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にきび(ざ瘡)

(尋常性ざ瘡)

執筆者:

Jonette E. Keri

, MD, PhD, University of Miami, Miller School of Medicine

レビュー/改訂 2022年 2月
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やさしくわかる病気事典
本ページのリソース

にきび(ざ瘡)は、顔面や上半身の体幹部に吹き出物などの異常が生じる、ありふれた皮膚の病気です。

  • にきびは、死んだ皮膚細胞の堆積物や細菌、乾燥した皮脂などが皮膚の毛包をふさぐことによって生じます。

  • 多くの場合、顔面、胸、肩、背中の皮膚に、黒色面皰(めんぽう)、白色面皰、吹き出物、嚢腫(のうしゅ)などの隆起が現れ、ときに膿瘍も生じます。

  • にきびを診断するには、皮膚の診察を行います。

  • よく行われる治療法として、軽度のにきびには抗菌薬などの薬剤を皮膚に塗り、中等度のにきびには抗菌薬を経口で投与し、重度のにきびにはイソトレチノインを経口で投与します。

にきびは米国で最もよくみられる皮膚の病気で、全人口の80%の人が生涯に一度はかかります。

にきびの原因

にきびは、ホルモンと皮脂と細菌の相互作用により、毛包(皮膚の中で毛髪が生えてくる部分)に炎症が起きることで発生します。にきびは様々な種類の皮膚の異常(病変)を特徴とします。それらは大きさや重症度が多彩で、皮膚の奥深くにまで及んでいるものもあります。

  • 黒色面皰(開放面皰)

  • 白色面皰(閉鎖面皰)

  • 吹き出物(炎症を起こした閉鎖面皰)

  • 丘疹(硬い隆起)

  • 膿疱(内部に膿がたまった皮膚表層の隆起)

  • 結節(内部に膿がたまった皮膚深層に及ぶ硬い隆起)

  • 嚢腫(膿がたまった大きな空洞)

  • 膿瘍(内部に膿がたまった皮膚深層に及ぶ空洞で、かなり大きくなることがある)

嚢腫と膿瘍は、どちらも膿がたまった空洞ですが、膿瘍の方が大きくて深さもあります。

皮脂腺は脂肪分(皮脂)を分泌する腺で、皮膚の中間層にあたる真皮の中にあります。この腺は毛包に付随しています。皮脂は、死んだ皮膚細胞とともに皮脂腺から毛包内を上がっていき、やがて毛孔から皮膚の表面に排出されます。

にきびは、毛包に乾燥した皮脂、死んだ皮膚細胞、細菌などの集まりが詰まってしまい、皮脂が毛孔から外に出てこられなくなったためにできます。

黒色面皰(開放面皰)は、毛包が不完全に詰まった場合にできます。

白色面皰(閉鎖面皰)は、毛包が完全に詰まった場合にできます。

吹き出物は、炎症を起こした白色面皰です。アクネ菌(Cutibacterium acnes、以前はPropionibacterium acnesと呼ばれた)は健康な人の毛包内にも生息している細菌ですが、毛包が皮脂でふさがると、過剰に増殖してしまいます。この細菌は皮脂を分解し、皮膚に刺激を与える物質を作りだします。その結果として生じる炎症により、一般的ににきびとして知られる皮膚の隆起が生じます。より深い部分に炎症が生じると嚢腫を生じ、ときに膿瘍となることもあります。

にきびの最も一般的な誘因は以下のものです。

にきびは主に思春期にできますが、これは思春期にはホルモン、特にアンドロゲン(テストステロンなど)の分泌が増加することで皮脂腺が刺激され、皮脂の分泌量が過剰になるからです。20代前半から半ばまでには、通常はホルモンの分泌が低下し、にきびは減るか消失します。しかし、多くの女性では40代までにきびが残ることがあります。

ほかの状況でホルモンの量が変化する場合にも、にきびができることがあります。

  • 妊娠または月経

  • 多嚢胞性卵巣症候群

  • 特定の薬

  • 皮膚に塗る特定の製品

  • きつすぎる衣服

  • 高い湿度と発汗

若い女性の場合、月経の周期に伴ってにきびができることがあるほか、妊娠中には消えたり、大幅に悪化したりすることがあります。 多嚢胞性卵巣症候群 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS) 多嚢胞性卵巣症候群は軽度の肥満、月経不順または月経がないこと、男性ホルモン(アンドロゲン)の濃度が高いことにより引き起こされる症状を特徴とします。月経周期が乱れ、男性ホルモン(アンドロゲン)の濃度が高くなる傾向がみられます。 典型的には、患者は肥満で、にきびができたり、声が低くなる、乳房が小さくなる、体毛が過度に増えるといった男性的な特徴... さらに読む 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS) (PCOS)は、月経周期が乱れて、にきびができたり悪化したりすることがあるホルモンの病気です。一部の薬剤、特にコルチコステロイドや タンパク質同化ステロイド タンパク質同化ステロイド タンパク質同化ステロイドは、合成(人工)型のテストステロンで、筋肉量を増やすために使用されます。 タンパク質同化ステロイドは、筋肉の成長を促し、筋力と活力を増強するホルモンです。 タンパク質同化ステロイドには多くの副作用もあり、精神的なもの(気分変動、攻撃的行動、易刺激性)や、身体的なもの(にきび、女性の男性化、男性の乳房腫大)が含まれま... さらに読む を使用すると、にきびが悪化したり、再燃したりすることがあります。特定の化粧品、洗浄剤、ローションも毛孔を詰まらせ、にきびを悪化させることがあります。きつすぎ蒸れて汗をかきやすい衣服がにきびの原因になることもあります。

ほとんどの人で、にきびの程度や状態は様々で、改善するときもあれば悪化するときもあるため、にきびの急な出現の原因になっている要因を特定するのは容易ではありません。にきびは冬に悪化し、夏に好転することが多いですが、これはおそらく日光に抗炎症作用があるためと考えられています。一方で、にきびと洗顔の不十分さ、自慰、性行為の間には何の関係もみられません。単純炭水化物や高度に精製された炭水化物や糖分を多く含む食事(高糖質食 グリセミック指数(血糖指数、GI) 炭水化物、タンパク質、および脂肪は、食物に含まれている主要な多量栄養素(毎日大量に必要とされる栄養素)です。食物の乾燥重量の90%を占め、食物のエネルギーの100%を供給しています。3つともエネルギー(単位はカロリー)を供給しますが、1グラム当たりのエネルギーの量は次のように異なります。... さらに読む )や乳製品がにきびの一因になるかは、よく分かっていません。

知っていますか?

  • にきびと洗顔の不十分さ、自慰、性行為との間には何の関係もみられません。

にきびの症状

にきびの多くは顔面にできますが、首、肩、背中、胸の上部にできることもよくあります。タンパク質同化ステロイドを使用すると、典型的には肩や背中の上部に生じます。

にきびの重症度は以下の3段階に分けられます【訳注:日本の「尋常性ざ瘡治療ガイドライン」では、軽症、中等症、重症、最重症の4段階に分類しています】。

  • 軽度のにきび

  • 中等度のにきび

  • 重度のにきび

にきびはたとえ軽度であっても、悩みの種になることがあり、特に青年にとっては、1つひとつのにきびが美容上の大問題に見えることがあります。

軽度のにきびと重度のにきびの比較

軽度のにきびと重度のにきびの比較

軽度のにきびでは、非炎症性の黒色面皰や白色面皰がごく少数、または小さな軽い炎症を起こした吹き出物がそれより若干多くできる程度です。膿疱が生じることもあり、これは先端が黄色くなった吹き出物に似ています。黒色面皰では、肌色の小さな隆起が生じ、その真ん中が黒くなっています。白色面皰も外観は似ていますが、中心の黒い点がありません。吹き出物は軽い不快感があり、真ん中の白い点が赤くなった小さな皮膚の領域に囲まれています。

中等度のにきびでは、黒色面皰、白色面皰、吹き出物、膿疱が多くなります。

重度のにきびでは、非常に多くの黒色面皰や白色面皰、吹き出物、膿疱、または嚢腫性(深在性)ざ瘡のいずれかが生じます。嚢腫性ざ瘡では、膿の詰まった痛みを伴う赤く大きな結節である嚢腫ができ、皮膚の下でそれらが融合し、大きなじくじくした膿瘍を形成することもあります。

軽度のにきびは、通常は瘢痕(はんこん)を残さず治ります。しかし、吹き出物をつぶしたり、開こうとしたりすると、炎症を悪化させて皮膚の傷が深くなるため、にきびのあと(瘢痕)が残りやすくなります。重度のにきびでは、しばしば嚢腫や膿瘍が破裂し、治った後もよく瘢痕が残ります。瘢痕は、小さくて深い穴(アイスピックで突いたような瘢痕)や、様々な深さのあばた、大きく不規則な形のくぼみなどになります。にきびの瘢痕は生涯残るため、人によっては見た目が気になり、精神的ストレスの原因になることもあります。瘢痕の色が濃くなることもあります。

にきびの例

集簇性ざ瘡(しゅうぞくせいざそう)は、最も重度のにきびで、膿瘍から重度の瘢痕や他の合併症が生じます。重度のにきびが腕、腹部、殿部、さらには頭皮にまで現れることがあります。

電撃性ざ瘡顔面膿皮症(電撃性酒さとも呼ばれます)は、互いに関連している可能性のある、まれなタイプの重度のにきびで、一般的には突然発生します。

にきびの診断

  • 皮膚の診察

診断が確定すれば、病変の数と種類に基づいて重症度を軽度、中等度、重度のいずれかに判定します。

にきびの予後(経過の見通し)

にきびは重症度にかかわらず、通常は20代前半から半ばまでに自然に軽くなりますが、一部の人(多くは女性)では40代までみられることがあります。成人でも、ときに軽度のにきびが単発でできることがあります。

軽度のにきびは、通常は瘢痕を残さずに治ります。中等度から重度のにきびは治りますが、しばしば瘢痕が残ります。

にきびは青年にとっては大きな精神的ストレスとなり、引きこもりの原因になることもあります。そのため、カウンセリングが必要になる場合もあります。

にきびの治療

  • 白色面皰と黒色面皰に対しては、トレチノインクリームおよび/または過酸化ベンゾイル

  • 軽度のにきびに対しては、トレチノインクリームの外用に加えて、ときに過酸化ベンゾイル、抗菌薬、またはその両方の外用

  • 中等度のにきびに対しては、抗菌薬の内服に加えて、軽度のにきびに対するものと同じ薬剤の外用

  • 重度のにきびに対しては、イソトレチノインの内服

  • 嚢腫性ざ瘡に対しては、コルチコステロイドの注射

にきびの一般的なケアは非常にシンプルです。にきびができた部位を、1日に1~2回、低刺激の石けんで優しく洗います。抗菌石けんやスクラブ入り石けん、アルコール綿を使ったり、頻繁にごしごし洗ったりしても、特に効果が得られるわけではなく、皮膚をさらに刺激してしまう可能性があります。

化粧品については、油分の多いものはにきびを悪化させるため、水分が主体の製品を使用するようにします。

知っていますか?

  • 力まかせに洗ったりこすったりすると、皮膚に刺激感を与え、にきびが悪化することがあります。

特定の人だけに有用なにきび治療法もあります。例えば、にきびのある女性に経口避妊薬が処方されることがあります。ただし、この治療法は効果が得られるまでに6カ月以上かかります。スピロノラクトン(アルドステロンというホルモンの作用を阻害する薬剤)も一部の女性で有用となることがあります。クラスコテロン(clascoterone)は特定のホルモンの作用を阻害する別の薬剤で、12歳以上の患者のにきびの治療に使用できます。炎症が起きている(吹き出物や膿疱がある)人には、光を利用する様々な治療法が役立っています。

にきび治療は重症度に応じて行います。軽度のにきびには、最も簡単で副作用のリスクが最も少ない治療で十分です。より重度のにきびや、基本的な治療では改善されないにきびには、さらなる治療が必要です。治療計画には必ず教育、サポート、そして患者にとって最も現実的な選択肢を含めます。専門医の受診が必要になることもあります。

軽度のにきび

軽度のにきびの治療薬は皮膚に塗って使用します(外用薬)。これらの薬には細菌を殺したり(抗菌薬)、にきびを乾燥させたり、毛孔の詰まりを取ったりする(面皰改善薬)作用があります。古くから処方なしで購入できるクリーム剤には、サリチル酸、レゾルシノール、または硫黄が含まれており、これらは吹き出物を乾燥させ、わずかに皮膚を剥がすため、役に立つことがあります。

黒色面皰や白色面皰に最もよく処方される外用薬はトレチノインです。トレチノインには高い効果がありますが、皮膚に刺激感を与え、日光に対する過敏性を高めます。そのため、この薬は慎重に使用する必要があり、最初は使用頻度と濃度を抑え、どちらも徐々に増やしていきます。トレチノインの副作用に耐えられない人には、外用アダパレン、アゼライン酸、グリコール酸、またはサリチル酸が使用されます。

炎症も生じている(吹き出物や膿疱がある)場合は、トレチノインに過酸化ベンゾイル、外用抗菌薬、またはその両方を組み合わせて投与します。処方される外用抗菌薬で最も一般的なものは、クリンダマイシンとエリスロマイシンの2つです。その他の外用抗菌薬にはミノサイクリンの発泡剤、ジアフェニルスルホンがあります。トレチノインなどのレチノイドや過酸化ベンゾイルと併用する場合を除き、外用抗菌薬は使用するべきではありません。過酸化ベンゾイルには処方薬も市販薬もあります。グリコール酸はトレチノインの代わりに使用する場合と、トレチノインに追加して使用する場合がありますが、用いられることはほとんどなくなっています。

黒色面皰と白色面皰は、面皰圧出器と呼ばれる器具と滅菌された針を用いて医師に取り除いてもらうことができます(この処置を圧出といいます)。

内服用の抗菌薬(ドキシサイクリン、ミノサイクリン、テトラサイクリン、エリスロマイシンなど)は、外用薬のみで管理できなくなったにきびに対して投与されます。

中等度のにきび

中等度のにきびは、通常は抗菌薬の服用(経口投与)で治療します。よく使用される抗菌薬として、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、テトラサイクリン、サレサイクリン(sarecycline)などがあります。その他の選択肢としては、アジスロマイシン、エリスロマイシン、トリメトプリム/スルファメトキサゾールなどがあります。しばしば、軽度のにきびに使用するものと同じ外用薬と、経口抗菌薬を使用します。最大の効果を得るには、抗菌薬を約12週間服用しなければならない場合もあります。

可能であれば、経口抗菌薬の使用を中止して、外用薬だけで良好な状態を維持します。にきびは短期間の治療では再発することがあるため、数カ月から数年にわたって治療を継続しなければならないこともあります。

女性が抗菌薬を長期間服用すると、ときに腟の真菌感染症が発生することがあり、その治療が必要になる場合もあります。

経口抗菌薬に効き目がない女性では、経口避妊薬、スピロノラクトンまたはその両方が投与される場合があります。

重度のにきび

最も重症度の高いにきびに抗菌薬が効かない場合は、経口薬のイソトレチノインが最善の治療法となります。イソトレチノインは、外用薬のトレチノインと同じグループの薬で、にきびの治癒を期待できる唯一の薬です。しかし、イソトレチノインは非常に重い副作用を引き起こす可能性があります。イソトレチノインは、胎児の発育に有害な影響を及ぼすことがあるため、服用している女性は妊娠しないように、治療前、治療中、治療後に少なくとも2種類の避妊法を使用する必要があります。比較的重篤ではない他の副作用もあります。

治療は一般的には16~20週間続けて行いますが、それ以上になることもあります。

集簇性ざ瘡の患者には経口抗菌薬が処方されます。抗菌薬が効かない場合は、経口のイソトレチノインやコルチコステロイドを使用します。

電撃性ざ瘡の患者には経口のコルチコステロイドや抗菌薬が処方されます。

顔面膿皮症の患者には経口のコルチコステロイドやイソトレチノインが処方されます。

嚢腫性ざ瘡

炎症を起こしている大きな結節や膿瘍のある患者には、ときにコルチコステロイドを直接注射して治療することがあります。ときには、結節や膿瘍を切開して膿を出します。

にきびの瘢痕

にきびの瘢痕(はんこん)がひどい場合は、瘢痕の形や深さ、位置に応じて治療します。

小さく浅い瘢痕が複数ある場合は、ケミカルピーリング、 レーザー治療 皮膚の異常に対するレーザー治療 皮膚の異常に対するレーザー治療 、削皮術、マイクロニードリングと呼ばれる新しい治療法による治療が可能です。マイクロニードリングでは、細い針で皮膚を刺し、皮膚のコラーゲンの変化を引き起こします。

削皮術は、金属性の器具で皮膚の最も外側の層を削り取るという処置です。

その深さにかかわらず、個々の瘢痕部を切り取って、皮膚を縫い合わせることがあります。

幅が大きくギザギザした瘢痕の場合は、皮膚の下に小さい切れこみを作り、瘢痕化した組織を解放するサブシジョンという処置を行うと、見た目を改善することができます。この処置を行うと、多くの場合、皮膚が元の正常な輪郭に戻ります。

コラーゲンや脂肪、その他様々な合成物質をにきびの瘢痕に注入する方法もあります。これらの物質は、皮膚のへこんだ部分を盛り上げ、周囲と同じ高さにして目立たなくします。コラーゲン、ヒアルロン酸、ポリメチルメタクリレート注射などの充填剤は、一時的な効果しかなく、定期的に繰り返し使用する必要があります。他の充填剤には恒久的なものもあります。

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