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爪の変形、異栄養症、変色

執筆者:

Chris G. Adigun

, MD, Dermatology & Laser Center of Chapel Hill

レビュー/改訂 2021年 12月
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本ページのリソース

変形と異栄養症という用語は、しばしば同じ意味で使われ、医師も同じ意味で使うことがありますが、その意味は少し異なります。

  • 変形:爪の形状の変化

  • 異栄養症:爪の質感か色またはその両方の変化

爪異栄養症の約50%は真菌感染症により起こります(爪真菌症 爪真菌症 爪真菌症とは、爪の真菌感染症のことです。 ( 爪の病気の概要も参照のこと。) 約10%の人が爪真菌症にかかっており、手指の爪よりも足の指の爪に多くみられます。高齢者(特に男性)、足の血行が悪い人(末梢動脈疾患[ フットケア])、糖尿病患者( 糖尿病でみられる足の問題)、免疫機能が低下している人(病気や薬剤による)、 みずむしや 爪異栄養症の人によくみられます。 爪真菌症はしばしば再発し、長期にわたる治療後に再発することもあります。... さらに読む 爪真菌症 )。その他の原因としては、 爪の損傷 手足の爪の損傷 手足の指の爪はけがによって損傷を受けることがあります。 手足の指の軽いけがでも、それにより爪に変化が起きることがあります。 爪床(爪甲の下にあって爪を指に接着している軟部組織)に重度の損傷、特に挫滅損傷が生じると、爪が変形したまま元に戻らない場合がよくあります。このリスクを減らすには、損傷を直ちに修復する必要があり、それには爪の除去が必要になります。 ( 爪の病気の概要も参照のこと。)... さらに読む 手足の爪の損傷 爪の先天異常 爪の先天異常 変形と異栄養症という用語は、しばしば同じ意味で使われ、医師も同じ意味で使うことがありますが、その意味は少し異なります。 変形:爪の形状の変化 異栄養症:爪の質感か色またはその両方の変化 医師は変形よりも異栄養症という用語をよく使う傾向があります。( 爪の病気の概要も参照のこと。) 爪異栄養症の約50%は真菌感染症により起こります(... さらに読む 爪の先天異常 乾癬 乾癬 乾癬(かんせん)は、1つまたは複数の盛り上がった赤い斑が生じる、再発を繰り返す慢性の病気で、それらの斑は銀白色の鱗屑(うろこ状のくず)を伴い、正常な皮膚との境界ははっきりしています。 免疫系の問題が関わっている可能性があり、遺伝的に乾癬を生じやすい人もいます。 特徴的な鱗屑または赤い斑が全身のあらゆる部分に様々な大きさで生じますが、特に肘、膝、頭皮によくみられます。 この病気の治療は、皮膚に塗る薬剤(外用薬)、紫外線照射(光線療法)、内... さらに読む 乾癬 扁平苔癬 扁平苔癬 扁平苔癬(へんぺいたいせん)は、赤色または紫色の小さな隆起した発疹が現れる、かゆみを伴う再発性の病気で、最初に現れる発疹は1つずつ離れていますが、次第に複数が融合していき、ザラザラした鱗屑(うろこ状のくず)を伴う斑になります。 特定の薬剤や感染性微生物に対する反応が原因である可能性があります。 よくみられる症状として、体の様々な部分、ときには口腔内や性器に、赤や紫色の隆起からなるかゆみを伴う発疹が現れ、鱗屑(うろこ状のくず)を伴う斑にな... さらに読む 扁平苔癬 、ときに腫瘍(悪性と良性)など、様々なものがあります。薬剤、感染症、病気によって爪の色が変色することがあります(爪甲色素沈着)。例えば、シュードモナス(Pseudomonas)という細菌に感染すると、爪が緑色になることがあります(緑色爪症候群 緑色爪症候群 緑色爪症候群は、シュードモナスという細菌によって引き起こされる感染症です。 ( 爪の病気の概要も参照のこと。) 左側の写真には、第4指の爪甲剥離症を伴う緑色爪症候群が写っており、Pseudomonas属細菌が生産する色素によって爪甲が緑色に変色しています。右側の写真には、剥離した爪甲を除去した後の爪床が写っています。 緑色爪症候群は、シュードモナス属(... さらに読む 緑色爪症候群 )。

医師は、爪の診察によって、真菌を原因とする爪異栄養症の診断を下せることがよくあります。しかし、診断を確定するには、真菌を掻き出して培養検査(検査室で微生物を増殖させる方法)を行ったり、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査を行って真菌に由来する遺伝物質を探したりする必要がある場合もあります。

真菌以外の原因による爪異栄養症の診断を下すために、爪甲(爪の硬い部分)や爪母(爪の付け根にあり爪の成長が始まるところ)の生検を行うことがあります。

原因になっている病気を治療しても爪の外観がよくならない場合は、ネイリストに適切に切って磨いてもらうことで変形や異栄養症が目立たなくなる場合もあります。

爪の先天異常

ときに新生児が爪のない状態で産まれてくることがあります(無爪症)。 爪膝蓋骨症候群 爪膝蓋骨症候群 爪膝蓋骨(そうしつがいこつ)症候群は、腎臓、骨、関節、手足の爪に異常が生じる、まれな遺伝性疾患です。 爪膝蓋骨症候群は、腕や脚と腎臓の発育において重要な役割を担う遺伝子の突然変異によって起こります。 一般に、この症候群の患者は、左右の膝蓋骨(俗にいう「膝のお皿」の骨)の一方または両方が欠損し、橈骨(とうこつ)という腕の骨の片側が肘で脱臼していて、骨盤が異常な形をしています。 手足の爪がなかったり、あっても発達が不完全で、くぼんだり隆起し... さらに読む では、親指の爪がなかったり、小さくくぼみや筋が入っていたりする状態が生じます。ダリエ病では、爪に赤と白の筋が入り、爪の先端にV字のくぼみが生じます。先天性爪甲厚硬症では、爪床(爪が指に接着している部分)が厚くなって変色し、横方向に弯曲して 巻き爪 巻き爪 変形と異栄養症という用語は、しばしば同じ意味で使われ、医師も同じ意味で使うことがありますが、その意味は少し異なります。 変形:爪の形状の変化 異栄養症:爪の質感か色またはその両方の変化 医師は変形よりも異栄養症という用語をよく使う傾向があります。( 爪の病気の概要も参照のこと。) 爪異栄養症の約50%は真菌感染症により起こります(... さらに読む 巻き爪 が生じます。

全身性疾患でみられる爪の変形と異栄養症

以下のように、他の臓器を侵す病気(全身性疾患)によって爪にも変化が生じることがあります。

全身性疾患でみられる爪の変形と異栄養症の例

皮膚の病気でみられる爪の変形と異栄養症

ときに、皮膚の病気によって爪が侵され、爪の外観に変化が起きることがあります。皮膚の病気の治療に使用される薬にも爪甲の変化を引き起こすものがあります。例えば、イソトレチノインやエトレチナートなどのレチノイドという種類の薬は、爪を乾燥させてもろくすることがあります。

皮膚の病気でみられる爪の変形と異栄養症の例

薬剤が爪に与える影響

薬剤が、爪甲色素線条(色素の沈着によりできた褐色または黒色の線)や爪甲剥離症などの他の爪の症状の原因になることがあります。様々な薬剤が爪の変色を引き起こしますが、多くの場合、その薬剤を中止し、爪が生え変わるとよくなります。

正中爪変形

正中爪変形(median nail dystrophy)では、爪の中心部の小さな亀裂が側方に伸び、やがて常緑樹の枝(クリスマスツリーなど)のように見えるようになります。正中爪変形の原因は、不明の場合もありますが、コンピュータのキーボードや同様の器具を頻繁に使用するなどで、繰り返し起こる損傷が原因であると考えられています。患者は爪が損傷しないよう対策をする必要があります。タクロリムス軟膏による治療が助けになった症例が報告されています。

爪甲色素線条

爪甲色素線条とは、皮膚にある正常な褐色の色素であるメラニンが沈着することで爪甲に出現する、灰色、褐色、または黒色の線のことです。この線は爪の付け根から先端まで伸びます。皮膚の色が濃い人では、このような線が現れても異常ではなく、治療が不要な場合もあります。爪甲色素線条の他の原因でがんではないものとして、 ほくろ ほくろ ほくろは、皮膚にできる小さな増殖物で、通常は濃い色をしており、皮膚の色素を作る細胞(メラノサイト)から生じます。 ほくろはほとんどの人にみられますが、異型母斑のできやすさは遺伝による場合があります。 大きく変化するほくろや異型母斑は生検を行い、黒色腫かどうかを調べる必要があります。 がんではない(良性の)ほくろの大半は治療が不要ですが、不快なほくろや美容上の問題となるほくろはメスと局所麻酔により切除することができます。... さらに読む ほくろ HIV感染症 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症とは、ある種の白血球を次第に破壊し、後天性免疫不全症候群(エイズ)を引き起こすことのあるウイルス感染症です。 HIVは、ウイルスやウイルスに感染した細胞を含む体液(血液、精液、腟分泌液)と濃厚に接触することで感染します。 HIVはある種の白血球を破壊し、感染症やがんに対する体の防御機能を低下させます。... さらに読む ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症 甲状腺機能亢進症 甲状腺機能亢進症 甲状腺機能亢進症は甲状腺が働きすぎている状態で、甲状腺ホルモンの値が高く、身体の重要な機能が働く速度が上昇します。 バセドウ病は甲状腺機能亢進症の原因として最もよくみられます。 心拍数と血圧の上昇、不整脈、過剰な発汗、神経質や不安、睡眠障害、意図しない体重減少、排便回数の増加などの症状がみられます。 診断は血液検査により確定されます。 甲状腺機能亢進症の管理には、チアマゾールまたはプロピルチオウラシルが用いられます。 さらに読む 甲状腺機能亢進症 、特定の薬剤の使用、妊娠、 爪の損傷 手足の爪の損傷 手足の指の爪はけがによって損傷を受けることがあります。 手足の指の軽いけがでも、それにより爪に変化が起きることがあります。 爪床(爪甲の下にあって爪を指に接着している軟部組織)に重度の損傷、特に挫滅損傷が生じると、爪が変形したまま元に戻らない場合がよくあります。このリスクを減らすには、損傷を直ちに修復する必要があり、それには爪の除去が必要になります。 ( 爪の病気の概要も参照のこと。)... さらに読む 手足の爪の損傷 アジソン病 副腎皮質機能低下症 副腎皮質機能低下症では、副腎で副腎ホルモンが十分につくられなくなります。 副腎皮質機能低下症は、副腎や下垂体の病気が原因である場合や、特定の薬により引き起こされることがあります。 副腎皮質機能低下症の原因には、自己免疫反応、がん、感染症、その他の病気などがあります。 副腎皮質機能低下症の人は、脱力感や疲労感が生じ、座ったり横になったりした姿勢から立ち上がるとめまいを起こすほか、皮膚の黒ずみがみられる場合もあります。... さらに読む 副腎皮質機能低下症 クッシング症候群 クッシング症候群 クッシング症候群は、コルチコステロイドが過剰な状態であり、通常はコルチコステロイドの使用または副腎による過剰生産によるものです。 通常、クッシング症候群の原因は、ある病気の治療のためのコルチコステロイドの使用、または副腎でのコルチコステロイドの過剰生産を引き起こす下垂体や副腎の腫瘍です。 クッシング症候群はまた、その他の部位(肺など)に腫瘍がある場合に起こることもあります。 クッシング症候群の人は、体幹の周りに過剰な脂肪がつき、顔が丸く... さらに読む クッシング症候群 などがあります。

爪甲剥離症

爪甲剥離症とは、爪甲が爪床から部分的に剥がれた状態または爪甲が完全に失われた状態をいいます。原因としては以下のものがあります。

ドキシサイクリン、ソラレン系、フルオロキノロン系などの他の薬剤も、爪が日光にさらされた後に爪甲剥離症を引き起こすことがあります(光線性爪甲剥離症)。

爪甲剥離症の人では、真菌感染症の発生リスクが高くなります。爪を乾燥した状態に保ち、爪に抗真菌薬を塗ることが有用です。

巻き爪

巻き爪では、爪の水平(横方向)の弯曲が強くなります。最も一般的な原因は、真菌感染症(爪真菌症 爪真菌症 爪真菌症とは、爪の真菌感染症のことです。 ( 爪の病気の概要も参照のこと。) 約10%の人が爪真菌症にかかっており、手指の爪よりも足の指の爪に多くみられます。高齢者(特に男性)、足の血行が悪い人(末梢動脈疾患[ フットケア])、糖尿病患者( 糖尿病でみられる足の問題)、免疫機能が低下している人(病気や薬剤による)、 みずむしや 爪異栄養症の人によくみられます。 爪真菌症はしばしば再発し、長期にわたる治療後に再発することもあります。... さらに読む 爪真菌症 )、 乾癬 乾癬 乾癬(かんせん)は、1つまたは複数の盛り上がった赤い斑が生じる、再発を繰り返す慢性の病気で、それらの斑は銀白色の鱗屑(うろこ状のくず)を伴い、正常な皮膚との境界ははっきりしています。 免疫系の問題が関わっている可能性があり、遺伝的に乾癬を生じやすい人もいます。 特徴的な鱗屑または赤い斑が全身のあらゆる部分に様々な大きさで生じますが、特に肘、膝、頭皮によくみられます。 この病気の治療は、皮膚に塗る薬剤(外用薬)、紫外線照射(光線療法)、内... さらに読む 乾癬 爪の腫瘍 爪の腫瘍 良性および悪性の腫瘍が爪に影響を及ぼして、爪の質感や色の変化( 異栄養症)を引き起こすことがあります。それらの多くは、爪ではなく爪周囲の組織に発生する腫瘍です。 良性腫瘍としては、粘液様嚢胞(液体で満たされた袋状の良性病変)、 化膿性肉芽腫、グロムス腫瘍などがあります。 悪性腫瘍としては、 ボーエン病(早期の皮膚がん)、 有棘細胞がん、 悪性黒色腫などがあります。がんが疑われる場合は、生検を行い、腫瘍をできるだけ早期に完全に切除すること... さらに読む 爪の腫瘍 、足に合わない靴です。この変形は 全身性エリテマトーデス 全身性エリテマトーデス(SLE) 全身性エリテマトーデスは、関節、腎臓、皮膚、粘膜、血管の壁に起こる慢性かつ 炎症性の自己免疫結合組織疾患です。 関節、神経系、血液、皮膚、腎臓、消化管、肺、その他の組織や臓器に問題が発生します。 診断を下すため、血液検査のほか、ときにその他の検査を行います。 全身性エリテマトーデスの全患者でヒドロキシクロロキンが必要であり、損傷を引き起こし続けている全身性エリテマトーデス(活動性の全身性エリテマトーデス)の患者には、コルチコステロイドな... さらに読む 全身性エリテマトーデス(SLE) 川崎病 川崎病 川崎病は全身の血管に炎症が起こる病気です。 川崎病の原因は不明ですが、感染症と関連があると考えられています。 典型的な症状は、発熱、発疹、イチゴ舌のほか、ときに心臓の合併症がみられることもあり、これによりまれに死に至ることがあります。 診断は診断基準に基づいて下されます。 迅速な治療を行えば、ほぼすべての患児が回復します。 さらに読む 川崎病 、末期腎不全(重度の 慢性腎臓病 慢性腎臓病 慢性腎臓病では、血液をろ過して老廃物を除去する腎臓の能力が、数カ月から数年かけて徐々に低下します。 主な原因は糖尿病と高血圧です。 血液の酸性度が高くなり、貧血が起き、神経が傷つき、骨の組織が劣化し、動脈硬化のリスクが高くなります。 症状としては、夜間の排尿、疲労、吐き気、かゆみ、筋肉のひきつりやけいれん、食欲不振、錯乱、呼吸困難、体のむくみ(主に脚)などがあります。 診断は血液検査と尿検査によって下されます。 さらに読む )、一部の遺伝性症候群(先天性爪甲厚硬症など)の患者にもみられます。ときに高齢者や指に関節炎がある人にもみられます。多くの場合、爪甲が弯曲して指の先に食い込む部分が痛みます。

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