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伝染性単核球症

(エプスタイン-バー[EB]ウイルス感染症;キス病)

執筆者:

Kenneth M. Kaye

, MD, Harvard Medical School

レビュー/改訂 2021年 9月
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やさしくわかる病気事典
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エプスタイン-バーウイルスは、伝染性単核球症をはじめ、いくつかの病気を引き起こします。

EBウイルス感染症のほとんどは無症状です。伝染性単核球症は、一般にEBウイルスに感染した青年や若年成人に発生します。伝染性単核球症という病名は、感染者の血液中に特定の種類の白血球(単核球)が多数みられることに由来します。青年や若い成人は通常、EBウイルスの感染者とのキスを介して伝染性単核球症に感染します。

最初の感染後、EBウイルスは他のヘルペスウイルスと同様に、体内、主に白血球の中にとどまります。感染者は唾液中にウイルスを周期的に排出します。この排出が続いている期間に他の人に感染させることがありますが、その間は症状がみられません。

EBウイルスはまれに、 バーキットリンパ腫 バーキットリンパ腫 バーキットリンパ腫は、B細胞(Bリンパ球)から発生する白血球のがんで、非常に増殖の速い 非ホジキンリンパ腫です。 リンパ腫は、 リンパ球と呼ばれる特定の白血球から発生するがんです( リンパ腫の概要も参照)。この種の細胞は感染を防ぐ役割を担っています。リンパ腫は、主要な白血球であるBリンパ球およびTリンパ球のいずれの細胞からも発生する可能性があります。Tリンパ球は免疫系の調節やウイルス感染に対する防御に重要です。Bリンパ球は、いくつかの感... さらに読む バーキットリンパ腫 や、鼻やのどに発生するある種のがん(上咽頭がん 上咽頭がん 上咽頭がんは、鼻腔の奥、軟口蓋の上からのどの上部に発生したがんです。 しばしば首にしこりができ、患者は耳に詰まったような感覚や痛みを感じたり、難聴になったりすることがあります。 診断には生検が必要で、がんの広がりを調べるために画像検査が行われます。 治療では放射線療法と化学療法、ときに手術が行われます。 ( 口、鼻、のどのがんの概要も参照のこと。) さらに読む )など、何種類かのがんが発生する一因になることがあります。EBウイルスの特定の遺伝子が、感染した細胞の細胞分裂周期を変化させ、細胞をがん化させると考えられています。EBウイルスは、かつて疑われたような 慢性疲労症候群 慢性疲労症候群 を起こすことはありません。

伝染性単核球症の症状

5歳未満の小児では、感染しても症状が現れないケースが大半です。青年や成人では、伝染性単核球症を発症することもあれば、発症しないこともあります。

感染してから症状が出るまでの期間は、通常は30~50日です。この期間は潜伏期間と呼ばれます。

EBウイルスによる伝染性単核球症の主な4つの症状は以下の通りです。

誰にでもこれら4つの症状がすべて出るわけではありません。たいていの場合、全身のだるさ(けん怠感)と微熱で始まり、その後のどの痛みやリンパ節の腫れがみられます。疲労感はしばしば重度で、特に症状が重いのは最初の2~3週間ですが、何カ月も続くこともあります。通常、熱は午後から夕方にかけて最も高くなり、39.5℃近くにまで達します。のどの痛みはしばしばひどくなり、のどの奥に膿のようなものがみられることがあります。リンパ節の腫れは首の部分に一番多く生じますが、どのリンパ節も腫れる可能性があります。また症状がリンパ節の腫れ(ときに誤って「リンパ腺の腫れ」と呼ばれることがあります)だけの人もいます。

伝染性単核球症の患者の50%程度に脾臓(ひぞう)の腫れがみられます。感染者の大半では、脾臓が腫れても症状はほとんど出ませんが、脾臓が破裂することがあります(特にけがをしたとき)。 脾臓の破裂 脾損傷 脾臓は左上腹部にあるため、胃の辺りを強打すると、脾臓が損傷を受け、脾臓を覆う膜や内部の組織が裂けることがあります。 脾臓の損傷は、しばしば痛みを伴います。 脾損傷は、超音波検査やCT検査といった画像検査で診断します。 脾損傷を治療するには、多くの場合輸血が必要になり、手術で脾臓の摘出や修復を行うこともあります。 ( 腹部外傷の概要も参照のこと。) さらに読む は生命を脅かします。肝臓にも軽い腫れがみられることがあります。ときに、眼の周囲が腫れることもあります。

発疹はまれですが、EBウイルスに感染した人がアンピシリンという抗菌薬を服用すると、より高い確率で発疹が現れます。

ほかに非常にまれな合併症として、けいれん発作、神経の損傷、行動異常、脳の炎症(脳炎 脳炎 脳炎とは、ウイルスが脳に直接感染して起こることもあれば、ウイルスやワクチン、その他の物質が炎症を誘発して起こることもあります。炎症が脊髄に波及することもあり、その場合は脳脊髄炎と呼ばれます。 発熱、頭痛、けいれん発作が起こることがあり、眠気、しびれ、錯乱をきたすこともあります。 通常は頭部のMRI検査と腰椎穿刺が行われます。 治療としては、症状を緩和する処置が行われ、ときに抗ウイルス薬が用いられることもあります。... さらに読む )、脳や脊髄を覆う組織の炎症(髄膜炎 ウイルス性髄膜炎 ウイルス性髄膜炎は、髄膜(脳と脊髄を覆う組織層)とくも膜下腔(髄膜と髄膜の間の空間)に炎症が起きる病気のうち、ウイルスによるものです。 ウイルス性髄膜炎は、発熱、全身のけん怠感、頭痛、筋肉痛といったウイルス感染症の症状で始まるのが普通です。 その後、頭痛と項部硬直(あごを胸につけられない、またはつけるのが難しくなる症状)が生じます。 医師は症状に基づいてウイルス性髄膜炎を疑い、診断を確定するため腰椎穿刺を行います。... さらに読む )、貧血、腫れたリンパ節による気道の閉塞があります。

症状の持続期間は様々です。2週間程度で症状は治まり、ほとんどの人が通常の生活に戻ることができます。ただし、疲労感はさらに数週間続くことがあり、ときには数カ月以上続くこともあります。1%未満の患者が死亡し、原因の多くは脳炎や脾臓の破裂、気道の閉塞などの合併症です。

伝染性単核球症の診断

  • 血液検査

通常は診断を確定するために、異種親和性抗体検査やモノスポットテストという名前で知られる簡単な血液検査が行われます。この検査は青年や成人では病気の初期に行うと結果が陰性になることがあるため、この感染症が強く疑われる場合は、約1週間後に再検査を行うことができます。この検査は、伝染性単核球症の幼児では信頼性がとても低く、しばしば陰性になります。診断を確定するための別の検査として、EBウイルスに対する特異抗体を調べる血液検査があります。(抗体 抗体 体の防衛線( 免疫系)の一部には 白血球が関わっていて、それらの白血球は血流に乗って体内を移動して組織の中に入り込み、微生物などの異物を見つけ出して攻撃します。( 免疫系の概要も参照のこと。) この防衛線は以下の2つの部分で構成されています。 自然免疫 獲得免疫 獲得免疫(適応または特異免疫)は、生まれたときには備わっておらず、後天的に獲得されるものです。獲得のプロセスは、免疫系が異物に遭遇して、非自己の物質(抗原)であることを認識した... さらに読む 抗体 とは、EBウイルスのような特定の異物による攻撃から体を守るために免疫系が作り出すタンパク質です。)

血算もよく行われます。特徴的な単核球(異型リンパ球)が多数見つかることが最初の手がかりになって、伝染性単核球症の診断に至る場合があります。

伝染性単核球症の治療

  • 初期の安静

  • 鎮痛薬

  • ときに特定の合併症に対してコルチコステロイド

特別な治療法はありません。

伝染性単核球症の患者は、症状が重い最初の1~2週間は安静にします。2週間ほど経過したら、活動を増やしてもかまいません。ただし脾臓が破裂するおそれがあるため、少なくとも1カ月が経過し、医師が診察や超音波検査で脾臓が正常な大きさに戻ったことを確認するまでは、重い物を持ち上げたり人と接触するスポーツに参加したりしないでください。

気道がひどく腫れるなどの一部の合併症は、コルチコステロイドで治療します。

現在実用化されている抗ウイルス薬は、どれも伝染性単核球症の症状にはほとんど効果がないため、使用すべきではありません。

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