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高齢のドライバー

執筆者:

Peggy P. Barco

, OTD, OTR/L, BSW, SCDCM, CDRS, FAOTA, Washington University Medical School;


David B. Carr

, MD, Washington University School of Medicine

レビュー/改訂 2022年 4月
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本ページのリソース

高齢者は自動車の運転により、自由や自立、さらには多くの人にとって若い頃は当たり前であった地域社会との交流を得ることができます。しかし、車を運転する特権は、自動車を安全に操作できる能力を前提としています。70歳以上のドライバーでは、中年のドライバーと比べて、走行距離当たりで衝突事故を起こすリスクが高くなります。リスクは、運転の頻度が少ないドライバーで最も高くなります。したがって加齢に伴う病気に起因する機能低下は、黄信号、つまり車を運転する特権を見直すべきとの警告と捉える必要があります。

高齢者の運転能力は多くの要因により低下します。このような要因の中には、反応時間の加齢変化や、視覚障害、認知障害や筋肉の病気など、加齢に伴ってよくみられるようになるいくつかの病気があります。高齢者の病気の治療に薬がよく使用されますが、薬の種類によっては鎮静作用があるものもあり、運転能力を低下させる可能性があります。このような要因の一部はうまく管理して対処することができます。

知っていますか?

  • (右側通行の米国では)高齢者は、他の年齢層の人と比べて、左折時【訳注:日本では右折に相当】に自動車事故を起こしやすくなります。

衝突事故率と交通違反

平均すると高齢のドライバーによる年間の実際の衝突事故数は、若いドライバーより少数です。しかし、高齢者の走行距離は中年のドライバーより短いため、走行距離当たりの平均衝突事故数は高齢者の方が多くなります。衝突事故率は約70歳以降に上昇し始め、80歳以降では急激に上昇します。高齢者の一定の走行距離当たりの交通違反率、衝突事故率、死亡率は、25歳以上の全年齢層で最も高くなっています。高齢者は、以前の世代より長距離を運転していることに注意すべきで、この傾向は今後も続くと予想されます。

高齢のドライバーによくみられる交通違反の1つは、通行優先権違反(多くの場合、ドライバーが「見たつもりが見えていなかった」ことが原因)です。また、高齢者は車線への合流が苦手で、交差点、特に左折時【訳注:日本では右折に相当】に問題が起こりがちです。このような問題には以下の要因が関わっています。

  • 複数の情報を同時に判断すること(マルチタスク)が困難

  • 対向車や物体の速度の判断が困難

  • 視野の減少

ただ、多くの高齢者は若い人より慎重です。思考や判断力を損なう病気(例えば認知症)のない高齢者の多くは、安全性を高めるために運転を制限し始めます。夕方、夜間、混雑時、または悪天候時には運転を避ける傾向があります。さらに、高齢者が関わる衝突事故で、アルコールが要因になる可能性は非常に低くなります。

また、カーブの多い道路または高速運転中に衝突事故を起こすこともあまりありません。高齢ドライバーによる単独車両の事故は少なく、複数車両の事故に巻き込まれる傾向がみられます。興味深いことに、70歳以上のドライバーでは、同乗者の人数に応じて、事故率が低くなる傾向があります。

高齢ドライバーの関与する衝突事故では、重篤なけがを負ったり死亡したりする可能性は高くなります。高齢ドライバーのけがに対する脆弱性の増大については十分に解明されていませんが、身体的な弱さと、骨粗しょう症や心疾患などの病気を1つまたは複数抱えていることが原因である可能性があります。さらに、高齢ドライバーの車は耐衝撃性能が低い可能性があります。自動車事故により死亡した高齢者の数は減少してきていますが、高齢者人口が増加しているため、他の年齢層と比べて高齢者の関与する死亡事故が増加しています。

運転能力低下の理由

車の運転では、並行した操作(ブレーキとハンドルの操作など)を正確に行わなければなりません。これらの操作には、以下に示すようないくつかの特性が必要です。

  • 明晰な思考力

  • 的確な判断能力、計画能力、意思決定能力

  • 注意力と集中力

  • 敏速な反応

  • 協調性

  • 十分な筋力

  • 上半身(体幹上部、肩、首)の良好な可動性

  • 脚と足の感覚

  • 良好な視力と聴力

これらの特性が1つでも欠けると、運転能力に大きな影響を及ぼすことがあります。特性が失われる原因はいくつかありますが、実際には、いずれの特性も加齢に伴いある程度低下し、病気があるとさらに悪くなります。

加齢

加齢そのものが通常は体力、協調性、反応時間、集中力、視力、聴力を徐々に低下させます。高齢者はスタミナが少なく、早く疲れてしまいます。特に集中力を必要とする状況では、その傾向が強くなります。また、複数の操作に同時に集中することが困難になります。しかし、加齢による変化のほとんどはゆるやかで、多くの場合、安全運転上の問題の主な理由にはなりません。

病気

高齢者でよくみられる病気は、高齢のドライバーにとって特に厄介なものです。例えば、 糖尿病 糖尿病 糖尿病は、体がインスリンを十分に生産しないかインスリンに正常に反応しないため、血中の糖分の濃度(血糖値)が異常に高くなる病気です。 排尿が増加し、のどが渇くほか、減量しようとしていなくても体重が減少することがあります。 糖尿病は神経の損傷をもたらし、触覚の問題を引き起こします。... さらに読む では血糖値が過度に上昇したり、または低下したりする場合があります。このような変化は、明瞭な思考、注意力、集中力、視力を低下させ、足の感覚を狂わせます。

関節炎により関節の 痛み 関節痛:単一の関節 1つの関節だけに起こる痛みは、単関節痛と呼ばれます。関節が痛む(関節痛)だけの場合と、炎症(関節炎)を伴う場合があります。関節炎は通常、熱感、腫れと、まれに患部上の皮膚の発赤を引き起こします。痛みが、関節を動かすときにのみ起こる場合と、安静にしているときも痛む場合があります。関節内に体液がたまります(液貯留と呼ばれます)。... さらに読む 硬直 関節のこわばり 関節のこわばりとは、関節の動きが制限されている感覚や、動かすのが難しいという感覚です。 この感覚の原因は、筋力の低下でも、痛みのために関節を動かしたくなることでもありません。こわばりがあっても、その関節を正常な可動域全体にわたって動かせる人もいますが、そうするには力を込めなければならない場合があります。炎症を原因とする関節のこわばりが起こ... さらに読む が引き起こされると、可動域が制限され、車の制御に支障が出る可能性があります。例えば、膝または股関節の痛みと硬直が、ブレーキまたはアクセルを踏む力に影響を及ぼすかもしれません。関節炎を患っている場合は、曲がるとき、またはバックするときに、痛くて頭部を動かせないことがあります。

緑内障 緑内障 緑内障とは、進行性の視神経損傷を特徴とする一群の眼疾患で(眼圧の上昇を伴うことが多いものの、常に伴うわけではありません)、不可逆的な視力障害につながることがあります。 眼の内部の圧力(眼圧)が上昇すると視神経が損傷されることがあります。 通常、視力障害は徐々に生じるため、長い間気づかれないことがあります。... さらに読む 黄斑変性 加齢黄斑変性 (AMD/ARMD) 加齢黄斑変性は、網膜中心部の最も重要な部分である黄斑の損傷が進行して、中心視力が徐々に損なわれていく病気です。 中心視力が徐々に低下し、細かい部分が見えなくなっていきます。直線が波打ってみえることもあります。 加齢黄斑変性に特徴的な眼の変化は、多くの場合、医師が専用の器具を用いて診察することで特定されます。... さらに読む 加齢黄斑変性 (AMD/ARMD) は眼の病気で、朝方や夕方、または夜間の運転に支障をきたします。緑内障では視野も狭まり、横の車や物が見えにくくなります。 白内障 白内障 白内障は、眼の中の水晶体が濁って進行性に視力が損なわれていく病気で、痛みはありません。 視界はかすみ、コントラストが失われ、光の周りに虹のような輪(ハロ)が見えること(光輪視)があります。 医師は、検眼鏡または 細隙灯(さいげきとう)顕微鏡で眼を観察することで白内障を見つけることができます。... さらに読む 白内障 は、ほぼすべての高齢者で発生し、対向車のヘッドライトまたは街灯の周りにぎらつき(グレア)が見えるようになります。

治療薬

多くの高齢者は望ましくない副作用が起こりうる薬を服用しています。副作用には、眠気、めまい、錯乱、車の運転を妨げるその他の症状があります。これらの副作用は、処方薬と非処方薬(市販薬)のいずれでも起こりえます。視覚機能、身体機能、または精神機能に影響を及ぼすおそれのある薬を新たに開始する場合は、数日間運転を控え、副作用が起こらないことを確認すべきです。車の運転を妨げることがある薬には以下のものがあります。

  • 抗てんかん薬

  • 制吐薬(吐き気を抑えるために使用)

  • 抗ヒスタミン薬

  • 抗精神病薬

  • ベンゾジアゼピン系薬剤またはその他の抗不安薬

  • 緑内障治療薬

  • パーキンソン病の治療に用いられる薬剤

  • 筋弛緩薬

  • オピオイド

  • 睡眠補助薬

  • 鎮静作用がある一部の抗うつ薬

(米国食品医薬品局[Food and Drug Administration:FDA]の運転と相性が悪い薬[Some Medicines and Driving Don't Mix]も参照のこと。)

状況

知らない土地または混雑した道を運転する場合などに生じるストレスは、運転の障害になります。疲労と注意がそれる原因となるものも運転能力を低下させます。運転中の携帯電話の使用や携帯メールを送ることは衝突事故のリスクを増大させます。すべてのドライバーがこのような注意がそれる原因となるものを避けるべきですが、高齢者では注意力とマルチタスク能力に加齢に伴う変化や低下が起こっていることから、とりわけ影響を受けやすいといえます。車線逸脱警報システムやブラインドスポットインジケーターなどの先進的な衝突防止技術(MyCarDoesWhat.orgの今日の自動車安全機能[today's car safety features]を参照)は、現在多くの車で採用されています。

高齢者の転倒 高齢者の転倒 転倒のほとんどは、身体的に動作やバランス能力に支障をきたす状態の高齢者が、環境内の障害物に遭遇したときに起きます。 多くの場合は転倒前に症状はないものの、めまいまたはその他の症状が現れている場合もあります。 転倒後、骨折または皮下出血がみられることがあります。 転倒の原因が病気か否かを判断するために、医師はしばしば検査を行います。... さらに読む は、自動車の衝突事故のリスク増大と関連づけられていますが、これは転倒を回避することと衝突事故を回避することがともに視覚系と運動系との協調的な認知能力を必要とするためであり、視覚系および運動系のいずれもが高齢ドライバーでは低下している可能性があります。したがって、身体活動、バランストレーニング、鎮静薬の使用を減らすことなど、転倒リスクを減らす介入は、歩行と運転のいずれの安全性の改善にも一定の役割を果たすと考えられます。

単に最近の運転経験が少ないために、運転が下手な高齢者もいます。パートナーのうち1人がもう一方よりも多く運転することはよくあります。主に運転を担当していたパートナーが亡くなった場合、もう一方が安全に運転を再開する準備ができていない場合があります。たまにしか運転しない人は、完全に運転ができなくなる(ペーパードライバーとなる)リスクが高いため、高齢者同士がパートナー関係にある場合は2人とも運転するようにして運転をシェアした方がよいでしょう。

代償方法

多くのドライバーは、年齢を重ねるにつれて運転を自主規制するようになります。例えば、高速道路を使った長距離移動をしない、夜間にはあまり運転しない、分かりにくい交差点を避ける、危険運転行動(例えば、スピード違反、あおり運転、飲酒運転など)をしないことなどによって運転を自主規制します。高齢のドライバーが、加齢に伴う運転の安全性の問題を補うために活用できる方法は数多くあります。

危険を避ける

高齢のドライバーは長年の運転経験により、危険な状況を特定して避けることができます。例えば、加齢とともにスタミナが減少するため、高齢者は走行距離を短くして、頻繁に休憩を取ろうとします。高速道路や、混雑する道路または危険と分かっている道路を避けることができます。グレア(光の周りのぎらつき)の問題が起こりやすい夜または早朝、夕方の運転を避けるようにします。混雑している時間帯、悪天候を避け、左折信号がないところでの左折【訳注:日本では右折に相当】を避けるようにします。よく知っている道や目的地にしか運転しないようにするかもしれません。

運転中に注意がそれる原因となるものを避ける

すべてのドライバーにとって重要なことですが、高齢ドライバーにとっては注意がそれる原因となるものを避けるのが必須です。車が予期せずに修理が必要になり立往生した場合、ドライバーの安全を確保する上で携帯電話は重要な機器です。しかし、運転中は絶対に携帯電話(手を使わないモデルであっても)を使用してはなりません。運転中の携帯電話の使用に関する法律は州によって異なり、また違法とされている州もあります。同様に、ステレオまたはその他の車載システム(カーナビゲーション、エアコンまたはシートの位置など)の調整、飲食、喫煙、デジタルまたは紙の地図を見る、同乗者との会話でさえ、気が散る原因になり、運転能力を低下させます。運転中に注意がそれる原因となるありとあらゆるものを最小限に抑えるべきです。

技術の活用

高齢ドライバーの補助となるような新しい技術があります。カメラまたは赤外線システムを用いた、後退、駐車、その他の操作を補助する駐車支援システムは、肩越しに振り返るのが困難な人にとって特に役に立ちます。その他の役に立つシステムには、クルーズコントロール、アンチロックブレーキ、走行とステアリングを改善する横滑り防止装置などがあります。 夜間運転のための高度視覚システムには、カーブ照明(カーブに沿った照明)やヘッドライトの自動減光(対向車が来たときにハイビームからロービームに切り替える機能)などがあります。一部の車にはブラインドスポットモニター、車線逸脱および衝突警報装置、バックアップカメラ、また、後続車のまばゆいヘッドライトが当たったときに自動的にぎらつきを和らげるバックミラーなどが装備されています。自動車メーカーは、夜間運転をしやすくする赤外線暗視技術の実験をしています。

また、多くの自動車メーカーは、関節炎の人が操作しやすいようにハンドルやノブを新しいデザインに変更しています。その他、ドアステップを低くする、ローバックサポートを設ける、サンバイザーを大きくする、シートやハンドルの位置を調節できるなどの機能はすべてのドライバーに有用ですが、特に高齢のドライバーに役立ちます。自動運転車の実験が全国で行われており、将来的に利用できる可能性が高くなっています。

衝突事故またはその他の緊急事態の発生時に、自動的に救助隊に通報して車の居場所を教える非常通報システムもあります。グローバル・ポジショニング・システム(GPS)は目的地を見つける上で、高齢ドライバーの助けになるでしょう。多くの高齢ドライバーはスマートフォンを持っており、道に迷ったときに家族がGPS技術によって居場所を特定できるアプリを無料でインストールできます。また家族が望む場合には、GPS技術は、インターネットを通して様々な運転行動(通った道や運転スピード)を監視するために利用できます。今後さらなる技術革新が期待されます。

ますます多くの技術が利用可能になるにつれて、高齢者には、新しい技術の使用方法の訓練により多くの時間を費やす必要があることも認識することが大切になってきます。各人に最も役立つものを提供するために、技術の個別化が必要とされます。(今日の自動車安全機能[today's car safety features]については、MyCarDoesWhat.orgを参照のこと。)

ドライバーリフレッシュプログラムの受講

運転の安全性を向上させるためのオンラインプログラムもあり、高齢者を対象としているものもあります。高齢ドライバーは、ドライバーリフレッシュプログラムを通じて、自身の運転技能の維持または向上に役立てることができます。全米退職者協会(AARP)や米国自動車協会(AAA)など、いくつかの組織が、老年期の運転上の課題に高齢者が適応するのを助けるために、このようなプログラムを提供しています。また、こうしたプログラムに参加すると保険料率が低くなる州もあります。AAAが提供しているRoadWise Driverは、運転能力に影響を与える様々な加齢に伴う変化に高齢者が順応するのを支援することに重点を置いた、高齢者の安全運転プログラムであり、またAARPでは運転技術リフレッシュコース(a course on refreshing driving skills)を提供しています。

高齢ドライバーに合わせて車のいろいろな部分の調節の仕方を教えてくれるプログラムからも便益が得られます。例えば、交通状況が見やすいようにハンドルからの距離やシートの高さを適正にしっかりと設定できているか見極めることができるようになります。適正なミラーの調節は、ドライバーの盲点を補う助けになります。AAAのカー・フィット(CarFit)プログラムはオンラインや様々な対面形式で米国各地で利用でき、安全性を向上させるために個人の車をどのように「フィット(調整)」させることができるかについて、役立つ情報を提供しています。

医療を受ける

健康的な生活習慣を身につけ、よい医療を受けることは、高齢者の運転時の困難を回避する助けになるでしょう。高齢者が健康を維持すべき理由は多くあり、運転能力の維持はその1つです。視力、記憶力と思考力、筋力の点において運転能力を損なう可能性のある問題を特定するために、高齢者は定期的に医師による診察を受けるべきです。

病気の治療が運転能力を向上させる場合もあります。例えば、白内障の手術が有益かもしれません。薬と理学療法で関節炎を治療すると、関節を曲げやすく、また動かしやすくなるでしょう。糖尿病をうまくコントロールすると、血糖値の変動を防ぐことができます。睡眠時無呼吸症候群を治療することで、日中の眠気を軽減できます。高齢者は、服用している薬について医師または薬剤師と相談し、副作用で運転能力に支障がないようにするべきです。

多くの州には、特定の病気の診断後、一定期間にわたって自動車運転を禁止する法律があります。この運転禁止期間(猶予期間)は、治療により病気を安定させるための期間です。例えば、一部の州は、けいれん発作や脳卒中、または一過性脳虚血発作後に、運転前3~6カ月の猶予期間を求めています。運転能力に影響を与える可能性のある病気がある高齢のドライバーは、運転禁止期間や運転の変更に関する医師の推奨に従うべきです。

運転の判断

ほとんどの高齢ドライバー(特に重大な医学的障害のある人)はある時点で、運転を続けても安全かどうか決断を迫られます。安全運転に必要な能力が低下すると、車の運転は危険になります。運転できないことは、自由と自立を失うことを意味する場合があります。運転をやめる必要のある高齢者が、毎日または週毎の重要な活動を行えるように、ふさわしい移動方法を見つけられるよう援助することが非常に大切です。運転の安全性について懸念を引き起こすものと同じ要因の多くが、高齢者の公共交通機関の利用能力にも影響を及ぼす可能性があります。

ときに、家庭医または家族が、高齢ドライバーに「車の運転をあきらめさせる」時が来たと実感することがあります。こうした問題は、常に対処が困難ですが、無視すると悲惨な結果を招きかねません。高齢者が気持ちよく運転をやめる助けになる、いくつかの実用的な手順があります。

  • 自動車運転の制限または中止の判断に本人が関わる。

  • 他の移動手段を見つけるのを助ける。

  • 運転サービスや配送サービスを探す。

  • 高齢者が活動的に過ごせるようにし、活動への送迎方法を確保するよう努める。

  • この問題について、家庭医や友人に相談する。

多くの本やインターネット上の資料が高齢者が運転を続けるかどうかを判断する助けとなります(AAAの運転能力の評価[Evaluate Your Driving Ability]を参照)。また、高齢ドライバーを心配する家族や友人向けの以下の資料も利用できます。

ほとんどの高齢者は、ときに家族または医師からの助言を得て、運転をやめるべき時期を決定できます。しかし、例えば認知症の多くの患者など、一部のドライバーは、運転能力に対する認識が欠けており、医師がやめるように勧めても運転を続ける場合があります。このような場合の手段の1つは、自動車運転リハビリテーション専門家または運転免許証の交付を監督もしくは規制する州当局による試験を受けるよう、高齢ドライバーに勧めることです。

医師が高齢ドライバーに対して懸念を抱いた場合は、しばしば自動車運転リハビリテーション専門家に紹介します。そのような専門家は多くの場合作業療法士で、医学的問題のあるドライバーに対して包括的な運転評価およびリハビリテーションを提供します。病院または大学にいることが多いですが、民間のクリニックにいる場合もあります。彼らは安全面からのドライバーの評価、車の改良または補助装置の設置、移動に関するカウンセリングまたは代替移動手段に関するアドバイスをすることができます。米国作業療法学会(American Occupational Therapy Association)のウェブサイトには、自動車運転リハビリテーションサービスに関する情報が掲載されています。

ドライバーが自動車運転リハビリテーション専門家の診察を受け、推奨される変更を行った後に、医師から州の運転免許を扱う機関による再試験を受けることが求められる場合があります。再試験は、ドライバー本人や近親者からリクエストすることもできます。この試験では、視力検査と筆記試験が行われ、実技試験を行う場合もあります。

運転免許に関する各州の規制は様々です。例えば、一部の州では、運転免許を維持するために、州の運転免許を扱う当局による実技試験を再度受けなければなりません。医師に対して特定の病気や安全上の懸念のあるドライバーを報告するよう求める州の規制も様々です。安全でないと思われるドライバーの報告を医師に求める州もあれば、運転上の懸念がある高齢ドライバーについてその家族が内々に報告する仕組みがある州もあります。居住している州に特有の規制については、州の運転免許を扱う部局(陸運局など)に連絡することが重要です。高齢者による運転免許証の保有や更新を規制する法律も、国により様々です。

危険運転の警戒すべき徴候

高齢ドライバーとその家族は、運転を続けても安全かどうかを判断する際に、以下の点について考慮に入れるとよいかもしれません。

  • 運転中に道に迷う、運転中に目的地を忘れる、またはいつもの車での外出からの帰りが遅い

  • 友人もしくは家族が運転を心配する、または同乗を避けている

  • 最近、運転中にひやりとすることが増加している

  • 他の車が見えにくかったり、交通標識を見落としたり反応できなかったりする

  • 交通渋滞時、交通量の多い交差点にさしかかったとき、または左折時【訳注:日本では右折に相当】に不安がある

  • 運転速度が遅すぎるか早すぎる

  • 他のドライバーの速度が速いと感じる

  • 自動車の運転はストレスが多い、または疲れると感じる、あるいは運転中に腹を立てたり混乱したりする

  • 対向車のヘッドライトまたは街灯のぎらつく光にイライラする

  • ハンドルを切る、ペダルを踏む、バックするときに振り返る、縁石を避ける、車線内を走行する、または駐車することが困難である

  • アクセルとブレーキを間違えることがある

  • 過去1年間に自身の過失で事故を起こした、または車の運転時に警官に呼び止められたことがある

  • 過去1~2年間に転倒したことがある

  • 運転中の判断が遅れる、または誤った判断を下す

  • ときにミラーもしくは信号を見忘れる、または対向車線の確認を怠る

高齢ドライバーとその家族は、これらの事柄について思い当たる場合は、主治医に相談するか、または運転の安全性を向上させる方法について、自動車運転リハビリテーション専門家に相談するとよいでしょう。

さらなる情報

役立つ可能性がある英語の資料を以下に示します。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。

  • 米国自動車協会(AAA):高齢ドライバーの安全と移動(American Automotive Association:AAA: Senior Driver Safety and Mobility):高齢者のための運転の自己評価、利用可能な自動車の安全機能、運転免許に関する法律などの情報を提供

  • 米国自動車協会(AAA):カー・フィット(CarFit):安全性を向上させるために個人の車をどのように「フィット(調整)」させるのが最善かについての情報を提供

  • 米国自動車協会(AAA):RoadWise Driver:運転能力に影響を与える様々な加齢に伴う変化に高齢者が順応するのを支援することに重点を置いた、高齢者の安全運転プログラム

  • 米国自動車協会(AAA):運転能力の評価 (Evaluate Your Driving Ability):運転評価に関する情報や、自分で評価を行うにはどうすればよいか、専門家による運転評価はどこで受けられるかなどの情報を提供

  • 全米退職者協会(AARP):ドライバー安全プログラム(American Association of Retired Persons:AARP:Driver Safety Program):運転評価およびドライバーリフレッシュプログラムに関する情報を提供

  • 全米退職者協会(AARP):話し合いの必要性(We Need to Talk):高齢ドライバーの家族および介護者を対象とした、運転の制限または中止を考慮するためのアプローチ方法に関する情報を提供

  • アルツハイマー協会:認知症と運転(Alzheimer's Association: Dementia and Driving):認知症患者が最終的に運転をやめる方法を計画するのに役立つ情報源

  • MyCarDoesWhat.org:自家用車に搭載されている自動車の安全機能を理解するための情報

  • 米国作業療法学会:自動車運転リハビリテーションプロバイダを見つける(American Occupational Therapy Association:Find a Driving Rehabilitation Provider):運転リハビリテーションサービスの検索に関する情報を提供

  • USAging:移動手段(Transportation):運転をやめた人に移動手段の選択肢に関する情報を提供

  • 米国道路交通安全局:高齢ドライバーを理解する(National Highway Traffic Safety Administration:Understanding Older Drivers):高齢ドライバーの家族と介護者が自動車運転行動について高齢ドライバーと話し合う方法、また運転の制限または中止を考慮するために高齢ドライバーにアプローチする方法に関する情報を提供

  • ハートフォード(Hartford):岐路に立って:アルツハイマー病、認知症および運転についての家族会議(At the Crossroads: Family Conversations About Alzheimer’s Disease, Dementia & Driving):高齢ドライバーが運転をやめるのをいつどのように助けるべきかについての、高齢者、家族、および介護者のための情報を提供

  • エルダーケア・ロケーター(Eldercare Locator):高齢者とその介護者に向けたサービスに関する情報を提供

  • 米国食品医薬品局(FDA):運転と相性が悪い薬(Food and Drug Administration:FDA:Some Medicines and Driving Don't Mix

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