特定の薬剤や感染性微生物に対する反応が原因である可能性があります。
よくみられる症状として、体の様々な部分、ときには口腔内や性器に、赤や紫色の隆起からなるかゆみを伴う発疹が現れ、鱗屑(うろこ状のくず)を伴う斑になります。
この病気は1年以上続くことがあり、再発することもあります。
扁平苔癬を引き起こす可能性のある薬剤は使用を控えるようにします。
扁平苔癬は通常治療をしなくても消失しますが、症状をコルチコステロイド、紫外線照射、またはリドカインを含む洗口液で治療することもあります。
扁平苔癬の原因は分かっていませんが、様々な薬剤(特にベータ遮断薬、非ステロイド系抗炎症薬[NSAID]、アンジオテンシン変換酵素[ACE]阻害薬、スルホニル尿素薬、抗マラリア薬、ペニシラミン、サイアザイド系薬剤)に対する免疫系の反応によるものではないかと考えられます。この病気自体は感染しません。C型肝炎がある人や頻度は低いもののB型肝炎の可能性がある人には、口の扁平苔癬が起こることがあります(表「 肝炎ウイルス 肝炎ウイルス 」を参照)。
扁平苔癬の症状
扁平苔癬の発疹はほぼ常にかゆみを伴い、かなりひどくなることもあります。隆起は通常紫色で、境界が不規則になっています。隆起に横から光を当てると、特徴的な光沢がみられます。皮膚をかいたり、皮膚に軽いけがをしたりすると新しい隆起が生じます。発疹が治った後も、その部分の皮膚の色が濃くなったままになることがあります(色素沈着と呼ばれます)。
皮疹は通常、体の両側に均等に現れますが、最も現れやすい部位は、体幹(胴体)、手首の内側、脚、陰部です。顔面にはそれほど生じません。脚では、特に大きく、厚くなり、うろこ状のくずを伴う場合があります。皮疹が頭皮にできると部分的に脱毛してしまうことがあります。扁平苔癬は小児ではあまりみられません。
この病気の患者の約半数では、口の中にも生じます。口の中に扁平苔癬ができた場合は、線状や枝状の形をした青白いレース状の斑になります(ウィッカム線条と呼ばれます)。このタイプの口腔内の斑は痛まないことが多いため、口の中にできていることに気づかない場合もあります。口の中に痛みを伴うびらんができることもありますが、そうなるとしばしばものを食べたり飲んだりするのに差し支えます。
扁平苔癬は患者の最大10%で爪に生じます。爪床(そうしょう)が変色する、爪が薄くなる、爪に溝ができるなど、ごく軽い症状しか生じない場合もあれば、爪が完全に失われて、爪の付け根(爪郭)にある爪上皮から爪の下(爪床)の皮膚にわたって瘢痕が生じる場合もあります。
扁平苔癬の診断
医師による評価
皮膚生検
扁平苔癬の診断は、典型的には発疹の外観と発生部位に基づいて下されます。しかし、扁平苔癬のように見える他の病気も多くあることから(体表の 全身性エリテマトーデス 全身性エリテマトーデス(SLE) 全身性エリテマトーデスは、関節、腎臓、皮膚、粘膜、血管の壁に起こる慢性かつ 炎症性の自己免疫結合組織疾患です。 関節、神経系、血液、皮膚、腎臓、消化管、肺、その他の組織や臓器に問題が発生します。 診断を下すため、血液検査のほか、ときにその他の検査を行います。 全身性エリテマトーデスの全患者でヒドロキシクロロキンが必要であり、損傷を引き起こし続けている全身性エリテマトーデス(活動性の全身性エリテマトーデス)の患者には、コルチコステロイドな... さらに読む や口腔内の カンジダ症 症状 または 白板症 口内の前がん性変化 口の中と口の周囲にあるあらゆる種類の組織(結合組織、骨、筋肉、神経など)に増殖性の病変が生じることがあります。増殖性の病変が最も生じることが多いのは、以下の部分です。 唇 舌の側面 口の床にあたる部分(口底) 口の天井の後方部分(軟口蓋) さらに読む )、医師は一般的に生検(顕微鏡で組織を調べる検査)を行います。
扁平苔癬の予後(経過の見通し)
扁平苔癬は普通1~2年で自然に消えますが、さらに長引く例もあり、特に口の中にできた場合はその傾向がみられます。約20%の患者で再発します。皮疹ができている間は長期の治療が必要です。しかし、皮疹ができていない時期には特に治療の必要はありません。
口内炎ができた場合は、口腔がんのリスクがわずかに高くなりますが、皮膚にできた発疹ががん化することはありません。口内炎は通常、生涯続きます。
腟に生じた扁平苔癬が慢性化して治療が困難になることがあり、この場合、生活の質が低下し、瘢痕が生じることがあります。
扁平苔癬の治療
かゆみを緩和する対策
コルチコステロイドの注射、錠剤、ローション
光線療法
口腔内の痛みを緩和する対策
症状がみられない場合、治療は必要ありません。扁平苔癬を引き起こす可能性のある薬剤は使用を控えるようにします。
皮膚の扁平苔癬
かゆみを抑えるための標準的治療法を使用することができます(かゆみの治療 治療 かゆみは非常に不快になることがあります。かゆみは、皮膚科の受診理由として最も一般的なものの1つです。 かゆみがあると、人はかきたくなります。かけば一時的にかゆみは治まりますが、皮膚が傷つくことがあり、ときには、さらなるかゆみが起こったり(かゆみとかくの悪循環)、感染(二次感染と呼ばれます)が起こったりすることもあります。やがて、その部分の... さらに読む を参照)。
コルチコステロイドを隆起(丘疹)に注射したり、皮膚に塗ったり、内服したり、ときにはアシトレチン(acitretin)、グリセオフルビン、シクロスポリンなどの他の薬剤と併用したりすることがあります。
光線療法(紫外線照射)も有用となる場合があり、ときにソラレン(紫外線に対する皮膚の感受性を高める薬)との併用で行うこともあります(光線療法:皮膚の病気の治療に対する紫外線の利用 光線療法:皮膚の病気の治療に対する紫外線の利用 )。紫外線A波とソラレンの併用療法はPUVA療法と呼ばれます。狭い波長範囲の紫外線B波を使用する治療法は、ナローバンドUVB療法と呼ばれます。
アプレミラストは内服薬であり、腟に扁平苔癬のある女性の治療薬として研究が行われています。
口腔内の扁平苔癬
痛みを伴う口内炎がある場合は、食事の前に麻酔薬のリドカインを含有する洗口液で口をゆすぐことで、痛みを抑えます。リドカインを含む洗口液は処方された頻度を超えて使用しないようにします。
タクロリムスの軟膏やコルチコステロイドの洗口液、注射、錠剤も口内炎に有用です。
ジアフェニルスルホンの内服薬、またはシクロスポリンの内服薬または洗口液も有用となります。