X連鎖無ガンマグロブリン血症がある乳児は、せきを繰り返したり、鼻、耳、皮膚、副鼻腔、肺の感染症を生後約6カ月から繰り返すようになります。
免疫グロブリン製剤を生涯にわたって投与し、抗菌薬を継続的に投与する可能性があります。
(免疫不全疾患の概要 免疫不全疾患の概要 免疫不全疾患では、免疫系が正常に働かないことにより、通常に比べて感染症を頻繁に発症したり、繰り返したり、感染症が重症化したり、長引いたりします。 免疫不全疾患は通常、薬の使用や、がんなどの長期間に及ぶ重篤な病気が原因で発症しますが、遺伝性の場合もあります。 この病気になると感染症を繰り返すだけでなく、普通の人がかからないような感染症が起き... さらに読む も参照のこと。)
抗体 抗体 体の防衛線( 免疫系)の一部には 白血球が関わっていて、それらの白血球は血流に乗って体内を移動して組織の中に入り込み、微生物などの異物を見つけ出して攻撃します。( 免疫系の概要も参照のこと。) この防衛線は以下の2つの部分で構成されています。 自然免疫 獲得免疫 獲得免疫(適応または特異免疫)は、生まれたときには備わっておらず、後天的に獲得されるものです。獲得のプロセスは、免疫系が異物に遭遇して、非自己の物質(抗原)であることを認識した... さらに読む (免疫グロブリン)は感染、がん、異物などから体を守るために免疫系が作り出す物質です。抗体は B細胞 B細胞 体の防衛線( 免疫系)の一部には 白血球が関わっていて、それらの白血球は血流に乗って体内を移動して組織の中に入り込み、微生物などの異物を見つけ出して攻撃します。( 免疫系の概要も参照のこと。) この防衛線は以下の2つの部分で構成されています。 自然免疫 獲得免疫 獲得免疫(適応または特異免疫)は、生まれたときには備わっておらず、後天的に獲得されるものです。獲得のプロセスは、免疫系が異物に遭遇して、非自己の物質(抗原)であることを認識した... さらに読む と呼ばれる白血球の一種から生産されます。免疫グロブリンの1種類以上の欠損により重篤な感染のリスクが高まります。
X連鎖無ガンマグロブリン血症は、X(性)染色体上にある遺伝子の突然変異が原因で発生します(X連鎖疾患 X連鎖遺伝 遺伝子とは、DNA(デオキシリボ核酸)のうち、細胞の種類に応じて機能する特定のタンパク質の設計情報が記録された領域のことです。 染色体は非常に長いDNA鎖からできており、そこには多く(数百~数千)の 遺伝子があります。特定の細胞(例えば、精子と卵子)を除き、人間の正常な細胞には23対の染色体があります。22対の常染色体と1対の性染色体があり、合わせて46本の染色体があります。通常、それぞれの対を構成する染色体は、片方を母親から、もう片方... さらに読む と呼ばれます)。X連鎖疾患は通常は男児に発生します。
X連鎖無ガンマグロブリン血症の症状
生後約6カ月間は、母親から受け取った免疫グロブリンが乳児を感染症から守っています。しかし、この母親の免疫グロブリンは生後6カ月頃から減り始めるため、この病気の乳児では、せきや鼻の感染症(鼻炎)のほか、耳、皮膚、副鼻腔、肺などの感染症を繰り返すようになります。通常これらの感染症は、肺炎球菌、レンサ球菌、ヘモフィリス属(Haemophilus)の細菌(インフルエンザ菌など)によるものです。通常は起こらないようなウイルス感染が脳にみられることもあります。
扁桃は非常に小さく、正常では存在する免疫グロブリンを作り出すB細胞がないため、リンパ節が発達しません。
X連鎖無ガンマグロブリン血症では、関節の感染症(感染性関節炎 感染性関節炎 感染性関節炎は、関節液や関節組織の感染症で、通常は細菌感染が原因ですが、ウイルスや真菌の感染によって起こることもあります。 細菌、ウイルス、真菌は、血流を介して、または近くの感染部位から関節に入り、感染症を引き起こすことがあります。 通常は、数時間ないし数日以内に痛みや腫れ、発熱が生じます。 関節液を針で吸引して検査します。 抗菌薬の投与を直ちに開始します。 さらに読む )、気道の慢性炎症による不可逆的な拡張(気管支拡張症 気管支拡張症 気管支拡張症は、気道の壁が損傷を受けて、呼吸の管や気道の一部(気管支)が広がったまま元に戻らない状態(拡張症)です。 最も一般的な原因は、重度の呼吸器感染症や繰り返す呼吸器感染症で、これは肺または免疫系にすでに異常がある人によくみられます。 ほとんどの患者に慢性的なせきがみられ、せきとともに血が出たり、胸痛が現れたり、肺炎を繰り返したりす... さらに読む )、特定のがんの発生リスクが高くなります。
脳に感染が起きた場合を除き、早期の診断と治療により、多くの場合、寿命に影響はありません。
X連鎖無ガンマグロブリン血症の診断
血液検査
ときに遺伝子検査
免疫グロブリンの量とB細胞の数を測定するため血液検査を行います。
遺伝子検査は、X連鎖無ガンマグロブリン血症の診断を確定するために行われることがありますが、通常は必要ではありません。近親者に対する検査が推奨されています。
X連鎖無ガンマグロブリン血症の治療
免疫グロブリン製剤
抗菌薬
不足している抗体を補い感染症の予防を助けるために、生涯にわたって免疫グロブリン製剤(免疫系が正常な人の血液から採取した抗体)が投与されます。免疫グロブリン製剤は静脈内または皮膚の下に注射します。
細菌感染が起きた場合は速やかに抗菌薬を投与し、継続的に投与することもあります。
X連鎖無ガンマグロブリン血症の患者には、弱毒化された生きた微生物(ウイルスや細菌)を含有するワクチンは接種されません。そのようなワクチンには、ロタウイルスワクチン、麻疹・ムンプス・風疹混合ワクチン、水痘ワクチン、水痘帯状疱疹ワクチンの一種、BCG(カルメット-ゲラン桿菌)ワクチン、および鼻腔スプレーで投与するインフルエンザワクチンなどがあります。
これらの処置にもかかわらず、副鼻腔や肺の慢性感染症が頻繁に起こります。
さらなる情報
以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。
免疫不全財団:無ガンマグロブリン血症:X連鎖および常染色体劣性遺伝疾患(Immune Deficiency Foundation: Agammaglobulinemia: X-Linked and Autosomal Recessive):無ガンマグロブリン血症の診断、治療、患者へのアドバイスなどの情報を含む包括的な情報