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大腸の憩室症

執筆者:

Joel A. Baum

, MD, Icahn School of Medicine at Mount Sinai;


Rafael Antonio Ching Companioni

, MD, HCA Florida Gulf Coast Hospital

レビュー/改訂 2022年 11月
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やさしくわかる病気事典
本ページのリソース

憩室(けいしつ)症は風船状の袋(憩室)が1つ以上ある状態で、通常は大腸(結腸)に起こります。

  • 憩室症の原因は不明ですが、食事、体を動かさない生活習慣、肥満、喫煙、特定の薬の使用に関連している可能性があります。

  • 腸の筋層のけいれんが憩室を引き起こすと考えられています。

  • 通常、憩室では症状はみられませんが、ときに炎症や出血が起こり、血便や下血が生じる場合もあります。

  • 診断は、一般に大腸内視鏡検査またはCT検査によって確定します。

  • 症状がみられる場合は、高繊維食や便のかさを増す物質が投与されますが、ときに出血が起こり、大腸内視鏡検査や手術さえも必要なことがあります。

憩室症とは

憩室症とは憩室と呼ばれる風船状の袋が大腸に多数できる状態で、大腸の最後の部分であるS状結腸に最も多くみられます。大半の憩室の大きさは、直径が0.1インチ程度(約2.5ミリメートル)のものから、1インチ(約2.5センチメートル)を超えるものまであります。原因は不明ですが、非常に大きくなるものもあり、直径は最大約15センチメートルにも達します。

憩室けいしつができた大腸だいちょう

大腸 大腸 大腸は以下の部分で構成されています。 盲腸と上行結腸(右側) 横行結腸 下行結腸(左側) S状結腸(直腸と接続している部分) さらに読む の憩室は、腸壁の中間にあって厚みのある筋層が弱くなった箇所に起こります。腸壁の内側の薄い層がその弱くなった部分から突き出て、小さな袋を形成します。憩室では通常、何の問題も生じませんが、ときに炎症や出血などが起こります。

憩室は大腸のどの部位にも起こりますが、直腸の直前で大腸の最後の部分にあたるS状結腸でよくみられます。憩室の直径は0.1インチ程度(約3ミリメートル)のものから、0.5インチ(約10ミリメートル)近くのものまであります。40歳未満ではまれですが、それ以降は急速に一般的になっていきます。80歳以上のほとんどの人で、憩室がみられます。巨大な憩室はまれにしかみられませんが、直径が約4センチメートルを超えるものもあります。巨大な憩室が1つだけある人もいます。

大腸の憩室症の原因

憩室症の原因は不明ですが、食物繊維の少ない食事や赤身肉の多い食事、体を動かさない生活習慣、肥満、喫煙のほか、 非ステロイド系抗炎症薬 非ステロイド系抗炎症薬 痛み止め(鎮痛薬)は、痛みの治療に使用される主な薬剤です。医師が痛み止めを選択する際には、痛みの種類および持続期間と、それぞれの痛み止めで予想されるベネフィットとリスクを考慮します。ほとんどの痛み止めは侵害受容性疼痛(損傷による痛み)に対しては効果がありますが、 神経障害性疼痛(神経、脊髄、脳の損傷や機能障害による痛み)に対してはあまり効果がありません。多くのタイプの痛み(特に... さらに読む (NSAID)や、アスピリンアセトアミノフェン、コルチコステロイド、 オピオイド オピオイド オピオイドは、ケシに由来する薬物(合成のバリエーションを含む)の種類で、誤用される可能性の高い鎮痛薬です。 オピオイドは痛みの緩和に使用されますが、過度の幸福感ももたらし、使いすぎると依存症や嗜癖になります。 オピオイドを大量摂取すると、通常、呼吸停止により致死的となる可能性があります。 尿検査でオピオイドを確認できます。 治療戦略として、解毒(薬の使用を中止する)、代替療法(別の薬に切り替えて徐々に量を減らす)、維持療法(別の薬に切り... さらに読む の使用に関連している可能性があります。その他の危険因子としては、家族歴、大腸の構造の変化、老廃物がそこを通るときの通り方などが考えられます。

憩室は腸の筋層のけいれんに起因すると考えられています。腸けいれんによって腸壁に圧力が加わることで、腸壁の弱い部分、通常は動脈が大腸の筋層を貫通している場所の付近が膨らみます。憩室症の患者では、S状結腸の筋層が厚くなっているのが一般的にみられます。

巨大憩室の原因はよく分かっていません。

大腸の憩室症の症状

憩室自体は危険なものではありません。実際に、ほとんどの憩室症の人では症状がみられません。しかし、憩室症では痛みを伴う原因不明のけいれんや排便障害(便秘など)がみられることがあります。

憩室症の合併症

憩室症の合併症は、喫煙者、肥満の人、HIV感染者、NSAIDの使用者、がんに対する化学療法を受けている人でより多くみられます。

最も一般的な合併症は以下のものです。

憩室炎 憩室炎 憩室炎(けいしつえん)は、1つ以上の風船状の袋(憩室)に炎症が起きた状態です。感染することもあれば、感染しないこともあります。 通常、憩室炎は大腸(結腸)に起こります。 左下腹部の痛み、圧痛、発熱が、典型的な症状です。 診断は、CT検査の結果に基づいて下され、憩室炎が治まった後に、大腸内視鏡検査を行います。 憩室炎の症状が軽度の場合は、安静だけで治療できることがありますが、重度の場合は入院してもらった上で、抗菌薬を静脈から投与するほか、... さらに読む 憩室炎 は、感染の有無にかかわらず憩室に炎症が起こっている病態で、腹痛が生じ、炎症が起こっている憩室の周囲に膿がたまって膿瘍ができることがあります。憩室に穿孔(穴)が生じると、液体や細菌が腹部に漏れ出し、 腹膜炎 腹膜炎 腹痛はよく起こりますが、多くの場合軽度です。しかし、強い腹痛が急に起きた場合は、ほとんどが重大な問題であることを示しています。このような腹痛は、手術が必要であることを示す唯一の徴候であるかもしれず、速やかに診察を受ける必要があります。高齢者やHIV感染者、免疫抑制薬(コルチコステロイドなど)を使用している人では、同じ病気の若い成人や健康な成人よりも腹痛が弱いことがあり、病状が重篤な場合でも腹痛がよりゆっくり発症することがあります。幼い子... さらに読む と呼ばれる非常に深刻な病態を引き起こします。

憩室から腸内に出血することもあります。出血に痛みは伴いませんが、量が多くなることがあり、結果として直腸より血液が排出される場合があります(消化管出血 消化管出血 消化管からの出血は、口から肛門までのどの部分でも起こる可能性があります。出血は肉眼で容易に見える場合(顕性の出血)もあれば、量が少なすぎて見えない場合(潜血)もあります。潜血は、 特別な化学物質を用いて便のサンプルを検査することでしか検出できません。 吐血は、嘔吐物の中に目に見える量の血液が含まれている場合で、上部消化管(通常は食道、胃、... さらに読む 消化管出血 を参照)。ほとんどの場合、出血は自然に止まります。ただし、一部の人では、出血を止めるために大腸内視鏡検査か手術をせざるをえない場合もあります。輸血が必要なほど出血が重篤になることもあります。

大腸の憩室症の診断

  • 大腸内視鏡検査またはCT検査

痛みを伴う原因不明のけいれん、排便障害、痛みを伴わない下血などの症状がみられる場合(特に高齢者で)、憩室症が疑われます。

症状を引き起こさない憩室は通常、 大腸内視鏡検査 内視鏡検査 内視鏡検査とは、柔軟な管状の機器(内視鏡)を用いて体内の構造物を観察する検査です。チューブを介して器具を通すことができるため、内視鏡は多くの病気の治療にも使うことができます。 口から挿入する内視鏡検査では、食道(食道鏡検査)、胃(胃鏡検査)、小腸の一部(上部消化管内視鏡検査)が観察できます。 肛門から挿入する内視鏡検査では、直腸(肛門鏡検査)、大腸下部と直腸と肛門(S状結腸内視鏡検査)、大腸全体と直腸と肛門(大腸内視鏡検査)が観察できま... さらに読む 、大腸カプセル内視鏡検査、 下部消化管造影検査 消化管のバリウムX線検査 消化器系の問題の評価にはX線検査がよく使われます。標準的なX線検査(単純X線検査)では、特別な準備は何も必要ありません( 単純X線検査)。消化管に閉塞や麻痺がある場合や、腹腔内のガスの分布が異常な場合は、通常は標準的なX線検査で明らかになります。また、肝臓、腎臓、脾臓の腫大も標準的なX線検査で明らかになります。 バリウムを用いたX線検査では、多くの場合、標準のX線検査より多くの情報が得られます。味つけした液体バリウムまたはバリウムでコー... さらに読む CT検査 消化管のCT検査とMRI検査 CT検査( CT検査)とMRI検査( MRI検査)は、腹部臓器の大きさや位置を調べるのに適しています。さらに、これらの検査では悪性腫瘍(がん)や良性腫瘍(がんではない腫瘍)もしばしば検出されます。血管の変化も検出できます。通常、虫垂や憩室などの炎症( 虫垂炎や 憩室炎など)も検出できます。ときに、X線照射や手術のガイド役としてこれらの検査を用いることもあります。 消化管のCT検査とMRI検査では、造影剤(画像検査に写る物質)を投与して、... さらに読む 、または MRI検査 消化管のCT検査とMRI検査 CT検査( CT検査)とMRI検査( MRI検査)は、腹部臓器の大きさや位置を調べるのに適しています。さらに、これらの検査では悪性腫瘍(がん)や良性腫瘍(がんではない腫瘍)もしばしば検出されます。血管の変化も検出できます。通常、虫垂や憩室などの炎症( 虫垂炎や 憩室炎など)も検出できます。ときに、X線照射や手術のガイド役としてこれらの検査を用いることもあります。 消化管のCT検査とMRI検査では、造影剤(画像検査に写る物質)を投与して、... さらに読む で偶然見つかります。

憩室症の診断は通常、観察用の柔軟な管状の機器を用いた大腸の検査(大腸内視鏡)か、ときに腹部CT検査によって確定します。重度の腹痛がある場合には、炎症を起こしている腸を破ることがないように、通常は腹部CT検査が選択されます。

便に血が混じっている場合、出血部位を特定するためには大腸内視鏡検査が通常は最善の方法です。ただし大量の出血がみられる場合には、出血部位を特定するために、放射線で標識した赤血球を静脈に注射して行う 血管造影検査 CT血管造影 CT検査(以前はCAT検査とよばれていました)では、X線源とX線検出器が患者の周りを回転します。最近の装置では、X線検出器は4~64列あるいはそれ以上配置されていて、それらが体を通過したX線を記録します。検出器によって記録されたデータは、患者の全周の様々な角度からX線により計測されたものであり、直接見ることはできませんが、検出器からコンピュータに送信され、コンピュータが体の2次元の断面のような画像(スライス画像)に変換します。(CTとは... さらに読む CT血管造影 または 核医学検査 核医学検査 核医学検査では、放射性核種を用いて画像を描出します。放射性核種とは放射線を出す元素のことで、エネルギーを放射線の形で放出することで、安定した状態になろうとする原子です。放射性核種の多くは高いエネルギーをガンマ線(人の手によらない、自然環境で発生するX線)または粒子( PET検査で使用される陽電子など)の形で放出します。( 放射線障害と 画像検査の概要も参照のこと。) 放射性核種は、甲状腺などの特定の臓器の病気を治療するのにも使用されます... さらに読む が必要になる場合もあります。

大腸の憩室症の治療

  • 症状のない人に対しては治療を行わない

  • 症状のある人に対しては食習慣の変更

  • 出血の治療

憩室があっても症状がない場合、治療法の変更も食習慣の変更も必要ありません。

症状を伴う憩室症に対する治療の目標は、通常は腸のけいれんを軽減することで、そのためには野菜、果物、全粒穀物などの高繊維食を続け、水分を十分に摂取することが最善の方法である可能性があります。大腸の内容物が増加するとけいれんが軽減し、結果として大腸の壁にかかる圧力が弱まります。しかし、食物繊維が大いに役立つかどうかは明確に証明されていません。高繊維食のみで効果が現れなければ、ふすま(水に溶けず、体が消化できない)や膨張性下剤(オオバコやメチルセルロースなど)で食事の栄養強化を毎日行うことが役に立つ場合があります。便秘がある人には、大腸内で膨張する下剤も投与されることがあります。

ほとんどの出血は治療をしなくとも止まりますが、止まらない場合は大腸内視鏡検査を行って出血部位を特定し、クリップや熱、レーザーを用いるか、または薬を注入して固めることで止血します(凝固)。

代替として、止血のために血管造影が行われることもあります。血管造影では、出血がみられる憩室につながる動脈にカテーテルを挿入し、特殊な物質を注入して(塞栓術と呼ばれる処置)、出血部位への血流量を減少させます。

出血が止められない場合や頻繁に再発する場合は、まれに、大腸の一部または全部を切除する手術(結腸切除術と呼ばれます)が必要になることもあります。

巨大憩室は感染を起こして破裂する可能性が高いため、手術が必要になることがあります。

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