(潜水による障害の概要 潜水による障害の概要 深い海に潜るダイビングやスキューバダイビングには、いくつかの障害のリスクが伴い、そのほとんどは圧力の変化によって引き起こされます。同様の障害は、海底トンネルの工事や、ケーソン(防水の箱型の構造物で、建設現場などで使用します)内で作業する人にも起こります。水の浸入を防ぐために、海底トンネルやケーソンでは気圧を高くしているからです。... さらに読む も参照のこと。)
浸水性肺水腫はこの20年間でより広く認識されるようになりました。脚と腹部からの血液が肺に再分配されることで肺の血管の内圧が上昇し、血漿が肺の中に漏れ出すことで生じます。これは通常、水面を泳ぐオープンウォータースイミングの競技選手にみられますが、ダイバーにもみられることがあります。浸水性肺水腫は 肺の圧外傷 肺の圧外傷 圧外傷は圧力の変化によって、体の様々な部位に存在する気体が圧縮されたり、膨張したりすることで起こる組織の障害です。 肺、消化管、潜水用フェイスマスクで覆われた顔の一部、眼、耳、副鼻腔が侵される可能性があります。 症状は様々で、呼吸に関連するもの、胸痛( 肺の圧外傷)、眼の充血( マスクの圧外傷)、回転性めまい、耳の痛み( 耳の圧外傷)、顔面痛や鼻血( 副鼻腔の圧外傷)などがあります。... さらに読む や 減圧症 減圧症 減圧症は、高圧環境下で血液や組織中に溶けていた窒素が、減圧に伴い気泡をつくる状態です。 症状には疲労感、筋肉や関節の痛みがあります。 重症の場合、症状は脳卒中の症状に似ており、しびれ、ピリピリ感、腕や脚の筋力低下、ふらつき、回転性めまい(目が回る)、呼吸困難、胸痛などがみられます。 酸素と 再圧(高気圧酸素)療法で治療します。 ダイビング深度、ダイビング時間、浮上速度を制限することが予防に役立ちます。 さらに読む とは関係ありません。危険因子は冷水、 高血圧 高血圧 高血圧とは、動脈内の圧力が恒常的に高くなっている状態のことです。 高血圧の原因は不明のことも多いですが、腎臓の基礎疾患や内分泌疾患によって起こる場合もあります。 肥満、体を動かさない生活習慣、ストレス、喫煙、過度の飲酒、食事での過剰な塩分摂取などはすべて、遺伝的に高血圧になりやすい人の高血圧の発症に何らかの形で関与しています。... さらに読む の病歴や、その他の心血管疾患です。
たいていの場合、ダイバーは急いで浮上し、息切れを起こします。泡状のたんや血たんを伴うせきがよくみられ、血液中の酸素レベルが低くなります。
診断を確定するには、胸部X線検査または心エコー検査などの検査を行います。
治療としては、水から引き上げることと酸素吸入があげられます。利尿薬や、入院して 人工呼吸器 人工呼吸器 人工呼吸器は、肺への空気の出入りを補助するために用いる機械です。 呼吸不全の患者の一部は、人工呼吸器(肺に出入りする空気の流れを補助する機械)による呼吸の補助を必要とします。人工呼吸器によって命が助かることもあります。 人工呼吸器には、多くの使い方があります。通常は、合成樹脂製のチューブを鼻または口から気管に挿入します。人工呼吸器が数日以上必要な場合は、首の前側を小さく切開して(気管切開)、気管に直接チューブを通すこともあります。人工呼... さらに読む を装着することが必要になる場合もあります。再圧治療は行いません。
予防
医師は浸水性肺水腫にかかったことのある人に対して以下のスクリーニングを行います。
肺疾患
医師は、十分な危険因子がある人では、無症候性冠動脈疾患についても検討します。
浸水性肺水腫になりやすい人では、浸水性肺水腫が再発する傾向があるため、そのような人は、ダイビングや競泳に復帰する前に治療可能な危険因子について評価を受けるべきです。
さらなる情報
以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。
ダイバーズアラートネットワーク(Divers Alert Network):24時間緊急ホットライン、+1-919-684-9111
デューク潜水医学(Duke Dive Medicine):医師による24時間救急相談、+1-919-684-8111