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急性横断性脊髄炎

執筆者:

Michael Rubin

, MDCM, New York Presbyterian Hospital-Cornell Medical Center

レビュー/改訂 2021年 6月
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急性横断性脊髄炎は、脊髄の幅全体に(横断性に)炎症が起こり、脊髄を行き来する神経信号が遮断される病気です。

  • 急性横断性脊髄炎は、多発性硬化症、視神経脊髄炎、ライム病、全身性エリテマトーデスなどの特定の病気の人、または特定の薬剤を使用している人に起こります。

  • 突然背中に痛みが生じ、患部を帯状に締めつけられるような感じがします。その後、ときに麻痺などの重度の症状が現れることがあります。

  • MRI検査が診断の助けになりますが、腰椎穿刺が必要になることもあります。

  • 回復する人、いくつかの障害が残る人、ほとんど回復しない人が、それぞれ約3分の1ずついます。

  • 可能であれば原因に対する治療を行いますが、それができない場合は、コルチコステロイドの投与や、ときに血漿交換を行うこともあります。

米国では毎年約1400人に急性横断性脊髄炎が起こっていると推定されています。また、この病気による何らかの機能障害がある人は約33,000人いると考えられています。

急性横断性脊髄炎では、脊髄(通常は胸部)の1つまたは複数の領域で、脊髄の全幅に炎症が起きます。

原因

急性横断性脊髄炎は、以下の病気がある人に発生することもあります。

ときに、軽度のウイルス感染症またはワクチン接種の後に発症することもあります。

症状

通常、急性横断性脊髄炎の症状は突然の背中の痛みで始まり、炎症が起こった部位(胸部や腹部)の周りを帯状に締めつけられるような感覚が現れます。この病気の人は、頭または首にも痛みを有する可能性があります。

数時間から数日以内に、ピリピリ感、しびれ、筋力低下が足に起こり、上に広がっていきます。排尿は困難になりますが、なかには強い尿意(尿意切迫感)を感じるにもかかわらず、排尿は困難であるという人もいます。これらの症状はさらに数日かけて悪化し、重症化すると麻痺、感覚消失、尿閉(膀胱に尿がたまっても排尿できない状態)、尿失禁や便失禁に至ります。

障害の程度は、炎症を起こした脊髄の高さ(レベル)と炎症の重症度によって異なります。

診断

  • MRI検査

  • 腰椎穿刺

  • その他の検査による原因の調査

急性横断性脊髄炎は症状から疑われますが、同様の症状を引き起こす他の病気(ギラン-バレー症候群 ギラン-バレー症候群(GBS) ギラン-バレー症候群は、筋力低下を引き起こす多発神経障害の一種で、筋力低下は通常は数日から数週間かけて悪化し、その後は自然にゆっくりと改善するか正常に戻ります。治療を行えば、もっと早く回復します。 ギラン-バレー症候群は、自己免疫反応によって引き起こされると考えられています。 通常、筋力低下は両脚で最初に起こり、それから体の上の方に広がります。 筋電図検査と神経伝導検査が診断の確定に役立ちます。... さらに読む 脊髄圧迫 脊髄への血流遮断 脊髄に血液を送る動脈が遮断されると、血液と酸素が脊髄に届かなくなります。すると、脊髄の組織が壊死します(梗塞)。 原因には、重度の動脈硬化、血管の炎症、血栓のほか、ときに腹部大動脈の処置などがあります。 背中に突然の痛みが生じて、痛みが病変部から他の部位に広がり(放散痛)、続いて筋力低下が起こり、病変部では熱さ、冷たさ、痛みが感じられなくなり、ときに麻痺も起こります。 通常はMRI検査または脊髄造影CT検査が行われます。... さらに読む 脊髄への血流遮断 脊髄への血流遮断 脊髄に血液を送る動脈が遮断されると、血液と酸素が脊髄に届かなくなります。すると、脊髄の組織が壊死します(梗塞)。 原因には、重度の動脈硬化、血管の炎症、血栓のほか、ときに腹部大動脈の処置などがあります。 背中に突然の痛みが生じて、痛みが病変部から他の部位に広がり(放散痛)、続いて筋力低下が起こり、病変部では熱さ、冷たさ、痛みが感じられなくなり、ときに麻痺も起こります。 通常はMRI検査または脊髄造影CT検査が行われます。... さらに読む など)と区別する必要があります。

まず脊髄のMRI検査が行われます。MRI検査は、脊髄の圧迫など、症状を引き起こしている他の治療可能な原因を否定するのに役立ちます。脊髄炎が重度の場合は、通常、MRI検査で炎症による脊髄の腫れが明らかになります。

さらに 腰椎穿刺 腰椎穿刺 腰椎穿刺 によって髄液のサンプルが採取されます。急性横断性脊髄炎がある場合は、髄液中の特定の白血球の数とタンパク質の量が上昇しています。

原因を探すため、胸部X線検査や血液検査なども行われます。急性横断性脊髄炎を引き起こしうる薬剤の使用についても質問されます。

予後(経過の見通し)

多発性硬化症や全身性エリテマトーデスの人では、ときにこの病気が再発することがあります。原因が特定できない横断性脊髄炎の人の約10~20%は、最終的に多発性硬化症を発症します。

全般的に、症状の進行が速いほど経過の見通しは悪くなります。重度の痛みがある場合は炎症がより重いと考えられます。経過は以下のように均等に分かれます。

  • 約3分の1の人は回復します。

  • 約3分の1の人では、ある程度の筋力低下と排尿障害(尿意切迫感または尿失禁)が続きます。

  • 約3分の1の人はほとんど回復しません。車いすでの生活を余儀なくされるか、寝たきり状態になります。排尿障害や排便障害が残り、日常活動に手助けを必要とします。

治療

  • 原因が特定された場合、その治療

  • ときにコルチコステロイド

  • ときに血漿交換

横断性脊髄炎が他の病気によって引き起こされている場合、その病気を治療します。

原因が特定できない場合は、急性横断性脊髄炎に関与していると思われる免疫系を抑制するために、プレドニゾン(日本ではプレドニゾロン)などのコルチコステロイドが高用量で投与されます。

しかし、コルチコステロイドや血漿交換が有用かどうかは分かっていません。

症状に対する治療も行われます。

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