薬に対する反応は人によって異なります。人がどのようにある薬に反応するかは多くの要因に左右されます。例えば以下のような要因があります。
年齢
体の大きさ
食事の内容(飲みものを含む)
病気の有無(腎臓や肝臓の病気の有無)
薬の保管状況(使用期限が切れていたり、適切でない環境で保管されていたなど)
薬を指示通りに服用するかどうかも(アドヒアランス 薬物治療のアドヒアランス(指示の遵守) 患者が処方薬をどのくらい指示された通りに使用(服薬)するかの程度を、アドヒアランスといいます。 ( 薬に対する反応の概要も参照のこと。) 薬物療法へのアドヒアランス(コンプライアンス)は重要です。しかしながら、米国では診療所で処方せんを受け取った人のうち、指示を守って服薬するのは半数程度だといわれています。薬物療法の指示を守らない理由は様... さらに読む )、その人の薬に対する反応に影響します。このような、薬に対する反応に影響する因子は、 体が薬を吸収する仕組み 薬の吸収 薬の吸収とは、投与後に薬が血液中に移動することです。 ( 薬の投与と薬物動態に関する序も参照のこと。) 吸収は、どれほど速くどれだけの量の薬が、対象とする標的部位に届くかを意味する生物学的利用能(バイオアベイラビリティ)に影響します。吸収(そしてその結果としての生物学的利用能)に影響する要因としては、以下のものがあります。... さらに読む や、体が薬を分解(代謝 薬の代謝 薬の代謝とは、体内で起こる薬の化学変化のことをいいます。 ( 薬の投与と薬物動態に関する序も参照のこと。) 一部の薬は生体の作用によって化学的に変化します(代謝)。代謝の結果生じる物質(代謝物)には活性がないか、またはその活性や毒性が元の薬と同様のものや異なるものもあります。プロドラッグと呼ばれる薬は不活性型として投与され、体内で代謝され... さらに読む )し、 排泄する 薬の排泄 薬の排泄とは、体から薬が除去されることです。 ( 薬の投与と薬物動態に関する序も参照のこと。) すべての薬は最終的に体から排泄されます。化学的に変化( 代謝)してから排泄されることもあれば、そのまま排泄されることもあります。大半の薬、特に水溶性の薬とその代謝物は、主として腎臓から尿中に排泄されます。したがって、薬の投与量は腎機能に大きく依... さらに読む 仕組み、あるいは、薬が体に及ぼす作用に影響します。
薬に対する反応に影響を及ぼす因子は非常に多いため、医師はそれぞれの患者に合った薬を選び、投与量を注意深く調整する必要があります。すでに他の薬を服用している患者や、他の病気にかかっている患者では、そうでない患者と比べて、薬の選択や投与量の調整が複雑になります。薬同士の相互作用や薬と病気の相互作用が起こる可能性があるからです。
それぞれの新薬には、標準投与量または平均投与量が決められています。しかし、平均投与量は衣服の「フリーサイズ」のようなもので、様々な人々に対して一応満足できる程度には合いますが、ぴったり合う人はほとんどいません。ただし、一部の薬は、同じ投与量でほぼすべての人によく効くため、投与量を調整する必要がありません。