急性の感染性関節炎は,数時間または数日にわたって進行する関節の感染症である。感染が滑膜組織または関節周囲組織に存在し,通常は細菌性(若年成人では高い頻度で淋菌 )である。しかし,非淋菌性の細菌感染も起こることがあり,関節構造を急速に破壊することがある。症状には,急激な痛みの発生,液貯留,ならびに自動可動域および他動可動域の両方の制限などがある(通常は単一の関節内)。診断には滑液の分析および培養を必要とする。治療は抗菌薬の静注および関節からの排膿である。
関節疾患は,炎症性の場合(RA,脊椎関節症,結晶誘発性関節炎)と比較的軽い炎症性の場合(変形性関節症,神経病性関節症)がある。結晶誘発性関節炎および感染性関節炎については,本マニュアルの別の箇所で考察されている。
筋骨格系疾患の中には,主として関節を侵し,関節炎を引き起こすものがある。その他の筋骨格疾患には,主として骨(例,骨折,骨パジェット病,腫瘍),筋肉もしくは他の関節外の軟部組織(例,線維筋痛症),または関節周囲の軟部組織 (例,滑液包炎,腱炎,捻挫)を侵すものがある。関節炎には,感染症,自己免疫疾患,結晶誘発性炎症,ならびに軽度に炎症性の軟骨および骨疾患(例,変形性関節症)など,非常に多くの原因がある。関節炎は,単一の関節(単関節炎)または複数の関節(多関節炎)を対称的または非対称的に侵す。関節には骨折や捻挫が生じることもある(本マニュアルの別の箇所を参照)。
結晶(尿酸一ナトリウム,ピロリン酸カルシウム二水和物,塩基性リン酸カルシウム[アパタイト],およびまれにシュウ酸カルシウムなど他の結晶)の関節内へ沈着の結果,関節炎が生じることがある。診断には 滑液の分析 を必要とする。ほとんどの結晶を特異的に同定するために偏光顕微鏡検査を行う;塩基性リン酸カルシウムの結晶は極微サイズであり,他の方法を必要とする。結晶は白血球に貪食されているか,または細胞外にあることがある。結晶の存在により,感染性または他の炎症性の型の関節炎が併存する可能性が除外されることはない。
血管炎は血管の炎症であり,しばしば虚血,壊死,および臓器の炎症を伴う。血管炎は,あらゆる血管,すなわち動脈,細動脈,静脈,細静脈,または毛細血管を侵すことがある。具体的な血管炎疾患の臨床像は多彩であり,侵された血管の太さおよび部位,ならびに臓器の機能不全および炎症の程度によって異なる。
骨パジェット病は,限局した部位で骨代謝回転が亢進する成人の骨格の慢性疾患である。正常な基質が,軟化し腫大した骨に置き換わる。本疾患は無症候性のこともあれば,骨痛または変形が徐々に発症することもある。診断はX線による。治療には対症的な処置としばしば薬物(通常はビスホスホネート系薬剤)が含まれる。
骨壊死(ON)は限局性の骨の梗塞であり,特異的な病因因子により引き起こされることもあれば特発性のこともある。痛み,運動制限,関節の圧潰,および変形性関節症を引き起こすことがある。診断はX線検査およびMRIによる。早期では,外科的手技で進行を遅らせるまたは防ぐことができる。後期では,痛みの緩和および機能維持のために人工関節置換術が必要になることがある。
骨粗鬆症は,骨密度(単位体積当たりの骨量)が減少し,骨の構造が劣化する進行性の代謝性骨疾患である。骨格の脆弱性は,軽度または不顕性の外傷による骨折(脆弱性骨折と呼ぶ)の原因となる(特に胸腰椎,手関節,および股関節)。診断は,二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)または脆弱性骨折の確認による。予防および治療には,危険因子の是正,カルシウムおよびビタミンDの補給,骨および筋肉の力を最大化し転倒のリスクを最小限にするための運動,ならびに骨量を温存するまたは骨新生を促進する薬物療法がある。
自己免疫リウマチ性疾患には,好酸球性筋膜炎,混合性結合組織病,多発性筋炎および皮膚筋炎,再発性多発軟骨炎,シェーグレン症候群,SLE,および全身性強皮症など,様々な症候群がある。RAおよび脊椎関節症ならびにそれらの亜型もまた,免疫介在性である。病因の多くの側面が明らかになってきているが,これら全ての疾患の誘因および正確な発生機序は依然として分かっていない。
一般的な手の疾患には,様々な変形,ガングリオン,感染症,キーンベック病,神経圧迫症候群(nerve compression syndrome),非感染性の腱鞘滑膜炎,および変形性関節症などがある。複合性局所疼痛症候群(反射性交感神経性ジストロフィー)は 複合性局所疼痛症候群 で,手の外傷は 骨折,脱臼,および捻挫 で考察する。