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無月経

執筆者:

JoAnn V. Pinkerton

, MD, University of Virginia Health System

レビュー/改訂 2021年 2月
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本ページのリソース

月経がないことを無月経といいます。

以下の状況では、無月経は正常です。

  • 思春期以前

  • 妊娠中

  • 授乳中

  • 閉経後

それ以外の時期の無月経は、重篤な病気の最初の症状である可能性があります。

無月経の女性のほとんどは、卵巣からの排卵がありません。このような女性は妊娠することができません。

無月経の種類

無月経には主に以下の2種類があります。

  • 原発性:月経が始まらない。

  • 続発性:月経が始まり、その後止まってしまう。

通常、月経が始まらなければ、女児は思春期を迎えることがないため、乳房の発達や陰毛の出現などの正常な第二次性徴がみられません。

月経があった女性で月経が停止した場合は、続発性無月経である可能性があります。続発性無月経の方が原発性無月経と比べてはるかに一般的です。

ホルモンと月経

  • 視床下部(脳の一部で下垂体をコントロールする)

  • 下垂体(黄体形成ホルモンと卵胞刺激ホルモンを分泌する)

  • 卵巣(エストロゲンプロゲステロンを分泌する)

甲状腺ホルモンやプロラクチン(下垂体で分泌される)など他のホルモンも月経周期に影響を与えることがあります。

妊娠または授乳していない女性において月経がないことの最も一般的な理由は、以下のものです。

  • 月経に関連する内分泌系のどこかがうまく機能していない

これがうまく機能していなければ、卵巣からの排卵がありません。このようなタイプの無月経は無排卵性無月経と呼ばれます。

あまり一般的でない理由として、内分泌系は正常に機能していて、別の問題が月経を妨げていることもあります。例えば、子宮に瘢痕組織がある場合や、先天異常、子宮筋腫、またはポリープなどが経血の腟からの排出を妨げている場合があります。

乳房からの乳汁の分泌を刺激するプロラクチンの血中濃度が高い場合にも、無月経になることがあります。

原因

無月経は視床下部、下垂体、卵巣、子宮、子宮頸部、または腟に影響を及ぼす状態によって起こります。これらの状態には、内分泌疾患、先天異常、遺伝性疾患、薬剤などがあります。

最も一般的な原因は、無月経が原発性か続発性かによって異なります。

原発性無月経

原発性無月経の原因になる病気は、どれも比較的まれなものですが、その中で最も多くみられるのは以下のものです。

遺伝性疾患には以下のものがあります。

原発性無月経の原因になる遺伝性疾患や先天異常は、思春期まで気づかれないことがあります。これらの病気が原因になるのは原発性無月経だけで、続発性無月経の原因にはなりません。

ときに思春期が遅れている女児に特に病気はなく、単に年齢が高くなってから月経が正常に始まることがあります。このような思春期の遅れは一部の家系に多く現れることがあります。

続発性無月経

最も一般的な原因は以下のものです。

妊娠可能年齢の女性では、妊娠が無月経の最も一般的な原因です。

視床下部の機能不全は、以下のようないくつかの理由で起こります。

下垂体の機能不全は、以下のような理由で起こります。

  • 下垂体の損傷

  • プロラクチンの血中濃度の上昇

抗うつ薬、抗精神病薬、経口避妊薬(ときに)、およびその他の特定の薬剤も、下垂体腫瘍やその他の病気と同様にプロラクチンの血中濃度を上昇させることがあります。

甲状腺の活動が不十分になったり(甲状腺機能低下症 甲状腺機能低下症 甲状腺機能低下症は、甲状腺の働きが低下し、甲状腺ホルモンの生産が不十分になる病気で、身体の重要な機能が働く速度が低下します。 顔の表情が乏しく、声がかすれ、話し方はゆっくりになり、まぶたは垂れて、眼と顔が腫れます。 通常は1回の血液検査で診断が確定されます。 甲状腺機能低下症の人は、生涯にわたって甲状腺ホルモンの投与を受ける必要があります。 甲状腺は、体内の化学反応が進行する速度(代謝率)を制御する甲状腺ホルモンを分泌します。甲状腺ホル... さらに読む 甲状腺機能低下症 )、過剰になったり(甲状腺機能亢進症 甲状腺機能亢進症 甲状腺機能亢進症は甲状腺が働きすぎている状態で、甲状腺ホルモンの値が高く、身体の重要な機能が働く速度が上昇します。 バセドウ病は甲状腺機能亢進症の原因として最もよくみられます。 心拍数と血圧の上昇、不整脈、過剰な発汗、神経質や不安、睡眠障害、意図しない体重減少、排便回数の増加などの症状がみられます。 診断は血液検査により確定されます。 甲状腺機能亢進症の管理には、チアマゾールまたはプロピルチオウラシルが用いられます。 さらに読む 甲状腺機能亢進症 )すると、無月経になることがあります。

続発性無月経のあまり一般的でない原因には、慢性疾患(特に肺、消化器、血液、腎臓、または肝臓のもの)、一部の自己免疫疾患、がん、HIV感染症、放射線療法、頭部損傷、胞状奇胎(胎盤組織の過剰増殖)、クッシング症候群、副腎の機能不全などがあります。子宮の瘢痕組織(通常は感染または手術による)、ポリープ、および子宮筋腫も続発性無月経の原因になります。

評価

医師は、無月経が原発性であるのか続発性であるのかを判断します。この情報は医師が原因を特定するのに役立ちます。

警戒すべき徴候

以下の症状には注意が必要です。

受診のタイミング

女児に以下がみられる場合、数週間以内に受診すべきです。

  • 13歳までに思春期の徴候(乳房の発達や成長スパートなど)がみられない。

  • 正常に成長していて第二次性徴の発達がみられる女児において、15歳までに月経が始まらない。

このような女児は原発性無月経である可能性があります。

月経のあった妊娠可能年齢の女児や女性において月経が停止した場合、以下の場合には医師の診察を受けるべきです。

  • 月経が3回なかった

  • 1年の月経回数が9回未満である

  • 月経のパターンが急に変わった

このような女性は続発性無月経である可能性があります。続発性無月経の評価の際には常に妊娠検査を行います。医師の診察を受ける前に、市販の妊娠検査薬を使用してもよいでしょう。

医師が行うこと

医師はまず、月経歴を含む病歴について質問します。次に身体診察を行います。病歴聴取と身体診察で得られた情報から、多くの場合、無月経の原因と必要になる検査を推測することができます(表「 無月経の主な原因と特徴 無月経の主な原因と特徴 無月経の主な原因と特徴 」を参照)。

月経歴の聴取では、医師は今までに月経が起こったことがあるかを女児や女性に質問することにより、無月経が原発性であるか続発性であるかを判断します。月経を経験していれば、月経が始まったときの年齢や最後の月経はいつであったかを質問します。患者はまた、月経の様子について以下を説明するよう求められます。

  • 月経期間はどれくらいだったか

  • 月経の頻度はどれくらいだったか

  • 月経が規則的にあったことはあるか

  • 月経はどれくらい重かったか

  • 月経に関連して乳房の圧痛や気分の変化はあったか

女児に1度も月経が起こっていなければ、医師は以下について質問します。

  • 乳房の発達は始まったか

  • 成長スパートがあったか

  • 陰毛とわき毛は出現したか(思春期の徴候)

  • 家族に月経異常の人がほかにいるか

これらの情報により、いくつかの原因の可能性を否定することができます。家系内の思春期の遅れおよび遺伝性疾患の情報も、原因が遺伝性疾患であるかどうかを判断するのに役立ちます。

医師は、原因を示唆する他の症状や、薬剤の使用、運動、食習慣、その他の状態など無月経を引き起こしうる原因について質問します。

医師は身体診察の際に、第二次性徴が発達しているかどうかを判断します。乳房の診察を行います。内診を行い、性器が正常に発達しているかどうかや、生殖器に異常がないかを調べます。

医師はまた、原因を示唆している可能性のある以下のような症状がないかも確認します。

  • 両方の乳頭からの乳白色の分泌物:考えられる原因には、下垂体の病気やプロラクチン(乳汁の分泌を刺激するホルモン)の血中濃度を上昇させる薬剤などがあります。

  • 頭痛、難聴、および部分的な視力障害または複視:考えられる原因として、下垂体または視床下部の腫瘍があります。

  • 過剰な体毛、声の低音化、筋肉の増加など男性的な特徴の発達:考えられる原因には多嚢胞性卵巣症候群、男性ホルモンを分泌する腫瘍、薬剤(男性ホルモンのアンドロゲンの合成ホルモン、抗うつ薬、またはプロゲスチンと呼ばれる合成女性ホルモンの高用量での使用)などがあります。

  • ホットフラッシュ、腟乾燥、および寝汗:考えられる原因には早発閉経、卵巣の機能不全を引き起こす病気、放射線療法、化学療法薬の使用などがあります。

  • 振戦(ふるえ)と体重減少または反応の鈍化と体重増加:これらの症状は甲状腺の病気を示唆します。

検査

妊娠可能年齢の女児または女性には、まず以下の検査を行います。

  • 妊娠検査

妊娠の可能性が否定されたら、診察の結果と疑われる原因に基づいて他の検査を行います。

女児に1度も月経が起こっておらず(原発性無月経)、正常な第二次性徴がみられる場合、検査は超音波検査から始め、子宮からの経血の排出を妨げうる先天異常がないか調べます。先天異常がまれなものであったり、特定が難しい場合には、MRI検査を行うことがあります。

検査は通常、一定の順序で行い、その過程で原因を特定したり除外したりしていきます。さらなる検査が必要かどうか、またどの検査を行うかは、前の検査の結果により異なります。一般的な検査には以下のものがあります。

子宮鏡検査では、観察用の細い管状の機器を腟から子宮頸部へと挿入して子宮内部を観察します。この検査は診療所で行われるか、病院で外来検査として行われることもあります。

子宮卵管造影検査とは、造影剤(X線画像に写る物質)を子宮頸部から子宮と卵管に注入した後に行うX線検査です。子宮卵管造影検査は、通常は病院の放射線検査室で外来検査として行われます。

ホルモン剤で月経が誘発されれば、原因は月経をコントロールしている内分泌系の機能障害か早発閉経である可能性があります。ホルモン剤で出血が誘発されなければ、原因は子宮の病気や経血の排出を妨げる解剖学的異常での可能性があります。

症状から特定の病気が示唆されていれば、その病気の検査をまず行うこともあります。例えば女性に頭痛や視覚障害がみられれば、脳のMRI検査を行い、下垂体腫瘍がないか確認します。

治療

無月経が別の病気によって起きている場合は、可能であればその病気を治療します。治療により、ときに月経が再開します。例えば、何らかの異常により経血の排出が妨げられている場合、通常は外科的に修復し、月経が再開します。ターナー症候群やその他の遺伝性疾患などのように、根治が望めない病気もあります。

Y染色体をもつ女性では、 卵巣胚細胞腫瘍 卵巣がん、卵管がん、および腹膜がん のリスクが高くなるため、医師は手術による両側の卵巣摘出を推奨します。卵巣胚細胞腫瘍は、卵巣内の卵子を生じる細胞(胚細胞)から発生します。

女児において検査結果がすべて正常であるにもかかわらず月経が始まらない場合は、3~6カ月毎に診察を行って思春期の進行状態を確認します。プロゲスチンやときにエストロゲンも投与して月経を開始させ、乳房の膨らみなど第二次性徴の発達を促すこともあります。

無月経に関連する問題には、以下のような治療が必要な場合があります。

要点

  • 様々な理由により月経周期を調節する複雑なホルモンの仕組みが乱され、月経が停止します。

  • 医師は原発性無月経(月経が始まらないこと)と続発性無月経(月経が始まってから、停止すること)を区別します。

  • 最初に行われる検査は妊娠検査です。

  • 女性が妊娠していない限り、無月経の原因を特定するため、通常他の検査が必要です。

  • 無月経に関連する問題(エストロゲンの血中濃度が低いなど)も、後の健康上の問題を予防するために治療が必要になることがあります。

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