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けいれん性疾患

執筆者:

Bola Adamolekun

, MD, University of Tennessee Health Science Center

レビュー/改訂 2022年 3月
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やさしくわかる病気事典
本ページのリソース

けいれん性疾患では、脳の電気的活動に周期的な異常が生じることで、一時的に脳の機能障害が引き起こされます。

  • 多くの人では、けいれん発作が始まる直前に感覚の異常がみられます。

  • コントロールできないふるえや意識消失が起こる場合もありますが、単に動きが止まったり、何が起こっているか分からなくなったりするだけにとどまる場合もあります。

  • 診断は症状に基づいて下されますが、通常は原因を特定するために、脳の画像検査、血液検査、および脳波検査(脳の電気的活動を記録する検査)が必要になります。

  • 必要であれば、薬剤を使用することで通常は発作を予防できます。

脳が正常に機能するためには、電気信号が正しい順序で整然と発生し、信号同士の協調がとれている必要があります。それらの電気信号のおかげで、脳と脊髄、神経、筋肉との情報交換や脳内での情報交換が可能になっています。けいれん発作は脳の電気的活動が乱れたときに発生し、

成人の約2%が生涯に1回はけいれん発作を経験します。そのうちの3分の2は1回しか発作を経験しません。けいれん性疾患は幼児期か成人期後期に発症するのが一般的です。

けいれん発作の種類

けいれん発作は以下のように記述されることがあります。

特定の精神障害では、けいれん発作と似た症状が起きることがあり、心因性非てんかん性発作または偽発作と呼ばれます。

けいれん性疾患の原因

最も一般的な原因は、けいれん発作が始まった年齢によって異なります。

原因を特定できないけいれん発作は、特発性けいれん発作と呼ばれます。

脳を刺激する病態(けが、特定の薬剤、睡眠不足、感染症、発熱など)や、脳の酸素欠乏または栄養欠乏につながる異常(不整脈 不整脈の概要 不整脈とは、一連の心拍が不規則、速すぎる(頻脈)、遅すぎる(徐脈)、あるいは心臓内で電気刺激が異常な経路で伝わるなど、心拍リズムの異常のことをいいます。 不整脈の最も一般的な原因は心臓の病気(心疾患)です。 自分で心拍リズムの異常に気づくこともありますが、ほとんどの人は、脱力感や失神などの症状が起きるまで不整脈を自覚しません。... さらに読む 不整脈の概要 、血中酸素レベルの低下、血糖値の極度の低下[ 低血糖 低血糖 低血糖とは、血液中のブドウ糖の値(血糖値)が異常に低くなっている状態です。 低血糖は、糖尿病を管理するために服用する薬によるものが最も多くみられます。低血糖のまれな原因としては、他の種類の薬、深刻な病態や臓器不全、炭水化物に対する反応(感受性の高い人において)、膵臓のインスリン産生腫瘍、一部の肥満外科手術(減量のための手術)などがあります... さらに読む ]など)があると、けいれん性疾患の有無に関係なく、単発のけいれん発作が誘発されることがあります。このような刺激によって生じたけいれん発作は、誘発性のけいれん発作(非てんかん性発作の一種)と呼ばれます。

けいれん性疾患がある人は、以下の場合にけいれん発作を起こす可能性が高くなります。

  • 過度の身体的または精神的ストレス下にある。

  • 酔っていたり、睡眠不足である。

  • 飲酒や鎮静薬の使用を突然中止した。

このような状況を回避することが、発作の予防に役立ちます。

まれに、反復音、点滅する光、コンピュータゲーム、さらには体の特定部分に触れることだけで、けいれん発作が誘発される場合もあります。このような病態は反射性てんかんと呼ばれます。

けいれん性疾患の症状

前兆(異常な感覚)は、けいれん発作の開始に先行してみられる感覚です。通常は、開始したばかりの 焦点意識保持発作(focal aware seizure) 焦点起始発作 の一症状としてみられます。前兆としては以下のものがあります。

  • 異常な匂いや味

  • そわそわする感覚

  • 初めて見たにもかかわらず、これまでに見たことがあるような感覚(既視感[デジャブ])またはその反対の状態―すなわち、見慣れているはずのものを初めて見たような感覚(未視感[ジャメブ])

  • 発作が始まりそうだという強い感覚

ほぼすべてのけいれん発作は、持続時間が比較的短く、数秒から数分間で終息します。大半は1~2分間です。

ときに、てんかん重積状態などでは、繰り返しけいれん発作が起こります。

けいれん性疾患がある人の大部分は、発作と発作の間は見た目も行動も正常です。

  • 島と呼ばれる大脳の領域で異常放電が起こった場合には、強烈な美味または強烈に不快な味を感じます。

  • 後頭葉で異常放電が起こった場合は、幻視(抽象的な映像が見える幻覚)が生じます。

  • 前頭葉にある発語を制御する脳領域で異常放電が起こった場合は、話せなくなります。

  • 脳の両側の広い領域で異常放電が起こった場合は、全身けいれん(全身の筋肉がふるえたりガタガタと動いたりする症状)がみられます。

けいれん発作は以下のように分類されます。

  • 運動性:筋肉の異常な収縮(腕や脚のびくつきや全身けいれんなど)を伴う

  • 非運動性:筋肉の異常な収縮を伴わない

その他の症状としては、体の特定部位に生じるしびれまたはピリピリ感や、短時間だけ持続する無反応、意識消失、錯乱などがあります。意識を消失した場合、嘔吐することもあります。筋肉を制御できなくなったり、尿失禁や便失禁がみられたりすることもあります。舌を噛んでしまうこともあります。

みられる症状は、発作が次のどちらであるかによっても変わります。

  • 焦点起始(発作が脳の片側で始まる)

  • 全般起始(発作が脳の両側で始まる)

焦点発作と全般発作には、いくつかの種類があります。大半の患者では、どれか1種類の発作だけが起こりますが、2種類以上の発作が起こる患者もいます。

一部の種類の発作は、当初は焦点起始で、後から全般起始になることがあります。

焦点起始発作

焦点起始発作では、発作が脳の片側で始まります。

焦点起始発作には以下のものがあります。

  • 自動症発作(automatism seizure)(協調性が保たれている無目的な反復性の運動)

  • 脱力発作(atonic seizure)(筋緊張が消失する)

  • 間代発作(clonic seizure)(筋肉がリズミカルにガタガタと動く)

  • 小児におけるてんかん性スパズム(epileptic spasm)(腕が曲がったり伸びたりし、上半身が前倒しになる)

  • 運動亢進発作(hyperkinetic seizure)(自転車のペダルをこぐような脚の運動やのたうち回るような動きが生じる)

  • ミオクロニー発作(myoclonic seizure)(筋肉が突然稲妻に打たれたようにびくつく)

  • 強直発作(tonic seizure)(片側の腕や脚または体の片側の筋肉がこわばる)

焦点起始発作を起こしてから完全に回復する人もいますが、人によっては、異常放電が隣接する脳領域や脳の反対側に広がって、全般発作に至る場合もあります。焦点発作から起こる全般発作は、焦点両側発作と呼ばれます。すなわち、脳の片側で開始し、両側に広がったものです。

焦点起始発作は、発作中に患者の意識があるかどうかに基づいて以下のように分類されます。

  • 意識が保持されている(焦点意識保持発作[focal aware seizure])。

  • 意識が障害されている(焦点意識減損発作[focal impaired-awareness seizure])。

意識とは、自分自身と周囲の環境を把握していることを指します。けいれん発作が起きている間のいずれかの時点で意識が損なわれた場合、その発作は焦点意識減損発作とみなされます。医師は、けいれん発作中に意識を保持していたかどうかを患者に尋ねるか、発作がまさに起ころうとしている場合は話しかけて反応するかどうかを確認することで、患者が意識を保持しているかどうかを判断します。

焦点意識保持発作では、異常放電が脳の狭い領域で始まり、その領域だけにとどまります。影響を受けるのが小さな脳領域に限られるため、症状はその領域で制御されている機能に関連したものだけにとどまります。例えば、左前頭葉の中で右腕の動きを制御している小さな領域に異常放電が起こると、右腕が不随意に(勝手に)持ち上がってびくついたり、頭部が持ち上がった腕の方に向いたりします。このとき意識は完全に保たれ、患者は周囲の状況も認識しています。焦点意識保持発作が焦点意識減損発作に進行する場合もあります。

ジャクソン発作は焦点意識保持発作の一種です。症状はまず片方の手または足に現れ、脳で起こっている電気的活動の範囲が拡大するに従って、症状も腕または脚全体に広がります。患者は発作中の状況を完全に認識しています。

症状が顔にまず現れ、その後腕、ときに脚に広がる焦点意識保持発作もあります。

持続性部分てんかんは、まれです。このタイプの発作では、数秒から数分おきに焦点発作が起こる状態が数日から数年間続きます。典型的には、片方の腕、片方の手、顔面の片側、または体の片側だけに異常がみられます。持続性部分てんかんの患者は意識を保持しています。この発作は通常、以下のものに起因します。

焦点意識減損発作では、異常放電が側頭葉または前頭葉の狭い領域で始まり、近くの他の領域に急速に広がります。この発作では通常、1~2分間の前兆がみられます。この前兆が起こっている間に、周囲との精神的な接触が失われ始めます。

焦点意識減損発作中は、意識が損なわれるものの、意識が完全になくなることはありません。発作中は以下のような症状がみられます。

  • じっと見つめる

  • 無意識に唇をかんだり鳴らしたりする

  • 手、腕、脚をやみくもに動かす

  • 声を出すが、意味を成さない

  • 他の人が言っていることを理解できない

  • 手助けを拒む

会話ができる人もいますが、その会話は自発性を欠き、内容もいくらか乏しくなります。錯乱や見当識障害がみられることもあります。この状態は数分間続きます。ときに、拘束されると激しくのたうつことがあります。

全般起始発作

全般起始発作では、発作が脳の両側で始まります。ほとんどの全般起始発作では意識が障害されます。しばしば意識消失と異常な動きがみられ、通常は発作の開始直後からこれらの症状が現れます。意識を失っている時間は短い場合もあれば、長い場合もあります。

全般起始発作には以下のものがあります。

  • 強直間代発作(tonic-clonic seizure)(以前は大発作と呼ばれていたもの)

  • 間代発作(clonic seizure)(筋肉がこわばったあと、持続的かつリズミカルにガタガタと動く)

  • 強直発作(tonic seizure)(すべての腕と脚の筋肉がこわばる)

  • 脱力発作(atonic seizure)(筋緊張が消失する)

  • ミオクロニー発作(myoclonic seizure)(筋肉のこわばりが先行しない、筋肉のリズミカルなびくつき)

  • 若年性ミオクロニーてんかんなどのミオクロニー強直間代発作(myoclonic-tonic-clonic seizure)(筋肉のびくつきに続いて、筋肉のこわばりと繰り返すびくつきがみられる)

  • ミオクロニー脱力発作(myoclonic-atonic seizure)(筋肉がびくつき、その後筋緊張が消失する)

  • てんかん性スパズム(epileptic spasm)(点頭てんかん[infantile spasm])

  • 欠神発作(absence seizure)

ほとんどのタイプの全般発作(強直間代発作など)では、筋肉の異常な収縮が起こります。それを伴わない発作を欠神発作と呼びます。

全般起始発作は、脳の中央奥深くの異常放電で始まり、脳の両側に同時に広がります。前兆はありません。この発作は典型的には叫声とともに始まり、その後、周囲の状況を認識できなくなるか、または意識を失います。

全般起始発作(特に全般性強直間代発作)が起きている間は、以下の症状がみられることがあります。

  • 筋肉が素早く収縮と弛緩を繰り返し、全身の筋肉がふるえたりガタガタと動いたりする

  • 転倒する

  • 歯を食いしばる

  • 舌をかむ(しばしばみられる)

  • よだれが出る、または泡を吹く

  • 尿失禁や便失禁をきたす

発作は通常1~2分間続きます。発作が終わった後は、頭痛、一時的な錯乱、極度の疲労感などがみられます。これらの症状は数分から数時間続きます。ほとんどの人は発作中に起こったことを覚えていません。

全般性強直間代発作では、筋肉が収縮し(強直相)、その後収縮した状態と弛緩した状態が素早く入れ替わります(間代相)。全般性強直間代発作には以下の種類があります。

  • 全般起始(脳の両側で始まる)

  • 焦点起始両側(脳の片側から始まり両側に広がる)

どちらの種類でも、異常放電が脳の両側に広がると、一時的に意識が失われ、全身けいれんが起こります。

焦点起始両側強直間代発作(大発作)では通常、まず脳の片側の狭い領域で異常放電が生じて、焦点意識保持発作または焦点意識減損発作が起こります。その後、放電が脳の両側に急速に広がり、脳全体が機能不全に陥ります。症状は、全般起始発作の症状に似ています。

脱力発作は主に小児に起こります。一時的に筋緊張と意識が完全に失われるのが特徴です。地面に崩れ落ちるように倒れるため、けがを負うこともあります。

間代発作では、左右両側の腕や脚のほか、しばしば頭、首、顔、体幹が発作中ずっとリズミカルにガタガタと動きます。間代発作は通常、乳児に起こります。強直間代発作よりもはるかにまれです。

強直発作は、一般的に寝ている間に(通常は小児に)起こります。筋緊張が突然あるいは徐々に亢進し、筋肉が硬くなります。しばしば四肢や首にこのような症状が現れます。強直発作は通常10~15秒間しか続きませんが、立っているときに起こった場合には、地面に崩れ落ちるように転倒することもあります。ほとんどの人で意識は失われません。発作が長時間続いた場合は、発作が終わる際に筋肉が数回ガタガタと動くことがあります。

非定型欠神発作(下記参照)、脱力発作、強直発作は、通常レノックス-ガストー症候群と呼ばれる、4歳未満の小児に発生する重症てんかんの症状としてみられます。

ミオクロニー発作の特徴は、腕や脚または体幹が素早くビクッと動くことです。発作は短く意識も失われませんが、繰り返し起こることがあり、意識の消失を伴う強直間代発作に発展することがあります。

ミオクロニー脱力発作では、四肢や体幹がビクッと動き、その後脱力して崩れ落ちます(転倒発作[drop attack])。発作は通常、生後6カ月から6歳までの間に始まります。最初にミオクロニー脱力発作を起こす前に、小児の3分の2が熱性けいれんと全般起始けいれん発作を起こしています。発達や精神機能は一般に正常ですが、発作中または発作後に発達や思考が損なわれることがあります。

若年性ミオクロニーてんかんは、典型的には青年期に始まります。発作は通常、両腕の筋肉が素早くビクッと動くことで始まります。この種の発作の約90%は全般性強直間代発作へと移行します。欠神発作を起こす人もいます。これらの発作は、多くの場合、朝目が覚めたとき(特に寝不足のとき)に起こります。さらに、飲酒により発作が起こりやすくなります。

欠神発作は筋肉の異常な収縮を伴いません。これは以下のように分類されることがあります。

  • 定型(以前は小発作と呼ばれていました)

  • 非定型

定型欠神発作は、5~15歳の小児期に始まり、通常は成人期まで続くことはありません。しかし、ときとして成人にも定型欠神発作が起こることがあります。強直間代発作とは異なり、欠神発作では全身けいれんなどの劇的な症状はみられません。転倒、全身の脱力はなく、筋肉がガタガタと動くこともありません。発作中は、何かをじっと見つめ、まぶたがピクピクしたり顔面の筋肉がひきつったりします。典型的には意識を失い、周囲の状況がまったく認識できなくなります。これらの症状は10~30秒間続きます。発作が起こると、今までしていたことを突然止め、また突然に再開します。発作の影響は残らず、本人は発作が起こったことを覚えていません。治療を行わないと、多くの人は発作が1日に数回起こります。発作は静かに座っているときに起こる場合が多く、運動中に起こることはまれです。過換気(過呼吸)が発作の引き金となることがあります。

非定型欠神発作は以下の点で定型欠神発作と異なります。

  • よりまれである

  • より長く続く

  • れん縮やその他の動きがより顕著である

  • 患者は周囲の状況をよりよく認識している

非定型欠神発作がみられる人の多くに、神経学的な異常や発達の遅れがみられます。非定型欠神発作は通常、成人期になっても続きます。

ドラベ症候群

ドラベ症候群(乳児の重度のミオクロニーてんかん)は幼児期に発生します。焦点発作の特徴と全般発作の特徴がみられます。生後1年間は、典型的には発熱が焦点発作の誘因になります。2歳頃から、全般ミオクロニー発作を起こしやすくなります。これらの発作では、体幹または1本もしくは数本の腕または脚がびくつきます。ドラベ症候群の小児では、非定型欠神発作、間代発作、脱力発作、または強直間代発作が起こることもあります。

生後2年目には、小児は期待通りに発達できなくなり、それまでに獲得した能力を失うこともあります。思考や学習が困難で、協調運動や平衡感覚を欠きます。

ドラベ症候群の小児の約70~80%では、けいれん発作を引き起こすことが知られている異常な遺伝子が原因です。

てんかん重積状態

けいれん性てんかん重積状態は、最も重篤なけいれん性疾患で、発作が止まらないことから、医学的な緊急事態とみなされています。脳のいたるところで放電が発生し、全般性強直間代発作を引き起こします。

けいれん性てんかん重積状態は、次の片方または両方に当てはまる場合に診断されます。

  • 発作が5分以上続いている

  • 発作と発作の間に意識が完全には回復しない

強い筋収縮を伴う全身けいれんが起こり、十分な呼吸ができなくなります。体温も上昇します。迅速に治療しなければ、心臓と脳に過度の負荷がかかって永続的な損傷が残る可能性があり、ときに死に至ることもあります。

全身けいれん重積状態は、頭部外傷や抗てんかん薬の使用を突然やめるなど、多くのものが原因になります。

非けいれん性てんかん重積状態は、別のタイプのてんかん重積状態で、けいれんは伴いません。この発作は10分以上続きます。発作の間、精神機能(意識を含む)や行動が障害されます。患者は混乱またはぼーっとしてるように見えることがあります。話をすることができなくなったり、理性的なふるまいができなくなったりします。非けいれん性てんかん重積状態になると、けいれん性てんかん重積状態になるリスクが高くなります。このタイプの発作は、迅速な診断と治療を要します。

けいれん発作後の症状

発作が終わった後には、頭痛、筋肉痛、通常と異なる感覚、錯乱、深い疲労感などがみられることもあります。発作後にみられるこのような異常は、発作後もうろう状態と呼ばれています。人によっては、けいれん発作の後、体の片側だけの筋力が低下し、その筋力低下がけいれん発作より長く続く場合もあります(この現象はトッド麻痺と呼ばれています)。

ほとんどの人は発作中に起こったことを覚えていません(発作後健忘と呼ばれる状態)。

合併症

けいれん発作は、深刻な結果をもたらすおそれがあります。急激で強い筋肉の収縮によって骨折などのけがをすることもあります。突然の意識消失は、転倒や事故による深刻なけがにつながるおそれがあります。何度も発作が起こっても脳に重篤な損傷が生じない場合もあります。しかし、全身けいれんを伴う発作が何度も起こると、最終的に知的障害が生じることがあります。

発作をうまく管理できないと、運転免許の取得が難しくなる場合があります。仕事を続けることや、保険に加入することが困難になる場合もあります。不当な差別を受けることもあります。その結果、生活の質が大きく低下する可能性があります。

けいれん発作を完全に管理できない場合は、けいれん発作のない人と比べて死亡する可能性が2~3倍になります。

少数ながら、予期しない突然死が起こる場合もあり、この合併症は「てんかん患者における予期せぬ突然死」と呼ばれています。この病気は通常、夜間または睡眠中に起こります。けいれん発作(特に全般性強直間代発作)が頻繁に起こる人ではリスクが最も高くなります。

知っていますか?

  • けいれん発作の中には、全身けいれんや意識消失がみられないタイプも数多く存在します。

けいれん性疾患の診断

  • 医師による評価

  • 過去に発作を起こしたことがない患者では、血液検査やその他の検査、脳の画像診断、そして通常は脳波検査

  • すでにけいれん性疾患と診断されている患者では、通常、血液検査による抗てんかん薬の血中濃度測定

けいれん発作の診断は症状と目撃者からの情報に基づいて下されます。けいれん発作を示唆する症状としては、意識消失、体がふるえるような筋肉の動き、舌をかむ、尿失禁、突然の錯乱、注意散漫などがあります。特に誘因のないけいれん発作が2回以上起こった場合、けいれん性疾患(てんかん)と診断されます。

診察は、救急外来で行われるのが普通ですが、すでにけいれん性疾患と診断されていて、発作から完全に回復している場合は、通常の診察室で行われることもあります。

病歴と身体診察

発作を目撃した人の話は非常に役立つ可能性があります。発作を起こした人は通常、何が起こったかを説明できませんが、目撃者は正確に説明できるからです。診断には、以下のような項目に関する正確な説明が必要になります。

  • 発作はどのくらい急に始まったか

  • 筋肉の異常な動き(頭部、頸部、顔面の筋肉のふるえやひきつりなど)、舌をかむ、よだれが出る、尿失禁または便失禁、筋肉の硬直などの症状はみられたか

  • 発作はどの程度続いたか

  • 回復するまでにどれくらいの時間がかかったか

速やかな回復は、発作ではなく失神を示唆します。意識回復後、数分から数時間続く錯乱は、発作を示唆します。

目撃者は驚きのあまり、発作中の様子を詳しくは覚えていないかもしれませんが、思い出せることは何でも役立つ可能性があります。発作の継続時間は、可能であれば時計などで正確に計っておくべきです。実際には1~2分間しか続いていない発作でも、永遠のように感じられることもあります。

医師は、発作前の状態も把握する必要があります。例えば、何か変わったことが今にも起こりそうだという予感や前兆がなかったか、音や点滅する光など発作の引き金になったと思われるものはないか、などの情報が必要です。

医師は、発作の考えられる原因について次のような質問を行います。

念入りな身体診察も行います。身体診察で症状の原因に関する手がかりが得られることもあります。

検査

けいれん発作と診断されたら、原因を特定するため、通常はさらなる検査が必要です。

けいれん性疾患があることがわかっている人は、使用している抗てんかん薬の濃度を測定する血液検査を除き、検査は不要な場合があります。しかし、治療可能な病気(頭部外傷や感染症など)を示唆する症状がみられる場合は、さらに検査が行われます。

けいれん性疾患があることが分かっている人では、発作の考えられる原因を確認するために、または発作が起こるかもしれない理由かを調べるために、しばしば血液検査が行われます。このような検査には、様々な物質(糖、カルシウム、ナトリウム、マグネシウムなど)の血中濃度の測定や、肝臓と腎臓が正常に機能しているかどうかを調べる検査などがあります。尿のサンプルを分析して、未報告のレクリエーショナルドラッグの使用がないか確認することもあります。これはレクリエーショナルドラッグがけいれん発作を誘発することがあるためです。

通常、 出血 脳内出血 脳内出血は、脳の中で起こる出血です。 脳内出血は通常、慢性高血圧によって起こります。 多くの場合、最初の症状は重度の頭痛です。 診断は、主に症状と画像検査の結果に基づいて下されます。 治療としては、出血に寄与した可能性のある病態の管理(血圧が非常に高ければ、降圧するなど)のほか、まれに、貯まった血液を手術で除去することがあります。 さらに読む 脳卒中 虚血性脳卒中 虚血性脳卒中は、動脈が詰まって脳に十分な血液と酸素が供給されなくなることで生じる、脳組織の一部の壊死(脳梗塞)です。 虚血性脳卒中は通常、脳に向かう動脈に多くは血栓や動脈硬化で生じた脂肪の沈着物が詰まることで発生します。 症状は突然現れます。具体的には、体の片側の筋力低下、麻痺、感覚消失、感覚異常のほか、発話困難、錯乱、視覚障害、めまい、... さらに読む 虚血性脳卒中 がないか確認するために脳の画像検査が直ちに行われます。典型的にはCT検査が行われますが、MRI検査が行われることもあります。いずれの検査でも、けいれん発作を引き起こしている可能性のある脳の異常を特定できます。MRI検査では脳組織のより鮮明で詳細な画像が得られますが、いつもすぐに利用できるとは限りません。

髄膜炎や脳炎などの脳の感染症が疑われる場合、通常は 腰椎穿刺 腰椎穿刺 腰椎穿刺 が行われます。

脳波検査 脳波検査 病歴聴取と 神経学的診察によって推定された診断を確定するために、検査が必要になることがあります。 脳波検査は、脳の電気的な活動を波形として計測して、紙に印刷したりコンピュータに記録したりする検査法で、痛みを伴わずに容易に行えます。脳波検査は以下の特定に役立つ可能性があります。 けいれん性疾患... さらに読む 脳波検査 は、けいれん性疾患の診断を確定するのに役立ちます。脳波検査は、脳の電気的活動を記録する検査で、痛みもなく安全な方法です。医師は脳波の記録を調べて、脳内に異常放電が起こっている証拠を探します。脳波の記録時間は限られているため、実際にはけいれん性疾患があっても、脳波検査では異常が見逃され、正常と判断されることもあります。異常放電は睡眠不足のときに起こりやすいため、18~24時間の断眠後に脳波検査を行うこともあります。

脳波検査は、2回(場合によっては3回)行えば、けいれん発作の活動を検出したり、けいれん発作の種類を特定できたりする場合があるため、繰り返し行うことがあります。この情報は、1回目の検査を行ったときには見逃されている可能性があります。

それでも診断がはっきりしないときは、てんかん治療の専門医療施設でビデオ脳波モニタリングなどの特殊な検査を行うこともあります。

ビデオ脳波モニタリングでは、2~7日間入院して、ビデオ録画をしながら脳波を記録します。抗てんかん薬を服用している場合は、発作が起こりやすくなるように服用を中止することもしばしばあります。発作が起こったら、発作中の脳波の記録とビデオ映像を見比べます。これにより、発作の種類と発作が始まった脳領域を特定できる可能性があります。

自由行動下脳波検査では、自宅にいながら一度に数日間の脳の活動を記録できます。この検査は長期間入院できない患者でけいれん発作が再発する場合に有用です。

発作中の脳の電気的活動

脳波とは、脳の電気的活動を記録したものです。検査方法は簡単で痛みもありません。20個ほどの小さな電極を頭皮に貼り、まず普通の状態で脳の電気的活動を記録します。次に、明るい光や点滅する光などの様々な刺激を用いて、人為的に発作を誘発します。発作中は脳の電気的活動が加速し、ギザギザとした波形が現れます。このような記録は、けいれん性疾患の特定に役立ちます。波形は発作の種類によって異なります。

脳波検査のうはけんさ
発作中の脳の電気的活動

けいれん性疾患の予後(経過の見通し)

治療を行うことで、てんかん患者の3分の1でけいれん発作がなくなり、ほとんどの場合、治療を開始してすぐに発作がなくなります。別の3分の1の患者では、けいれん発作の頻度が治療前と比べて半分以下になります。けいれん発作が薬剤で十分にコントロールされていれば、約60~70%の人が最終的に抗てんかん薬の服用を中止し、発作のない状態を維持できます。

てんかん発作は、10年間発作が起こらず、なおかつ、その期間の後半の5年間に抗てんかん薬を服用していなかった場合、治癒したとみなされます。

けいれん性疾患の治療

  • 可能であれば、原因の除去

  • 一般的な対策

  • けいれん発作をコントロールするための薬剤

  • ときに手術またはその他の処置(薬剤で効果が得られない場合)

けいれん発作の原因を特定して解消することができれば、それ以上の治療は必要ありません。例えば、血糖値の低下(低血糖 低血糖 低血糖とは、血液中のブドウ糖の値(血糖値)が異常に低くなっている状態です。 低血糖は、糖尿病を管理するために服用する薬によるものが最も多くみられます。低血糖のまれな原因としては、他の種類の薬、深刻な病態や臓器不全、炭水化物に対する反応(感受性の高い人において)、膵臓のインスリン産生腫瘍、一部の肥満外科手術(減量のための手術)などがあります... さらに読む )によってけいれん発作が起こっている場合は、ブドウ糖を投与し、低血糖を引き起こしている病気を治療します。治療可能なその他の原因としては、感染症、一部の腫瘍、血中ナトリウム濃度の異常などがあります。

原因を取り除けない場合でも、一般的な対策と薬剤で通常は十分にけいれん性疾患を治療できます。薬剤で効果が得られない場合は、手術が勧められることがあります。

一般的な対策

通常、運動することが望ましく、社会的な活動も奨励されます。ただし、けいれん性疾患のある人には、日常生活の調整が必要になる場合もあります。例えば、以下のことが推奨されます。

  • 飲酒を止めるか制限する

  • レクリエーショナルドラッグを使用しない

  • 突然意識を失った場合に重篤な外傷が起こるような活動(浴槽につかる、登山、水泳、または電動ドリルの使用など)を控える

これらの活動は、発作をコントロールできるようになってから(通常は6カ月以上)であれば、十分な予防措置を講じた上で行うことができます。例えば、水泳は監視員がいる場所でのみ行うべきです。

けいれん性疾患がある人の運転については、米国の大半の州では、発作のない期間が少なくとも6カ月から1年間続くまで法律で禁止されています。

患者の家族や親しい友人、同僚は、発作が起こったときの対処法を習っておくとよいでしょう。舌を保護するために口の中にスプーンなどを入れるのは、有益性よりリスクの方が大きいため、行うべきではありません。歯が折れたり、あごの筋肉が収縮して救助者がかまれたりする危険性があります。けいれん発作を目撃した人は、発作中以下のように対応します。

  • 患者が転倒しないようにする

  • 衣服の首の周りを緩める

  • 頭の下に枕を置く

  • 患者を横向きに寝かせる

枕がないときは、患者の頭の下に自身の足や衣服を置いてもよいでしょう。

患者が意識を失っている場合は、嘔吐物や唾液の誤嚥を予防し楽に呼吸ができるよう、横向きに寝かせます。嘔吐物や唾液を誤嚥すると、 誤嚥性肺炎 誤嚥性肺炎と化学性肺炎 誤嚥性肺炎は、口腔内の分泌物、胃の内容物、またはその両方を肺に吸い込んだ場合に発生する肺の感染症です。化学性肺炎は、肺を刺激する物質や肺に有毒な物質を吸い込んだ場合に起こる肺の炎症です。 症状には、せきや息切れなどがあります。 医師は、患者の症状や胸部X線検査に基づいて診断を下します。... さらに読む (口腔内の分泌物、胃の内容物、またはその両方を肺に吸い込んだ場合に発生する肺の感染症)につながることがあります。

発作後は、意識が完全に回復し、錯乱もなくなり、正常に動き回れるようになるまで、そばを離れないようにします。通常は主治医に知らせるべきです。

知っていますか?

  • 全身けいれんを起こしている人の口の中にスプーンなどの物体を入れることは、効果があるどころか、害になる可能性があります。

抗てんかん薬

抗てんかん薬(抗けいれん薬とも呼ばれます)は、けいれん発作が再度起こるリスクを低下させます。通常、この種の薬が処方されるのは、発作が2回以上起こり、低血糖など治療可能な原因が否定されるか完全に是正された場合に限られます。全般発作が1回起きただけの場合には、通常、抗てんかん薬は処方されません。

ほとんどの抗てんかん薬は経口薬です。

抗てんかん薬の使用により、けいれん発作がある人の3分の1では全般発作がまったく起こらなくなり、別の3分の1の人では発作頻度が大幅に低下します。抗てんかん薬で効果が得られた人の3分の2近くは、最終的に抗てんかん薬の使用を中止しても再発しなくなります。しかし、抗てんかん薬が無効である場合、患者はけいれん発作の専門医療施設に紹介されて、手術が検討されます。

抗てんかん薬には、様々な種類があります。どの種類の薬剤で効果が得られるかは、発作の種類などの要因によって異なります。ほとんどの人は、最初または2番目に試した1つの抗てんかん薬だけで発作を管理できます。発作が再発する場合は、別の抗てんかん薬が試されます。そのような場合、有効な薬剤が判明するまでに数カ月かかることもあります。一部の人は複数の薬剤を服用する必要がありますが、その場合は副作用のリスクが高くなります。抗てんかん薬の中には、単独では使用されず、必ず別の抗てんかん薬と一緒に使用されるものもあります。

医師は、それぞれの患者に適した用量を慎重に決定します。最適な用量は、すべてのけいれん発作を止めることができ、かつ副作用が最も少ない、最小限の用量です。医師は副作用の状況について患者に質問し、必要に応じて用量を調節します。抗てんかん薬の血中濃度を測定することもあります。

抗てんかん薬は必ず処方通りに服用すべきです。けいれん発作を管理するために薬剤を服用している人は、薬剤の用量調整のため定期的に医師の診察を受ける必要があります。また米国では、けいれん性疾患の種類と服用している薬剤名を刻印した医療用のブレスレットを常に着用すべきとされています。

抗てんかん薬は他の薬剤の効果を妨げることがあり、その逆も起こりえます。したがって、抗てんかん薬の服用を始める際は、すでに服用しているすべての薬剤を主治医にきちんと伝える必要があります。市販薬も含めて、別の薬剤の使用を始める際は、前もって主治医やかかりつけの薬剤師に相談するべきです。

けいれん発作が管理できるようになっても、発作のない期間が最低2年間続くまで、抗てんかん薬を服用します。その後は薬剤の用量を徐々に減らし、最終的に使用を中止します。抗てんかん薬の使用を止めた後に発作が再発した場合は、抗てんかん薬を生涯服用しなければならないこともあります。再発は、起こるとすれば、2年以内に起こるのが通常です。

以下のいずれかに該当する場合、けいれん発作が再発する可能性が高まります。

抗てんかん薬は非常に有効ですが、副作用もあります。多くの抗てんかん薬は眠気を引き起こしますが、なかには小児に多動を引き起こすものもあります。抗てんかん薬の多くでは、血液検査を定期的に行って、その薬剤によって腎臓や肝臓の機能が障害されていないか、あるいは血球数(血液の細胞の数)が減少していないかを確認します。抗てんかん薬を使用している人は副作用があることに留意し、副作用の徴候が少しでも現れたら、直ちに主治医の診察を受ける必要があります。

けいれん性疾患のある女性が妊娠中に抗てんかん薬を使用すると、流産が起きたり、生まれる子どもの脊髄、脊椎、または脳に先天異常(神経管閉鎖不全 神経管閉鎖不全と二分脊椎 神経管閉鎖不全は脳、脊椎、脊髄に生じる先天異常の一種です。 神経管閉鎖不全により、神経損傷、学習障害、麻痺、死亡が起こることがあります。 血液検査、羊水検査、または超音波検査の結果に基づいて出生前から診断できます。 出生後、医師は身体診察を行い、追加の画像検査を行う場合もあります。... さらに読む ―表「 妊娠中に問題を引き起こす可能性がある主な薬剤 妊娠中に問題を引き起こす可能性がある主な薬剤* 妊娠中に問題を引き起こす可能性がある主な薬剤* 」を参照)が起きたりするリスクが高まります。しかし、抗てんかん薬を中止すると母子双方にとってさらに有害になる場合もあります。妊娠中に全般発作が起こると、胎児のけがや死亡につながる可能性があります。したがって、抗てんかん薬の服用を継続することが通常は推奨されます(妊娠中のけいれん性疾患 妊娠中のけいれん性疾患 けいれん性疾患が抗てんかん薬によって良好にコントロールされている女性のほとんどは通常、健康な子どもを安全に出産することができます。こういった女性では、十分に睡眠をとり、抗てんかん薬を適切な用量で服用すれば、妊娠中にけいれん発作の回数が増えることは通常なく、妊娠の結果は通常良好です。ただし、これらの女性では以下の可能性がわずかに高くなります... さらに読む を参照)。出産可能年齢でかつ抗てんかん薬を服用しているすべての女性は、先天異常のある子どもが生まれるリスクを減らすため、葉酸のサプリメントを摂取するべきです。

知っていますか?

  • 出産可能年齢でかつ抗てんかん薬を服用しているすべての女性は、先天異常のある子どもが生まれるリスクを減らすため、葉酸のサプリメントを摂取するべきです。

緊急の治療

以下の場合、発作を止めるために緊急の治療が必要になります。

  • てんかん重積状態

  • けいれん発作が5分以上続く

けいれん発作を止めるため、できるだけ速やかに、1つまたは複数の抗てんかん薬(ロラゼパムなどのベンゾジアゼピン系薬剤から始めることが多い)が静脈内に大量投与されます。抗てんかん薬を早く投与するほど、けいれん発作を容易にかつ良好にコントロールできます。

けいれん発作が長引く場合は、けがを予防するための措置も講じられます。注意深く患者をモニタリングして、十分な呼吸があるかどうかを確認します。呼吸が十分でない場合は、呼吸を補助するため気管内に管が挿入されます(この処置は挿管と呼ばれます)。

それでも発作が持続する場合は、発作を止めるために全身麻酔薬が投与されます。

手術

複数の抗てんかん薬を使用しても発作が再発する場合や、薬剤の副作用に患者が耐えられない場合は、脳手術を行うこともあります。その場合は、てんかん治療の専門施設で検査を行い、手術が有用かどうかを判断します。検査には、脳のMRI検査、ビデオ脳波モニタリングのほか、以下のような検査を行うことがあります。

発作の原因になる異常(瘢痕など)が見つかり、それが狭い領域に限られている場合は、その部分を手術で切除することで、最大60%の人でけいれん発作が起こらなくなり、それ以外の人でも手術により発作の重症度や発生頻度が低下する可能性があります。

脳の複数の領域から始まるけいれん発作や、脳全体へ急速に広がるけいれん発作には、左右の脳をつなぐ神経線維(脳梁)を切断する手術が有用になる場合があります。通常、この処置に伴う大きな副作用はありません。しかし、手術によって発作の重症度や頻度が低下した場合でも、多くの人は抗てんかん薬の使用を続ける必要があります。とはいえ、通常は用量や薬剤の数を減らすことができます。

これらの手術を受けられない場合は、迷走神経刺激療法や脳への刺激などの他の処置がとられることがあります。

迷走神経刺激療法

第10脳神経(迷走神経)への電気刺激により、焦点起始発作のある人の約40%で焦点起始発作の回数を半分以下に減らすことができます。抗てんかん薬を使用しても発作が続き、かつ手術を実施できない場合に、この治療法が用いられます。

迷走神経は、けいれん発作の原因になることの多い脳領域と間接的につながっていると考えられています。

この治療を行うには、心臓用の ペースメーカー 正常な心拍を保つ:ペースメーカー 正常な心拍を保つ:ペースメーカー に似た装置(迷走神経刺激装置)を左側の鎖骨の下に埋め込み、電線を皮膚の下に通して、頸部にある迷走神経に接続します。装置を埋め込んだ部分は、皮膚が少し盛り上がります。手術は外来治療として行われ、手術時間は約1~2時間です。

この装置は迷走神経を周期的に刺激するよう設計されています。また、患者は磁石を渡され、けいれん発作が起こりそうだと感じたら、その磁石で迷走神経を刺激することができます。迷走神経刺激療法は抗てんかん薬と併用されます。

迷走神経刺激療法の副作用として、神経を刺激したときにせきが出たり、声がれが起こったり、声が太くなったりすることがあります。

脳への刺激

反応性神経刺激(RNS)システムは、心臓用の ペースメーカー 正常な心拍を保つ:ペースメーカー 正常な心拍を保つ:ペースメーカー と同様の見た目をした装置です。これを頭蓋骨の中に埋め込みます。この装置を、発作を引き起こしている脳の1つまたは2つの領域にコードで接続します。このシステムにより、脳の電気的活動をモニタリングします。装置が異常な電気的活動を検出すると、発作を引き起こしている脳の領域を刺激します。目的は、けいれん発作が起こる前に脳の正常な電気的活動を回復させることです。

反応性神経刺激システムは抗てんかん薬と併用されます。薬剤でコントロールできない焦点起始発作が成人にみられる場合に使用されます。このような人では、このシステムにより発作の頻度を減らすことができます。

装置を埋め込む手術には全身麻酔が必要で、通常は2~4時間かかります。多くの患者は翌日に帰宅できますが、最長で3日間入院する必要がある人もいます。多くの人は、数日以内に日常生活に戻り、2~4週間で職場に戻ることができます。

装置が埋め込まれている感覚や刺激を患者自身が感じることはなく、装置は必要に応じて取り外すことができます。

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