肛門がんの危険因子としては特定の性感染症などがあります。
典型的な症状は、排便時の出血、痛み、ときに肛門周囲のかゆみです。
診断の確定は指診、S状結腸鏡検査、大腸内視鏡検査、生検により行います。
治療には、手術のみ、放射線療法と化学療法の組合せ、または放射線療法と手術の組合せがあります。
肛門がんは、肛門周囲に接している皮膚細胞または 肛門 直腸と肛門 直腸は大腸の終わりのS状結腸に続く部分から始まり、最後は肛門へと続く管腔です( 肛門と直腸の概要)。普通、便は下行結腸にとどまっているため、直腸は空になっています。やがて、下行結腸がいっぱいになり、便が直腸に下りてくると便意が起こります(排便)。成人や年長児はトイレに行くまで便意を我慢することができます。乳児や幼児では、排便を遅らせるのに... さらに読む と 直腸 直腸と肛門 直腸は大腸の終わりのS状結腸に続く部分から始まり、最後は肛門へと続く管腔です( 肛門と直腸の概要)。普通、便は下行結腸にとどまっているため、直腸は空になっています。やがて、下行結腸がいっぱいになり、便が直腸に下りてくると便意が起こります(排便)。成人や年長児はトイレに行くまで便意を我慢することができます。乳児や幼児では、排便を遅らせるのに... さらに読む の境目(肛門管)の粘膜に発生します。直腸や大腸のがんのほとんどは腺がんであるのに対して、肛門がんは主に扁平上皮がんです。
肛門がんは、米国では毎年約8590人が発症し、1350人以上の死亡の原因になっています。肛門がんは女性でより多くみられます。
肛門がんの危険因子には以下のものがあります。
肛門性交の受け手側
肛門の皮膚に対する放射線療法
喫煙
肛門がんの症状
肛門がんの患者の症状としては、排便時の出血、痛み、ときに肛門周囲のかゆみがしばしば生じます。約25%の患者では症状がみられません。この場合は、定期的な診察でしかがんが見つかりません。
肛門がんの診断
医師による評価
S状結腸鏡検査または大腸内視鏡検査
生検
肛門がんの診断を下すには、まず肛門周囲の皮膚に異常がないかを視診します。次に手袋をして肛門と直腸下部を触診し、肛門内面に周囲と感触が違う部分がないかをチェックします。S状結腸内視鏡(先端にカメラを取り付けた観察用の短い管状の機器)を用いて肛門と直腸を評価します。診察の補助として、肛門鏡(光源を備えた細く硬い管状の機器)を肛門に数センチメートル挿入して観察することがあります。
異常な部分があれば組織サンプルを採取して顕微鏡で調べます(生検と呼ばれます)。
出血がある場合は、大腸内視鏡検査を行って 結腸がん 大腸がん 大腸がんのリスクは、家族歴や食事に関する一部の要因(低繊維、高脂肪)によって高まります。 典型的な症状としては、排便時の出血、疲労、筋力低下などがあります。 50歳以上の人ではスクリーニング検査が重要です。 診断を下すために大腸内視鏡検査がよく行われます。 早期に発見された場合に最も高い治癒の可能性があります。 さらに読む が合併していないか調べます。大腸内視鏡検査では、大腸全体を観察します。大腸内視鏡検査は、出血の原因になる明らかな 痔核 痔核 痔核は直腸の下部や肛門の粘膜にある血管が膨らみ、ねじれたものです。 血圧の上昇により血管の腫れが生じます。 肛門の内側または外側にしこりが生じ、痛んだり、出血したりします。 診断は、しばしば肛門鏡、S状結腸内視鏡、または大腸内視鏡を使用して、肛門と直腸を検査した結果に基づいて下されます。... さらに読む (直腸や肛門の粘膜にある蛇行した静脈)がある人でも行われます。
肛門がんの治療
放射線療法と化学療法の併用
ときに手術
肛門がんの治療法と予後は、がんの広がりによって変わってきます。
通常は放射線療法を化学療法と組み合わせる治療を最初に行います。
放射線療法と化学療法を行ってもがんが消えない場合や、がんが消えてから再発した場合には、手術を行います。手術を行う場合、肛門を閉じた状態に保つ輪状の筋肉(肛門括約筋)の機能を妨げないように注意する必要があります。肛門括約筋は、排便のときまで閉じています。括約筋が適切に機能していないと、排便をコントロールできなくなる状態(便失禁 便失禁 便失禁とは、排便をコントロールできなくなることです。 便失禁は、 下痢発症時に一時的に起こる場合や、直腸に硬い便が滞留して( 宿便)起こる場合があります。先天異常、肛門や脊髄の損傷、 直腸脱(直腸粘膜が肛門から外に脱出)、 認知症、糖尿病による 神経の損傷、 肛門腫瘍、出産時の骨盤の損傷がある人は、持続的な便失禁を起こすことがあります。... さらに読む )につながる可能性があります。
がんが広がっていない場合、多くの肛門がんが治療により治癒し、70%以上の人が5年以上生存します。