アルコール関連障害の発症には遺伝的な特性や個人的な性質が関与している場合があります。
アルコールを飲みすぎると、眠くなったり攻撃的になり、運動協調や精神機能が損なわれたり、仕事、家族関係、その他の活動が妨げられたりします。
大量の飲酒を長期間続けると、アルコールに依存するようになり、肝臓、脳、心臓に損傷が生じます。
医師は質問票を利用したり血中のアルコール濃度を測定して、アルコール関連障害の人の特定に役立てます。
過剰摂取に対する緊急治療として呼吸の補助、水分、チアミン、場合によってはその他のビタミンの補給(慢性的なアルコール関連の欠乏症の是正のため)を行い、離脱症状にはベンゾジアゼピン系薬剤を投与します。
解毒とリハビリテーションプログラムが重度のアルコール関連障害の人に役立ちます。
(薬物使用と薬物乱用 物質関連障害の概要 薬剤やその他の物質は、それが合法な医療上の用途で使用されるものか、習慣的に使用されるものか(例えば、カフェイン)、娯楽目的で使用されるものか(レクリエーショナルドラッグ)にかかわらず、多くの人々にとって日々の生活に不可欠なものとなっています(表「 医療上の用途と娯楽的な用途が両方ある薬物」を参照)。... さらに読む も参照のこと。)
米国では成人の約半数が飲酒しており、20%はかつて飲酒し、30~35%は飲酒経験がありません。長期間大量(1日2~6ドリンク超)の飲酒をすると、いくつかの臓器、特に肝臓、心臓、脳が損傷を受ける可能性があります。一方、適量の飲酒は心臓および血管(心血管)障害による死亡リスクを減らすことがあります。しかし、このような目的のための飲酒は勧められません(特にほかにより安全で効果的な予防手段がある場合)。
アルコール関連障害
ほとんどの人は、健康を損ねたり活動を妨げるほどの量や頻度で飲酒をしません。しかし米国では、成人の約14%が飲酒による問題(アルコール使用障害[アルコール依存症としても知られる])を抱えています。男性がアルコール使用障害を発症する可能性は女性の2~4倍高くなります。アルコール使用障害やその他の 物質使用障害 物質使用障害 物質使用障害では一般に、ある物質(例えば、レクリエーショナルドラッグ)の使用により問題が生じているにもかかわらず、その使用を継続する行動パターンがみられます。 そのような物質は、以下のような物質関連障害の典型的な原因として知られる10種類の薬物のいずれかであることが多いです。 アルコール 抗不安薬と鎮静薬 カフェイン さらに読む では、物質の使用により問題が生じているにもかかわらず、その使用を続けます。
アルコール摂取は多くの破滅的行動や影響を引き起こすことがあります。
飲酒運転
転倒やけんか、自動車事故による身体的なけが
暴力(ドメスティックバイオレンスなど)
酒に酔うことが原因で家族や社会的な人間関係が崩壊することもあります。夫婦のどちらかが大酒飲みの場合、離婚率が50%高くなります。欠勤があまりに多くなり失業することもあります。
特別な集団
乳幼児の飲酒(通常偶発的)では、 血糖値が極端に下がり 低血糖 低血糖とは、血液中のブドウ糖の値(血糖値)が異常に低くなっている状態です。 低血糖は、糖尿病を管理するために服用する薬によるものが最も多くみられます。低血糖のまれな原因としては、他の種類の薬、深刻な病態や臓器不全、炭水化物に対する反応(感受性の高い人において)、膵臓のインスリン産生腫瘍、一部の肥満外科手術(減量のための手術)などがあります。 血糖値が下がると、空腹、発汗、ふるえ、疲労、脱力感、思考力の低下といった症状が生じますが、重度の... さらに読む 、昏睡になるリスクが非常に高くなります。
女性は、体重当たりに換算しても男性よりアルコールの作用に敏感です。
また高齢者は、若い人よりアルコールの作用に敏感です。
妊娠中に飲酒する女性では、 胎児性アルコール症候群 妊娠中のアルコール 妊婦の50%以上が、妊娠中に処方薬や市販薬(処方なしで購入できる薬剤)を服用したり、社会的薬物(タバコやアルコール)または違法薬物を使用しており、妊娠中の薬の使用は増えてきています。一般に、薬の多くは胎児に害を及ぼす可能性があるため、妊娠中は、必要な場合を除いて、薬剤を使用すべきではありません。病気や症状の治療に使用された薬剤が原因で発生... さらに読む の子どもが生まれるリスクが高くなります。
アルコールの作用に対する感受性は年齢によって様々ですが、あらゆる年齢層の人がアルコール使用障害になる可能性があります。 青年の薬物や物質の使用や乱用 青年の物質使用 青年の物質使用は、試してみただけのものから重度の 物質使用障害まで様々です。物質使用は、試してみただけの使用も含め、いずれも青年を事故、けんか、望んでいない性行為、 過剰摂取などの短期的な問題のリスクにさらします。物質使用はまた、青年の脳の発達を妨げます。青年は物質使用の影響を受けやすく、青年期に定期的な飲酒や、大麻(マリファナ)、ニコチン、その他の薬物の使用がある場合、 精神障害、学業の不振、物質使用障害、高い依存症発生率などの長期的... さらに読む が年々増加し、特に悲惨な結果を生んでいます。早期(特に13歳未満)に飲酒を始めた人は、成人後に依存しやすくなります。
アルコール使用障害の原因
アルコール使用障害には遺伝がある程度関係しています。血縁にアルコール使用障害のある人がいる場合、一般の人よりアルコール使用障害になりやすく、またアルコール使用障害の患者の実子は養子と比べてアルコール使用障害を発症しやすい傾向があります。
一部の研究によると、アルコール使用障害になるリスクが高い人は、アルコールに関する問題を抱えていない人と比べてなかなか酔わないとされています。つまり、アルコール使用障害になるリスクが高い人の脳は、アルコールの作用に鈍感であるといえます。アルコール使用障害の患者の血縁はこの性質を受け継いでいる可能性があります。
特定の要因や人格特性がアルコール使用障害の要因となることがあります。アルコール使用障害の患者には、孤立感、孤独感、内気、抑うつ、周囲に対する敵意などがよくみられます。自己破壊的に行動することもあります。このような特性がアルコール使用障害の原因なのか、それとも結果なのかは不明です。
アルコール使用障害の症状
アルコールが引き起こす基本的な問題は以下の3種類です。
大量に飲んだ直後の特定の時間に現れるもの(中毒、過剰摂取)
定期的に大量飲酒する人で長期間にわたり現れるもの
即時作用
アルコールは、体内で処理(代謝)されて体外に排出される速度よりも吸収される速度が速いため、ほぼ即時に作用が現れます。血中アルコール濃度が急激に上昇し、飲酒の影響が数分で現れます。
影響は人により大きく異なります。例えば、定期的に(1日2ドリンク以上)飲む人では、普段は飲まないか付き合いでのみ飲む人に比べると、同じ量のアルコールによる影響が小さく、耐性と呼ばれる現象がみられます。アルコールに対して耐性ができた人では、バルビツール酸系薬剤やベンゾジアゼピン系薬剤など脳機能を低下させる他の薬に対しても耐性を示すことがあります。
作用は、血中アルコール濃度により様々です(血中アルコール濃度は通常、米国では1デシリットル[1リットルの10分の1]当たりのミリグラム単位の含有量[mg/dL]、世界の他の地域では1リットル当たりのミリモル単位の含有量[mmol/L]で表されます)。ある症状が発現する実際の血中濃度は耐性により大きく異なりますが、耐性が現れていない一般的な飲酒者では、以下が典型的な症状です。
20~50mg/dL(4.3~10.9 mmol/L):静穏、軽度の眠気、協調運動能力の低下、運転能力の低下
50~100mg/dL(10.9~21.7mmol/L):判断力低下、協調運動能力のさらなる低下
100~150mg/dL(21.7~32.6mmol/L):不安定歩行、話し方が不明瞭になる、行動の抑制がきかない、記憶障害
150~300mg/dL(32.6~65.1mmol/L):せん妄、嗜眠(起こりやすい)
300~400mg/dL(65.1~86.8mmol/L):しばしば意識消失
≥ 400mg/dL(≥ 86.8mmol/L):場合により致死的
中等度から重度のアルコール中毒では嘔吐がよくみられます。非常に眠くなるため、嘔吐物が肺に入り(誤嚥)、 肺炎 誤嚥性肺炎と化学性肺炎 誤嚥性肺炎は、口腔内の分泌物、胃の内容物、またはその両方を肺に吸い込んだ場合に発生する肺の感染症です。化学性肺炎は、肺を刺激する物質や肺に有毒な物質を吸い込んだ場合に起こる肺の炎症です。 症状には、せきや息切れなどがあります。 医師は、患者の症状や胸部X線検査に基づいて診断を下します。 治療法や予後は、吸い込んだ物質の種類によって異なります。 誤嚥性肺炎と化学性肺炎は、どちらも肺を刺激する物質を吸入して起こる肺の炎症であるため、しばしば... さらに読む を起こし死亡する場合もあります。
米国では、すべての州で血中アルコール濃度(BAC)が80mg/dL(17.4mmol/L、0.08%)以上での運転を犯罪と規定していますが、具体的な州の法律や罰則は様々です。
過剰摂取
定期的に飲酒しない人では、血中アルコール濃度が300~400mg/dL(65.1~86.8mmol/L)となるとしばしば意識不明になり、血中アルコール濃度が400mg/dL以上(≥ 86.8mmol/L)となると死亡することがあります。呼吸障害または心拍リズムの異常(不整脈 不整脈の概要 不整脈とは、一連の心拍が不規則、速すぎる(頻脈)、遅すぎる(徐脈)、あるいは心臓内で電気刺激が異常な経路で伝わるなど、心拍リズムの異常のことをいいます。 不整脈の最も一般的な原因は心臓の病気(心疾患)です。 自分で心拍リズムの異常に気づくこともありますが、ほとんどの人は、脱力感や失神などの症状が起きるまで不整脈を自覚しません。... さらに読む )による死は、特に急激に大量飲酒した際に起こる可能性があります。大量の飲酒により、 低血圧 低血圧 低血圧とは、めまいや失神などの症状が出現するほど、血圧が低下した状態のことです。血圧が極度に低下すると、臓器に損傷が起きる可能性があり、そのような病態を ショックと呼んでいます。 体内の血圧を維持する仕組みは、様々な薬や病気によって影響を受けます。 血圧が下がりすぎた場合、脳の機能不全や失神を起こすことがあります。... さらに読む や 低血糖 低血糖 低血糖とは、血液中のブドウ糖の値(血糖値)が異常に低くなっている状態です。 低血糖は、糖尿病を管理するために服用する薬によるものが最も多くみられます。低血糖のまれな原因としては、他の種類の薬、深刻な病態や臓器不全、炭水化物に対する反応(感受性の高い人において)、膵臓のインスリン産生腫瘍、一部の肥満外科手術(減量のための手術)などがあります。 血糖値が下がると、空腹、発汗、ふるえ、疲労、脱力感、思考力の低下といった症状が生じますが、重度の... さらに読む が引き起こされることがあります。
飲酒常習者では特定の血中濃度でも作用が異なります。多くは影響がないようで、比較的高濃度、300~400mg/dL(65.1~86.8mmol/L)でも正常に機能しているようにみえます。
中程度の量のアルコールでさえ、短期記憶の形成を妨げ、記憶喪失(ブラックアウト)を引き起こすことがあります。酒に酔った人は社交的でおしゃべりにみえますが、記憶喪失期間の記憶はほとんどありません。
長期的な影響
長期間にわたる大量の飲酒は、体内の多くの器官、特に肝臓の損傷をもたらします(アルコール性肝疾患 アルコール性肝疾患 )。十分な食事をとらないため、重度のビタミン欠乏症やその他の栄養不良が現れることもあります。
アルコール性肝疾患 アルコール性肝疾患 アルコール性肝疾患は、長期にわたる大量の飲酒によって肝臓に損傷が起きる病気です。 一般に、飲酒の量、頻度、期間によって肝傷害のリスクと重症度が決まります。 最初は無症状ですが、次第に発熱、黄疸、疲労がみられるようになり、肝臓は圧痛や痛みが生じて大きくなり、やがて消化管出血や脳機能低下などの、より深刻な問題が現れます。... さらに読む としては、 肝炎 肝炎の概要 肝炎とは肝臓の炎症です。 ( 急性ウイルス性肝炎の概要と 慢性肝炎の概要も参照のこと。) 肝炎は世界中でみられる病気です。 肝炎には以下の種類があります。 急性(経過が短い) さらに読む (肝臓の炎症)、 脂肪肝 脂肪肝 脂肪肝は、肝細胞の内部に中性脂肪(トリグリセリド)が過剰に蓄積した状態です。 脂肪肝の患者には、疲労や腹部の軽い不快感が生じることがありますが、それ以外の症状はみられません。 脂肪肝は、線維化や肝硬変などの進行した肝疾患を引き起こすことがあります。 診断を確定するため、また損傷の原因と範囲を特定するために肝生検が必要になることがあります。 医師は、メタボリックシンドロームや過度の飲酒など、脂肪肝の原因をコントロールするか取り除くことに重... さらに読む 、 肝硬変 肝硬変 肝硬変は、機能を果たさない瘢痕組織が大量の正常な肝組織と永久に置き換わり、肝臓の内部構造に広範な歪みが生じることです。肝臓が繰り返しまたは継続的に損傷を受けると、瘢痕組織が生じます。肝硬変はかつては不可逆的と考えられていましたが、最近の科学的証拠から一部の症例では可逆的であることが示唆されています。 肝硬変の最も一般的な原因は、慢性的な アルコール乱用、 慢性ウイルス性肝炎、... さらに読む (肝臓の瘢痕化)などがあります。アルコールで損傷した肝臓は、有害な老廃物を体外に排出する能力が低下するため、脳の機能不全(肝性脳症 肝性脳症 肝性脳症は、重度の肝疾患がある人において、正常なら肝臓で除去されるはずの有害物質が血液中に蓄積して脳に達することで、脳機能が低下する病気です。 肝性脳症は、長期にわたる(慢性の)肝疾患がある患者に発生します。 肝性脳症は、消化管での出血、感染症、処方薬を正しく服用しないこと、その他のストレスによって誘発されます。 錯乱、見当識障害、眠気が起こるとともに、性格、行動、気分の変化がみられます。... さらに読む )を起こすことがあります。肝性脳症を発症すると、動作が緩慢になったり、眠気、昏迷、錯乱などの症状が現れ、昏睡に陥ることがあります。肝性昏睡は生命を脅かす状態であり、直ちに治療する必要があります。
肝不全患者では通常、 羽ばたき振戦 肝性脳症 肝性脳症は、重度の肝疾患がある人において、正常なら肝臓で除去されるはずの有害物質が血液中に蓄積して脳に達することで、脳機能が低下する病気です。 肝性脳症は、長期にわたる(慢性の)肝疾患がある患者に発生します。 肝性脳症は、消化管での出血、感染症、処方薬を正しく服用しないこと、その他のストレスによって誘発されます。 錯乱、見当識障害、眠気が起こるとともに、性格、行動、気分の変化がみられます。... さらに読む もみられます。腕や手を伸ばしたときに、手が突然下がった後、元の位置に戻ります。羽ばたき振戦は、振戦(体の一部が律動的にふるえること)に似ていますが、振戦ではありません。
肝硬変 肝硬変 肝硬変は、機能を果たさない瘢痕組織が大量の正常な肝組織と永久に置き換わり、肝臓の内部構造に広範な歪みが生じることです。肝臓が繰り返しまたは継続的に損傷を受けると、瘢痕組織が生じます。肝硬変はかつては不可逆的と考えられていましたが、最近の科学的証拠から一部の症例では可逆的であることが示唆されています。 肝硬変の最も一般的な原因は、慢性的な アルコール乱用、 慢性ウイルス性肝炎、... さらに読む は、肝臓周囲の血管の血圧を上昇させます(門脈圧亢進症 門脈圧亢進症 門脈圧亢進症は、門脈(腸から肝臓に向かう太い静脈)とその分枝の血圧が異常に高くなる病気です。 欧米諸国で最も一般的な原因は、 肝硬変(瘢痕化により肝臓の構造が歪み、機能が損なわれること)です。 門脈圧亢進症は、腹部の膨隆( 腹水)、腹部の不快感、錯乱、消化管での出血につながります。 医師は、症状および身体診察の結果、ときには超音波検査、CT検査、MRI検査、または 肝生検の結果に基づいて診断を下します。... さらに読む )。これらの血管の血圧が上昇すると、胃や食道の血管の腫れ(静脈瘤)が生じることがあります。腫れた血管が破裂してひどく出血し、吐血することがあります。損傷した肝臓は血液を凝固させる物質を十分に生産しないため、この出血は特に問題です。
過度の飲酒により、膵臓の炎症(膵炎 急性膵炎 急性膵炎は、突然起きた膵臓の炎症で、軽度のものから生命を脅かすものまでありますが、通常は治まります。 胆石とアルコール乱用が急性膵炎の主な原因です。 重度の腹痛が主な症状です。 診断には血液検査と画像検査(CT検査など)が役立ちます。 軽度であれ中等度であれ重度であれ、急性膵炎では通常は入院が必要になります。 さらに読む )が起こることもあります。嘔吐を伴う重度の腹痛が現れます。
過度の飲酒は、神経や脳の一部を損傷することもあります。腕や脚につながる神経(末梢神経 末梢神経系の概要 末梢神経系とは、中枢神経系以外の神経系、すなわち脳と脊髄以外の神経のことを指します。 末梢神経系には以下のものが含まれます。 脳と頭部、顔面、眼、鼻、筋肉、耳をつなぐ神経( 脳神経) 脊髄と体の他の部位をつなぐ神経(31対の脊髄神経を含む) 体中に分布している1000億個以上の神経細胞 さらに読む )が侵されると、手足の感覚が消失したり、ピンや針で刺されるような感覚が生じたりすることがあります。慢性の 振戦 振戦 振戦とは、手、頭、声帯、体幹、脚などの体の一部に起こる、不随意でリズミカルなふるえです。振戦は、筋肉の収縮と弛緩が繰り返されたときに起こります。 ( 運動障害の概要も参照のこと。) 振戦には以下の種類があります。 正常(生理的)なもの 病気または薬剤によって引き起こされる異常(病的)なもの さらに読む が生じる可能性があります。協調運動をつかさどる脳の領域(小脳)を損傷すると、腕や脚の動きをコントロールできなくなり、平衡感覚に影響が生じることがあります。長期に及ぶ大量の飲酒は、不可逆的な脳の障害や精神病を引き起こすことがあります。脳神経を覆うさや(髄鞘)が損傷し、マルキアファーヴァ・ビニャミ病というまれな病気を引き起こすこともあります。この病気になると興奮して錯乱し、認知症になります。けいれん発作を起こし、昏睡して死に至る場合もあります。
長期に及ぶ大量の飲酒は、ビタミンB群の1つである チアミンの重度の欠乏症 チアミン欠乏症 チアミン欠乏症(脚気やその他の問題を引き起こす)は、食料不安の蔓延率が高い国で食事が主に白米や高度に精製された炭水化物から成る人や、アルコール使用障害の患者に最も多くみられます。 主として白小麦粉や白砂糖、その他の高度に精製された炭水化物から成る食事は、チアミン欠乏症の原因となることがあります。 最初は疲労や易怒性などの漠然とした症状がみられますが、重度の欠乏症(脚気)では神経、筋肉、心臓、脳に影響が及ぶことがあります。... さらに読む を引き起こすことがあります。この欠乏症により ウェルニッケ脳症 ウェルニッケ脳症 ウェルニッケ脳症は、 チアミン欠乏により錯乱、眼の障害、平衡感覚の喪失を引き起こす脳疾患です。 ウェルニッケ脳症は、ビタミンB群の1つである チアミンの重度の欠乏が原因で発症します。体内にチアミンが少量しか蓄えられていない場合、炭水化物の摂取が誘因となることがあります。 重度の アルコール使用障害の患者は、長期にわたる過剰なアルコール摂取により、消化管からのチアミンの吸収や、肝臓のチアミンの貯蓄が妨げられるため、しばしばウェルニッケ脳症... さらに読む (錯乱、歩行の協調運動ができないことや、眼球の動きを調節するのが困難になることを特徴とする病気)を発症し、速やかに治療しないと、 コルサコフ症候群 コルサコフ精神病 コルサコフ精神病は、 長期に及ぶチアミン欠乏症の合併症であり、最近の出来事に関する記憶障害、錯乱、行動変化が生じます。ウェルニッケ脳症とともに診断されることがよくあります。 ( 薬物使用と薬物乱用も参照のこと。) コルサコフ精神病は、 ウェルニッケ脳症(長期間にわたり大量の アルコールを摂取する人に生じうる一種のビタミン欠乏症によって引き起こされる脳疾患)を治療しないでいる人の80%に発生します。先に典型的なウェルニッケ脳症の発作が生じ... さらに読む が現れ、 昏睡 昏睡と意識障害 から死亡に至ることもあります。
飲酒により、既存の うつ病 うつ病 遷延性悲嘆症についての短い考察。 うつ病とは、悲しみを感じたり、活動に対する興味や喜びが減少したりする症状がその人の社会生活を困難にするほど強くなり、病気になった状態です。喪失体験などの悲しい出来事の直後に生じることがありますが、悲しみの程度がその出来事とは不釣り合いに強く、妥当と考えられる期間より長く持続します。 遺伝、薬の副作用、つらい出来事、ホルモンなど体内の物質の量の変化、その他の要因がうつ病の一因になる可能性があります。... さらに読む が悪化することがあります。またアルコール使用障害の人は、アルコールに関する問題を抱えていない人より、うつ病になる可能性が高くなります。アルコール関連障害の人、特に大量の飲酒をする人は、しばしば酔っていないときに深い自責の念に駆られるため、アルコール使用障害の人は飲んでいないときでも自殺傾向があります。
妊婦が飲酒した場合、胎児の発達に深刻な影響を及ぼすことがあり、出生時の低体重や低身長、小頭症、心臓の損傷、筋肉の損傷、知能低下や知的障害といった重大な問題を引き起こすことがあります。これらの影響は 胎児性アルコール症候群 妊娠中のアルコール 妊婦の50%以上が、妊娠中に処方薬や市販薬(処方なしで購入できる薬剤)を服用したり、社会的薬物(タバコやアルコール)または違法薬物を使用しており、妊娠中の薬の使用は増えてきています。一般に、薬の多くは胎児に害を及ぼす可能性があるため、妊娠中は、必要な場合を除いて、薬剤を使用すべきではありません。病気や症状の治療に使用された薬剤が原因で発生... さらに読む と呼ばれます。したがって、妊娠中は飲酒を控えた方が賢明です。
離脱症状
一定期間続けて飲酒していた人が突然飲むのをやめると、離脱症状が起こりやすくなります。例えば、待機手術での入院中には飲酒できないため、離脱症状が起こりえます。
離脱症状は軽度から重度まで様々です。重度の離脱症状は治療しないと致死的となる可能性があります。
軽度から中等度の離脱症状は、通常、飲酒をやめてから6時間以内に始まります。軽度の症状として、振戦、頭痛、脱力感、発汗、吐き気などがあります。 けいれん発作 けいれん性疾患 けいれん性疾患では、脳の電気的活動に周期的な異常が生じることで、一時的に脳の機能障害が引き起こされます。 多くの人では、けいれん発作が始まる直前に感覚の異常がみられます。 コントロールできないふるえや意識消失が起こる場合もありますが、単に動きが止まったり、何が起こっているか分からなくなったりするだけにとどまる場合もあります。... さらに読む (アルコール性てんかん、ラム発作ともいいます)を起こす人もいます。
アルコール幻覚症は、ヘビードリンカー(大酒飲み)が飲酒をやめると起こることがあります。非難したり脅したりする声が聞こえ、不安や恐怖に駆られます。アルコール幻覚症は数日続くこともありますが、クロルプロマジンやチオリダジン【訳注:日本では販売中止】などの抗精神病薬でコントロールできます。
振戦せん妄(DT)は最も深刻な離脱症状の1つです。通常、振戦せん妄はすぐには始まりません。むしろ、飲酒をやめてから48~72時間で現れます。最初は不安になります。その後、次第に錯乱状態が強まり、眠れなくなり、恐ろしい悪夢、大量発汗、重度の抑うつが生じます。脈拍が速くなり、血圧が上がります。典型的には発熱がみられます。症状が高じ、現れては消える一過性の幻覚や、恐怖感や不安をかきたてる幻想、恐ろしい幻視を伴う見当識障害などが現れることがあります。薄暗いところで何かが見えることが特に恐ろしく、極度の錯乱状態に陥ります。平衡感覚に障害が生じることにより、床が動く、壁が落ちる、部屋が回転すると感じる場合もあります。振戦せん妄が進行すると、手が絶えずふるえ、場合によっては頭や体にまで広がることがあります。ほとんどの場合、重度の協調運動障害になります。振戦せん妄は、治療しないで放置すると致死的になる場合があります。
アルコール使用障害のスクリーニング
一部の人は自分の飲酒量が問題であることに気づいていません。アルコールの問題があることに気づいていても認めたくない人もいます。したがって、医療従事者は助けを求められるのを待ってはいません。医療従事者は、原因不明の行動の変化や自己破壊的な行動がみられる場合にアルコール使用障害を疑います。また、 高血圧 高血圧 高血圧とは、動脈内の圧力が恒常的に高くなっている状態のことです。 高血圧の原因は不明のことも多いですが、腎臓の基礎疾患や内分泌疾患によって起こる場合もあります。 肥満、体を動かさない生活習慣、ストレス、喫煙、過度の飲酒、食事での過剰な塩分摂取などはすべて、遺伝的に高血圧になりやすい人の高血圧の発症に何らかの形で関与しています。... さらに読む や 胃炎 胃炎 胃炎とは、胃の粘膜の炎症です。 胃炎は、感染、重い病気によるストレス、損傷、特定の薬、免疫系の病気など、様々な要因によって起こります。 胃炎の症状が発生する場合、腹痛や腹部不快感、ときには吐き気や嘔吐などがみられます。 診断は、多くの場合患者の症状に基づいて下されますが、内視鏡(観察用の柔軟な管状の機器)で胃を調べなければならないこともあります(上部消化管内視鏡検査)。 治療には胃酸を減らす薬のほか、ときに抗菌薬が使用されます。 さらに読む などの内科疾患に対して普通の治療が効かない場合もアルコール使用障害を疑います。
多くの医療従事者は、定期的に飲酒状況について質問することで、アルコール関連の問題がないかをスクリーニングしています。以下のような質問です。
平均して、1週間に何日飲酒をしますか。
飲酒するときは、通常どれくらいの量を飲みますか。
この1カ月で最も多く飲んだのは何ドリンクくらいですか。
医師はアルコール使用障害を疑う場合、飲んだ後の様子について次のようなさらに詳細な質問をします。
飲酒量を減らすべきだと感じたことはありますか。
飲酒を批判されてイライラしたことがありますか。
飲酒について罪悪感がありますか。
神経を落ち着かせるため、または二日酔いを追い払うために「目覚めの一杯(朝起きたときの酒)」をしたことがありますか。
これらの質問の答えに「はい」が2つ以上ある場合は、アルコール使用障害がある可能性が高くなります。
アルコール使用障害の診断
アルコール中毒の自己申告
血液検査
スクリーニング用質問票
急性アルコール中毒は通常、本人や友人が医師に話したことと身体診察の結果に基づいて明らかになります。異常な行動の原因が明らかでない場合は、 低血糖 低血糖 低血糖とは、血液中のブドウ糖の値(血糖値)が異常に低くなっている状態です。 低血糖は、糖尿病を管理するために服用する薬によるものが最も多くみられます。低血糖のまれな原因としては、他の種類の薬、深刻な病態や臓器不全、炭水化物に対する反応(感受性の高い人において)、膵臓のインスリン産生腫瘍、一部の肥満外科手術(減量のための手術)などがあります。 血糖値が下がると、空腹、発汗、ふるえ、疲労、脱力感、思考力の低下といった症状が生じますが、重度の... さらに読む や 頭部外傷 頭部外傷の概要 脳が関与する頭部外傷は特に懸念されます。 頭部外傷の一般的な原因には、転倒や転落、自動車事故、暴行、スポーツやレクリエーション活動中の事故などがあります。 軽症の頭部外傷では頭痛やめまいが起こることがあります。 重症の頭部外傷では、意識を失ったり、脳機能障害の症状が現れたりすることがあります。... さらに読む など、ほかに考えられる症状の原因を否定するために検査を行うことがあります。
検査として、血中アルコール濃度や血糖値を調べる血液検査、いくつかの特定の有害物質の尿検査、頭部の CT検査 消化管のCT検査とMRI検査 CT検査( CT検査)とMRI検査( MRI検査)は、腹部臓器の大きさや位置を調べるのに適しています。さらに、これらの検査では悪性腫瘍(がん)や良性腫瘍(がんではない腫瘍)もしばしば検出されます。血管の変化も検出できます。通常、虫垂や憩室などの炎症( 虫垂炎や 憩室炎など)も検出できます。ときに、X線照射や手術のガイド役としてこれらの検査を用いることもあります。 消化管のCT検査とMRI検査では、造影剤(画像検査に写る物質)を投与して、... さらに読む などを行います。医師は、単に呼気にアルコールが検出されたからといって、ほかに異常はないとは考えません。
法的な目的のために(例えば、自動車事故を起こしたときや職場で異常な行動をしたとき)、血中アルコール濃度を測定したり、呼気中のアルコール量を測定して評価する場合があります。
アルコールを長期にわたって摂取している場合、血液検査を行って、肝機能異常や他の臓器の損傷の証拠を確認することがあります。症状が極めて重い場合、CT検査などの画像検査を実施して脳損傷や感染の可能性を否定します。
アルコール使用障害の治療
以下の状況で治療を実施します。
高い血中アルコール濃度に関連する症状で連れてこられた場合。
耐えがたい離脱症状で受診した場合。ただし、アルコール離脱症状が現れた人は通常、飲酒により対処します。
飲酒を続けたくないために受診した場合。
緊急の治療
極めて大量の飲酒またはアルコールの離脱により中等度から重度の症状が現れた場合、緊急の治療が必要です。
急性中毒に対する特別の解毒剤はありません:
精神状態が正常になるまで経過観察とモニタリングを行う。
コーヒーやその他の民間療法はアルコールの作用を軽減しません。
昏睡状態に陥っている場合や、呼吸が抑制されている場合は、気管挿管して吐物や分泌物による窒息を防いだり、呼吸を補助したりする必要があります。
脱水 脱水 脱水は体内の水分が不足している状態です。 嘔吐、下痢、大量発汗、熱傷(やけど)、腎不全、利尿薬の使用により、脱水になる場合があります。 脱水が進むとのどの渇きを感じ、発汗や排尿も少なくなります。 脱水がひどくなると、錯乱やめまいを感じるようになります。 水を飲むか、場合によっては水分を静脈内投与して、失われた水分と血液中に溶けているナトリウムやカリウムなどの無機塩(電解質)を補給する治療が行われます。 さらに読む や 低血圧 低血圧 低血圧とは、めまいや失神などの症状が出現するほど、血圧が低下した状態のことです。血圧が極度に低下すると、臓器に損傷が起きる可能性があり、そのような病態を ショックと呼んでいます。 体内の血圧を維持する仕組みは、様々な薬や病気によって影響を受けます。 血圧が下がりすぎた場合、脳の機能不全や失神を起こすことがあります。... さらに読む の予防または治療が必要な場合は、静脈から水分を補給します。
慢性的な飲酒が疑われる場合には、 ウェルニッケ脳症 ウェルニッケ脳症 ウェルニッケ脳症は、 チアミン欠乏により錯乱、眼の障害、平衡感覚の喪失を引き起こす脳疾患です。 ウェルニッケ脳症は、ビタミンB群の1つである チアミンの重度の欠乏が原因で発症します。体内にチアミンが少量しか蓄えられていない場合、炭水化物の摂取が誘因となることがあります。 重度の アルコール使用障害の患者は、長期にわたる過剰なアルコール摂取により、消化管からのチアミンの吸収や、肝臓のチアミンの貯蓄が妨げられるため、しばしばウェルニッケ脳症... さらに読む を防ぐために チアミン チアミン欠乏症 チアミン欠乏症(脚気やその他の問題を引き起こす)は、食料不安の蔓延率が高い国で食事が主に白米や高度に精製された炭水化物から成る人や、アルコール使用障害の患者に最も多くみられます。 主として白小麦粉や白砂糖、その他の高度に精製された炭水化物から成る食事は、チアミン欠乏症の原因となることがあります。 最初は疲労や易怒性などの漠然とした症状がみられますが、重度の欠乏症(脚気)では神経、筋肉、心臓、脳に影響が及ぶことがあります。... さらに読む を投与します。医師は多くの場合、マグネシウム(チアミンの代謝を助ける)と総合ビタミン(ビタミン欠乏症の可能性に対して)も輸液に添加します。
医師はアルコール離脱症状に対して、しばしばベンゾジアゼピン系薬剤(軽い鎮静薬)を数日間処方します。興奮を抑え、離脱症状、けいれん発作、振戦せん妄の予防に役立ちます。ベンゾジアゼピン系薬剤に依存するようになる可能性があるため、これらの薬は短期間のみ使用します。アルコール幻覚症がある場合には、 抗精神病薬 抗精神病薬 精神病とは、妄想、幻覚、支離滅裂な思考や発言、奇妙で不適切な運動行動など、現実との接触の喪失を示す症状のことです。いくつかの精神障害が精神病症状を引き起こします( 統合失調症および関連障害群に関する序を参照)。 精神病症状を軽減または消失させるのには、抗精神病薬が有効です。これは、幻覚、妄想、支離滅裂な思考、および攻撃性の治療に最も効果的とみられています。抗精神病薬は、 統合失調症に対して処方されるのが最も一般的ですが、統合失調症、... さらに読む を投与することがあります。
振戦せん妄は生命を脅かすおそれがあるため、高熱や激しい興奮を抑える治療を積極的に行います。可能であれば集中治療室で治療します。通常、以下のような治療を行います。
高用量のベンゾジアゼピン系薬剤およびバルビツール酸系薬剤(静脈内投与)
高用量のビタミン(特にチアミン)
点滴による水分補給
体外冷却法(冷感ブランケットなど)
心拍数と血圧をコントロールする薬
合併症(膵炎 膵炎の概要 膵炎とは膵臓の炎症です。 膵臓は木の葉の形をした臓器で、長さは約13センチメートルあります。周囲を胃の下側と小腸の最初の部分(十二指腸)に囲まれています。 膵臓には主に以下の3つの機能があります。 消化酵素を含む膵液を十二指腸に分泌する 血糖値の調節を助けるインスリンとグルカゴンというホルモンを分泌する さらに読む 、 肺炎 肺炎の概要 肺炎は、肺にある小さな空気の袋(肺胞)やその周辺組織に起きる感染症です。 肺炎は、世界で最も一般的な死因の1つです。 重篤な慢性の病気がほかにある患者において、肺炎はしばしば最終的な死因となります。 肺炎の種類によっては、ワクチンの接種によって予防できます。 米国では、毎年約400~500万人が肺炎を発症し(... さらに読む 、 けいれん発作 けいれん性疾患 けいれん性疾患では、脳の電気的活動に周期的な異常が生じることで、一時的に脳の機能障害が引き起こされます。 多くの人では、けいれん発作が始まる直前に感覚の異常がみられます。 コントロールできないふるえや意識消失が起こる場合もありますが、単に動きが止まったり、何が起こっているか分からなくなったりするだけにとどまる場合もあります。... さらに読む など)の治療
このような治療で振戦せん妄は通常発症から12~24時間以内に消失し始めますが、重症の場合は5~7日間続くこともあります。回復後、大半の人は重度の離脱症状が現れていた期間の出来事を覚えていません。
急を要する医学的問題が解消した後のさらなる治療は、患者のアルコール摂取およびその他の病気や精神障害の程度によります。アルコール依存にまで至っていない場合、医師は飲酒の深刻な結果について本人と話し合い、飲酒を減らすまたはやめる方法を勧め、それがうまく進んでいるか確認するためのフォローアップの予定を立てます。
より重度のアルコール使用者、特に併存する病気や精神障害がある人には、解毒とリハビリテーションプログラムが推奨されることがあります。
知っていますか?
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解毒とリハビリテーション
解毒とリハビリテーションの第1段階では、アルコールを完全に断ち、離脱症状の治療をします。次に、アルコール使用障害の患者は行動を改める方法を学ばなければなりません。手助けがなければアルコールに関する問題を抱える人の大半は、数日から数週間のうちに再び飲酒を始めてしまいます。リハビリテーションプログラムでは、精神療法と医学的管理を組み合わせて支援を行います。アルコール依存症患者は飲酒をやめるのがどんなに大変か警告を受けます。飲酒をやめるモチベーションを高め、飲酒のきっかけになる状況を避ける方法についても教わります。治療内容は各人の状況に合わせて決めます。プログラムでは、家族や友人の支援も求めます。自助グループ(アルコホーリクス・アノニマス など)も役立つでしょう。
ときにアルコール使用障害の患者が飲酒を避けるために、特定の薬(ジスルフィラム、ナルトレキソン、アカンプロサート、クロニジン)が役立つことがあります。しかし、一般には、モチベーションがあり協力的な人に、集中カウンセリング療法の一環として投与された場合に飲み薬が役立ちます。また、その結果は様々です。
ジスルフィラムはアルコールの代謝を阻害してアセトアルデヒド(アルコールの分解で生成される物質)を血液中に蓄積させることで飲酒を抑止します。体内にアセトアルデヒドがあると気分が悪くなります。ジスルフィラム服用後に飲酒した場合、5~15分以内に、アセトアルデヒドの蓄積により以下の症状が現れます。
顔面紅潮
ズキズキする頭痛
頻脈(心拍数の上昇)
呼吸数の増加
発汗
30分から1時間後には、吐き気や嘔吐の症状が出ることもあります。このような不快で危険を伴う反応が1~3時間続きます。
ジスルフィラム服用後の飲酒による不快感は非常に強いため、大半の人はあえてアルコールを飲もうとはしなくなり、少量のアルコールを含む市販のせき止めやかぜ薬、食品さえ口にしようとしなくなります。
ジスルフィラムを禁酒を目的として効果的に役立てるには、ジスルフィラムを毎日服用しなければなりません。
次に示す人は、ジスルフィラムを使用するべきではありません。
ナルトレキソンは、アルコールへの渇望と飲酒に関連するとされる脳内化学物質(エンドルフィン)に対するアルコールの作用を変化させます。この薬はきちんと服薬すれば、ほとんどの人で効果があります。長時間作用型の薬を1カ月に1回注射することも可能です。ジスルフィラムと異なり、ナルトレキソンで体の具合が悪くなることはありません。そのため、ナルトレキソンを摂取しながら飲酒を続けることができます。 肝炎 肝炎の概要 肝炎とは肝臓の炎症です。 ( 急性ウイルス性肝炎の概要と 慢性肝炎の概要も参照のこと。) 肝炎は世界中でみられる病気です。 肝炎には以下の種類があります。 急性(経過が短い) さらに読む やその他の肝疾患がある人は、ナルトレキソンを服用すべきではありません。
クロニジンは、脳の特定の部分に作用する薬で、通常は高血圧に用いられますが、アルコールの離脱作用の一部を軽減するのに役立ちます。
さらなる情報
以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。
アラノン家族グループ(Al-Anon Family Groups):アルコール乱用のある成人、アルコール使用障害を抱えて育った成人、および誰かの問題のある飲酒の影響を受けた10代の若者に対する支援サービスです。
アルコホーリクス・アノニマス(Alcoholics Anonymous):飲酒問題を抱える人の国際的な自助グループで、メンバーのアルコール依存克服を支援するとともに他の人にもそれができるよう支援する12段階のアプローチの先駆けとなりました。
ライフ・リング(LifeRing):従来の12段階のプログラムに代わるものとして、実際の経験の共有と禁酒サポートを促進することにより、薬物使用と飲酒の問題を抱える人々を支援しています。
米国国立アルコール乱用・アルコール依存症研究所(National Institute on Alcohol Abuse and Alcoholism:NIAAA):飲酒が人の健康と幸福にどのような影響を及ぼすかについての調査研究を支援・実施しています。