ときに免疫系の機能が異常になり、外来物質や危険物質を攻撃するのではなく、自己の組織を攻撃する抗体(自己抗体)が生産されることがあります。そのような病気を 自己免疫疾患 自己免疫疾患 自己免疫疾患とは免疫系が正常に機能しなくなり、体が自分の組織を攻撃してしまう病気です。 自己免疫疾患の原因は不明です。 症状は、自己免疫疾患の種類および体の中で攻撃を受ける部位によって異なります。 自己免疫疾患を調べるために、しばしばいくつかの血液検査が行われます。 治療法は自己免疫疾患の種類によって異なりますが、免疫機能を抑制する薬がしばしば使用されます。 さらに読む といいます。
循環抗凝固因子は、通常自然に(ひとりでに、または原因不明で)生産される自己抗体で、特定の凝固因子(血液の凝固を助けるタンパク質)の活性を低下させ、それによって 過剰な出血 あざと出血 けがをしたときのあざや出血は正常です( 血栓についても参照)。しかし、あざや出血を起こしやすくなる病気があります。ときには、あきらかな原因やけががないのに出血することもあります。体のほぼあらゆる部分で自然に出血することがありますが、鼻や口、消化管に最も多くみられます。 血友病では、関節内や筋肉内でしばしば出血がみられます。ほとんどの場合、出血はわずかですが、生命を脅かすほど大量に出血することもあります。ただし、わずかな出血でも、脳に発生... さらに読む を引き起こします(血液凝固障害の概要 血液凝固障害の概要 血液凝固障害は、血栓の形成を制御する身体機能の障害です。これらの機能障害は、以下を引き起こす可能性があります。 血液の凝固が不十分な場合は、 異常出血(出血)が生じる 血液の凝固が過剰な場合は、血栓(血栓症)が発生する 異常な出血とは、あざや出血が起こりやすい状態を意味します(... さらに読む も参照)。例えば、免疫系により第VIII因子や第V因子に対する自己抗体が生産されることがあります。これらの抗体は血流に乗って移動(循環)するため、循環抗凝固因子と呼ばれます。
循環抗凝固因子は通常過剰な出血を引き起こします。ただし、特定の種類の循環抗凝固因子では、過剰な出血ではなく、動脈や静脈内に血栓をつくることもあります。このような血栓は、血流を遮断し、血管がつながっている組織に損傷を与えるとともに、発赤や腫れを引き起こします。
第VIIIおよび第IX因子抗凝固因子
第VIII因子に対する抗体は、重度の 血友病A 血友病 血友病は、第VIII因子と第IX因子という2つの血液凝固因子のうち、いずれかが欠乏しているために起こる遺伝性の出血性疾患です。 異なった遺伝子異常がいくつかあると、この病気を発症することがあります。 不意に出血したり、わずかな傷で出血したりする可能性があります。 診断には血液検査が必要です。 輸血を行って、欠けている凝固因子を補充します。 さらに読む の約30%で発生します。血友病の治療で投与された正常な第VIII因子の分子に繰り返しさらされることによる合併症として抗体ができます。同じように、重度の 血友病B 血友病 血友病は、第VIII因子と第IX因子という2つの血液凝固因子のうち、いずれかが欠乏しているために起こる遺伝性の出血性疾患です。 異なった遺伝子異常がいくつかあると、この病気を発症することがあります。 不意に出血したり、わずかな傷で出血したりする可能性があります。 診断には血液検査が必要です。 輸血を行って、欠けている凝固因子を補充します。 さらに読む では第IX因子に対する抗体ができますが、その割合は患者の約3%に過ぎません。
ときには、血友病ではない人でも、第VIII因子の自己抗体ができます。例えば、出産直後の女性、 関節リウマチ 関節リウマチ(RA) 関節リウマチは炎症性関節炎の1つで、関節(普通は手足の関節を含む)が炎症を起こし、その結果、関節に腫れと痛みが生じ、しばしば関節が破壊されます。 免疫の働きによって、関節と結合組織に損傷が生じます。 関節(典型的には腕や脚の小さな関節)が痛くなり、起床時やしばらく動かずにいた後に、60分以上持続するこわばりがみられます。 発熱、筋力低下、他の臓器の損傷が起こることもあります。... さらに読む や 全身性エリテマトーデス 全身性エリテマトーデス(SLE) 全身性エリテマトーデスは、関節、腎臓、皮膚、粘膜、血管の壁に起こる慢性かつ 炎症性の自己免疫結合組織疾患です。 関節、神経系、血液、皮膚、腎臓、消化管、肺、その他の組織や臓器に問題が発生します。 診断を下すため、血液検査のほか、ときにその他の検査を行います。 全身性エリテマトーデスの全患者でヒドロキシクロロキンが必要であり、損傷を引き起こし続けている全身性エリテマトーデス(活動性の全身性エリテマトーデス)の患者には、コルチコステロイドな... さらに読む のような自己免疫疾患の場合に第VIII因子の抗凝固因子が生産されることがあります。ときには、原因になる疾患が明らかではない高齢者で、第VIII因子の抗凝固因子が生産されることがあります。
第VIII因子の抗凝固因子が認められる場合は、生命を脅かす出血が起こる可能性があります。
第VIII因子の量や第IX因子の量を測定することを含めて、血液検査が実施されます。
分娩後の女性では、自己抗体が自然に消失することがあります。それ以外では、血友病ではない人に対して、自己抗体の生産を抑えるために、シクロホスファミド、コルチコステロイド、リツキシマブなどの薬が投与されることがあります。第VIII因子に対する抗体をもつ人が出血した場合には、活性化第VII因子が投与されることもあります。
血友病患者や、第VIII因子または第IX因子に対する同種抗体をもっている人の出血を抑える目的で、使用可能または試験中である新薬がいくつかあります。