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毛細血管拡張性運動失調症

執筆者:

James Fernandez

, MD, PhD, Cleveland Clinic Lerner College of Medicine at Case Western Reserve University

レビュー/改訂 2023年 1月
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毛細血管拡張性運動失調症は遺伝性疾患で、協調運動障害と毛細血管拡張、および感染症にかかりやすくなる免疫不全を特徴とします。

  • 毛細血管拡張性運動失調症がある小児では、通常は歩き始めの頃に協調運動障害が発生し、筋力が徐々に低下して、重い身体障害が生じます。

  • 診断には血液検査を行います。

  • 治療には抗菌薬(感染症予防のため)と免疫グロブリン製剤が用いられます。

毛細血管拡張性運動失調症は 原発性免疫不全症 原発性免疫不全症 免疫不全疾患では、免疫系が正常に働かないことにより、通常に比べて感染症を頻繁に発症したり、繰り返したり、感染症が重症化したり、長引いたりします。 免疫不全疾患は通常、薬の使用や、がんなどの長期間に及ぶ重篤な病気が原因で発症しますが、遺伝性の場合もあります。 この病気になると感染症を繰り返すだけでなく、普通の人がかからないような感染症が起き... さらに読む の1つです。通常は(性別が関係する伴性遺伝ではなく) 常染色体劣性遺伝 単一遺伝子疾患の遺伝 遺伝子とは、DNA(デオキシリボ核酸)のうち、細胞の種類に応じて機能する特定のタンパク質の設計情報が記録された領域のことです。 染色体は非常に長いDNA鎖からできており、そこには多く(数百~数千)の 遺伝子があります。特定の細胞(例えば、精子と卵子)を除き、人間の正常な細胞には23対の染色体があります。22対の常染色体と1対の性染色体があり、合わせて46本の染色体があります。通常、それぞれの対を構成する染色体は、片方を母親から、もう片方... さらに読む 疾患として遺伝します。すなわち、両親から遺伝子を1つずつ、合わせて2つ受け継いで初めて発症します。

毛細血管拡張性運動失調症の患者が感染症にかかりやすくなるのは、病原性微生物やがんになる可能性のある異常細胞の発生から体を守っている B細胞 B細胞 体の防衛線( 免疫系)の一部には 白血球が関わっていて、それらの白血球は血流に乗って体内を移動して組織の中に入り込み、微生物などの異物を見つけ出して攻撃します。( 免疫系の概要も参照のこと。) この防衛線は以下の2つの部分で構成されています。 自然免疫 獲得免疫 獲得免疫(適応または特異免疫)は、生まれたときには備わっておらず、後天的に獲得されるものです。獲得のプロセスは、免疫系が異物に遭遇して、非自己の物質(抗原)であることを認識した... さらに読む B細胞 T細胞 T細胞 体の防衛線( 免疫系)の一部には 白血球が関わっていて、それらの白血球は血流に乗って体内を移動して組織の中に入り込み、微生物などの異物を見つけ出して攻撃します。( 免疫系の概要も参照のこと。) この防衛線は以下の2つの部分で構成されています。 自然免疫 獲得免疫 獲得免疫(適応または特異免疫)は、生まれたときには備わっておらず、後天的に獲得されるものです。獲得のプロセスは、免疫系が異物に遭遇して、非自己の物質(抗原)であることを認識した... さらに読む T細胞 (リンパ球)が十分に機能しなくなることが原因です。たいていは、ある種の 抗体 抗体 体の防衛線( 免疫系)の一部には 白血球が関わっていて、それらの白血球は血流に乗って体内を移動して組織の中に入り込み、微生物などの異物を見つけ出して攻撃します。( 免疫系の概要も参照のこと。) この防衛線は以下の2つの部分で構成されています。 自然免疫 獲得免疫 獲得免疫(適応または特異免疫)は、生まれたときには備わっておらず、後天的に獲得されるものです。獲得のプロセスは、免疫系が異物に遭遇して、非自己の物質(抗原)であることを認識した... さらに読む 抗体 (免疫グロブリン)、具体的にはIgAとIgEの量も減っています。

毛細血管拡張性運動失調症は、免疫不全とはまったく関係のない小脳(体の各部の動きを協調させる脳の部位)の異常も引き起こし、結果、協調運動障害を来します。

毛細血管拡張性運動失調症の症状

通常は小児が歩き始める頃から協調運動障害がみられるようになりますが、4歳まで症状が現れないこともあります。話し方が不明瞭になり、筋力が徐々に低下して、やがて重い障害が起こります。知的障害が発生し、進行します。

1歳から6歳の間(ただし4歳までは現れないことが多い)に、皮膚と眼の毛細血管が拡張し、見て分かるようになります。毛細血管が拡張して生じる毛細血管拡張症は、くも状静脈とも呼ばれ、通常は眼球、耳、首の側面で最も目立ちます。

がん、特に 白血病 白血病の概要 白血病は、白血球または成熟して白血球になる細胞のがんです。 白血球は骨髄の幹細胞から成長した細胞です。ときには成長がうまくいかずに、染色体の一部の並びが変化してしまうことがあります。こうして異常となった染色体により正常な細胞分裂の制御が失われ、この染色体異常がある細胞が無制限に増殖するようになったり、細胞がアポトーシス(不要になった細胞が... さらに読む リンパ腫 リンパ腫の概要 リンパ腫とは、リンパ系および造血器官に存在するリンパ球のがんです。 リンパ腫は、 リンパ球と呼ばれる特定の白血球から発生するがんです。この種の細胞は感染を防ぐ役割を担っています。リンパ腫は、主要な白血球であるBリンパ球およびTリンパ球のいずれの細胞からも発生する可能性があります。Tリンパ球は免疫系の調節やウイルス感染に対する防御に重要です... さらに読む リンパ腫の概要 脳腫瘍 脳腫瘍の概要 脳腫瘍は脳内で増殖する組織で、がんの場合(悪性)と、がんでない場合(良性)があります。脳内で発生するものと、体の別の部位から脳に転移してきたものとがあります。 症状としては、頭痛、人格の変化(抑うつ、不安、自制がきかなくなるなど)、脱力、異常感覚、平衡感覚の消失、集中力の低下、けいれん発作、協調運動障害などがみられます。 脳腫瘍は画像検査で発見できますが、しばしば確認のために腫瘍の生検が必要になります。... さらに読む 胃がん 胃がん ヘリコバクター・ピロリの感染は胃がんの危険因子です。 漠然とした腹部の不快感、体重減少、筋力低下が典型的な症状の一部です。 診断としては内視鏡検査や生検などを行います。 胃がんは早期に他の部位に転移する傾向があるため、生存率は低くなっています。 がんを摘出したり、症状を緩和するために手術が行われます。 さらに読む 胃がん のリスクが上昇します。

毛細血管拡張性運動失調症は通常、進行して麻痺と認知症が出現し、一般的に30歳までに死亡します。

毛細血管拡張性運動失調症の診断

  • 血液検査

  • 遺伝子検査

医師は症状に基づいて毛細血管拡張性運動失調症を疑います。

IgAの量を調べる血液検査や遺伝子検査は診断の確定に役立ちます。

診察の結果に基づいて内分泌疾患やがんが疑われる場合、これらの病気の有無を確認する検査を行います。

毛細血管拡張性運動失調症の治療

  • 抗菌薬と免疫グロブリン製剤

感染症予防に役立てるために、抗菌薬と免疫グロブリン製剤(免疫系が正常な人の血液から採取した抗体)を投与して、不足した免疫グロブリンを補います。免疫グロブリン製剤は静脈内に月1回、または皮膚の下に週1回ないしは1カ月に1回注射します。

しかし、これらの薬で他の問題が改善するわけではありません。

さらなる情報

以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。

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