急性気管支炎

執筆者:Sanjay Sethi, MD, University at Buffalo, Jacobs School of Medicine and Biomedical Sciences
レビュー/改訂 2021年 7月
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やさしくわかる病気事典

急性気管支炎とは、気管と気管から枝分かれする気道(気管支)が感染症によって炎症を起こすことです。

  • 通常、急性気管支炎は、ウイルス性上気道感染によって発生します。

  • 症状としては、せきがみられ、粘液(たん)を伴うこともあれば伴わないこともあります。

  • 診断は、主として症状に基づいて下されます。

  • せき止め薬や解熱剤などの治療薬は、症状が治まるまで楽に過ごせるようにする目的で使用されることがあります。

  • 抗菌薬が必要になることはまれです。

気管支炎は以下のいずれかに分類されます。

  • 急性

  • 慢性

急性気管支炎は通常、数日から数週間持続します。気管支炎が数カ月から数年にわたって続く場合は、一般的に慢性気管支炎に分類されます。単に「気管支炎」といわれる場合、通常は急性気管支炎を指し、ここでは急性気管支炎についてのみ述べます。

慢性気管支炎の患者で、息を吐き出すときの流量が低下している(気流閉塞)場合は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)であるとみなされます。COPD、または気管支拡張症嚢胞性線維症などの他の慢性肺疾患のある人に急性気管支炎の症状が現れた場合は、急性気管支炎ではなく、基礎疾患の急性増悪によるものとみなされます。

急性気管支炎の原因

急性気管支炎は感染によって生じ、感染の原因としては以下のものがあります。

  • ウイルス(最も一般的)

  • 細菌

気管支炎きかんしえんについて理解りかいしよう

気管支炎は冬に最も多く発生します。

ウイルス性気管支炎は、インフルエンザウイルスかぜを引き起こすウイルスなど、いくつかの一般的なウイルスによって引き起こされます。急性気管支炎は、 SARSコロナウイルス2(新型コロナウイルス)感染症の一部として起こることもあります。ウイルス感染症が治った後でも、それによって生じた炎症が残り、数週間ほど症状が続くことがあります。

細菌による気管支炎は20例に1例未満です。急性気管支炎を引き起こす細菌としては、肺炎マイコプラズマ肺炎クラミジア、百日ぜき菌(Bordetella pertussis)(百日ぜきの原因菌)などがあります。同じ地域の多くの人に同時に急性気管支炎が発生した場合には(集団発生)、原因が細菌である可能性が高くなります。

成人のせきには急性気管支炎以外に多くの原因があります。小児のせきの原因も成人のせきの原因と似ています。

急性気管支炎の症状

急性気管支炎を引き起こしている感染症は典型的には、鼻水、のどの痛み、疲労といった、かぜの症状から始まります。さらに、COVID-19の患者では、発熱、筋肉痛、胃腸症状、嗅覚や味覚の喪失がより多くみられます。数日後、せき(通常、初めはたんがからまない乾いたせき)が出始めます。せきと一緒に少量の粘度の低い白い粘液が出ることがあります。この粘液は、しばしば白色から緑色または黄色に変化し、粘性が増します。たんに少量の血液が混じることがあります。しかし、このような色の変化も血液が混じっていることも、細菌感染を示すものではありません。炎症に関与している細胞が気道内に集まって、たんの色を変えているにすぎません。

気管支炎がインフルエンザのようなより重篤な感染症によるものでない限り、通常は高熱や悪寒はみられません。

知っていますか?

  • 黄色または緑色のたんがからんだせきは、感染症の原因が細菌であることを意味するわけではありません。

気管支炎は気道を一時的に狭めることがあるため、喘鳴や息切れが生じることがあり、喘息発作で起こるものと似ています。

急性気管支炎自体が重篤な合併症を引き起こすことはありません。しかし、気管支炎を引き起こすインフルエンザなどの一部の感染症では、肺組織の感染症(肺炎)に至る可能性があり、これは通常、高齢者か、免疫に異常がある人にのみみられます。

急性気管支炎の診断

  • 医師による評価

  • ときに胸部X線検査

医師は通常、患者の症状に基づいて急性気管支炎の診断を下します。肺うっ血を示す呼吸音が聞こえる場合や、高熱や長期の発熱、息切れがみられる場合は、胸部X線検査を行い、肺炎がないかを確認します。

急性気管支炎の原因を特定するための検査が行われることはほとんどなく、血液検査は役に立ちません。ただし、現在のパンデミック下では、SARS-CoV2の検査が行われることがあります。また、せきが2週間以上続く場合は、肺炎が発生していないか、せきの原因が別の肺疾患でないかどうかを確認するために胸部X線検査を行います。

急性気管支炎の治療

  • 症状を緩和する治療

解熱や全身症状の緩和のためにアセトアミノフェンまたはイブプロフェンを服用することがあり、また、十分な水分を摂取する必要があります。

抗菌薬は、ウイルス性気管支炎には役立ちません。ほとんどの急性気管支炎はウイルス性であるため、抗菌薬は、細菌による感染症であることが明らかな場合(例えば、集団発生中)にのみ投与されます。抗菌薬が用いられるときは通常、アジスロマイシンやクラリスロマイシンなどの薬剤が投与されます。

知っていますか?

  • 通常、急性気管支炎は、抗菌薬を使用せずに治療するのが最良です。

小児の場合、症状が非常に軽ければ、冷たい霧が出る加湿器やスチーム加湿器が役立つことがあります。喘鳴が聞かれる小児や成人では、吸入気管支拡張薬が有益なことがあり、これにより気道を広げ、喘鳴が緩和するのを助けます。

つらいせきや、せきで眠れない場合には、せき止め薬を使用してせきを緩和することができます。しかし、このような薬の有効性ははっきりしていません。去たん薬は、分泌物を柔らかくして、せきと一緒に吐き出すのに役立つと考えられる市販薬ですが、この方法が有用かどうかははっきりしていません。せき止め薬や去たん薬は通常、幼児には推奨されません(小児のせきも参照)。

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