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脆弱X関連振戦/失調症候群

(FXTAS)

執筆者:

Hector A. Gonzalez-Usigli

, MD, HE UMAE Centro Médico Nacional de Occidente

レビュー/改訂 2022年 2月
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脆弱X関連振戦/失調症候群は、主に男性に発生する遺伝性疾患で、振戦(ふるえ)、協調運動障害、精神機能の悪化などの症状がみられます。

  • 脆弱X関連振戦/失調症候群の原因は遺伝子の突然変異です。

  • 一般に、まず手に振戦が起こり、次に協調運動障害、動作の緩慢化、表情の減少が生じ、最終的に認知症が生じます。

  • 遺伝子検査で診断を確定できます。

  • プリミドン、プロプラノロール、またはパーキンソン病の治療薬によって、しばしば振戦を緩和できます。

脆弱X関連振戦/失調症候群は、50歳以上の男性の3,000人に1人の割合で起こります。

脆弱X関連振戦/失調症候群の原因は、X染色体上(性染色体の1つ)の遺伝子にみられる前変異と呼ばれる比較的小さな異常です。男性はX染色体とY染色体を1本ずつもち、女性は2本のX染色体をもっています。男性は母親からX染色体を、父親からY染色体を受け継ぎます。母親から受け継いだX染色体に、脆弱X関連振戦/失調症候群を引き起こす異常な遺伝子が含まれている場合、 X連鎖疾患 X連鎖遺伝 遺伝子とは、DNA(デオキシリボ核酸)のうち、細胞の種類に応じて機能する特定のタンパク質の設計情報が記録された領域のことです。 染色体は非常に長いDNA鎖からできており、そこには多く(数百~数千)の 遺伝子があります。特定の細胞(例えば、精子と卵子)を除き、人間の正常な細胞には23対の染色体があります。22対の常染色体と1対の性染色体があり、合わせて46本の染色体があります。通常、それぞれの対を構成する染色体は、片方を母親から、もう片方... さらに読む に分類されるこの病気を発症します。X連鎖疾患では、通常、男児と男性でより症状が重くなります。女児と女性にはもう1つのX染色体があるため、この病気に対する保護作用があると考えられます。この遺伝子にさらに大きな(完全な)変異が発生すると、小児に知的障害を起こす病気である、 脆弱X症候群 脆弱X症候群 脆弱X症候群は、X染色体の異常の1つで、知的障害と行動面の問題が現れます。 染色体は、細胞の中にあって DNAや多くの遺伝子が格納されている構造体です。遺伝子とは、細胞の種類に応じて機能する特定のタンパク質の設計情報が記録された領域で、物質としてはDNA(デオキシリボ核酸)で構成されています(遺伝学についての考察は 遺伝子と染色体)。遺伝子には、体がどのような外観や機能をするかを定めた詳細な指示が記録されています。... さらに読む の原因になります。

前変異をもつ人はキャリア(ある異常遺伝子をもっているものの、その病気の症状が出ていない人)とみなされます。しかし、前変異をもつ男性の約30%、前変異をもつ女性の約5%未満が成人期に脆弱X関連振戦/失調症候群を発生します。発生リスクは加齢とともに増加します。

前変異は、それをもつ男性から、娘には引き継がれますが、息子には引き継がれません。前変異をもつ女性の多くはこの症候群を発症せず、したがって本人も知らずに、息子(はじめに前変異をもっていた男性の孫)にこの変異遺伝子を伝えることがあります。この女性から子どもに前変異が遺伝する確率は50%です。前変異は、母親から子どもに引き継がれるときに完全な変異に転じることがあり、すると子どもは脆弱X症候群を発症します。

脆弱X関連振戦/失調症候群の症状

通常、脆弱X関連振戦/失調症候群の症状は成人期に現れます。

多くの場合、最初の症状は以下のものです。

  • 手の振戦(典型的には何か作業をしようとしたときに起こる)

最近の出来事を思い出したり、問題を解いたりするのが難しくなることがあります。思考が鈍くなることもあります。精神機能が進行性に低下することもあります。人格の変化や、抑うつ、不安、短気、敵意、気分の変動などがみられることがあります。

発症後の生存期間は約5~25年です。

前変異をもつ女性では症状は比較的軽いのが普通です。これは、女性にはX染色体がもう1本あり、それが前変異をもつX染色体の影響を防ぐためと考えられています。前変異をもつ女性は、もたない女性より閉経が早く、不妊症になりやすい傾向があります。

脆弱X関連振戦/失調症候群の診断

  • 医師による評価

  • 遺伝子検査

  • ときにMRI検査

脆弱X関連振戦/失調症候群はときに見逃されたり、 パーキンソン病 パーキンソン病 パーキンソン病は、脳の特定の領域がゆっくりと進行性に変性していく病気です。特徴として、筋肉が安静な状態にあるときに起こるふるえ(安静時振戦)、筋肉の緊張度の高まり(こわばり、筋強剛)、随意運動が遅くなる、バランス維持の困難(姿勢不安定)などがみられます。多くの患者では、思考が障害され、認知症が発生します。 パーキンソン病は、動きを協調させている脳領域の変性によって起こります。... さらに読む アルツハイマー病 アルツハイマー病 アルツハイマー病は、精神機能が次第に失われていく病気であり、神経細胞の消失、ベータアミロイドと呼ばれる異常タンパク質の蓄積、神経原線維変化といった、脳組織の変性を特徴とします。 最近の出来事を忘れるのが初期の徴候で、続いて錯乱が強くなっていき、記憶以外の精神機能も障害され、言語の使用と理解や日常生活行為にも問題が生じるようになります。 症状が進行すると普段の生活が送れなくなり、他者に完全に依存するようになります。... さらに読む など同様の症状を引き起こす病気と誤診されたりすることがあります。振戦は、 本態性振戦 本態性振戦 振戦とは、手、頭、声帯、体幹、脚などの体の一部に起こる、不随意でリズミカルなふるえです。振戦は、筋肉の収縮と弛緩が繰り返されたときに起こります。 ( 運動障害の概要も参照のこと。) 振戦には以下の種類があります。 正常(生理的)なもの 病気または薬剤によって引き起こされる異常(病的)なもの さらに読む (その他の症状を伴うことはめったにない一般的な振戦)と誤認されることがあります。

脆弱X関連振戦/失調症候群が疑われる場合、医師は患者の家族の症状について質問し、特に孫に知的障害がないか、娘に早期の閉経や不妊症がなかったかを尋ねます。

医師が脆弱X症候群の小児を診察する際は、その祖父に脆弱X関連振戦/失調症候群を疑わせる症状がないかを質問するはずです。

遺伝子検査で診断を確定できます。

また、脆弱X関連振戦/失調症候群がある男性の娘と孫息子は遺伝カウンセリングを受けた方がよいでしょう。患者の娘は、子どもを作るかどうか、そして妊娠した場合に出生前検査を受けるかどうかについて決断できるように、前変異の有無を調べる検査を受けることができます。

脆弱X関連振戦/失調症候群の治療

  • 振戦をコントロールする薬

プリミドン(抗てんかん薬)、プロプラノロール(ベータ遮断薬)、または パーキンソン病による振戦をコントロールする薬 パーキンソン病の治療に用いられる薬剤 パーキンソン病の治療に用いられる薬剤 の多くで、振戦がしばしば緩和されます。

さらなる情報

役立つ可能性がある英語の資料を以下に示します。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。

  • ジェネティクス・ホーム・リファレンス:脆弱X症候群(Genetics Home Reference: Fragile X syndrome):このウェブサイトには、脆弱X症候群の説明や、その原因や遺伝形式に関する考察のほか、診断と治療に関するリンクも掲載されています。

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