成人にとって自動車の運転は,最も重要な自立的な移動手段である。米国内で,2011年の65歳以上の運転免許保有者は3500万人であり,80歳以上の保有者も多数含まれていた( 年齢別および男女別のドライバーの割合 )。進行性疾患により高齢者の運転能力が低下すると,自動車事故に起因する損傷もしくは死亡,または運転中止という2種類の重大な悪影響が生じることがある。
老年医学(Geriatrics)とは,高齢者(elderly)に対する医療を指すが,この年齢層は正確に定義することは容易ではない。「老人(older people)」という言葉の方がときに好まれるが,これも同様に曖昧である;65歳以上という年齢が使用されることが多い。加齢学(Gerontology)は生物学的,社会学的,心理学的変化を含む加齢の研究である。
高齢者においては,予防は,疾患,フレイル,事故(すなわち,不慮の負傷),医原性合併症,および心理社会的問題に主に焦点を置く。全ての予防措置があらゆる高齢患者にとって有益となるわけではない。予防措置は患者の全身状態に応じて選択する:
処方薬を使用している高齢者の割合は,加齢とともに大幅に増加する。65歳以上の人々において,90%が少なくとも1種類の薬剤/週,40%超が少なくとも5種類の薬剤/週,および12%が10種類以上の薬剤/週を使用している。女性の方がより多くの薬剤(特に向精神薬と関節炎の治療薬)を服用している。薬剤の使用はフレイルな高齢者,入院患者および介護施設入居者において最も多い;一般的に,介護施設入居者は7~8種類の薬剤を定期的に投与されている。
転倒は人が同一平面またはより低い平面へ倒れることと定義される;ときに,体の一部が何かにぶつかり,転倒が中断される。一般的に,急性疾患(例,脳卒中,痙攣発作)または抗しがたい環境内の障害物(例,動いているものが当たる)により引き起こされた事象は,転倒とみなされない。
米国では,高齢者に対する医療サービスの費用は,主としてMedicare,Medicaid,Veterans Health Administration,民間保険,および自己負担費でまかなわれている。また,多くの州は,交通,住宅,光熱費,電話,および食料費に対する補助金などの健康関連の給付およびプログラムを提供するとともに,自宅での介助および栄養サービスも提供している。医療従事者は,高齢患者が,受ける権利のある医療給付およびプログラムを把握できるよう支援すべきである。