリプシン欠乏症は、遺伝子変異を受け継ぐことで発生します。 乳児では、黄疸や肝傷害がみられることがあります。 小児期に肝硬変が生じる可能性があります。 成人では、息切れ、喘鳴、せきを伴う肺気腫が多く、肝硬変がみられる場合もあります。 さらに読む といった特定の遺伝性代謝疾患(代謝異常症)のほか、 原発性胆汁性胆管炎(PBC) 原発性胆汁性胆管炎(PBC) 原発性胆汁性胆管炎(PBC)は、肝臓内の胆管が炎症を起こし、進行性の瘢痕化が起こる病気です。最終的には胆管がふさがり(閉塞)、肝臓が瘢痕化して、肝硬変や肝不全を発症します。 原発性胆汁性胆管炎(PBC)は、おそらく自己免疫反応に起因して発生すると考えられています。 通常、この病気は、かゆみ、疲労、口腔乾燥とドライアイ、 黄疸を引き起こしますが、症状がみられない患者もいます。 通常は、特定の抗体を測定する血液検査で診断を確定できます。... さらに読む や 原発性硬化性胆管炎(PSC) 原発性硬化性胆管炎 原発性硬化性胆管炎では肝臓内外の胆管に炎症が生じ、瘢痕化や胆管の狭窄が進行します。最終的には影響を受けた胆管が完全に詰まります。肝硬変、肝不全、またときには胆管がんが発生します。 症状は徐々に現れ、疲労やかゆみの悪化がみられるほか、後に黄疸が生じます。 画像検査で診断を確定します。 治療では、症状の緩和に重点が置かれますが、肝移植によって余命を延長することも可能です。 胆汁は、肝臓で作られ消化を助ける液体です。胆汁は、胆汁を送り出すため... さらに読む のように胆管に損傷が起きる病気などがあります。
アジアおよびアフリカの多くの地域では、肝硬変は多くの場合以下に起因します。
肝硬変の症状
肝硬変がある人の多くは、何年間も無症状のまま、元気そうにみえます。約3分の1の患者は無症状です。
その他の患者は、全身状態が優れなかったり、食欲不振だったり、体重が減ったりします。
指先の肥大(ばち状指)がみられることもあります。
脂肪や脂溶性ビタミンが吸収されにくい場合、便は色が薄く、柔らかくかさばり、脂っぽく異常な悪臭がするようになります(脂肪便)。
多くの患者で食欲がなくなり、脂肪やビタミン類が吸収されにくくなるため、栄養失調と体重減少がみられます。患者には、皮膚の小血管からの出血によって引き起こされる小さな点状またはより大きな斑点状の赤紫色の発疹がみられることがあります。
長期間にわたり肝機能が障害されている場合、患者は体中にかゆみを覚え、小さくて黄色い脂肪のかたまりが皮膚やまぶたに沈着することがあります。
肝硬変の原因が慢性のアルコール乱用である場合、または患者に慢性の肝疾患がある場合は、以下のような症状がみられることもあります。
筋肉が衰える(萎縮)。
手のひらが赤くなる(手掌紅斑)。
頬の唾液腺が腫れる。
損傷を受けた肝臓はエストロゲン(女性ホルモン)を正常に分解できなくなるため、男性の場合、乳房が膨らみ(女性化乳房 男性の乳房の病気 乳房の病気がまれに男性に起こります。乳房の病気には以下のものがあります。 乳房腫大 乳がん 男性の乳房腫大は、女性化乳房または偽性女性化乳房と呼ばれます。 女性化乳房は乳腺からなる乳房組織そのものが大きくなることです。 さらに読む )、精巣が小さくなる(精巣萎縮)ことがある。わきの毛も少なくなる。
肝硬変の合併症
肝硬変が進行すると、さらに問題が生じます。
門脈圧亢進症
門脈圧亢進症 門脈圧亢進症 門脈圧亢進症は、門脈(腸から肝臓に向かう太い静脈)とその分枝の血圧が異常に高くなる病気です。 欧米諸国で最も一般的な原因は、 肝硬変(瘢痕化により肝臓の構造が歪み、機能が損なわれること)です。 門脈圧亢進症は、腹部の膨隆( 腹水)、腹部の不快感、錯乱、消化管での出血につながります。 医師は、症状および身体診察の結果、ときには超音波検査、CT検査、MRI検査、または 肝生検の結果に基づいて診断を下します。... さらに読む (門脈の高血圧)は、最も重篤な合併症です。門脈につながっている静脈で血液の滞留が起こると、それらの静脈は拡張して蛇行するようになります(その状態を静脈瘤といいます)。静脈瘤は、食道の下端(食道静脈瘤 食道静脈瘤 食道静脈瘤は、食道にある静脈が拡張したもので、大出血を引き起こす可能性があります。 食道静脈瘤は、肝臓内とその周囲の血管の血圧が高い状態(門脈圧亢進症)によって引き起こされます。 食道静脈瘤は、通常は症状を引き起こしませんが、自然に出血することがあります。 出血は非常に重度となることがあり、ショックを引き起こしたり、まれですが死に至ることがあります。 食道静脈瘤の診断と治療は内視鏡検査で行います。 さらに読む )、胃(胃静脈瘤 消化管出血 消化管からの出血は、口から肛門までのどの部分でも起こる可能性があります。出血は肉眼で容易に見える場合(顕性の出血)もあれば、量が少なすぎて見えない場合(潜血)もあります。潜血は、 特別な化学物質を用いて便のサンプルを検査することでしか検出できません。 吐血は、嘔吐物の中に目に見える量の血液が含まれている場合で、上部消化管(通常は食道、胃、... さらに読む )、または直腸(直腸静脈瘤)に発生します。静脈瘤はもろく、容易に出血します。食道静脈瘤や胃静脈瘤から出血すると、ときに大量に吐血します(消化管出血 消化管出血 消化管からの出血は、口から肛門までのどの部分でも起こる可能性があります。出血は肉眼で容易に見える場合(顕性の出血)もあれば、量が少なすぎて見えない場合(潜血)もあります。潜血は、 特別な化学物質を用いて便のサンプルを検査することでしか検出できません。 吐血は、嘔吐物の中に目に見える量の血液が含まれている場合で、上部消化管(通常は食道、胃、... さらに読む を参照)。出血がゆっくりでも長時間続くと、貧血を起こすことがあります。出血が急速で重度であると、ショックや死に至ることがあります。
門脈肺高血圧症
門脈圧亢進症は肺動脈の血圧上昇を引き起こすことがあります(門脈肺高血圧症 門脈肺高血圧症 門脈肺高血圧症とは、肺動脈の血圧上昇(肺高血圧症)と、門脈(肝臓から血液を排出する血管)の血圧上昇が存在し、かつ肺高血圧症の原因が分からない病気です。 門脈圧亢進症が生じる様々な病態(特に 肝硬変)を有する人に、 肺高血圧症が発生する場合があります。肺高血圧症と門脈圧亢進症が組み合わさった病態を門脈肺高血圧症といいます。 門脈肺高血圧症では、息切れや疲労が生じます。胸痛、せきとともに血が出る(喀血)、首の静脈の怒張、脚の浮腫などもみられ... さらに読む と呼ばれます)。その結果、呼吸困難(特に横たわっているとき)や疲労といった 心不全 心不全 心不全とは、心臓が体の需要を満たせなくなった状態のことで、血流量の減少や静脈または肺での血液の滞留(うっ血)、心臓の機能をさらに弱めたり心臓を硬化させたりする他の変化などを引き起こします。 心不全は心臓の収縮や弛緩が不十分になることで発生しますが、これらの変化は一般的に、心筋が弱ったり硬くなったりすることが原因で起こります。... さらに読む の症状が現れます。
腹水
門脈圧亢進症および肝機能障害により、腹部に体液が貯留する(腹水 腹水 腹水とは、タンパク質を含む体液が腹部に貯留したものです。 腹水がたまる病気は多くありますが、最も一般的な原因は、肝臓につながる静脈(門脈)の血圧が上昇すること( 門脈圧亢進症)で、通常は 肝硬変によって起こります。 大量の体液が貯留すると、腹部は非常に大きく膨らみ、ときに食欲不振や息切れ、不快感を生じることがあります。 原因を確定するには、腹水の分析が役立ちます。 通常は、低ナトリウム食と利尿薬によって、過剰な体液の排出を促します。 さらに読む )ことがあります。その結果、腹部が腫れてきつく感じることがあります。また、腹部の体液が感染を起こすこともあります(特発性細菌性腹膜炎)。
脂肪およびビタミンの吸収不良
長期にわたる、脂肪(特に脂溶性ビタミン)の吸収不良は、いくつかの問題を引き起こします。例えば、ビタミンDが十分に吸収されないと、 骨粗しょう症 骨粗しょう症 骨粗しょう症とは、骨密度の低下によって骨がもろくなり、骨折しやすくなる病態です。 加齢、エストロゲンの不足、ビタミンDやカルシウムの摂取不足、およびある種の病気によって、骨密度や骨の強度を維持する成分の量が減少することがあります。 骨粗しょう症による症状は、骨折が起こるまで現れないことがあります。... さらに読む になる可能性があります。ビタミンK(血液凝固を助ける)が吸収されにくいと、出血しやすくなることがあります。
異常な出血
肝硬変では、血液凝固を妨げるその他の問題も発生します(血液の凝固障害 血液凝固障害の概要 血液凝固障害は、血栓の形成を制御する身体機能の障害です。これらの機能障害は、以下を引き起こす可能性があります。 血液の凝固が不十分な場合は、 異常出血(出血)が生じる 血液の凝固が過剰な場合は、血栓(血栓症)が発生する 異常な出血とは、あざや出血が起こりやすい状態を意味します(... さらに読む )。そういった問題の結果の1つに、出血しやすくなることが挙げられます。例えば、肝硬変では脾臓が腫大することがありますが、 腫大した脾臓 脾腫(脾臓の腫大) 脾腫自体は病気ではありませんが、その原因になっている病気があります。脾腫を引き起こす可能性がある病気はたくさんあります。 感染症、貧血、がんといった多くの病気が脾腫を引き起こすことがあります。 通常、特有の症状がみられることはありませんが、左上の腹部や背中に膨満感や痛みが現れることがあります。 一般には、触診で脾腫を判定できますが、超音波検査などの画像検査を行って、脾臓の大きさを測定することもあります。... さらに読む では、血球や血小板が捕らえられるようになります。その結果、血液凝固を助ける働きのある血小板が血液中で少なくなります。また、肝臓に損傷が起きると、血液凝固を促すタンパク質(凝固因子)を作り出す肝臓の能力が低下します。
一方で、肝臓の異常によって血液が凝固しやすくなる場合もあります。例えば、肝臓に損傷が起きると、過剰な血液凝固を抑制する物質を作り出す肝臓の能力が低下します。そのため、血栓が形成されることがあり、特に肝臓に血液を送っている血管(門脈または脾静脈)でよくできます。
感染リスクの上昇
腫大した脾臓が白血球を取り込むため、白血球数が減ること(白血球減少症と呼ばれる病態)もあります。白血球の数が少なくなり、肝臓での感染防御タンパク質の合成が減少すると、感染リスクが上昇します。
腎不全
肝不全 肝不全 肝不全は、肝機能が大幅に低下した状態です。 肝不全は、肝臓に損傷が起きる病気や物質により引き起こされます。 ほとんどの患者は 黄疸(皮膚と眼が黄色くなる)になり、疲れて脱力を覚え、食欲を失います。 他の症状には、腹部への体液の貯留( 腹水)や、皮下出血や出血が起きやすい傾向などがあります。 医師は通常、症状と身体診察、および血液検査の結果に基づいて、肝不全の診断を下すことができます。 さらに読む は最終的に 腎不全 急性腎障害 急性腎障害では、血液をろ過して老廃物を除去する腎臓の能力が急速に(数日から数週間のうちに)低下します。 その原因には、腎臓への血流が減少する状態、腎臓そのものが傷つく状態、腎臓からの尿の排出が妨げられる状態などが挙げられます。 症状としては、腫れ、吐き気、疲労、かゆみ、呼吸困難などのほか、急性腎障害を引き起こしている病気の症状もみられます。 重篤な合併症としては、心不全や高カリウム血症(血液中のカリウム濃度が高くなること)などがあります... さらに読む につながり、肝腎症候群と呼ばれる状態になる可能性があります。この症候群では、尿の生産量と排泄量が減少するため、血液中に有害物質が蓄積します。肝腎症候群の患者は、やがて呼吸困難に陥ります。この腎臓の異常は、 透析 透析 透析とは、体内の老廃物や過剰な水分を機械的に取り除く処置のことで、腎臓が十分な機能を果たさなくなったときに必要になります。 透析が必要になる理由はいくつかありますが、最も多いのは、腎臓が血液から老廃物を十分にろ過できなくなること(腎不全)です。腎臓の機能は急速に低下することもあれば(... さらに読む が必要になるほど重症化する可能性があります。
脳機能の低下
肝不全になると、肝臓で血液から有害物質を除去することができなくなるため、脳機能が低下することがあります(肝性脳症 肝性脳症 肝性脳症は、重度の肝疾患がある人において、正常なら肝臓で除去されるはずの有害物質が血液中に蓄積して脳に達することで、脳機能が低下する病気です。 肝性脳症は、長期にわたる(慢性の)肝疾患がある患者に発生します。 肝性脳症は、消化管での出血、感染症、処方薬を正しく服用しないこと、その他のストレスによって誘発されます。 錯乱、見当識障害、眠気が起こるとともに、性格、行動、気分の変化がみられます。... さらに読む と呼ばれます)。これらの有害物質は血流に乗って移動し、脳に蓄積されます。
肝臓がん
肝硬変の患者では、肝臓がん(肝細胞がん 肝細胞がん 肝細胞がんは、肝臓の細胞から発生するがんの一種であり、原発性の肝臓がんの中で最も多くみられるものです。 B型またはC型肝炎、 脂肪性肝疾患、または 過度の飲酒は、肝細胞がんの発生リスクを高め、特に肝硬変がある患者では著しくリスクを高めます。 腹痛や体重減少がみられるほか、右上腹部に大きなかたまりを触れることがあります。 医師は血液検査と画像検査の結果に基づいて診断を下します。... さらに読む )が発生することがあります。肝臓がんを早期に発見できれば根治的な治療が可能になることから、肝硬変が発症した場合は、肝臓がんのモニタリング(サーベイランス[定期的評価]とも呼ばれます)が必須になります。
肝硬変の診断
血液検査(肝臓の検査を含む)
ときに画像検査(超音波検査など)
ときに肝生検
医師は通常、患者の症状、身体診察の結果に加えて、慢性的なアルコール乱用といった肝硬変の危険因子の既往歴に基づき肝硬変を疑います。身体診察の際には、脾臓の腫大、腹部の膨隆(腹水 腹水 腹水とは、タンパク質を含む体液が腹部に貯留したものです。 腹水がたまる病気は多くありますが、最も一般的な原因は、肝臓につながる静脈(門脈)の血圧が上昇すること( 門脈圧亢進症)で、通常は 肝硬変によって起こります。 大量の体液が貯留すると、腹部は非常に大きく膨らみ、ときに食欲不振や息切れ、不快感を生じることがあります。 原因を確定するには、腹水の分析が役立ちます。 通常は、低ナトリウム食と利尿薬によって、過剰な体液の排出を促します。 さらに読む が疑われます)、 黄疸 成人の黄疸 黄疸では、皮膚や白眼が黄色くなります。黄疸は、血中にビリルビン(黄色の色素)が多すぎる場合に起こります。この病態を高ビリルビン血症と呼びます。 ( 肝疾患の概要と 新生児黄疸も参照のこと。) 写真では、黄色に変色した眼と皮膚(黄疸)がみられます。 ビリルビンは、古くなった赤血球や損傷した赤血球を再利用する正常なプロセスの中で、ヘモグロビン(酸素を運ぶ赤血球の一部)が分解されるときに生成されます。ビリルビンは血流によって肝臓に運ばれ、胆汁... さらに読む 、皮膚内での出血を示す発疹など、肝硬変に典型的な徴候がしばしば見つかります。その後は通常、同様の症状がみられる別の病気がないか調べるための検査を行います。
臨床検査
医師は 肝臓の評価のため、血液検査 肝臓の血液検査 肝臓の検査は血液検査として行われますが、これは肝疾患の有無をスクリーニングし(例えば、献血された血液に 肝炎があるかを調べる)、肝疾患の重症度や進行度と治療に対する反応を評価するための検査のうち、体への負担が少ない方法の代表例です。 臨床検査は、一般的に以下の目的に有効です。 肝臓の炎症、損傷、機能障害の検出... さらに読む を行います。血液検査は比較的感度が低く、肝臓は損傷を受けても長期間機能を維持できるため、結果が正常であることもよくあります。肝臓は、機能が80%低下しても本来の機能を遂行できます。また、血算を行い、貧血や血小板数の減少、およびその他の血液の異常がないか調べます。血液検査では、肝炎や原因として考えられる他の異常がないかも調べます。
肝臓の画像検査
画像検査 肝臓と胆嚢の画像検査 肝臓、胆嚢、胆管の画像検査には、超音波検査、核医学検査、CT検査、MRI検査、内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)検査、経皮経肝胆道造影検査、術中胆道造影検査、単純X線検査などがあります。 ( 肝臓と胆嚢の概要も参照のこと。) 超音波検査では、音波を利用して肝臓や胆嚢、胆管を画像化します。経腹超音波検査は、 肝硬変(肝臓の重度の瘢痕化)や 脂肪肝(肝臓に過剰な脂肪が蓄積している状態)など肝臓全体を一様に侵す異常よりも、腫瘍など肝臓の特... さらに読む では、進行した肝硬変は特定できますが、早期の肝硬変はしばしば検出できません。
超音波検査、CT検査、またはMRI検査により、肝硬変を示唆する肝臓の萎縮や構造的異常がないかを調べることができます。これらの検査では、門脈圧亢進症と腹水を検出できます。
特殊な画像検査(トランジェントエラストグラフィー、磁気共鳴エラストグラフィー、音響放射力インパルス撮影)が早期の肝硬変の検出に役立ちます。
肝生検
それでも診断がはっきりしない場合、通常は 肝生検 肝生検 肝臓の組織サンプルは、試験開腹中に採取することもありますが、多くの場合、皮膚から肝臓に中空の針を刺す方法で採取します。このタイプの生検は、経皮的肝生検と呼ばれます。また、経静脈的肝生検と呼ばれる生検の方法もあります。 肝生検では、他の検査で得られない肝臓の情報を検出することができます。肝生検は、肝臓の過剰な脂肪( 脂肪肝)、慢性的な肝臓の炎症( 慢性肝炎)、 ウィルソン病(銅が過剰に蓄積する病気)や... さらに読む (組織サンプルを採取して顕微鏡下に観察する検査)を行い、診断を確定します。生検やときには血液検査も肝硬変の原因の特定に役立ちます。
モニタリング
肝硬変の診断が確定したら、肝臓がんの有無を調べるために、超音波検査と場合により血液検査(肝臓に腫瘍がある可能性を示すアルファフェトプロテイン)を6カ月毎に行います。超音波検査でがんを示唆する異常が検出された場合は、造影剤(MRI画像またはX線画像に写る物質)を注射してからMRI検査またはCT検査を行います。
肝硬変の診断が確定したら、静脈瘤がないか確認するために、上部消化管の内視鏡検査(観察用の柔軟な管状の機器を使用する検査)が必要となる場合があり、特に血液検査や画像検査で門脈圧亢進症の徴候がみられる場合に行われます。この内視鏡検査は2~3年毎に繰り返します。静脈瘤が検出されたら、検査の頻度を増やします。
肝臓の状態を評価する血液検査を定期的に行っていきます。
肝硬変の予後(経過の見通し)
肝硬変はほぼ常に永続的で、肝硬変の原因を治療しない限り、進行を続ける可能性があります。どのくらい速く進行するかについては、多くの場合予測が困難です。肝硬変患者の予後は、原因、重症度、他の症状や病気の有無、治療の有効性によって変わります。
飲酒を完全にやめれば、肝臓のさらなる瘢痕化は防げます。たとえ少量でも飲酒を続けた場合は、肝硬変が進行し、重篤な合併症を引き起こします。
いったん大きな合併症(吐血、腹部への体液の貯留、脳機能の異常など)が起こると、予後は悪くなります。
肝硬変の治療
肝硬変には根治的な治療法がありません。ほぼ常に肝臓に永続的な損傷が生じ、正常な状態に戻る可能性は低いです。
治療には以下のものがあります。
アルコール乱用、薬の使用、毒素への曝露、ヘモクロマトーシス、慢性肝炎など、原因を是正または治療する
合併症が起きた場合は、それを治療する
ときに肝移植
最善のアプローチは、原因を修正または治療することにより、初期段階で肝硬変を止めることです。原因の治療を行うと、通常、それ以上の損傷を防ぐことができ、ときには状態が改善することもあります。
原因に対する治療
A型肝炎 A型肝炎ワクチン A型肝炎ワクチンは A型肝炎の予防に役立ちます。一般的に、A型肝炎は B型肝炎ほど重篤ではありません。A型肝炎は無症状の場合もよくありますが、発熱、吐き気、嘔吐、黄疸がみられることや、まれに重度の肝不全や死亡に至ることもあります。 慢性肝炎にはなりません。 ワクチンの使用によって、感染者数が減少しました。 詳細については、CDCによるA型肝炎ワクチン説明書(Hepatitis... さらに読む および B型肝炎のワクチン B型肝炎ワクチン B型肝炎ワクチンは B型肝炎とその合併症( 慢性肝炎、 肝硬変、 肝臓がん)の予防に役立ちます。 一般に、B型肝炎は A型肝炎より重篤で、死に至ることもあります。症状は軽度のこともあれば、重度のこともあります。食欲減退、吐き気、疲労などがみられます。5~10%の患者ではB型肝炎が慢性化し、肝硬変や肝臓がんに進行することがあります。 詳細については、CDCによるB型肝炎ワクチン説明書(Hepatitis... さらに読む の接種を受けたことがなければ、これらを接種します。これらのワクチンは、これらのウイルスによるさらなる損傷(肝硬変をさらに悪化させる可能性のある損傷)から肝臓を保護する目的で接種されます。
肝硬変の進行を予防するため、たとえ肝臓の問題の主な原因がアルコールではない場合でも、飲酒を完全にやめるべきです(アルコール/治療 治療 アルコール(エタノール)は、中枢神経系の機能を抑制します(脳と神経系の働きを遅くします)。急激または定期的に大量の飲酒をすると、臓器の損傷、昏睡、死亡などの健康上の問題を引き起こす可能性があります。 アルコール関連障害の発症には遺伝的な特性や個人的な性質が関与している場合があります。 アルコールを飲みすぎると、眠くなったり攻撃的になり、運動協調や精神機能が損なわれたり、仕事、家族関係、その他の活動が妨げられたりします。... さらに読む を参照)。いったん肝硬変が起きると、たとえ少量でも、飲酒は肝臓に極めて有害となる可能性があります。離脱症状が出た場合は治療します。
肝臓に損傷が起きると薬を処理(代謝)できなくなる場合があるため、市販薬やハーブ製品、栄養補助食品なども含めて、使用している薬をすべて主治医に告げる必要があります。肝臓で代謝される薬の服用が必要なら、肝臓をさらに損傷しないよう、用量を通常よりも大幅に減らす必要があります。肝臓に損傷を与え肝硬変に寄与する薬を患者が服用している可能性もあります。そのような薬の使用は可能な限り中止し、必要に応じて別の薬に置き換えます。
ヘモクロマトーシス 治療 ヘモクロマトーシスは、鉄が過剰に吸収される遺伝性疾患で、体内に鉄が蓄積され、臓器に損傷を与えます。 米国には、100万人以上のヘモクロマトーシス患者がいます。男性の方が女性より多く罹患します。致死的となることもありますが、たいていは治療可能です。( 鉄過剰症の概要も参照のこと。) 鉄は摂取する食事から吸収されます。ほとんどの鉄は赤血球に収容されます。 この疾患では鉄が体のあらゆる場所に蓄積して損傷を与えます。... さらに読む に対しては、瀉血(しゃけつ)が最善の治療法です。ウィルソン病に対しては、体内から銅を除去する薬剤を使用します。脂肪性肝疾患に対しては、減量が治療となり、糖尿病およびコレステロール高値は厳格にコントロールする必要があります。
慢性ウイルス性肝炎 治療 慢性肝炎は、肝臓の炎症が最低6カ月以上持続する病気です。 一般的な原因としては、B型およびC型肝炎ウイルス、特定の薬などがあります。 ほとんどの場合は無症状ですが、全身のけん怠感、食欲不振、疲労などの漠然とした症状がみられることもあります。 慢性肝炎は、肝硬変のほか、最終的には肝臓がんや肝不全に進行することがあります。 診断を確定するために生検が行われることもありますが、慢性肝炎は通常、血液検査の結果に基づいて診断が下されます。 さらに読む は抗ウイルス薬で治療し、自己免疫性肝疾患はコルチコステロイドまたは免疫系の働きに影響を与える他の薬剤で治療します。
一般に、進行した肝硬変の患者には 肝移植 肝移植 肝移植とは、健康な肝臓またはときに生きている人から肝臓の一部を手術で摘出し、肝臓が機能しなくなった人に移植することです。 ( 移植の概要も参照のこと。) 肝移植は2番目に多い臓器移植です。肝臓が機能しなくなった人々に残された唯一の選択肢です。 完全な形の肝臓は死亡した人からしか提供を受けられませんが、肝臓の一部であれば生きているドナーでも提供できます。移植用の肝臓は摘出後、最長で18時間保存できます。... さらに読む が必要ですが、ときに肝硬変になる前であっても、肝疾患の特定の原因を治療するために肝移植が行われることがあります。
合併症の治療
合併症に対する治療としては以下のものがあります。
腹部への体液の貯留(肝硬変が進行している場合)に対して:過剰なナトリウムは体液の貯留を助長するため、食事での塩分摂取を制限します。薬を使用することで、尿の量を増やすことにより、過剰な体液の排出を促すことができます。
ビタミン欠乏症に対して:ビタミンを補充
肝性脳症に対して:腸内(便に含まれる)の毒素を吸着して除去するための薬と、毒素を作り出している消化管内の細菌を減らすための抗菌薬
消化管の静脈瘤からの出血に対して:肝臓の血管内の血圧を下げるためにベータ遮断薬を服用するか、出血を起こしている血管を外科的にゴムバンドでしばる(内視鏡的結紮術)
バンドの取り付けは、口から内視鏡(観察用の管状の機器)を挿入して行います。ベータ遮断薬またはバンドによる結紮ができない、またはうまくいかない場合、医師は以下の処置を講じることがあります。
内視鏡的シアノアクリレート注入:内視鏡を口から消化管に挿入します。内視鏡を介して、出血している静脈にシアノアクリレート(接着剤の一種)を注入します。シアノアクリレートが血管を閉じ、出血が止まります。
バルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術:局所麻酔薬を注射した後、太い静脈(通常は頸部または鼠径部の静脈)の上の皮膚を小さく切開します。続いて、先端にしぼんだバルーンの付いた柔軟性のある管(カテーテル)を静脈に挿入し、出血部位に到達させます。バルーンを膨らませて血流を遮断します。その後、瘢痕組織を形成させる物質を、静脈またはその近くに注入してその静脈を遮断し、出血を止めます。
経頸静脈的肝内門脈大循環短絡術(TIPS):首の静脈にカテーテルを挿入し、X線画像を見ながらカテーテルを肝臓の静脈に通します。カテーテルを使用して、門脈(またはその分枝)を複数ある肝静脈(肝臓から体で最も太い静脈に向かう静脈)のいずれかに直接つなぐ流路(シャント)を作ります。したがって、本来なら肝臓に向かう血液のほとんどが別の経路を通って肝臓を迂回するようになります。肝静脈の血圧は門脈の血圧より低いため、この処置を行うことにより、門脈の血圧が下がります。門脈の圧が下がることにより、消化管の静脈からの出血や腹部への体液の貯留が減少します。
肝移植
条件を満たす患者には、 肝移植 肝移植 肝移植とは、健康な肝臓またはときに生きている人から肝臓の一部を手術で摘出し、肝臓が機能しなくなった人に移植することです。 ( 移植の概要も参照のこと。) 肝移植は2番目に多い臓器移植です。肝臓が機能しなくなった人々に残された唯一の選択肢です。 完全な形の肝臓は死亡した人からしか提供を受けられませんが、肝臓の一部であれば生きているドナーでも提供できます。移植用の肝臓は摘出後、最長で18時間保存できます。... さらに読む が行われることもあります。移植が成功すれば、通常、移植した肝臓は正常に機能し、肝硬変や肝不全の症状は消滅するはずです。進行した肝硬変または肝臓がんの患者は、肝移植によって救命できることがあります。肝移植は一般に、患者が肝移植を受けない場合の死亡確率に基づいて実施されます。