多くの全身性ウイルス感染症が皮膚病変を引き起こす。伝染性軟属腫および疣贅は,全身症状を伴わない一次性のウイルス性皮膚疾患で最もよくみられる2疾患である。単純ヘルペスウイルス感染症については, ヘルペスウイルス感染症の概要 を参照のこと。
尋常性ざ瘡(にきび)は,毛包脂腺系(毛包とそれに付属する皮脂腺)の閉塞および炎症の結果として,面皰,丘疹,膿疱,結節,嚢腫などが形成される病態である。ざ瘡は顔面および体幹上部に生じる。青年期に最も多くみられる。診断は診察による。治療には,重症度に応じて,皮脂産生,面皰形成,炎症,および細菌増殖を抑制すると同時に角化を正常化させることを目的とした,多岐にわたる外用薬および全身薬を使用することができる。
皮膚炎,日光に対する反応,水疱性疾患など,多くの皮膚疾患では,免疫系が大きな役割を果たしている。それらの疾患には,いずれも炎症がいくらか関与しているが,一部の皮膚疾患においては,そうした炎症性の要素や,薬剤,感染,癌などに対する過敏反応が主要な特徴となる。
乾癬( 乾癬 ),類乾癬( 類乾癬 ),ばら色粃糠疹( ばら色粃糠疹 ),毛孔性紅色粃糠疹( 毛孔性紅色粃糠疹 ),苔癬状粃糠疹( 苔癬状粃糠疹 ),扁平苔癬( 扁平苔癬 ),および硬化性苔癬( 硬化性苔癬 )は,それぞれ異なる疾患であるが,原発病変に形態学的に類似した特徴がみられることから,1つの疾患群にまとめられており,その特徴とは,滲出液,痂皮,および亀裂を伴わない,鱗屑を伴う境界明瞭な丘疹または局面である。これらの疾患は病変の外観および分布によって鑑別される。
色素異常症では,色素減少,色素脱失,または色素沈着が生じる。患部は限局性の場合と,びまん性の場合がある。色素減少(hypopigmentation)では色素が減少するのに対し,色素脱失(depigmentation)では色素が完全に失われ,皮膚は白くなる。
水疱とは,内部を液体で満たされた隆起性の発疹のうち,直径が10mm以上のものである。水疱性疾患には,水疱性類天疱瘡,疱疹状皮膚炎,後天性表皮水疱症,妊娠性疱疹(妊娠性類天疱瘡― 妊娠性類天疱瘡 ),線状IgA水疱性皮膚症,尋常性天疱瘡,落葉状天疱瘡,ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群( ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群 ),中毒性表皮壊死融解症( スティーブンス-ジョンソン症候群 (SJS) および中毒性表皮壊死融解症 (TEN) ),重度の蜂窩織炎,一部の薬疹などがある。粘膜類天疱瘡(ときに良性粘膜類天疱瘡とも呼ばれる)は,粘膜面に一進一退を繰り返す水疱性病変を引き起こし,しばしば瘢痕形成や死に至る傾向がある,多様な疾患群である。
皮膚癌は最も頻度の高い悪性腫瘍であり,一般的には露光部の皮膚に生じる。その発生率は戸外労働者,スポーツ愛好者,および日光浴愛好者で高く,皮膚のメラニン色素量と反比例し,皮膚の色の薄い人々が最も罹患しやすい。皮膚癌はまた,治療目的のX線照射または発癌物質への曝露(例,ヒ素の摂取)から何年も経過して発生することもある。
皮膚寄生虫感染症は,強いそう痒を引き起こして苦痛となることがある。皮膚寄生虫の大半は節足動物( 皮膚蝿蛆症 , トコジラミ , シラミ ),ダニ( 疥癬 ),または蠕虫( 皮膚幼虫移行症 )であり,皮膚に潜り込み,そこで生活環の一部または全てを過ごす。また,一部の全身性寄生虫感染症でも皮膚症状がみられ,具体的には線虫(例,鉤虫症,メジナ虫症,糞線虫症,トキソカラ症,オンコセルカ症― 線虫に関する序論 )と吸虫(例,住血吸虫症― 住血吸虫症 )などが挙げられる。ごくまれに寄生虫妄想がみられるが,その場合は,寄生虫が存在しないにもかかわらず,患者は寄生虫がいると思い込んでいる( 寄生虫妄想 )。
皮膚細菌感染症は,単純性の場合と複雑性の場合がある。合併症のない単純性感染症は,通常は抗菌薬の全身投与と局所の創傷ケアで速やかに反応が得られる。皮膚感染症は,以下の5つの基準のうち2つを満たす場合に複雑性とみなされる:
褥瘡とは,骨突出部と硬い表面の間で組織が圧迫された領域に生じる壊死および潰瘍である。この病変は圧迫に摩擦,ずれ力,湿潤が組み合わさって生じる。危険因子としては,年齢65歳以上,循環障害,体動不能,低栄養,失禁などがある。重症度としては,圧迫しても消退しない皮膚の紅斑から,広範な軟部組織壊死を伴う皮膚の全層欠損までの範囲がある。診断は臨床的に行う。予後は早期の潰瘍では極めて良好であるが,放置された潰瘍や進行した潰瘍では,重篤な感染のリスクが生じ,治癒困難となる。治療法としては,除圧,摩擦およびずれ力の回避,入念な創傷ケアなどがある。ときに,治癒を促進するために植皮または筋皮弁の作製が必要になる。