(移植の概要 移植の概要 移植とは、生きて機能している細胞、組織、臓器を体から摘出して、同じ人間の別の部分、または別の人間の体に移し替えることをいいます。 最もよく行われている移植は 輸血です。毎年、何百万人もが治療として輸血を受けます。しかし、一般には移植というと臓器(実質臓器移植)や組織の移植を指します。... さらに読む も参照のこと。)
皮膚
皮膚移植は移植の一形態とみなされます。皮膚移植は、ひどい熱傷(やけど 熱傷 熱傷(やけど)とは、熱、電気、放射線、化学物質によって生じる組織の損傷のことです。 熱傷では痛み、水疱、腫れ、皮膚の剥離が様々な程度で起こります。 小さな浅い熱傷は、清潔を保ちつつ抗菌薬の軟膏を塗るだけでよい場合もあります。 広範囲に及ぶ深い熱傷は、ショックや重度の感染症などの重篤な合併症を引き起こすことがあります。... さらに読む )などにより広範囲の皮膚を失った患者に対して行います。皮膚移植の成功率が最も高いのは、患者自身の健康な皮膚の一部を除去し、その患者の別の部位へ移植する場合です。患者の皮膚が使えないときは一時的な措置として、死亡したドナーの皮膚や場合によってはブタなどの動物の皮膚、または人工合成皮膚を用います。これらの移植皮膚は短期間しかもちませんが、患者自身の正常な皮膚が育って損傷した皮膚と置き換わるまでの間、一時的に患部を保護することはできます。
移植に必要な量の皮膚を得るために、本人の皮膚の小片を組織培養して増やしたり、移植に使う皮膚に小さな切り込みをたくさん入れて引き伸ばしたりして大きな領域を覆えるようにすることがあります。
軟骨
軟骨移植は、小児では鼻や 耳の先天異常 耳の異常 出生時に、耳の欠損や変形、発育不全がみられることがあります。 先天異常あるいは先天奇形とは、出生前の段階で生じた身体的な異常のことです。「先天」とは、「生まれたときから存在する」という意味です。( 顔面、骨、関節、および筋肉の先天異常に関する序も参照のこと。) 耳の先天異常には以下のようなものがあります。 小耳症:外耳(耳介)が小さく、変形している 外耳道閉鎖:外耳道が部分的または完全に閉じている さらに読む を修復するために、成人では、けがや関節炎による関節の損傷を治療するために用いられます。
軟骨は、免疫系を抑制する薬(免疫抑制薬 免疫系の抑制 移植とは、生きて機能している細胞、組織、臓器を体から摘出して、同じ人間の別の部分、または別の人間の体に移し替えることをいいます。 最もよく行われている移植は 輸血です。毎年、何百万人もが治療として輸血を受けます。しかし、一般には移植というと臓器(実質臓器移植)や組織の移植を指します。... さらに読む )を使用しなくてもうまく移植できることがあります。これは移植軟骨に対する免疫系の拒絶反応は他の組織に対する場合と比べて、ずっと穏やかなためです。
角膜
眼の表面にあるドーム状の透明な構造物である 角膜 角膜移植 角膜移植は一般的に行われ、成功率が非常に高い 移植手術です。角膜(虹彩と瞳孔の前にある透明な層)に、瘢痕(はんこん)、激しい痛み、穿孔(せんこう)、変形、または濁りがある場合は、透明で健康な角膜に置き換えることができます。 移植には死亡したばかりの人から提供された角膜を使います。拒絶反応が比較的まれで、また拒絶反応は一般に治療に反応するため、 組織適合性検査は必ず行われるわけではありません(... さらに読む も、たいていは免疫抑制薬を使用しなくてもうまく移植できます。
骨
体のある部分の骨は、他の部分の骨を置き換えるために使用できます。例えば、骨腫瘍の手術で切除した骨と置き換える場合などに使用します。
他者の骨を移植した場合は骨が短期間しかもちませんが、それでもドナーの骨は新しい骨の成長を促し、新しい骨ができるまで問題部位を支え、新しい骨ができるための条件を整いやすくします。
骨移植後に免疫抑制薬は必要ありません。
複数の組織
一部の移植には、複数の組織が含まれます(複合移植と呼ばれ、手、腕、顔の移植などがあります)。複合移植には、皮膚、筋肉、骨のほか、これらの構造を結合し支持している組織が含まれる場合があります。
複合移植は典型的に命を助けるために必要なものではなく、余命を延ばすわけでもないものの、生活の質が大きく改善される可能性はあり、賛否が分かれています。複合移植もまた非常に高価であり、多くのリソースを必要とするほか、ときには生命を脅かす感染症を招くことがあります。複合移植のような外科処置は、標準医療とみなされません。
移植した部分がどの程度機能するかは、場合より大きく異なりますが、手を移植した一部のレシピエントでは、その手を使って日常生活における活動が可能です。
その他の組織
パーキンソン病 パーキンソニズム パーキンソニズムとは、パーキンソン病とは別の原因により生じるパーキンソン病の症状(緩慢な動作や振戦など)のことです。 パーキンソニズムは、脳の病気、脳損傷、または特定の薬剤や毒素によって引き起こされます。 パーキンソン病患者と同様、パーキンソニズムの患者は、筋肉が弛緩しているときに起こる振戦、筋肉のこわばり(筋強剛)、動きの遅延、バランスや歩行の問題を有します。 医師は、原因を特定するために、パーキンソニズムを引き起こすことが分かってい... さらに読む では、患者の副腎組織を自身の脳に移植することで症状が緩和するとみられています。中絶で死亡した胎児からの脳組織の移植を行った場合も同様です。ただし、中絶で死亡した胎児の組織の使用については賛否が分かれています。
胸腺がない障害(ディジョージ症候群 ディジョージ症候群 ディジョージ症候群は、出生時に胸腺がまったくないか、あっても未発達となる先天性の免疫不全疾患の一つで、 T細胞(白血球の一種で異物や異常細胞を識別し、破壊するのを助ける)に問題が生じます。その他の先天異常もみられます。 ディジョージ症候群の小児には、心臓の異常、副甲状腺未発達または欠如、胸腺の未発達または欠如、特徴的な顔つきなど、いくつかの異常が生まれつきみられます。 T細胞に問題が生じることで感染症が繰り返し起こります。... さらに読む と呼ばれる病気)をもって生まれた小児への死産児からの胸腺の移植は、免疫系の回復に有用となる可能性があります。免疫系において重要な役割を果たす白血球は胸腺で成熟するため、胸腺がないと異物から体を守る免疫系に欠陥が生じます。しかし、移植胸腺がレシピエントの細胞を攻撃する細胞を生産し、重度の 移植片対宿主病 移植片対宿主病 移植とは、生きて機能している細胞、組織、臓器を体から摘出して、同じ人間の別の部分、または別の人間の体に移し替えることをいいます。 最もよく行われている移植は 輸血です。毎年、何百万人もが治療として輸血を受けます。しかし、一般には移植というと臓器(実質臓器移植)や組織の移植を指します。... さらに読む が起こることがあります(胸腺とT細胞の動画も参照)。
妊娠を希望している女性で子宮に異常があるか、過去に子宮を摘出している場合は、ときに子宮移植が行われることがあります。