(不妊症の概要 不妊症の概要 不妊症とは通常、避妊をせずに定期的に性交をしていても1年以上妊娠できずにいる状態と定義されます。 避妊をせず頻回に性交を行えば、通常は以下の割合で妊娠します。 3カ月以内にカップルの50% 6カ月以内にカップルの75% 1年以内にカップルの90% さらに読む も参照のこと。)
治療開始から4~6サイクルの月経周期が経過しても妊娠に至らない場合は、体外受精や配偶子卵管内移植(GIFT)などの生殖補助医療を検討します。これらの方法は、35歳未満の女性の方が成功率が高くなります。米国での体外受精の成功率を以下に示します。
35歳未満の女性:体外受精の約30%で出生に至る。
41~42歳の女性:体外受精の11%でのみ出生に至る。
42歳以上の女性では、別の女性(ドナー)の卵子を使用することが推奨されます。
生殖補助医療により双子以上の多胎となることもありますが、その可能性は 排卵誘発薬 治療 女性において通常は 月経周期内に起こる卵巣からの排卵が毎月起こらない場合、不妊症である可能性があります。 排卵の問題は、排卵をコントロールしている脳の一部や内分泌腺の機能障害、あるいは卵巣の機能障害や多嚢胞性卵巣症候群によって起こります。 体温測定や排卵検査薬を用いることで、排卵の有無を調べ、排卵の時期を予測することができます。 超音波検査、血液検査、尿検査を行って排卵の問題を評価します。... さらに読む の場合と比べてはるかに低くなります。
遺伝子異常のリスク 遺伝性疾患と先天異常の危険因子 遺伝性疾患は1つ以上の 遺伝子または染色体の異常が原因で起こる病気です。遺伝性疾患には遺伝するものと、自然に発生するものがあります。 遺伝性疾患のうち遺伝するものは、次の世代へ受け継がれます。 自然発生的な遺伝性疾患は次の世代へ受け継がれるものではありませんが、父親の精子や母親の卵子の細胞、発育中の胚の細胞に含まれる遺伝物質が偶然に損傷を... さらに読む が高い場合、女性の子宮に着床させる前にしばしば胚の検査を行います。この検査は 着床前遺伝子検査 着床前遺伝子検査 出生前診断は、遺伝性または自然発生的な特定の遺伝性疾患などの特定の異常がないかどうか、出生前に胎児を調べる検査です。 妊婦の血液に含まれる特定の物質の測定に加え、超音波検査を行うことで、胎児の遺伝子異常のリスクを推定できます。 こうした検査は、妊娠中の定期健診の一環として行われることがあります。 検査の結果、リスクが高いことが示唆された場合は、胎児の遺伝物質を分析するために羊水穿刺や絨毛採取などの検査を行うことがあります。... さらに読む と呼ばれるものです。
子宮内精子注入
子宮内精子注入では、最も運動性の良好な精子のみを選び、子宮内に直接注入します。最も運動性の良好な精子は、精液サンプルを洗浄することによって選択されます。医師は、選択した精子を排卵と同時期に子宮に注入するよう試みます。
この方法では、妊娠できるのであれば通常は6回目までに妊娠します。子宮内精子注入は体外受精に比べてはるかに効果が低くなりますが、体への負担がはるかに小さく、より安価です。
体外受精
体外受精(IVF)は不妊症の原因にかかわらず(原因不明の場合も含む)、不妊症の治療に用いることができます。
体外受精は典型的に以下のように行われます。
卵巣の刺激:通常は ヒトゴナドトロピン ヒトゴナドトロピン 女性において通常は 月経周期内に起こる卵巣からの排卵が毎月起こらない場合、不妊症である可能性があります。 排卵の問題は、排卵をコントロールしている脳の一部や内分泌腺の機能障害、あるいは卵巣の機能障害や多嚢胞性卵巣症候群によって起こります。 体温測定や排卵検査薬を用いることで、排卵の有無を調べ、排卵の時期を予測することができます。 超音波検査、血液検査、尿検査を行って排卵の問題を評価します。... さらに読む (クロミフェン クロミフェン 女性において通常は 月経周期内に起こる卵巣からの排卵が毎月起こらない場合、不妊症である可能性があります。 排卵の問題は、排卵をコントロールしている脳の一部や内分泌腺の機能障害、あるいは卵巣の機能障害や多嚢胞性卵巣症候群によって起こります。 体温測定や排卵検査薬を用いることで、排卵の有無を調べ、排卵の時期を予測することができます。 超音波検査、血液検査、尿検査を行って排卵の問題を評価します。... さらに読む を併用あるいは併用しない)により卵巣を刺激します。多くの場合、複数の卵子が成熟しきるまで排卵が起こらないように、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アゴニストまたはゴナドトロピン放出ホルモンアンタゴニストを投与します。その結果、通常多数の卵子が成熟します。その後、排卵を促すためヒト絨毛性ゴナドトロピンを投与します。GnRHアゴニストは、 卵巣過剰刺激症候群 クロミフェン の発生リスクが高い女性において排卵を促すために使用されます。
卵子の採取:およそ34時間後、医療従事者が超音波画像をガイドとして腟から卵巣へと針を挿入し、成長した卵子を採取します。へそのすぐ下を小さく切開してそこから細いチューブ(腹腔鏡)を挿入し卵子を採取することもあります。
卵子の受精:この卵子を培養皿の上であらかじめ選んでおいた運動性の最も良好な精子と受精させます。この時点で、1個の精子を各卵子に注入する(卵細胞質内精子注入法)ことがあります(特にパートナーの精子生産に異常がある場合)。
培養室での胚までの発育:精子を加えた後、約2~5日間受精卵を発育させます。
胚の子宮への着床:1個または2~3個の成長した胚を、培養皿から腟を経由して子宮へ移植します。着床させる胚の数は、女性の年齢と治療に対する反応の可能性によって決めます。胚は典型的には受精後2~6日目頃に着床させます。
残った胚は液体窒素で冷凍し、妊娠しなかった場合に備えて保存することが多くなってきています。また、排卵誘発薬を使用せずに、月経周期中に正常に成長した卵子1つだけを用いた体外受精が試みられる場合もあります。
体外受精で子どもができる確率は、多くの要因によりますが、女性の年齢が最も重要な要因でしょう。
体外受精の最も大きなリスクは以下のものです。
多胎妊娠により、母親と新生児に重篤な合併症が生じる可能性があります。合併症は妊娠に関連したものであることがあります。例えば、母親が 高血圧 妊娠中の高血圧 妊娠中の 高血圧は以下のいずれかに分類されます。 慢性高血圧:妊娠前から血圧が高かった場合です。 妊娠高血圧:妊娠20週以降に初めて血圧が高くなった場合です(通常37週以降)。このタイプの高血圧は一般的に、分娩後6週間以内に解消します。 妊娠高血圧腎症は妊娠中に発症する高血圧の一種で、タンパク尿を伴います。妊娠高血圧腎症は、他の高血圧とは異なる診断および治療を行います。 慢性高血圧の場合、妊娠中に深刻な問題が起こる可能性が高くなります。... さらに読む や 糖尿病 妊娠中の糖尿病 妊娠前から糖尿病にかかっている女性の場合、糖尿病にかかっている期間や、高血圧や腎障害などの糖尿病の合併症がみられるかどうかによって、妊娠中に合併症を起こすリスクは異なります。妊娠は糖尿病(1型および2型)を悪化させる傾向がありますが、糖尿病の合併症(眼、腎臓、神経の障害)を誘発したり悪化させたりすることはありません。 ( 糖尿病も参照のこと。) 妊婦の少なくとも5%が妊娠中に糖尿病を発症します。これを妊娠糖尿病といいます。妊娠糖尿病は以... さらに読む を発症したり、 過剰な出血 分娩時の子宮からの出血過多 子宮からの出血過多とは、約1000ミリリットル以上の失血、または分娩から24時間以内に起こる多量の失血の症状を指します。 胎児の娩出後は子宮からの出血過多に注意が必要です。 経腟分娩の場合、通常は分娩中と分娩後で約500ミリリットルの出血があります。子宮から胎盤が剥がれるときに一部の血管が開いた状態になり、出血が起こります。血管がふさがるまで、子宮の収縮が血管を閉じるのを助けます。一般的に帝王切開では経腟分娩の約2倍の出血が生じますが、... さらに読む が起こるなどです。胎児が死亡する、あるいは新生児が低体重で生まれる可能性もあります。これらの合併症のため、現在は1回に子宮に移植する胚の数は少なくしています。1個の胚のみを子宮に移植し、後から使用することを考慮して残りを凍結することで多胎妊娠のリスクを排除することができます。
先天異常は、体外受精により生まれた子どもにわずかに多くみられます。しかし、その理由が体外受精そのものに関連しているのか、体外受精が必要になった不妊症の問題に関連しているのかは、専門家にも分かっていません。また、これまでに700万人以上が体外受精によって生まれており、その大多数には先天異常がありません。
米国では、1回の卵子回収において、妊娠が成功する確率は、35歳未満の女性では約45%、41~42歳の女性では10%をわずかに超えると推定されています。
卵細胞質内精子注入法
卵細胞質内精子注入法は、以下の場合に用いられることがあります。
他の方法が成功する可能性が低いとき
精子に深刻な問題があるとき
1個の卵子につき精子を1個だけ注入するという点以外は、体外受精に類似しています。
2018年までには、米国で行われた生殖補助医療のうち3分の2以上で、卵細胞質内精子注入法が利用されました。
この方法では先天異常の可能性が高くなりますが、その理由としては以下のものが考えられます。
操作手順によって卵子、精子、または胚が傷つく可能性があります。
この手順に異常なY染色体(性染色体の1つ)をもつ男性の精子が使用されると、男子胎児において生殖器の発達が影響を受け、典型的には胎児の父親と似た妊よう性の問題が生じます。卵細胞質内精子注入法により生まれた子どもの先天異常のほとんどが、生殖器に関係しています。
配偶子卵管内移植(GIFT)
体外受精の成功率が非常に高いため、配偶子卵管内移植(GIFT)は米国ではほとんど行われていません。
GIFTは卵管の機能が正常な場合に使用します。体外受精の場合と同様に卵子と運動性の良好な精子を採取しますが、培養室での受精は行いません。代わりに、腹部の小さな切開口から腹腔鏡を用いて、もしくは腟から超音波画像をガイドにしながら、卵子と精子を卵管の最も奥の部分に注入することにより、卵管の中で受精が起こるようにします。そのため、この方法は体外受精よりも女性の体に負担がかかります。
その他の方法
その他、以下のような方法があります。
体外受精とGIFTの併用
受精卵(接合子)の卵管への移植(用いられることはまれ)
別の女性(ドナー)の卵子や胚の利用(特に母親が42歳以上の場合)
凍結卵子の代理母への移植