頭蓋内血腫

執筆者:Gordon Mao, MD, Indiana University School of Medicine
レビュー/改訂 2021年 6月
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頭蓋内血腫は、頭蓋内(脳の内部、または脳と頭蓋骨の間)に血液がたまった状態を指します。

  • 頭部外傷によって脳の内部、または脳と頭蓋骨の間に血液がたまって生じます。

  • 脳のどの領域が損傷を受けているかに応じて、しつこい頭痛、眠気、錯乱、記憶障害、脳の損傷部位と反対側の体の麻痺、発話や言語能力の障害などの症状が現れます。

  • 頭蓋内血腫はCT検査やMRI検査によって発見されます。

  • 血腫から血液を抜き取る手術が必要になる場合もあります。

頭蓋内血腫は通常、 頭部外傷が原因で起こりますが、ときに自然出血によって起こることもあります。頭蓋内血種には次のようないくつかの種類があります。

  • 硬膜外血腫は、頭蓋骨と硬膜(脳を覆う髄膜の一番外側にある層)との間に生じます。

  • 硬膜下血腫は、硬膜とくも膜(髄膜の真ん中の層―図「脳の構造」を参照)との間に生じます。

  • 脳内血腫は、脳の内部に生じます。

頭部外傷後に、くも膜と、髄膜の最も内側の層(軟膜)との間にも出血が起こることがあります。この部位の出血をくも膜下出血といいます。ただし、くも膜下の血液が1カ所にたまることは普通はないため、くも膜下出血は血腫とみなしません。

アスピリンや抗凝固薬を服用している人(出血のリスクが高くなる)、特にそのような高齢者では、軽い頭部外傷でも血腫が発生するリスクが増加します。脳内血腫くも膜下出血は、脳卒中が原因で生じることもあります。

硬膜外血腫と脳内血腫の大半、また、硬膜下血腫の多くは急激に発症して、数分以内に症状が現れます。大きな血腫は脳を圧迫して、脳の腫れや脳ヘルニアを引き起こします。ヘルニアが起こると、意識消失、昏睡、体の片側あるいは両側の麻痺、呼吸困難、心拍数の低下が生じ、死に至ることもあります。

血腫(特に硬膜下血腫)がゆっくりと発生することもあり、その場合は徐々に錯乱と記憶障害が現れますが、高齢者では特にこの傾向がよくみられます。これらの症状は認知症の症状と似ています。人によっては頭部外傷を負ったことを覚えていないこともあります。

頭蓋内血腫の診断は通常、CT検査の結果に基づいて下されます。

頭蓋内血腫の治療は、血腫の種類や大きさ、脳内の圧力がどの程度高まったかによって異なります。

脳を覆っている組織

脳は頭蓋骨の内部で、髄膜と呼ばれる以下の3層からなる組織に覆われています。

  • 硬膜(外側の層)

  • くも膜(中間の層)

  • 軟膜(内側の層)

くも膜下腔とは、くも膜と軟膜の間の空間のことで、この空間は髄液で満たされています。髄液は髄膜の間を流れるほか、脳の内部も満たしており、脳と脊髄のクッションとして機能します。

硬膜外血腫

硬膜外血腫は、頭蓋骨と、脳を覆う髄膜の一番外側の層との間にある動脈や太い静脈(静脈洞)からの出血が原因で起こります。出血の多くは、頭蓋骨骨折により血管が破れたことで起こります。

頭蓋内の血腫

頭部外傷により、頭蓋内に出血することがあります。その結果、頭蓋骨と、脳を覆う組織(髄膜)の一番外側にある層(硬膜)との間に血液がたまることがあります。これを硬膜外血腫といいます。また、髄膜の一番外側の層と、真ん中の層との間に血液がたまることもあります。これを硬膜下血腫といいます。

外傷の直後あるいは数時間後に重度の頭痛が起こります。ときには頭痛がいったん治まり、数時間後にさらに悪化してぶり返すこともあります。その後すぐに錯乱、眠気、深い昏睡などの意識状態の悪化がみられることがあります。なかには、頭部外傷により意識を失った後に、いったん意識が戻って一時的に精神機能が回復し(意識清明期)、その後再び意識障害が生じるケースもあります。損傷を受けた脳の領域に応じて、血腫とは反対側の体の麻痺、発話や言語能力の障害などの症状が現れます。

硬膜外血腫は早期診断が重要であり、通常はCT検査の結果に基づいて下されます。

医師は、硬膜外血腫の診断を確認すると同時に治療を開始します。永続的な損傷を防ぐには迅速な治療が必要です。通常、余分な血液を排出するために、頭蓋骨にドリルで少なくとも1つの穴があけられます。外科医は同時に出血部位を探して止血します。

硬膜下血腫

硬膜下血腫は一般に、脳を覆っている髄膜の一番外側の層と真ん中の層との間にある架橋静脈などの静脈からの出血が原因で起こります。まれに、動脈からの出血が原因で硬膜下血腫が起こることもあります。

硬膜下血腫は以下のように分類されます。

  • 急性:外傷後数分から数時間で症状が現れる

  • 亜急性:数時間から数日かけて症状が現れる

  • 慢性:数週間、数カ月または数年かけて徐々に症状が現れる

急性または亜急性硬膜下血腫は、重症の頭部外傷後の急速な出血によって引き起こされることがあります。急性硬膜下血腫は、しばしば転倒・転落または自動車の衝突時に発生する頭部外傷によって引き起こされます。また、脳に打撲(脳挫傷)または硬膜外血腫がある人に発生することもあります。

急性硬膜下血腫は、脳の腫れをもたらす可能性があります。血腫と腫れにより、頭蓋骨内の圧力(頭蓋内圧)が上昇し、それにより症状が悪化し、死に至るリスクが高まることがあります。

慢性硬膜下血腫は、アルコール依存症患者、高齢者、血栓をできにくくする薬(抗凝固薬または抗血小板薬)を服用している人によくみられます。アルコール依存症患者や高齢者は転倒しやすい上に出血が起こりやすく、軽度から中等度の頭部外傷を負っても気にしなかったり、忘れてしまったりすることがあります。こうした外傷から小さな硬膜下血腫が生じ、慢性化します。

明らかな症状が現れる頃には、慢性硬膜下血腫が非常に大きくなっていることもあります。慢性の血腫が、頭蓋骨内の圧力の急激な上昇を引き起こす可能性は、急性の血腫の場合ほど高くありません。

高齢者は脳がやや萎縮していることにより架橋静脈が引っ張られているため、たとえ軽い外傷でも架橋静脈が断裂しやすくなっています。また、脳が萎縮していることで出血している架橋静脈に圧力がかかりにくくなるため、出血が長引く傾向があり、出血量が多くなります。

硬膜下血腫の後に残る血液は、ゆっくり吸収されます。血腫の血液が吸収された後も、高齢者では若い人のように順調に脳が元の大きさまで戻りません。その結果、液体がたまる空間が残ります(ヒグローマ)。細い血管が破れて出血を繰り返し、ヒグローマに再度血液がたまって大きくなることがあります。

知っていますか?

  • 認知症のような症状がある高齢者では、認知症ではなく硬膜下血腫が生じていることがあり、硬膜下血腫であれば、効果的に治療できます。

硬膜下血腫の症状

硬膜下血腫の症状としては、持続する頭痛、変動する眠気、錯乱、記憶障害、血腫とは反対側の体の麻痺、発話や言語能力の障害などがあります。損傷を受けた脳の領域によっては、このほかの症状が出ることもあります。

乳児は頭蓋骨が軟らかいため、硬膜下血腫ができると(水頭症のように)頭部が膨らみます。そのため乳児では、年長の小児や成人ほど頭蓋内圧は上昇しません。

硬膜下血腫の診断

  • CTまたはMRI検査

慢性硬膜下血腫は、外傷を受けてから症状が現れるまでの期間が長いため、診断が難しくなります。高齢者で、記憶障害や眠気などの症状が徐々に現れた場合には、認知症と誤解されることもあります。

CT検査は急性や亜急性の硬膜下血腫、また、多くの慢性硬膜下血腫を発見できます。MRI検査は慢性硬膜下血腫を特に正確に診断できます。

硬膜下血腫の治療

  • 小さな血腫では、しばしば治療は不要

  • 大きな血腫では、手術による排液

成人の小さな硬膜下血腫では、血腫内の血液が自然に吸収されるため、多くは治療の必要がありません。

もしも硬膜下血腫が大きく、持続する頭痛、変動する眠気、錯乱、記憶障害、血腫と反対側の体の麻痺などの症状がある場合は、血腫から外科的に血液を排出します。この手術はドリルで頭蓋骨に小さな穴をあけて行うこともありますが、出血が最近起こったものである場合や、小さな穴から吸い出せないほど血液の粘性が高い場合は、頭蓋骨にもっと大きな穴をあけなければならないこともあります。硬膜下血腫は再発するおそれがあるため、手術中にドレーン(排液用のチューブ)を挿入し、数日間そのままにしておきます。再発がないか、注意深く患者をモニタリングします。

乳児の場合は、頭部が膨らんで見た目に気になるという理由から、血腫の血液を抜き取ります。

大きな急性硬膜下血腫がある場合の生存率は、治療を受けた人でも約50%に過ぎません。慢性硬膜下血腫の場合は、治療によって症状が改善されるか、あるいはそれ以上悪化しなくなります。

脳内血腫

脳内血腫は、重度の頭部外傷を負ったときによく生じます。 脳内血腫の原因は脳挫傷(脳本体に生じた損傷)です。脳挫傷が厳密にどの時点をもって血腫になるかについては、明確な定義がありません。

脳のどの領域が損傷を受けているかに応じて、眠気、錯乱、血腫とは反対側の体の麻痺、発話や言語能力の障害などの症状が現れます。

損傷を受けた脳の内部には、体液が蓄積すること(脳浮腫)がよくあります。この体液の蓄積が、頭蓋骨内の圧力(頭蓋内圧)を上昇させます。頭蓋骨内の圧力が高くなると、脳は十分な血液や酸素を受け取れなくなることがあります。 圧があまりに高くなると、脳の各部分を仕切っている比較的硬い組織の壁にある小さな穴から脳が押し出されることがあります(脳ヘルニア)。脳浮腫とその合併症が死因のほとんどを占めています。

脳内血腫はCTまたはMRI検査によって見つけることができます。

通常は以下の理由で手術は避けられます。

  • 脳内血腫は脳への直接的な損傷に起因する。

  • 通常、手術によって脳機能は回復しない。

  • 血腫が脳組織内部にある。そのため、医師は血腫に到達するのにその上にある脳を除去しなければならない。こうした組織を除去することは脳機能の喪失につながる。

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