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小児の脳腫瘍の概要

執筆者:

Renee Gresh

, DO, Nemours A.I. duPont Hospital for Children

レビュー/改訂 2021年 6月
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やさしくわかる病気事典

小児の脳腫瘍の症状

頭蓋内部の圧力(頭蓋内圧)の上昇により、脳腫瘍の最初の症状が生じることがあります。腫瘍が脳内の髄液の流れを遮っている場合、または腫瘍が占める領域が大きい場合、頭蓋内圧が上昇することがあります。頭蓋内圧が上昇すると、次のようなことが起こります。

腫瘍が発生した脳の部位により、その他の様々な症状が生じます。

小児の脳腫瘍の診断

  • 画像検査

  • 通常は生検、ときに腫瘍全体を切除する手術

  • ときに腰椎穿刺

医師は症状に基づいて脳腫瘍を疑います。

脳腫瘍の有無を確かめるため、通常、医師は MRI MRI検査 MRI検査は、強い磁場と非常に周波数の高い電磁波を用いて極めて詳細な画像を描き出す検査です。X線を使用しないため、通常はとても安全です。( 画像検査の概要も参照のこと。) 患者が横になった可動式の台が装置の中を移動し、筒状の撮影装置の中に収まります。装置の内部は狭くなっていて、強い磁場が発生します。通常、体内の組織に含まれる陽子(原子の一部で正の電荷をもちます)は特定の配列をとっていませんが、MRI装置の中で発生するような強い磁場の中に... さらに読む MRI検査 などの画像検査を行います。たいていの場合、腫瘍はMRI検査で検出できます。 CT検査 CT検査 CT検査(以前はCAT検査とよばれていました)では、X線源とX線検出器が患者の周りを回転します。最近の装置では、X線検出器は4~64列あるいはそれ以上配置されていて、それらが体を通過したX線を記録します。検出器によって記録されたデータは、患者の全周の様々な角度からX線により計測されたものであり、直接見ることはできませんが、検出器からコンピュータに送信され、コンピュータが体の2次元の断面のような画像(スライス画像)に変換します。(CTとは... さらに読む CT検査 が行われることもあります。MRIまたはCT検査の前に、通常は造影剤が静脈に注射されます。造影剤は画像を鮮明にする物質です。脳腫瘍が疑われる場合、医師は通常、診断を確定するために組織の小片を採取します(生検)。場合によっては、小片を採取する代わりに、手術で腫瘍全体を切除することもあります。

ときに 腰椎穿刺 腰椎穿刺の方法 腰椎穿刺の方法 が行われ、髄液が採取されて顕微鏡で検査されることもあります。この処置は、腫瘍細胞が髄液中まで広がっていないかどうかを確認する場合や診断がはっきりしない場合に、決まって行われます。

小児の脳腫瘍の治療

  • 手術による腫瘍の切除

  • 化学療法、放射線療法、またはその両方

  • 髄液の排出

通常、脳腫瘍の治療では 手術で腫瘍が切除 がんの手術 手術は、がんに対して昔から用いられてきた治療法です。大半のがんでは、リンパ節や遠く離れた部位に転移する前に除去するには、手術が最も効果的です。手術のみを行う場合もあれば、 放射線療法や 化学療法などの治療法と併用する場合もあります( がん治療の原則も参照)。医師は以下の他の治療を行うことがあります。 手術前に腫瘍を小さくする治療(術前補助療法) 手術後にできるだけ多くのがん細胞が除去されるようにする治療(術後補助療法)... さらに読む されます。その後、 化学療法 化学療法とがんに対する他の全身療法 全身療法とは、がんに対して直接行うのではなく、身体全体に影響を及ぼす治療法です。化学療法は全身療法の一種であり、薬物を用いてがん細胞を死滅させるか、または増殖を阻止します。 がんの全身療法には次のようなものがあります。 ホルモン療法 化学療法(抗がん剤) 分子標的療法 さらに読む 放射線療法 がんに対する放射線療法 放射線は、コバルトなどの放射性物質や、粒子加速器(リニアック)などの特殊な装置から発生する強いエネルギーの一種です。 放射線は、急速に分裂している細胞や DNAの修復に困難がある細胞を優先的に破壊します。がん細胞は正常な細胞より頻繁に分裂し、多くの場合、放射線によって受けた損傷を修復することができません。そのため、がん細胞はほとんどの正常な細胞よりも放射線で破壊されやすい細胞です。ただし、放射線による破壊されやすさはがん細胞によって異な... さらに読む 、または その両方 がんの併用療法 抗がん剤は、複数の薬を組み合わせて使用する場合に最も効果的です。併用療法の原理は、異なる仕組みで作用する薬を用いることで、治療抵抗性のがん細胞が発生する可能性を減らすというものです。異なる効果をもつ薬を併用する場合は、耐えがたい副作用を伴うことなくそれぞれの薬を最適な用量で使用できます。( がん治療の原則も参照のこと。) 一部のがんでは、 がん手術、 放射線療法、 化学療法または他の抗がん剤を組み合わせるのが最善の方法です。手術と放射線... さらに読む が行われます。小児の脳腫瘍治療に精通した 専門家の医療チーム がん治療の医療チーム 小児におけるがんはまれです。2021年の米国では、0~14歳の小児10,500人ががんと診断され、1100人強の小児ががんにより死亡すると推定されています。また、15~19歳の青年5100人ががんと診断され、約600人ががんにより死亡すると推定されています。これに対し成人では、190万人ががんと診断され、約608... さらに読む が治療計画を作成します。この医療チームには、小児がん専門医(腫瘍医)、小児神経科医、小児神経外科医、放射線腫瘍医など、乳児、小児、青年の介護や治療を専門とする医師が加わります。

手術可能な場合には頭蓋骨を開いて、腫瘍が切除されます(開頭術)。一部の脳腫瘍は、脳をほとんど傷つけることなく摘出することができます。手術後にMRI検査が行われ、残っている腫瘍があるかどうか、残っていればどのくらい残っているのかが確認されます。

腫瘍が手術で切除できない場合には、通常、追加的な治療が必要になります。5~10歳未満の小児の場合、腫瘍の種類によっては放射線療法が成長と脳の発達に悪影響を与えかねないため、初めに化学療法が行われることがあります。より年長の小児の場合は、必要に応じて放射線療法が行われます。化学療法では重篤な副作用が生じることがあります。

腫瘍が髄液の流れを遮っている場合には、腫瘍を手術で切除する前に、細いチューブ(カテーテル)を用いて髄液を外に排出することがあります。局所麻酔または全身麻酔を行った後、頭蓋骨に開けた小さな孔からカテーテルを通して排液を行い、頭蓋内圧を低下させます。カテーテルは頭蓋内圧測定用ゲージにつながれます。数日後、カテーテルは取り外されるか、永久的に留置できる排液チューブ(シャント― 水頭症 水頭症 水頭症とは、脳内の正常な空間(脳室)や、脳を覆う組織の内側の層および中間の層の間(くも膜下腔)に液体が過剰にたまった状態です。過剰に貯まった液体によって、通常は頭囲の拡大と発達異常が生じます。 脳内の正常な空間(脳室)にある液体が排出されないと水頭症が起こります。 この液体の蓄積には、先天異常、脳内出血、脳腫瘍などの多くの原因があります。 典型的な症状としては、頭の異常な拡大や発達異常などがあります。... さらに読む 水頭症 を参照)に取り替えられます。

小児ではがんは比較的まれなため、脳腫瘍の小児については、可能であれば必ず、 臨床試験 科学としての医学 医師たちは、何千年にもわたって人々の治療を行ってきました。医学的な治療の最も古い記録は、3500年以上前の古代エジプトのものです。それ以前にも、ヒーラーやシャーマンと呼ばれる人たちが、病人やけが人に薬草などによる治療を提供していたと考えられています。一部の単純な骨折や軽いけがに用いられたものなど、いくつかの治療法は実際に効果があるものでし... さらに読む への参加を検討するべきです。臨床試験では、一部の小児は標準的な治療を受け、それ以外の小児は試験段階の治療(実験的治療と呼ばれます)を受けることになります。実験的治療としては、新薬を使用する治療、既存の薬を新しい方法で使用する治療、新しい方法での手術や放射線治療などが行われます。ただし、実験的治療が常に効果的であるとは限らず、副作用や合併症が分かっていない場合もあります。

さらなる情報

役立つ可能性がある英語の資料を以下に示します。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。

  • 米国がん協会:あなたの子どもががんと診断されたら(If Your Child Is Diagnosed With Cancer):がんになった小児の親や家族向けの情報源で、診断直後に生じる問題や疑問にどう対処するかについて情報を提供している

ここでは、脳腫瘍の団体が脳腫瘍の種類と治療法に関する情報と、以下のような支援団体に関する養育者向けの情報を提供しています。

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