特定の病気は老化と同じ影響をもたらします。老化の原因を解明するために、そうした病気で何が起きているかを調べる研究が行われています。例えば、そのような病気の患者に欠損している遺伝子を特定し、高齢者の同じ遺伝子と比較します。
(老化の概要 老化の概要 老化は徐々に進んでいく自然な変化の過程で、成人期早期から始まります。中年期早期から、多くの身体機能が徐々に低下し始めます。 特定の年齢に達した時点で、老化したり、または高齢者になったりするわけではありません。伝統的に、65歳が高齢期の始まりとされてきました。しかしその理由は歴史的なもので、生物学に基づくものではありませんでした。何年も前に... さらに読む も参照のこと。)
早老症様症候群
早老症様症候群では、老化過程が著しく加速されます。この病気を発症した小児では、頭髪の脱毛(禿頭[特等])、曲がった腰、乾いて弾力がなくしわのよった皮膚など、老人のもつ外見的特徴のすべてが発生します。しかし、通常の老化と異なり、卵巣と精巣は機能せず不妊症になります。女性では月経がありません。この病気の小児は異常に低身長です。したがって早老症様症候群は、急速な老化の正確なモデルとはいえません。
早老症様症候群にはいくつかの種類があります。ハッチンソン-ギルフォード症候群とウェルナー症候群では、 脳卒中 脳卒中の概要 脳卒中は、脳に向かう動脈が詰まったり破裂したりして、血流の途絶により脳組織の一部が壊死し(脳梗塞)、突然症状が現れる病気です。 脳卒中のほとんどは虚血性(通常は動脈の閉塞によるもの)ですが、出血性(動脈の破裂によるもの)もあります。 一過性脳虚血発作は虚血性脳卒中と似ていますが、虚血性脳卒中と異なり、恒久的な脳損傷が起こらず、症状は1時間... さらに読む が起こらないかぎり、中枢神経系とひいては多くの日常活動を行う能力にほとんど影響がありません。
ハッチンソン-ギルフォード症候群(早老症)
ハッチンソン-ギルフォード症候群は幼児期に始まります。遺伝的な異常が原因ですが、通常は遺伝しません。すなわち、患者では遺伝子異常(突然変異)が自然に起こります。弾力がなくしわのよった皮膚、頭髪の脱毛(禿頭)、その他の通常は加齢に関連している問題(心臓、腎臓、肺の病気、 骨粗しょう症 骨粗しょう症 骨粗しょう症とは、骨密度の低下によって骨がもろくなり、骨折しやすくなる病態です。 加齢、エストロゲンの不足、ビタミンDやカルシウムの摂取不足、およびある種の病気によって、骨密度や骨の強度を維持する成分の量が減少することがあります。 骨粗しょう症による症状は、骨折が起こるまで現れないことがあります。... さらに読む など)を引き起こします。体が正常に成長せず、頭に比べ異常に小さい外観になります。ハッチンソン-ギルフォード症候群の小児のほとんどが青年期に死亡します。その原因は、通常は心臓発作または脳卒中です。この病気を引き起こす突然変異は特定されており、現在ではこのまれな疾患を治療するための薬物療法が利用可能です。
ウェルナー症候群
ウェルナー症候群は遺伝性症候群であり、青年期または成人期の初期に発生します。皮膚の弾力が失われてしわがよったり、頭髪が抜けたりする(禿頭)ほか、以下のような加齢に関連する問題が生じます。
筋萎縮
がん(他の人ではまれなタイプを含む)
ダウン症候群
ダウン症候群 ダウン症候群(21トリソミー) ダウン症候群は、余分な21番染色体によって引き起こされる染色体異常症の一種で、知的障害と様々な身体的異常がみられます。 ダウン症候群は、21番染色体が余分にあることで発生します。 ダウン症候群の小児では、発育の遅れ、精神発達の遅れ、特異的な頭部と顔貌、しばしば低身長がみられます。 出生前の段階では、ダウン症候群は超音波検査や母親の血液検査の結果から疑われ、 絨毛採取や 羊水穿刺という検査で確定されます。... さらに読む は 早老症様症候群 早老症様症候群 特定の病気は老化と同じ影響をもたらします。老化の原因を解明するために、そうした病気で何が起きているかを調べる研究が行われています。例えば、そのような病気の患者に欠損している遺伝子を特定し、高齢者の同じ遺伝子と比較します。 ( 老化の概要も参照のこと。) 早老症様症候群はまれな病気で、早期老化を引き起こし、余命が短くなります。 早老症様症候群では、老化過程が著しく加速されます。この病気を発症した小児では、頭髪の脱毛(禿頭[特等])、曲がっ... さらに読む よりはるかに多くみられます。この病気も、高齢者に典型的な問題を若い成人に引き起こします。
耐糖能障害
血管の病気
がん
脱毛
骨の変性疾患
若年での死亡
早老症様症候群と異なり、ダウン症候群では著しい中枢神経系の障害がみられます。通常は知的障害を引き起こし、後に アルツハイマー病の症状 症状 アルツハイマー病は、精神機能が次第に失われていく病気であり、神経細胞の消失、ベータアミロイドと呼ばれる異常タンパク質の蓄積、神経原線維変化といった、脳組織の変性を特徴とします。 最近の出来事を忘れるのが初期の徴候で、続いて錯乱が強くなっていき、記憶以外の精神機能も障害され、言語の使用と理解や日常生活行為にも問題が生じるようになります。 症状が進行すると普段の生活が送れなくなり、他者に完全に依存するようになります。... さらに読む が現れます。また、死後に解剖し脳の組織を顕微鏡で調べると、アルツハイマー病の人に起こるものと同種の変性が認められます。