腎臓の病気によって引き起こされる痛みは、通常、わき腹(側腹部)や腰(腰背部)に感じられます。ときに、痛みが腹部の中央に広がることもあります。通常、痛みは腎臓が急激に腫れることで、腎臓の外側を覆う膜(腎被膜)が緊張することで生じるか、結石が尿管(腎臓と膀胱をつなぐ管)に入ったために起こります。腎臓に重度の痛みが生じると、しばしば 吐き気や嘔吐 成人の吐き気と嘔吐 吐き気とは、嘔吐をしそうになる不快な感覚のことです。めまい、腹部の漠然とした不快感、食欲不振を感じることもあります。 嘔吐とは、胃の強い収縮によって、胃の内容物が食道に押し上げられて口から出ることです。( 乳児と小児の嘔吐も参照のこと。)嘔吐すると胃が空になり、少なくとも一時的には吐き気がかなり治まることがよくあります。嘔吐は極めて不快で、激しいことがあります。激しい嘔吐では、胃の内容物を1メートル以上飛ばすこともあります(噴出性嘔吐)... さらに読む を伴います。
(尿路症状の概要 尿路症状の概要 腎臓や尿路の病気(腎・泌尿器疾患)とは、腎臓(片側または両側)、尿管(片側または両側)、膀胱、尿道、さらに男性では前立腺、精巣(片側または両側)、精巣上体に生じる病気を指します。男性の生殖器系の異常は、多くの場合、 陰嚢痛、 陰嚢の腫れ、 精液中の血液、または 持続勃起症として現れます。... さらに読む を参照のこと。)
わき腹の痛みの原因
腎結石 尿路結石 結石は尿路のいずれかの部位で形成される硬い固形物で、痛み、出血、または尿路の感染や閉塞の原因となることがあります。 小さな結石の場合は症状がみられませんが、大きな結石が発生すると、肋骨と腰の間の部分に耐えがたい激痛が生じることがあります。 結石の診断では通常、画像検査と尿検査が行われます。... さらに読む が尿管に入り込むと、耐えがたい激痛が生じます。結石の侵入に反応して尿管が収縮することで、側腹部や腰背部に差し込むような激しい痛み(腎仙痛または尿管仙痛)が生じ、しばしば鼠径部(そけいぶ)や男性では精巣にも広がります。この痛みは通常、波のような強弱をもって発生しますが、20~60分間続いてから自然に止まります。尿管が弛緩するか結石が膀胱まで通過してしまえば、痛みは止まり、再び始まることはありません。
腎臓感染症(腎盂腎炎 腎臓の感染症 腎盂腎炎とは、片方または両方の腎臓に生じた細菌感染症です。 尿路の感染が腎臓に波及する場合と、まれに血流中の細菌が腎臓に感染する場合があります。 症状としては、悪寒、発熱、背部痛、吐き気、嘔吐などがみられます。 腎盂腎炎が疑われる場合は、尿検査、ときに血液検査および画像検査を行います。 感染に対する治療としては抗菌薬が投与されます。 さらに読む )では、腎臓の組織が腫れることで腎被膜が緊張する結果、持続的でうずくような痛みが発生します。 腎臓の腫瘍 腎臓がん 腎臓に発生する腫瘍のうち、充実性の腫瘍(内部が組織で詰まっているもの)の大半ががんであるのに対して、内部に液体だけが詰まった腫瘍(嚢胞[のうほう])は多くが良性の(がんではない)腫瘍です。腎臓がんの大半は腎細胞がんと呼ばれるものです。 ウィルムス腫瘍と呼ばれる別の種類の腎臓がんもあり、これは主に小児でみられます。 腎臓がんでは、血尿やわき腹(側腹部)の痛み、発熱などがみられます。... さらに読む は、非常に大きくなるまで痛みを引き起こさないのが通常です。
以上のほかに、わき腹に痛みを生じる病態としては、腎臓や腸への血流の突然の遮断、 腹部大動脈瘤 腹部大動脈の分枝の閉塞 腹部大動脈の分枝の閉塞とは、腹部で大動脈から枝分かれした太い動脈の1つがふさがったり狭くなったりした状態です。 大動脈の分枝は、動脈硬化、動脈の壁の筋肉の異常増殖(線維筋性異形成)、血栓、その他の病気によってふさがる(閉塞)することがあります。 閉塞が起きると、閉塞した動脈から血液の供給を受けていた領域において、血流の不足に関連した症状(痛みなど)が起こります。 診断を下すには画像検査が用いられます。... さらに読む の破裂(ときに未破裂の場合もあり)、脊椎または脊髄神経の異常、筋骨格系の損傷、腹部の後ろ側(後腹膜)に発生または波及した腫瘍などが挙げられます。
わき腹の痛みの評価と治療
医師はまず症状の問診と診察を行ってから、通常は 尿検査 尿検査と尿培養検査 尿検査は、検尿とも呼ばれ、 腎疾患や尿路疾患の評価で必要になる場合があり、糖尿病や肝障害などの全身疾患を評価するのにも役立ちます。通常、尿のサンプルは中間尿採取法など、雑菌が混入しない方法(無菌法)で採取されます。例えば、汚染のないきれいな尿サンプルを採取する方法として、カテーテルを尿道から膀胱まで挿入する方法もあります。 尿培養は、採取した尿のサンプルに含まれる細菌を検査室で増殖させる検査で、... さらに読む を行って赤血球の有無や白血球の増加がないか調べます。尿中の白血球は感染症を疑わせます。感染症が疑われる場合は、通常は 尿培養検査 尿検査と尿培養検査 尿検査は、検尿とも呼ばれ、 腎疾患や尿路疾患の評価で必要になる場合があり、糖尿病や肝障害などの全身疾患を評価するのにも役立ちます。通常、尿のサンプルは中間尿採取法など、雑菌が混入しない方法(無菌法)で採取されます。例えば、汚染のないきれいな尿サンプルを採取する方法として、カテーテルを尿道から膀胱まで挿入する方法もあります。 尿培養は、採取した尿のサンプルに含まれる細菌を検査室で増殖させる検査で、... さらに読む が行われます。非常に重い差し込むような痛み(仙痛)で、血尿も認められる場合は、 腎結石 尿路結石 結石は尿路のいずれかの部位で形成される硬い固形物で、痛み、出血、または尿路の感染や閉塞の原因となることがあります。 小さな結石の場合は症状がみられませんが、大きな結石が発生すると、肋骨と腰の間の部分に耐えがたい激痛が生じることがあります。 結石の診断では通常、画像検査と尿検査が行われます。... さらに読む の可能性が非常に高いと判断されます。一方、比較的軽く持続的な痛みで、なおかつ腎臓部分の打診で圧痛がみられ、発熱と尿中白血球の増加が認められる場合は、 腎臓の感染症 腎臓の感染症 腎盂腎炎とは、片方または両方の腎臓に生じた細菌感染症です。 尿路の感染が腎臓に波及する場合と、まれに血流中の細菌が腎臓に感染する場合があります。 症状としては、悪寒、発熱、背部痛、吐き気、嘔吐などがみられます。 腎盂腎炎が疑われる場合は、尿検査、ときに血液検査および画像検査を行います。 感染に対する治療としては抗菌薬が投与されます。 さらに読む である可能性が高いと判断されます。
腎結石が疑われる場合は、しばしば CT検査 CT検査 腎疾患または尿路疾患が疑われる場合の評価には、様々な検査が用いられます。( 尿路の概要も参照のこと。) 尿路を評価する際、X線検査は通常役に立ちません。ある種の 腎結石の検出と腎結石の位置や大きさの確認には、X線検査が役立つことがあります。単純X線検査では撮影されないタイプの腎結石もあります。 超音波検査は以下の点で有用な画像検査です。 電離放射線や造影剤の静脈内投与(ときに腎臓の損傷につながります)が不要である... さらに読む または 超音波検査 超音波検査 腎疾患または尿路疾患が疑われる場合の評価には、様々な検査が用いられます。( 尿路の概要も参照のこと。) 尿路を評価する際、X線検査は通常役に立ちません。ある種の 腎結石の検出と腎結石の位置や大きさの確認には、X線検査が役立つことがあります。単純X線検査では撮影されないタイプの腎結石もあります。 超音波検査は以下の点で有用な画像検査です。 電離放射線や造影剤の静脈内投与(ときに腎臓の損傷につながります)が不要である... さらに読む を行い、原因が結石であるかどうか、結石の大きさおよび位置、結石によって尿の流れが著しく妨げられていないかを確認します。このCT検査では造影剤は使用されません。痛みの原因が明確に判断できない場合は、静注造影剤を使用したCT検査か別の画像検査が行われます。
原因になっている病気(基礎疾患)を治療します。軽い痛みであれば、アセトアミノフェンや非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)の服用で軽減することができます。腎結石による痛みは激しいことがあり、オピオイドの静脈内投与または経口投与が必要になる場合もあります。