癌とは,細胞が無秩序に増殖するものである。その顕著な特徴は,細胞分化の欠如,隣接組織への局所浸潤,そして,しばしばみられる転移(血流またはリンパ系を介した遠隔部位への進展)である。免疫不全状態に様々な種類の癌,特にウイルス感染と関連のある癌やリンパ系および皮膚に発生する腫瘍の発生率増加との関連がみられることから,早期癌または前癌状態の細胞を排除するプロセスに免疫系が重要な役割を果たしている可能性が高い。
異常出血は血液凝固系の障害( 止血 ),血小板障害,または血管障害により生じる。凝固障害には,後天性のものと遺伝性のものがある。後天性凝固障害の主な原因は,ビタミンK欠乏症( ビタミンK欠乏症 ),肝疾患,播種性血管内凝固症候群,および循環抗凝固因子の産生である。重度の肝疾患(例,肝硬変,劇症肝炎,急性妊娠性脂肪肝)では,凝固因子の生成が損なわれることにより,止血が妨げられる場合がある。凝固因子は全て肝臓で生成されるため,重度の肝疾患では,PTおよびPTTがいずれも延長する。(PTの検査結果は一般にINRで報告される。)ときには,非代償性肝疾患によっても,肝臓の α 2 アンチプラスミン合成低下のために過度の線溶と出血が生じる。
血小板,凝固因子,または血管の異常により出血を起こす場合がある。血管性の出血性疾患は血管の障害に起因し,典型的に点状出血,紫斑,および皮下出血を引き起こすが,遺伝性出血性毛細血管拡張症の場合を除いて,重篤な失血に至ることはめったにない。エラース-ダンロス症候群およびその他のまれな遺伝性結合組織疾患(例,弾力線維性仮性黄色腫,骨形成不全症,マルファン症候群― マルファン症候群 )における血管および血管周囲のコラーゲン欠乏症により出血を起こす場合がある。壊血病( ビタミンC欠乏症 )または小児期に多くみられる過敏性血管炎であるヘノッホ-シェーンライン紫斑病( IgA血管炎 (IgAV) )で出血が顕著な特徴となる場合がある。血管性の出血性疾患では,通常,止血検査が正常となる。ほとんどの疾患で,臨床的な診断となる;一部では特異的検査が利用可能である。
血小板は,凝固系で機能する細胞片である。トロンボポエチンは,その細胞質から血小板を産生・分離する巨核球を産生するよう骨髄を刺激することによって,循環血小板の数をコントロールすることに役立っている。トロンボポエチンは,肝臓において一定のペースで産生され,その循環血中濃度は,循環血小板が除去される程度のほか,おそらく骨髄の巨核球によって規定される。個々の血小板は7~10日間循環血中に存在する。常に,約3分の1が脾臓で一時的に捕捉されている。正常な血小板数は14万~44万/ μ Lである。ただし,血小板数は月経周期に応じてわずかに変動したり,出産予定日間近に減少したり(妊娠性血小板減少症),また炎症性サイトカインに反応して増加したり(二次性または反応性血小板増多症)することがある。血小板は,脾臓とは独立したプロセスであるアポトーシスによって最終的に破壊される。
健常者では,凝固を促進する力と凝固を阻止する力および線維素を溶解する力との間で恒常性が保たれている( 止血の概要 )。多くの遺伝的因子,後天的因子,および環境因子により,凝固の方向にバランスが傾き,病的な血栓が静脈(例,深部静脈血栓症[DVT]),動脈(例,心筋梗塞,虚血性脳卒中),または心腔内に形成されることがある。血栓は,形成された部位で血流閉塞を起こしたり,引き離されて遠隔の血管をふさぐ塞栓となったりすることがある(例,肺塞栓症,塞栓性脳卒中)。
好酸球は,単球-マクロファージ,好中球,および好塩基球と同じ前駆細胞に由来する顆粒球である。また,自然免疫系の構成要素である( 免疫系の概要 : 自然免疫 )。好酸球には様々な機能があるが,特に寄生虫感染に対する防御に重要である。ただし,蠕虫感染に伴って好酸球増多がよくみられ,in vitroでは好酸球は蠕虫に対して傷害性を示すにもかかわらず,in vivoで好酸球が寄生虫を死滅させるという直接的なエビデンスは得られていない。好酸球は食作用を有するが,細胞内寄生細菌を死滅させる効率は好中球よりも劣る。好酸球は,肥満細胞が放出するヒスタミン,ロイコトリエン(血管収縮および気管支収縮を引き起こすことがある),リゾリン脂質,および ヘパリン といったメディエータを分解または不活化することにより即時型過敏反応を抑制することができる。好酸球増多が長期に及ぶと,組織障害を引き起こすことがあるが,その機序は完全に解明されたとは言えない。
骨髄増殖性疾患は,骨髄幹細胞の異常増殖によるもので,循環血中の血小板,赤血球,または白血球の増加として現れることがあり,ときには骨髄の線維化亢進として現れることもある。これらの異常を基に,以下のように分類される:
止血,つまり損傷した血管からの出血を止めるには,血管,血小板,および血漿因子の総合的な働きが必要である。この血栓を形成する傾向に対して,調節機序が平衡を保つ働きをしている。止血に異常が生じると,過度の出血または血栓症が発生するようになる。
腫瘍の認識は,免疫系にとって困難の多い複雑な問題であり,そこでは正常な細胞増殖および組織形成と腫瘍性の形質転換を区別する必要がある。このプロセスには,エフェクター細胞による腫瘍抗原の認識および免疫の誘導が関与する。抗原の存在にもかかわらず腫瘍が発生すること,腫瘍の発生機序における免疫系認識の意義,および治療による免疫応答増強の可能性が大きな研究課題として残されている。
貧血(赤血球数,ヘモグロビン量,またはヘマトクリットの減少)は,赤血球産生(赤血球造血)の低下,赤血球崩壊の増加,または失血の結果として生じることがある。赤血球産生低下による貧血は,通常は末梢血塗抹標本で明らかになる網状赤血球減少によって確認される( 検査 )。赤血球指数(主にMCV)によって,赤血球産生低下の鑑別診断が絞られ,どのような追加検査が必要であるかが判断される。
組織球性症候群は,単球-マクロファージ(抗原処理細胞)または樹状細胞(抗原提示細胞)のいずれかである組織球の異常な増殖に起因する臨床的に不均一な障害である。これらの障害の分類は難しく( いくつかの組織球性症候群 参照),組織球に関する生物学的理解が進むにつれて,時間とともに変化している。他にも,Erdheim-Chester病,若年性黄色肉芽腫など,まれな組織球性疾患がある。
白血球減少症 は,循環血中の白血球数が4000/ μ L未満に減少することである。通常は循環血中の好中球数の減少を特徴とするが,リンパ球,単球,好酸球,または好塩基球の数の減少も一因となる場合がある。その結果,一般に免疫機能が大幅に低下する。
赤血球の産生(赤血球造血)は,ホルモンである エリスロポエチン (EPO)のコントロール下で骨髄内に進行している。腎臓の傍糸球体細胞は,酸素 運搬量の減少(貧血および低酸素症で生じる)およびアンドロゲン濃度の上昇に反応してEPOを産生する。赤血球の産生には,EPO以外に,主に鉄,ビタミンB 12 ,および葉酸といった基質の十分な供給が必要である。ビタミンB 12 および葉酸については, ビタミン欠乏症,依存症,および中毒 ;鉄については, 鉄欠乏症および中毒 および 鉄欠乏性貧血 を参照のこと。ヘム合成についての考察は, ポルフィリン症の概要 を参照のこと。
米国では,年間約900万人の献血者から3000万単位を超える血液成分が輸血されている。輸血は,以前よりおそらく安全と考えられるが,リスク(加えて,一般の人々のリスク認識)があるため,実施に当たっては常にインフォームド・コンセントを得ることが不可欠である。
赤血球は正常な寿命(約120日)が尽きると,循環血液から取り除かれる。溶血が起きると赤血球が未熟な段階で破壊され,それにより赤血球寿命が短くなる(120日未満)。骨髄での赤血球産生が赤血球寿命の短縮を代償できなくなると貧血が生じるが,この状態は溶血性貧血を呼ぶ。骨髄により代償できている場合,その状態を代償性溶血性貧血と呼ぶ。
脾臓は,その構造と機能から,2つの臓器とみなすことができる。白脾髄は,動脈周囲のリンパ鞘と胚中心から構成され,免疫器官として機能する。赤脾髄は,マクロファージと顆粒球が内側を覆っている血管腔(脾索および脾洞)から構成され,食作用器官として機能する。