黄熱

執筆者:Thomas M. Yuill, PhD, University of Wisconsin-Madison
レビュー/改訂 2021年 8月
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やさしくわかる病気事典

黄熱は蚊が媒介するウイルス性疾患で、主に熱帯地域でみられます。

  • 黄熱は、中央アフリカの熱帯地域、パナマ南部、および南米にのみみられます。

  • 黄熱患者の中には症状がないか、あっても軽度にとどまる人もいれば、黄疸(皮膚が黄色くなる)、発熱、頭痛、筋肉痛、出血などのより重度の症状を呈する人もいます。

  • 黄熱の診断は、ウイルスを増殖させる(培養)か、血液検査でウイルスに対する抗体を検出するか、またはPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法でウイルスの遺伝物質を特定することによって下されます。

  • ワクチンは、黄熱の流行国の居住者や流行地域への旅行者向けのものがありますが、蚊に刺されないようにすることも重要です。

  • 治療は支持療法が中心となり、出血を治療または予防する薬などが用いられます。

黄熱はフラビウイルスにより生じる病気で、蚊を介して広がります。

黄熱はウイルス感染症の中では最もよく知られた病気の1つで、歴史的にも大きな意味をもっています。過去には、黄熱の大規模な流行で、何万人もの命が失われたことがあります。かつては世界各地の熱帯や温帯地域でよくみられましたが、現在では中央アフリカの熱帯地域、パナマ南部、および南米でしか発生していません。感染がよくみられるのは、南米では雨が多く温暖湿潤な気候の時期で、アフリカでは雨期の後期と乾期の早期です。

黄熱の症状

感染しても症状が出ない人もいます。症状が出た場合は、軽症で済むこともありますが、重症で生命を脅かす病気を発症する人もいます。

黄熱の症状は通常、感染した蚊に刺された後、3~6日ほどで現れます。初めに頭痛、めまい、筋肉痛、悪寒、軽度の発熱といった症状が突然現れます。吐き気、嘔吐、便秘、極度の疲労感、易刺激性、落ち着きのなさもよくみられます。顔面が紅潮します。

これらの症状はすべて数日で治まります。これだけで治る人もいますが、最初の症状が治まってから数時間から数日後に、高熱、吐き気、嘔吐、全身のひどい痛みが生じることもあります。肝臓に感染が生じるため、皮膚が黄色になります(黄疸[おうだん])。鼻、口、消化管からの出血がしばしばみられます。吐血することもあります。また、錯乱したり、無関心になったりする場合があります。

一部の患者はせん妄状態に陥ります。血圧は非常に低くなります(ショック)。重症の場合は、けいれん発作、多臓器不全が発生し、患者が昏睡に陥ることもあります。重度の出血や発熱が生じた場合は、最大で50%の患者が死亡します。

黄熱の診断

  • 培養検査または血液検査

この病気の流行地域に住んでいる人に典型的な症状が現れた場合、黄熱が疑われます。

医師はウイルスを増殖させる(培養)か、血液中のウイルスに対する抗体を調べることで黄熱の診断を下します。あるいは、ウイルスの遺伝物質のコピーを多数作り出すために、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法が用いられることもあります。この方法を用いると、ウイルスを迅速かつ正確に特定できます。

黄熱の予防

黄熱の予防には以下の対策を行います。

  • 蚊に刺されないようにする

  • ワクチンによる予防接種

  • 隔離

予防には、蚊に刺されないようにすることが重要です。黄熱の流行地域に住んでいる人やそのような地域を訪れる人には、次の予防策があります。

  • 防虫剤のDEET(ジエチルトルアミド)を皮膚に付ける。

  • 蚊帳を使用する。

  • 長袖のシャツと長ズボンを着用する。

  • エアコンのある場所、または蚊が入らないようにする窓や網戸がある場所に滞在する。

  • 衣類や用具にはペルメトリン殺虫剤を使用する(皮膚には直接塗布しない)。

小児には、次の予防策が推奨されます。

  • 2カ月未満の乳児には防虫剤を使用しない。

  • 3歳未満の小児には、レモンユーカリの油(パラメンタンジオール)を含有する製品を使用しない。

  • それより年長の小児の場合、大人が自分の手に防虫剤をスプレーし、それを小児の皮膚に塗布する。

  • 小児には腕や脚を覆う服を着せ、ベビーベッド、ベビーカー、抱っこ紐は蚊帳で覆う。

  • 防虫剤を小児の手、眼、口、または切り傷や荒れた皮膚に使用しない。

黄熱の予防に95%効果的なワクチンがあります。ワクチンは、黄熱の流行国に行く日の少なくとも10日前に接種すべきです。米国では、米国公衆衛生局の認定を受けた黄熱予防接種実施クリニックでのみ、黄熱ワクチンの接種が行われます。多くの施設がそうした認定を受けています(CDC:黄熱予防接種実施クリニック[Yellow Fever Vaccination Clinics]を参照)。ワクチンの接種は生涯にわたり免疫をもたらします。

多くの国では、黄熱の流行地域から入国する旅行者にのみ、ワクチン接種を義務づけています。黄熱の流行地域に旅行する人は、ワクチン接種を受ける必要があります。

このワクチンは次の人には投与されません。

  • 妊婦

  • 6カ月未満の乳児

  • 免疫機能が低下している人(エイズ患者など)

感染が疑われる人や黄熱と診断された人は、蚊を介したウイルス感染の拡大を防ぐために、網戸などで遮蔽され、殺虫剤が散布された部屋に隔離されます。

黄熱の治療

  • 支持療法

黄熱の治療は支持療法であり、血液凝固を助けるビタミンKの注射など、出血を治療または予防する薬を投与します。

黄熱に特別な治療法はありません。

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