ディジョージ症候群の小児には、心臓の異常、副甲状腺未発達または欠如、胸腺の未発達または欠如、特徴的な顔つきなど、いくつかの異常が生まれつきみられます。
T細胞に問題が生じることで感染症が繰り返し起こります。
血液検査、胸腺を評価するための胸部X線検査のほか、通常は心臓の異常がないか調べるために心エコー検査を行います。
小児にT細胞がない場合、生存のために胸腺組織または幹細胞の移植が必要です。
(免疫不全疾患の概要 免疫不全疾患の概要 免疫不全疾患では、免疫系が正常に働かないことにより、通常に比べて感染症を頻繁に発症したり、繰り返したり、感染症が重症化したり、長引いたりします。 免疫不全疾患は通常、薬の使用や、がんなどの長期間に及ぶ重篤な病気が原因で発症しますが、遺伝性の場合もあります。 この病気になると感染症を繰り返すだけでなく、普通の人がかからないような感染症が起き... さらに読む も参照のこと。)
ディジョージ症候群は 原発性免疫不全症 原発性免疫不全症 免疫不全疾患では、免疫系が正常に働かないことにより、通常に比べて感染症を頻繁に発症したり、繰り返したり、感染症が重症化したり、長引いたりします。 免疫不全疾患は通常、薬の使用や、がんなどの長期間に及ぶ重篤な病気が原因で発症しますが、遺伝性の場合もあります。 この病気になると感染症を繰り返すだけでなく、普通の人がかからないような感染症が起き... さらに読む の一種です。たいていは 染色体異常 染色体異常 遺伝子とは、DNA(デオキシリボ核酸)のうち、細胞の種類に応じて機能する特定のタンパク質の設計情報が記録された領域のことです。染色体は、細胞の中にあって複数の遺伝子が記録されている構造体です。 遺伝子は染色体内にあり、染色体は細胞の核にあります。 1本の染色体には数百から数千の遺伝子が含まれています。... さらに読む が原因で起こりますが、通常は遺伝しません。ほとんどの場合、明らかな理由なく自然に発生します。男女で発生率に違いはありません。
胎児は正常に成長できず、以下のような異常がよく起こります。
副甲状腺:出生時に副甲状腺(血液中のカルシウムの量を調節している)がないか、あっても未発達である。その結果、カルシウムの量が少なく、筋肉のけいれん(テタニー)が起こる。けいれんは通常、生後48時間以内に始まる。
顔:典型的に、ディジョージ症候群では顔つきが特徴的で、耳が低い位置にあり、あごの骨は小さくて引っ込んでおり、目と目の間があいている。口蓋(口の中の天井に当たる部分)が割れていることがある(口蓋裂)。
胸腺: T細胞 T細胞 体の防衛線( 免疫系)の一部には 白血球が関わっていて、それらの白血球は血流に乗って体内を移動して組織の中に入り込み、微生物などの異物を見つけ出して攻撃します。( 免疫系の概要も参照のこと。) この防衛線は以下の2つの部分で構成されています。 自然免疫 獲得免疫 獲得免疫(適応または特異免疫)は、生まれたときには備わっておらず、後天的に獲得されるものです。獲得のプロセスは、免疫系が異物に遭遇して、非自己の物質(抗原)であることを認識した... さらに読む の正常な発達に必要である胸腺が存在しないか未発達のため、T細胞の数が少なく、様々な感染症に対する抵抗力が不十分である。生後まもなく感染症にかかり、再発を繰り返す。しかし、T細胞がどの程度機能するかは患者によって大きく異なり、場合によってはT細胞の働きが自然に向上することもある。
予後(経過の見通し)は通常、心疾患の程度により異なります。
ディジョージ症候群の診断
血液検査
場合により画像検査(胸部X線検査や心エコー検査など)
医師は症状に基づいてディジョージ症候群を疑います。
血液検査を行う理由は以下の通りです。
すべての血球およびT細胞とB細胞の数を測定する
T細胞と副甲状腺の機能を評価する
ワクチンに反応して免疫グロブリンがどの程度生産されるかを測定する
胸腺の大きさを測定するために胸部X線検査を行うことがあります。
ディジョージ症候群は心臓に影響を及ぼすことがよくあるため、通常は 心エコー検査 心エコー検査とその他の超音波検査 超音波検査では、周波数の高い超音波を内部の構造に当てて跳ね返ってきた反射波を利用して動画を生成します。この検査ではX線を使いません。心臓の超音波検査(心エコー検査)は、優れた画像が得られることに加えて、以下の理由から、心疾患の診断に最もよく用いられる検査法の1つになっています。 非侵襲的である 害がない 比較的安価である 広く利用できる さらに読む を行います。心エコー検査では、周波数の高い音波(超音波)を用いて心臓の画像を描出することにより、先天異常など心臓の構造的異常を検出することができます。
異常を調べるために遺伝子検査を実施することもあります。
ディジョージ症候群の治療
カルシウムとビタミンDのサプリメント
場合により胸腺組織または幹細胞の移植
この病気にかかっている小児でも、ある程度のT細胞をもってさえいれば、治療しなくても免疫系が十分に機能する可能性があります。感染症が起きたらすぐに治療します。筋肉のけいれんを防ぐために、カルシウムとビタミンDのサプリメントを内服します。
T細胞がまったくない小児の場合、胸腺組織を移植しない限り、死に至ります。胸腺組織を移植すれば、免疫不全は治ります。移植する際には、まず胸腺組織を培養皿に入れ、成熟したT細胞を取り除くための処理をします。成熟したT細胞はレシピエントの組織を異物と認識して攻撃し、 移植片対宿主病 移植片対宿主病 輸血を行うことで、血液が酸素を運ぶ能力を高め、体内の血液量を回復させるとともに、血液凝固の障害を正常にします。輸血は通常安全ですが、ときに副作用が生じることもあります。 輸血に際しては、副作用を最小限に抑えるため、いくつかの予防措置が行われます。輸血を開始する前に、通常は数時間前に(または数日前のこともあります)、受血者と供血者の血液の交差適合試験を行います(血漿輸血や血小板輸血では行いません)。... さらに読む を起こすことがあります。あるいは、 幹細胞移植 造血幹細胞移植 造血幹細胞移植とは、健康な人から幹細胞(未分化細胞)を採取し、重篤な血液疾患がある人にそれを注射することです。 ( 移植の概要も参照のこと。) 幹細胞は未分化の細胞で、分裂しながら、より分化した他の細胞に変わっていきます。幹細胞は以下のものから採取することができます。 静脈からの採血 骨髄(骨髄移植) さらに読む が行われることもあります。
免疫不全よりも心疾患の方が重い場合があり、重い心不全や死亡を防ぐための手術が必要になることがあります。
さらなる情報
以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。
免疫不全財団:ディジョージ症候群(Immune Deficiency Foundation: DiGeorge syndrome):ディジョージ症候群の診断、治療、患者へのアドバイスなどの情報を含む一般的な情報