耳の様々な感染症について理解する
コラム23年10月2日 Bradley W. Kesser, MD, University of Virginia School of Medicine

耳の感染症と言えば、子どものころに経験した痛みを伴う耳閉感(耳が詰まった感じ)と、その治療に使った鮮やかなピンク色をした風船ガムのような薬の味をすぐに思い出す人が多いでしょう。耳の感染症は小児によくみられ、大多数の子どもが3歳の誕生日までに経験します。

しかし、耳の感染症はどれも同じというわけではなく、症状と治療法は感染が耳の中のどこで起きているかによって変わってきます。ここでは、痛みを伴う耳の感染症について医師と話し合う際に親と本人が知っておくべきポイントをいくつか紹介します。

1. 感染は耳のあらゆる部分で起こる可能性がある

耳は外耳中耳内耳という3つの部分で構成されています。これら3つの部分のどこででも感染が起こる可能性があります。外耳の感染症は発赤、痛み、腫れを特徴とします。外耳のうち穴の部分を外耳道と言いますが、外耳道の感染症(外耳炎)は、しばしばスイマーズイヤーと呼ばれます。これは綿棒の使用と耳の中への水の侵入が組み合わさって起こることが多く、通常は痛み、腫れ、発赤のほか、難聴と耳だれを伴います。

中耳の感染症(中耳炎)もよくみられ、典型的には幼児の耳管から液体がうまく排出されないことが原因で起こります。症状としては、痛み、発熱、難聴、鼓膜の発赤などがあります。

内耳で感染症が起きると、蝸牛と呼ばれる部分と体のバランスを保っている三半規管と呼ばれる部分に影響を及ぶ可能性があります。難聴を特徴とする感染症とは別に、内耳の感染症(内耳炎)は平衡感覚に影響を及ぼす可能性があり、1回のめまいが数日間続くこともある極度の回転性めまいを引き起こします。回転性めまいは吐き気や嘔吐を伴うことがあります。治療はそうした症状に対する対症療法に限定されるのが一般的で、具体的には、水分をたくさん飲むことや、回転性めまいの症状を軽減する薬の服用などがあります。

2. 耳の感染症すべてに経口抗菌薬が必要とは限らない

耳の感染部位が異なれば必要な治療法が異なるということを本人と親が理解しておくことが重要です。外耳炎に対しては、耳を徹底的に清潔にするとともに、外耳に外用の抗菌薬を直接塗る治療法が一般的に推奨されます。

中耳炎は、典型的には経口の抗菌薬が必要になる感染症です。その場合は抗菌薬で治療することができますが、中耳に液体がたまることで感染症が再発する可能性があり、そのような場合には、医師がほかの治療法を探すことになることもあります。

3. 他の子どもより耳の感染症にかかりやすい子どもがいる

幼児の中耳に液体がたまるのは、多くの場合、耳管から液体がうまく排出されていないことの徴候です。幼児では、耳管がまだ十分に発達していないため、耳の中から液体が排出されないことがあります。液体がたまると、感染症とともに難聴を繰り返すことがあり、それが幼児期の言語発達やその他の発達面にも影響を及ぼす可能性があります。

そのような状況では、医師から耳にチューブを入れる処置を勧められるかもしれません。これは小さな手術で、鼓膜を小さく切開してたまっている液体を排出させるとともに、再び液体がたまるのを予防するために鼓膜に細いチューブ(鼓膜チューブ)を留置します。

液体のたまりが3カ月以上続いている場合は、耳鼻咽喉科を受診して、聴力を確認するために聴力検査を受けるべきです。同様に、耳の感染症が6カ月間に4回以上または12カ月間に6回以上起きている場合にも、典型的にはチューブの留置を検討するための耳鼻咽喉科の受診が必要になります。

4. 耳には自浄作用がある(つまり綿棒…やイヤーキャンドルは不要)

英語圏では「肘より小さいものを耳に入れるな」という古い格言があります。これは確かな経験則です。そして、これは特に綿棒によく当てはまります。綿棒はそもそも耳に入れるものではなく、水の中にもぐった後に耳に綿棒を入れるのは特によくありません。水泳後に耳が水で詰まっている場合には、市販の点耳薬を使用することで、耳を傷つける器具の使用や危険な耳そうじをすることなく、水を蒸発させることができます。イヤーキャンドルも推奨されません。これは効果がなく、不必要で、危険です。

耳の感染症の詳細については、MSDマニュアルのこのトピックについてのページを参照してください。