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純粋自律神経不全症

執筆者:

Phillip Low

, MD, College of Medicine, Mayo Clinic

レビュー/改訂 2021年 9月
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純粋自律神経不全症は、血圧のように自律神経系によって制御されている数多くのプロセスが正常に機能しなくなる病気です。この病気で死亡することはありません。

  • 純粋自律神経不全症は、脳内にシヌクレインが異常に蓄積することが原因で発生します。

  • 立ち上がったときの血圧低下、発汗量の減少、視覚の異常、尿閉、便秘、便失禁がみられることがあります。

  • 医師は身体診察と検査を行い、自律神経の機能不全の徴候がないか調べます。

  • 治療では、症状の緩和に重点が置かれます。

純粋自律神経不全症(以前は特発性起立性低血圧またはブラッドベリー-エッグルストン症候群と呼ばれていました)では、 自律神経系 自律神経系の概要 自律神経系は、血圧や呼吸数など、体内の特定のプロセスを調節している神経系です。意識的な努力を必要とせず、自動的(自律的)に機能するのが特徴です。 自律神経系の病気は、体のあらゆる部分とあらゆるプロセスに影響を及ぼす可能性があります。また、自律神経系の病気には、可逆性のものと進行性のものがあります。... さらに読む 自律神経系の概要 によって調節される数多くのプロセスが正常に機能しなくなります。この機能不全は、それらのプロセスを制御する神経細胞の減少が原因となって起こります。機能不全をきたす神経細胞は、脊髄の両側や、内臓の付近または内側に密集しています(自律神経節と呼ばれます)。影響を受けるのは自律神経節のみです。ほかの神経は影響を受けず、脳と脊髄にも影響はありません。

純粋自律神経不全症は女性に多くみられ、40~50代で発症する傾向があります。この病気で死亡することはありません。

純粋自律神経不全症は、シヌクレイン(神経細胞間の連絡を補助している脳内のタンパク質ですが、その機能はまだ十分に解明されていません)が異常に蓄積することが原因で発生します。シヌクレインの蓄積は、 パーキンソン病 パーキンソン病 パーキンソン病は、脳の特定の領域がゆっくりと進行性に変性していく病気です。特徴として、筋肉が安静な状態にあるときに起こるふるえ(安静時振戦)、筋肉の緊張度の高まり(こわばり、筋強剛)、随意運動が遅くなる、バランス維持の困難(姿勢不安定)などがみられます。多くの患者では、思考が障害され、認知症が発生します。 パーキンソン病は、動きを協調させている脳領域の変性によって起こります。... さらに読む 多系統萎縮症 多系統萎縮症(MSA) 多系統萎縮症は死に至る進行性の病気で、筋肉が硬くなり(筋強剛)、運動障害、協調運動障害、体内プロセス(血圧や膀胱の制御など)の機能不全などが起こります。 運動や多くの体内プロセスを制御している脳領域に変性が起こります。 症状には、パーキンソン病に似た症状、立ち上がったときの低血圧(起立性低血圧)、排尿の問題、便秘などがあります。 医師は、レボドパ(パーキンソン病の治療に用いられる薬剤)を使用したときの反応と、MRI検査および自律神経機能... さらに読む レビー小体型認知症 レビー小体型認知症とパーキンソン病認知症 レビー小体型認知症とは、精神機能が進行性に失われていく病気で、神経細胞の中にレビー小体が認められることを特徴とします。パーキンソン病認知症は、パーキンソン病患者において精神機能が失われていく病気で、神経細胞の中にレビー小体が認められることを特徴とします。 レビー小体型認知症の患者は目覚めた状態とうとうとした状態との間で変動するほか、幻覚が起こったり、絵を描くのが困難になったり、パーキンソン病と同様の動作困難が生じたりします。... さらに読む の患者にもみられます。純粋自律神経不全症の患者の中には、やがて 多系統萎縮症 多系統萎縮症(MSA) 多系統萎縮症は死に至る進行性の病気で、筋肉が硬くなり(筋強剛)、運動障害、協調運動障害、体内プロセス(血圧や膀胱の制御など)の機能不全などが起こります。 運動や多くの体内プロセスを制御している脳領域に変性が起こります。 症状には、パーキンソン病に似た症状、立ち上がったときの低血圧(起立性低血圧)、排尿の問題、便秘などがあります。 医師は、レボドパ(パーキンソン病の治療に用いられる薬剤)を使用したときの反応と、MRI検査および自律神経機能... さらに読む またはレビー小体型認知症を発症する人もいます。

純粋自律神経不全症の症状

純粋自律神経不全症の最もよくみられる症状は、以下のものです。

発汗量が少なくなって、暑さに耐えられなくなることもあります。

瞳孔の散大や収縮が正常に起こらなくなることがあります。視野がかすむことがあります。

また、排尿が困難になることもあります(尿閉 尿閉 尿閉とは、膀胱から尿をまったくまたはほとんど排出できなくなった状態のことです。 排尿後に膀胱内に残尿がみられる人では、同時に頻尿や尿失禁がみられる場合があります。 排尿が可能な場合は、排尿後に膀胱に残った尿の量を測定します。 カテーテルを用いて膀胱内の尿を除去した後、原因に対する治療を行います。 ( 排尿のコントロールも参照のこと。) さらに読む )。 便秘 便秘 便秘は、排便しにくい、排便回数が少ない、便が硬い、または排便後に直腸が完全に空になっていない感覚(残便感)がある状態です。( 小児の便秘も参照のこと。) 便秘には急性のものと慢性のものがあります。急性便秘は突然起こり、はっきりと現れます。慢性便秘は、徐々に始まり数カ月ないし数年間持続することがあります。 毎日排便しなければ便秘だと思う人はたくさんいます。しかし、誰にとっても毎日排便があることが正常というわけではありません。1日1~3回の... さらに読む 便失禁 便失禁 便失禁とは、排便をコントロールできなくなることです。 便失禁は、 下痢発症時に一時的に起こる場合や、直腸に硬い便が滞留して( 宿便)起こる場合があります。先天異常、肛門や脊髄の損傷、 直腸脱(直腸粘膜が肛門から外に脱出)、 認知症、糖尿病による 神経の損傷、 肛門腫瘍、出産時の骨盤の損傷がある人は、持続的な便失禁を起こすことがあります。 医師の診察 通常はS状結腸内視鏡検査 医師は患者を診察し、構造上の異常や神経学的異常がないか確認しま... さらに読む (排便をコントロールできなくなること)がみられることもあります。男性では、勃起の開始や維持が困難になることがあります(勃起障害 勃起障害(ED) 勃起障害(ED)とは、性交を行うのに十分な勃起を達成または持続できないことです。 ( 男性の性機能障害の概要も参照のこと。) どんな男性でもときに勃起に至らない問題を抱えることがあり、そのような問題の発生は正常なことと考えられています。勃起障害(ED)は男性が次のような場合に起こります。 一切勃起できない 繰り返し短時間は勃起するが、性交に十分な時間ではない さらに読む )。

純粋自律神経不全症の診断

  • 医師による評価

  • 考えられる他の原因の可能性を否定するための検査

自律神経系の機能不全によるレム睡眠行動障害と起立性低血圧がみられる人は、おそらく純粋自律神経不全症であると考えられます。

ノルアドレナリンの濃度を測定するために血液検査を行うこともあります。ノルアドレナリンは、神経細胞同士の情報伝達に用いられる化学伝達物質(神経伝達物質)の1つです。この血液検査によって、純粋自律神経不全症を、類似の症状を引き起こす他の自律神経系の病気と見分けられる場合があります。ノルアドレナリンの測定値が低い場合は、純粋自律神経不全症の可能性が示唆されます。

純粋自律神経不全症の治療

  • 症状の緩和

特別な治療法はないため、症状の緩和に焦点が置かれます。

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