せきや喘鳴が生じることがあり、ときには発熱や軽度の喀血がみられることもあります。
医師は診断を下すために、胸部X線検査、血液検査、皮膚テストを行います。
通常、喘息の治療に用いられる薬剤(特にコルチコステロイド)が投与されます。
治療が成功しても、症状が定期的に再発することがあります。
放置しておくと、慢性的な肺損傷をきたすことがあります。
このアスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)という真菌は土壌で繁殖し、植物、食品、ごみ、水を腐敗させます。一部の人はこの真菌を吸い込むと、感作されて慢性的なアレルギー反応を起こします。このほかに、ペニシリウム属(Penicillium)、カンジダ属(Candida)、カーブラリア属 Curvularia)、ヘルミントスポリウム属(Helminthosporium)などの真菌が同様の病気を引き起こすことがあります。場合によっては、アレルギー反応による影響と真菌による影響が組み合わさって、気道や肺が損傷されることがあります。
アレルギー性気管支肺アスペルギルス症は 肺炎 肺炎の概要 肺炎は、肺にある小さな空気の袋(肺胞)やその周辺組織に起きる感染症です。 肺炎は、世界で最も一般的な死因の1つです。 重篤な慢性の病気がほかにある患者において、肺炎はしばしば最終的な死因となります。 肺炎の種類によっては、ワクチンの接種によって予防できます。 米国では、毎年約400~500万人が肺炎を発症し(... さらに読む とは異なります。肺炎は肺の感染症で、通常は細菌、ウイルス、ほとんどの種類の真菌が原因で起こります。それとは異なり、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症では、真菌は肺組織に侵入せず、肺組織を直接破壊します。 喘息 喘息 喘息は、気道が何らかの刺激に反応して狭くなる(通常は可逆性)病態です。 症状としては、特定の誘因に反応して生じる、せき、喘鳴(ぜんめい)、息切れなどが最もよくみられます。 医師は、呼吸の検査(肺機能検査)を行って喘息の診断を確定します。 喘息発作を防ぐためには、誘因となる物質を吸い込まないようにするとともに、気道の開口を保つ薬を服用する必... さらに読む や 嚢胞性線維症 嚢胞性線維症(CF) 嚢胞性線維症(のうほうせいせんいしょう)は、特定の分泌腺が異常に粘り気の強い分泌物を生産し、それによって組織や器官、特に肺や消化管が損傷を受ける遺伝性疾患です。 嚢胞性線維症は、遺伝子変異を親から引き継ぐことで発生し、粘り気の強い濃厚な分泌物が肺やその他の臓器の働きを妨げます。... さらに読む の患者(どちらの病気も粘液が増加する傾向があります)では、真菌が気道の粘液にコロニーを形成して、肺でアレルギー性の炎症を繰り返し引き起こします。肺胞は、主に好酸球(白血球の一種)でいっぱいになります。粘液を生産する細胞数の増加が確認されることもあります。この病気による損傷が広範囲に及ぶと、炎症により肺の中心部の気道が恒久的に広がってしまい、 気管支拡張症 気管支拡張症 気管支拡張症は、気道の壁が損傷を受けて、呼吸の管や気道の一部(気管支)が広がったまま元に戻らない状態(拡張症)です。 最も一般的な原因は、重度の呼吸器感染症や繰り返す呼吸器感染症で、これは肺または免疫系にすでに異常がある人によくみられます。 ほとんどの患者に慢性的なせきがみられ、せきとともに血が出たり、胸痛が現れたり、肺炎を繰り返したりす... さらに読む と呼ばれる病気になることがあります。最終的に肺は瘢痕化する可能性が高くなります。
別の種類の アスペルギルス症 アスペルギルス症 アスペルギルス症は、アスペルギルス属(Aspergillus)の真菌によって引き起こされる(通常は肺の)感染症です。 肺や副鼻腔内に、菌糸、血液のかたまり、白血球が絡まった球状のかたまりが形成されます。 症状が出ない人もいますが、せきに血が混じったり、発熱、胸痛、呼吸困難が生じる人もいます。 真菌が肝臓や腎臓に広がると、それらの臓器の機能が低下することがあります。... さらに読む が発生することもあります。免疫機能が低下している人では、アスペルギルス(Aspergillus)が肺に侵入し、重い肺炎を引き起こすことがあります。この病態は感染症であり、アレルギー反応ではありません。また、アスペルギルス(Aspergillus)は、 結核 結核 結核は、空気感染する細菌である結核菌(Mycobacterium tuberculosis)によって引き起こされる、感染力の強い慢性感染症です。結核は肺を侵しますが、ほぼすべての臓器に影響が及ぼす可能性があります。 結核に感染するのは、主に活動性結核の患者によって汚染された空気を吸い込んだ場合です。... さらに読む などの他の病気による損傷でできた肺の空洞や嚢胞の中に、アスペルギローマと呼ばれる球状の真菌のかたまり(菌球)を形成することがあり、それにより大量の出血を起こすことがあります。
症状
アレルギー性気管支肺アスペルギルス症の最初のサインは、通常、喘鳴、せき、息切れ、微熱といった症状です。発熱以外の症状は次第に重くなる傾向があります。通常、患者は体調が思わしくないと感じます。食欲が低下することもあります。せきと一緒に出たたんに、茶色がかった斑点やかたまりがみられる場合があります。
診断
胸部X線検査または胸部CT
たんのサンプルの検査
血液検査
喘息 喘息 喘息は、気道が何らかの刺激に反応して狭くなる(通常は可逆性)病態です。 症状としては、特定の誘因に反応して生じる、せき、喘鳴(ぜんめい)、息切れなどが最もよくみられます。 医師は、呼吸の検査(肺機能検査)を行って喘息の診断を確定します。 喘息発作を防ぐためには、誘因となる物質を吸い込まないようにするとともに、気道の開口を保つ薬を服用する必... さらに読む または嚢胞性線維症の患者で頻繁に喘息発作を起こしている場合には、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症にかかっているかどうかを調べられることがあります。
胸部X線検査を繰り返し行うと、肺炎に似たところが認められますが、病変がその場にとどまったり別の部位に移動したりするように見え、ほとんどが肺の上部に現れます。アレルギー性気管支肺アスペルギルス症を長く患っている人に、胸部X線検査やCT検査を行うと、広がった気道が見えることがあり、気道にはしばしば粘液の栓が詰まっています。
顕微鏡でたんを観察すると、過剰な好酸球とともに、真菌そのものが認められることがあります。
血液検査では好酸球とアスペルギルス(Aspergillus)に対する抗体の値が高いことが分かります。血液中の免疫グロブリンE(IgE抗体)値の上昇は、アレルギー反応を示すことが多いため、このIgEの値も測定します。
皮膚テストにより、アスペルギルス(Aspergillus)に対するアレルギーがあるかどうかを判定できますが、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症とアスペルギルス(Aspergillus)への単なるアレルギーとを区別することはできません。喘息患者では、アスペルギルス(Aspergillus)への単なるアレルギーが起こることがあります。
治療
喘息の治療に使用される薬剤
ときに抗真菌薬
アスペルギルス(Aspergillus)は生活環境のいたるところに存在するため、この真菌との接触を避けるのは困難です。アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(表「 喘息の治療に使用される薬剤 喘息の治療によく使用される薬剤 」を参照)の治療には、喘息治療薬、特にコルチコステロイドが使用されます。
気道を広げるために気管支拡張薬が用いられることもあり、これによって粘液の栓をせきで吐き出し、真菌を除去しやすくなります。プレドニゾン(日本ではプレドニゾロン)というコルチコステロイドを最初は高用量で服用し、その後は長期間にわたって減量していくことで、進行性の肺損傷を予防できることがあります。ほとんどの専門家はコルチコステロイドの経口薬を勧めています。コルチコステロイドの吸入薬が、この病気に対して十分な効果をもつかどうかは明らかになっていません。
肺から真菌を除去するため、イトラコナゾールという抗真菌薬をコルチコステロイドと併用することもあります。
症状になんら目立った変化が現れることなく、肺の損傷が徐々に悪化することがあるため、胸部X線検査、 肺機能検査 肺機能検査 肺機能検査では、肺にためることができる空気の量、肺から空気を出し入れする能力、肺に酸素を取り込む能力を測定します。 肺機能検査は、肺疾患の具体的な原因を突き止めるというより、一般的なタイプや重症度を調べるのに適していますが、 喘息や 慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの特定の病気を診断するために使用されることもあります。 ( 肺疾患に関する病歴聴取と身体診察および 呼吸器系も参照のこと。)... さらに読む 、好酸球やIgE抗体の値を測定する血液検査などにより定期的なモニタリングを行います。病気がコントロールされるにつれて、一般に好酸球や抗体の値は低下しますが、病気の急性増悪が起こると、その初期徴候としてこれらの値が再び上昇する場合があります。
治療としては、患者の喘息または嚢胞性線維症を注意深く管理することがあげられます。また、コルチコステロイドを長期間使用すると、白内障、糖尿病、骨粗しょう症のリスクが高まるおそれがあるため、コルチコステロイドの長期投与を必要とするアレルギー性気管支肺アスペルギルス症の患者では、医師が注意深く経過を観察します。