肝臓と胆嚢の画像検査

執筆者:Christina C. Lindenmeyer, MD, Cleveland Clinic
レビュー/改訂 2021年 9月
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肝臓、胆嚢、胆管の画像検査には、超音波検査、核医学検査、CT検査、MRI検査、内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)検査、経皮経肝胆道造影検査、術中胆道造影検査、単純X線検査などがあります。

肝臓と胆嚢の概要も参照のこと。)

超音波検査

超音波検査では、音波を利用して肝臓や胆嚢、胆管を画像化します。経腹超音波検査は、肝硬変(肝臓の重度の瘢痕化)や脂肪肝(肝臓に過剰な脂肪が蓄積している状態)など肝臓全体を一様に侵す異常よりも、腫瘍など肝臓の特定の部分だけを侵す構造的な異常の検出に優れています。これは、胆嚢と胆管の画像を撮影することができる検査のうち、最も安全で安価な方法です。

超音波検査を行えば、胆嚢内にある胆石を容易に発見できます。腹部の超音波検査では、黄疸(皮膚や白眼の部分が黄色くなる症状)の原因が、胆管の閉塞なのか、肝細胞の機能不全なのかを判別できます。超音波検査で拡張した胆管がみられたら、たいていの場合、閉塞が原因です。また、肝臓の生検用の組織サンプルを採取するために針を刺すときに、超音波画像で位置を確認することも可能です。

ドプラ超音波検査と呼ばれる特殊な超音波検査では、肝臓の血管を通る血流を観察することができます。この検査では、肝臓の動脈および静脈の閉塞、特に腸から肝臓に向かう静脈である門脈の閉塞を検出できます。さらに、ドプラ超音波検査では、門脈圧亢進症(門脈内の血圧が上昇した状態)の影響も検出できます。超音波内視鏡検査では、先端に小型の装置(プローブ)が付いた内視鏡を口から胃や小腸の最初の部分(十二指腸)まで通し、肝臓やその周辺の臓器にプローブをできるだけ近づけます。

核医学検査(シンチグラフィー)

核医学検査(シンチグラフィー)では、トレーサーと呼ばれる放射性物質を含んだ溶液を静脈に注射し、この物質が特定の臓器に集積します。上腹部の上に設置したガンマカメラでこの物質の放射線を検出し、付属のコンピュータで画像を構成します。肝シンチグラフィーでは、肝細胞に集積する放射性物質を使用します。

別のタイプの核医学検査である胆道シンチグラフィー(肝胆道シンチグラフィー)では、放射性物質が肝臓から分泌されて胆嚢に入り、胆管を通って十二指腸(小腸が始まる部分)に入る動きを追跡します。この方法により、胆嚢管(胆嚢を総胆管とつないでいる管―図「肝臓と胆嚢の概観」を参照)の閉塞を検出することができます。そのような閉塞は、胆嚢の急性炎症(胆嚢炎)を示唆します。

CT検査

CT検査では、肝臓とその血管の詳細な画像が得られます。腫瘍の検出には特に有用です。また、膿の貯留(膿瘍)や脂肪肝(肝臓に過剰な脂肪が蓄積している状態)など、肝臓全体を一様に侵す一部の病気を検出できます。

MRI検査

MRI検査では、肝炎ヘモクロマトーシス脂肪性肝疾患など、肝臓全体を一様に侵す特定の肝疾患を検出できます。MRI検査では、血流が視覚化されるため、血管の異常に関する情報が得られます。MRI検査は腫瘍の検出にも有用です。

MRIの技術を用いれば、磁気共鳴胆道膵管造影(MRCP)という手法で胆管と周辺構造の画像を作成することも可能です。この方法では、造影剤を胆管や膵管に直接注入する侵襲的な(体に負担をかける)検査と同じレベルの画像を作成できます。CT検査と異なり、MRI検査ではX線の被曝がありませんが、CT検査よりも高価で検査に時間がかかります。

内視鏡的逆行性胆道膵管造影検査

内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)検査では、内視鏡(観察用の柔軟な管状の機器)を口から挿入し、食道と胃を経て十二指腸に到達させます。この内視鏡を介して細い管を胆道に挿入します。医師は、この管を通して造影剤を胆道に注入し、それと同時に、胆道と膵管のX線画像を撮影します。

単に胆道の構造を見るだけであればERCPが用いられることもありますが、医師は通常、より安全で同程度の画像を得られるMRCPを用いることを好みます。しかし、ERCPでは処置中に内視鏡を使うため、他の診断検査と異なり、生検や特定の治療を行うことが可能です。例えば、内視鏡を使って、胆管内の石を取り除いたり、炎症やがんによって閉塞した胆管を迂回するための管(ステント)を挿入したりすることができます。ERCPでは、約1%の頻度で合併症(膵炎[膵臓の炎症]や出血など)が起こります。ERCPの最中に治療を行うと、これらの合併症はさらに頻繁に起こる可能性があります。

内視鏡的逆行性胆道膵管造影検査について理解する

内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)検査では、内視鏡(観察用の柔軟な管状の機器)を口から挿入し、胃を通して十二指腸(小腸が始まる部分)まで到達させて、そこから造影剤を注入します。造影剤はオッディ括約筋から少し中に入ったところから胆道に注入します。この造影剤は胆道を逆流して、しばしば膵管を描き出します。

内視鏡と一緒に手術器具を用いて、胆管の結石を除去したり、瘢痕やがんで詰まった胆管を迂回するための筒状の器具(ステント)を挿入したりすることも可能です。

経皮経肝胆道造影検査

経皮経肝胆道造影検査では、超音波で位置を確認しながら、皮膚から肝臓に長い針を刺し、肝内の胆管に造影剤を注入します。続いてX線撮影を行うことにより、胆道の様子、特に胆管の閉塞がはっきりと写し出されます。内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)検査と同様、経皮経肝胆道造影検査は、胆道の画像を撮影するよりも、治療または生検を目的として用いられることの方が多くなっています。経皮経肝胆道造影検査の合併症には、出血や内部の損傷などがあるため、特殊な状況を除き、普通はERCPの方が好まれます。

術中胆道造影検査

術中胆道造影検査では、胆嚢の手術中に造影剤を胆道に直接注入します。その状態でX線を照射することで、胆道の鮮明な画像が得られます。この検査は、体への負担が少ない他の検査では十分な情報が得られない場合にのみ用いられます。

肝臓と胆道のX線検査

通常、腹部単純X線検査では肝臓、胆嚢、胆管の病気は検出できません。

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