血管造影検査は、X線を用いて血管の詳細な画像を描出する検査で、 CT血管造影検査 CT血管造影 CT検査(以前はCAT検査とよばれていました)では、X線源とX線検出器が患者の周りを回転します。最近の装置では、X線検出器は4~64列あるいはそれ以上配置されていて、それらが体を通過したX線を記録します。検出器によって記録されたデータは、患者の全周の様々な角度からX線により計測されたものであり、直接見ることはできませんが、検出器からコンピュータに送信され、コンピュータが体の2次元の断面のような画像(スライス画像)に変換します。(CTとは... さらに読む や MRアンギオグラフィー検査 MRアンギオグラフィー検査(MRA) MRI検査は、強い磁場と非常に周波数の高い電磁波を用いて極めて詳細な画像を描き出す検査です。X線を使用しないため、通常はとても安全です。( 画像検査の概要も参照のこと。) 患者が横になった可動式の台が装置の中を移動し、筒状の撮影装置の中に収まります。装置の内部は狭くなっていて、強い磁場が発生します。通常、体内の組織に含まれる陽子(原子の一部で正の電荷をもちます)は特定の配列をとっていませんが、MRI装置の中で発生するような強い磁場の中に... さらに読む (MRA)と区別するために「従来の血管造影」と呼ばれることもあります。血管造影の撮影を行いながら、医師が血管の異常を治療することも可能です。血管造影は体に負担をかける検査法ですが、それでも比較的安全です。
血管造影では静止画像だけでなく動画(シネアンギオグラフィーといいます)も撮影でき、血液が血管内を流れる速さを測ることも可能です。(冠動脈造影検査 冠動脈造影検査 心臓カテーテル検査と冠 動脈造影検査は、手術を行わずに心臓とそこに血液を供給する血管(冠動脈)を調べることができる低侵襲検査です。通常、これらの検査は、 非侵襲的な検査では十分な情報が得られない場合や、非侵襲的な検査では心臓や血管の問題が示唆されない場合、患者の症状から心臓や冠動脈の問題が強く疑われる場合に行われます。これらの検査の利点の1つとしては、検査中に 冠動脈疾患など様々な病気の治療も行えることがあります。... さらに読む と 画像検査の概要 画像検査の概要 画像検査は、体の全体または一部の「内側」を画像化する検査です。画像検査は、病気の診断、重症度の判定、診断後のモニタリングを行う上で役に立ちます。大半の画像検査は痛みを伴わず、比較的安全で、体に負担をかけません(すなわち、皮膚を切開したり、器具を体内に挿入したりする必要がありません)。... さらに読む も参照のこと。)
血管造影の手順
血管造影を受ける前には、通常は12時間飲食を控えるよう指示されます。
まず、X線透視台(X線を容易に通過させる台)に横になり、台が傾く場合に備えて胸部と脚をバンドで固定します。そして必要な場所にX線カメラを設置します。胸部には電極を取り付けて心臓をモニタリングし、同時に血圧と酸素レベルもモニタリングします。
医師は局所麻酔薬を注射してから、一般に鼠径部(ときに腕)を小さく切開します。そこから細く、しなやかな管(カテーテル)を通常は動脈に挿入し、その動脈を介して調べたい領域までカテーテルを進めます。目的とする領域にカテーテルの先端が届いたら 放射線不透過性造影剤 放射線不透過性造影剤 画像検査では、特定の組織または構造を周辺領域から区別したり、詳細な画像を撮影したりするために造影剤を使用することがあります。 造影剤には以下のものがあります。 放射線不透過性造影剤:X線画像に写る物質 常磁性造影剤: MRI検査で使用される物質 放射線不透過性造影剤はX線を吸収するため、X線画像上で白く見えます。典型的には以下のものを見るために用いられます。 さらに読む (ヨウ素を含有する、X線画像に写る液体)を注入します。すると造影剤が血管の中を流れて血管の輪郭が描き出されます。その映像は画面に映し出され、記録されます。このようにして医師は血管の構造を評価し、異常があれば特定することができます。
血管造影の前には、リラックスして穏やかな気持ちで検査を受けられるように、しばしば鎮静薬を静脈から投与することがありますが、その場合も検査中意識は保たれます。深く息を吸ったり、息を止めたり、せきをしたりするよう指示されることもあります。検査中に不快感があれば報告してもらいます。
血管造影は、評価する部位や行われる検査や手順の種類によって、1時間以内に終わることもあれば、数時間かかることもあります。通常は外来検査として実施されます。
カテーテルを動脈に挿入した場合は、器具をすべて外した後で挿入部位を10~20分間しっかり圧迫しなければなりません。圧迫することで出血や青あざが生じにくくなります。あるいは、小さな閉鎖用器具を用いて血管の穴をふさぐこともあります。出血を予防するために、検査を終了してから数時間にわたって横になる必要があるかもしれません。まれに、一泊の入院が必要になる場合もあります。検査を受けた日は安静にして、水分を普段より多くとって、体から造影剤が早く出て行くようにします。
血管造影の用途
血管造影は、血管(通常は動脈)に異常がないか確認するために行われます。そのような異常としては以下のものがあります。
閉塞
狭窄
動脈と静脈の異常な接続(動静脈奇形)
以下のように、血管造影の最中に、見つかった異常を治療する処置が行われることもあります。
動脈が狭くなっていれば拡張します。
閉塞があれば解除します。
ステント(網目状のワイヤーでできた筒)を留置し、動脈を開いた状態に保ちます。
血管の壁が裂けたり弱くなったりしている部分は修復できます。
腫瘍または動静脈奇形へと流れる血流は遮断します。
血管造影の種類
動脈造影
これは動脈の血管造影のことで、最も多いタイプのものです。
静脈造影
これは静脈の血管造影のことです。静脈内の血栓(深部静脈血栓症 深部静脈血栓症 深部静脈血栓症は、深部静脈に血栓(血液のかたまり)が形成される病気で、通常は脚で発生します。 血栓は、静脈の損傷や血液の凝固を引き起こす病気により形成される場合や、何らかの原因で心臓に戻る血流が遅くなることで形成される場合があります。 血栓によって、脚や腕の腫れが生じることがあります。 血栓が剥がれて血流に乗り、肺に到達すると、 肺塞栓症を引き起こします。 深部静脈血栓症を発見するために、ドプラ超音波検査や血液検査を行います。 さらに読む )の診断は、静脈造影検査に代わり、今では大部分が超音波検査によって下されます。
デジタルサブトラクション血管造影
放射線不透過性造影剤 放射線不透過性造影剤 画像検査では、特定の組織または構造を周辺領域から区別したり、詳細な画像を撮影したりするために造影剤を使用することがあります。 造影剤には以下のものがあります。 放射線不透過性造影剤:X線画像に写る物質 常磁性造影剤: MRI検査で使用される物質 放射線不透過性造影剤はX線を吸収するため、X線画像上で白く見えます。典型的には以下のものを見るために用いられます。 さらに読む を注入する前と後にX線画像を撮影します。その後、コンピュータで2つの画像を比較して特別な処理を行います。これにより、動脈以外の構造物(骨など)が画像から取り除かれ、結果として動脈がより鮮明に見えるようになります。
血管造影の短所
一部の人は、検査中に不快感を覚えます。少数ですが、造影剤に対する アレルギー反応 造影剤に対するアレルギー反応 画像検査では、特定の組織または構造を周辺領域から区別したり、詳細な画像を撮影したりするために造影剤を使用することがあります。 造影剤には以下のものがあります。 放射線不透過性造影剤:X線画像に写る物質 常磁性造影剤: MRI検査で使用される物質 放射線不透過性造影剤はX線を吸収するため、X線画像上で白く見えます。典型的には以下のものを見るために用いられます。 さらに読む を起こす人もいます。注射部位から出血したり、感染したり、痛んだりすることもあります。まれに、カテーテルによって血管が傷つけられることもあります。
ショック、けいれん発作、腎障害、突然心臓の拍動が停止する(心停止)などの重篤な合併症が起こることは非常にまれです。ときに心臓カテーテル検査の実施中に、心臓の拍動が跳んだり、一時的に遅くなったりすることがあります。
高齢者では合併症のリスクが高まりますが、それでもなお低いです。
使用される 放射線量 医療画像検査における放射線のリスク 画像検査で使用される放射線(通常はX線)は、診断に有用なツールですが、放射線への曝露にはある程度のリスクが伴います( 放射線障害も参照)。 使用する放射線量は検査毎に異なりますが(表「 様々な画像検査で使用する放射線量」を参照)、ほとんどの場合、使用される線量は低く、一般的に安全とみなされています。例えば、胸部X線検査1回に使用する放射線量は自然環境で浴びる放射線の年間平均線量の100分の1にも届きません(... さらに読む は血管造影の種類によって異なりますが、一般的には、単純X線検査よりかなり高くなります。例えば、冠動脈造影検査で使用される放射線量は、胸部単純X線検査1方向分で使用される線量の約350~750倍です。
血管造影はすぐに行えるとは限りません。また、手技に高度に熟練した医師が行う必要があります。