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好酸球性多発血管炎性肉芽腫症

(チャーグ-ストラウス症候群)

執筆者:

Alexandra Villa-Forte

, MD, MPH, Cleveland Clinic

レビュー/改訂 2022年 5月
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好酸球性多発血管炎性肉芽腫症は、臓器に損傷を与える小型血管または中型血管の炎症で、通常は、喘息、鼻アレルギー、鼻茸(はなたけ)、またはその複数の病歴のある人に起こります。

  • 原因は不明です。

  • 最初は、数カ月または数年間にわたる鼻水や喘息があるか、副鼻腔の痛みがあり、その後は侵された臓器に応じて様々な症状が続きます。

  • 医師は症状と身体診察、血液検査、画像検査、および生検の結果に基づいて診断を下します。

  • コルチコステロイドを、免疫の働きを抑制する別の薬と併用することがあります。

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症は、あらゆる年齢の人に発生する可能性があります。診断時の平均年齢は48歳です。患者は成人期に、 喘息 喘息 喘息は、気道が何らかの刺激に反応して狭くなる(通常は可逆性)病態です。 症状としては、特定の誘因に反応して生じる、せき、喘鳴(ぜんめい)、息切れなどが最もよくみられます。 医師は、呼吸の検査(肺機能検査)を行って喘息の診断を確定します。 喘息発作を防ぐためには、誘因となる物質を吸い込まないようにするとともに、気道の開口を保つ薬を服用する必... さらに読む 喘息 鼻アレルギー 通年性アレルギー 通年性アレルギーは、ハウスダストなど年間を通じて屋内の空気中を漂う物質にさらされることで起こります。 鼻が詰まって、むずがゆく、鼻水が出ることがあります。また、口の中と、のどがかゆくなります。 症状と、アレルギー反応の引き金になった活動から診断が示唆されます。 アレルゲンを避けるのが最も効果的ですが、抗ヒスタミン薬などの薬で症状を軽減することができます。 ( アレルギー反応の概要も参照のこと。) さらに読む 鼻茸 鼻茸(鼻ポリープ) 鼻茸(はなたけ)は、鼻の粘膜にできる肉質の増殖性病変で、鼻ポリープとも呼ばれます。 アレルギーや喘息がある人では、鼻茸が比較的よくみられます。 鼻茸による症状には鼻づまりなどがあります。 診断は通常、鼻茸の特徴的な外観に基づいて下されます。 鼻茸はコルチコステロイドにより小さくしたりなくしたりできますが、ときには手術による切除が必要な場合もあります。 さらに読む 鼻茸(鼻ポリープ) (鼻に多数のポリープができた場合)、またはこれらの複数を発症します。好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の原因は不明です。

小型および中型の血管に生じうる炎症(血管炎)が、どの臓器にも起こることがあります。末梢神経系、副鼻腔、皮膚、関節、肺、消化管、心臓、腎臓が、最もよく侵されます。炎症を引き起こす免疫細胞の集まり(肉芽腫と呼ばれます)が、患部組織に隆起した膨らみ(小結節)を形成することがあります。肉芽腫は、正常な組織を破壊し、機能を阻害することがあります。また、肉芽腫によって皮膚の下にこぶができることもあります。さらに、患者の血液と組織の中で好酸球(白血球の一種)の数が増えます。好酸球の数が増えた状態を好酸球増多と呼び、これは、この病気にアレルギー反応が関わっている可能性を示唆しています。

症状

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の患者では、喘息、鼻アレルギー、鼻茸、またはそれらの複数が、何年もかけて発生したり悪化したりします。患者はくしゃみが出たり、鼻水や眼のかゆみが続いたりします。副鼻腔の炎症によって顔面の痛みが生じることがあります。

その後、患者は全身の不調や疲労を感じることがあります。発熱、寝汗、食欲不振、体重減少がみられることもあります。その他の症状は、どの臓器が侵されたかによって変わりますが、具体的には以下のものがあります。

  • 筋肉や関節の痛み

  • 息切れ、喘息、副鼻腔炎

  • 胸痛

  • 発疹

  • 腹痛と下痢

  • 血便

  • しばしば突然現れる、腕や脚の異常な感覚、しびれ、または筋力低下

  • 錯乱、けいれん発作、昏睡

これらの症状は、どの組合せでも現れる可能性があります。症状は何度も生じることがあります。2回目以降では、最初と同じ症状が繰り返しみられることも、異なる症状が現れることもあります。

腎臓の炎症の症状は、腎臓の機能障害や 腎不全 腎不全の概要 この章には、 COVID-19および急性腎障害(AKI)に関する新しいセクションが含まれています。 腎不全とは、血液をろ過して老廃物を取り除く腎臓の機能が十分に働かなくなった状態のことです。 腎不全の原因としては、様々なものが考えられます。腎機能が急激に低下する場合( 急性腎障害、急性腎不全とも呼ばれます)もあれば、ゆっくりと低下していく... さらに読む が起こるまで現れない場合があります。その他の合併症には、 心不全 心不全 心不全とは、心臓が体の需要を満たせなくなった状態のことで、血流量の減少や静脈または肺での血液の滞留(うっ血)、心臓の機能をさらに弱めたり心臓を硬化させたりする他の変化などを引き起こします。 心不全は心臓の収縮や弛緩が不十分になることで発生しますが、これらの変化は一般的に、心筋が弱ったり硬くなったりすることが原因で起こります。... さらに読む 心不全 心臓発作 急性冠症候群(心臓発作、心筋梗塞、不安定狭心症) 急性冠症候群は、冠動脈が突然ふさがる(閉塞する)ことによって起こります。この閉塞により、その位置と程度に応じて、不安定狭心症か心臓発作(心筋梗塞)が起こります。心臓発作とは、血液供給がなくなることにより心臓の組織が壊死する病気です。 急性冠症候群を発症すると、通常は胸部の圧迫感や痛み、息切れ、疲労などが起こります。 急性冠症候群が起きたと思ったら、まず救急車を呼んでから、アスピリンの錠剤を噛み砕いて服用します。... さらに読む 急性冠症候群(心臓発作、心筋梗塞、不安定狭心症) 心膜炎 急性心膜炎 急性心膜炎は、心膜(心臓を包んでいる柔軟な2層の袋状の膜)の炎症が突然発生する病態で、しばしば痛みを伴い、フィブリン、赤血球、白血球などの血液成分や体液が心膜腔に貯留します。 心膜炎は、特定の感染症や心膜に炎症が起きる病気が原因で発生します。 よくみられる症状は発熱と鋭い胸の痛みで、その胸痛は姿勢や動きによって変化し、まれに心臓発作に似ることがあります。 診断は症状に基づき、また、まれに聴診で特徴的な心音を確認することによって下されます... さらに読む 急性心膜炎 心臓弁膜症 心臓弁膜症の概要 心臓弁は、4つの心腔(心臓の上部にある比較的小さな丸い空洞である左右の心房と、心臓の下部にある比較的大きな円錐形の空洞である左右の心室)を通過する血液の流れを制御しています。それぞれの心室には、その入口側と出口側に、一方向に開く弁が1つずつあります。それぞれの弁は複数の薄い組織(弁尖)で構成され、一方向だけに開閉できるようになっています。... さらに読む 心臓弁膜症の概要 などがあります。

診断

  • 医師による評価

  • 血液と尿の検査

  • 画像検査

  • 生検(皮膚、筋肉、ときに肺組織)

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の早期の診断と治療が、臓器の重い損傷を防止するのに役立ちます。

診断を確定できる単独の検査はありません。好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の診断は、典型的な症状の組合せや、身体診察とその他の検査の結果をみて下します。

血液検査を行います。医師は血液中の好酸球数を測定します。好酸球はアレルギー反応の際に生産され、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症があると数が増えます。さらに医師は、この病気で存在する可能性がある特定の 抗体 抗体 体の防衛線( 免疫系)の一部には 白血球が関わっていて、それらの白血球は血流に乗って体内を移動して組織の中に入り込み、微生物などの異物を見つけ出して攻撃します。( 免疫系の概要も参照のこと。) この防衛線は以下の2つの部分で構成されています。 自然免疫 獲得免疫 獲得免疫(適応または特異免疫)は、生まれたときには備わっておらず、後天的に獲得されるものです。獲得のプロセスは、免疫系が異物に遭遇して、非自己の物質(抗原)であることを認識した... さらに読む 抗体 (抗好中球細胞質抗体)を探します。赤血球が試験管の底に沈む速度(赤血球沈降速度、赤沈)を測定します。この速度が速ければ、炎症が起きていることが示唆されます。C反応性タンパク質(全身の炎症に反応して肝臓で生成される)の値も測定します。C反応性タンパク質の値が高い場合も、炎症が示唆されます。尿検査を行い、腎臓が侵されているかどうかを判定します。

炎症を起こした組織のサンプルを採取し、顕微鏡で調べます(生検)。生検により、組織に好酸球や肉芽腫があるかどうかが分かります。ときには肺組織の生検が必要です。その場合は入院が必要になることがあります。

予後(経過の見通し)

心臓、脳、脊髄、または神経が侵されている好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の患者では、予後が不良です。

治療

  • コルチコステロイドとその他の免疫抑制薬

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の治療では、コルチコステロイド(例えば、プレドニゾン[日本ではプレドニゾロン])が投与されます。コルチコステロイドで炎症を軽減することができます。別の免疫抑制薬(免疫 免疫系の概要 人間の体には、異物や危険な侵入物から体を守る仕組みとして、免疫系が備わっています。侵入物としては以下のものがあります。 微生物( 細菌、 ウイルス、 真菌など) 寄生虫(蠕虫[ぜんちゅう]など) がん細胞 移植された臓器や組織 さらに読む の働きを抑制する薬)も使用されます。アザチオプリン、リツキシマブ、またはメトトレキサートが使用されることがあります。症状が重いときは、シクロホスファミドが使用されます。

症状が治まったら、薬の用量を徐々に減らし、しばらくしたら投与を中止することができます。必要になったら、投与を再開することもあります。これらの薬は、特に長期間使用すると、深刻な副作用を引き起こすことがあります。

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の患者は、この病気について学ぶべきです。そうすれば、患者は新しい症状があればそれに気づいて、すぐに医師に報告することができます。

さらなる情報

以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。

  • 血管炎財団(Vasculitis Foundation):医師の見つけ方、研究についての学び方、患者擁護団体への参加方法など、血管炎に関する患者向けの情報を提供しています。

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