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甲状腺機能亢進症
(甲状腺中毒症)
甲状腺機能亢進症は,代謝亢進および血清遊離甲状腺ホルモンの上昇を特徴とする。症状は多数あり,頻脈,疲労,体重減少,神経過敏,振戦などを呈する。診断は臨床的に行い,甲状腺機能検査を用いる。治療は原因により異なる。
甲状腺機能亢進症は,甲状腺放射性ヨード摂取率および血中の甲状腺刺激物質の有無に基づいて分類できる( 様々な臨床状態における甲状腺機能検査の結果)。
病因
甲状腺機能亢進症は,血中の甲状腺刺激物質または自律的な甲状腺機能亢進が原因で,甲状腺での甲状腺ホルモン(サイロキシン[T4]およびトリヨードサイロニン[T3])の合成と分泌が亢進した結果生じる。また,合成の亢進がない状態での甲状腺からの甲状腺ホルモン過剰放出によっても引き起こされる。このような放出は一般に様々な甲状腺炎の破壊的変化によってもたらされる。多様な臨床症候群も甲状腺の機能亢進を引き起こす。
全体として,最も頻度の高い原因には以下のものがある:
グレーブス病(中毒性びまん性甲状腺腫)は甲状腺機能亢進症の最も一般的な原因であり,甲状腺機能亢進症および以下の1つ以上を伴うことを特徴とする:
グレーブス病は,甲状腺の甲状腺刺激ホルモン受容体に対する自己抗体により引き起こされる;大半の自己抗体が抑制性であるのに対し,この自己抗体は刺激抗体であるため,過剰なT4およびT3が持続的に合成され分泌される。グレーブス病は(橋本甲状腺炎と同様に),ときに1型糖尿病,白斑,若年性白髪,悪性貧血,結合組織疾患,多腺性機能不全症候群など他の自己免疫疾患を伴うことがある。遺伝はグレーブス病のリスクを高めるが,関与する遺伝子は依然として不明である。infiltrative ophthalmopathy(グレーブス病の眼球突出の原因)の発生機序は解明が進んでいないが,眼窩の線維芽細胞および脂肪のTSH受容体に対する免疫グロブリンが,炎症性サイトカインの放出,炎症,およびグリコサミノグリカンの蓄積をもたらすことに起因する可能性がある。ophthalmopathyは甲状腺機能亢進症の発症前に起こることもあれば20年後に起こることもあり,甲状腺機能亢進症の臨床経過とは独立して悪化また改善することが多い。甲状腺機能が正常な状態で典型的なophthalmopathyがみられる場合,euthyroid グレーブス病と呼ばれる。
TSH分泌異常が原因となることはまれである。甲状腺機能亢進症患者のTSHは基本的に検出不能であるが,TSHを分泌する下垂体前葉腺腫を有する患者や下垂体が甲状腺ホルモンに抵抗性を示す患者は例外である。TSHは高値であり,両疾患で産生されるTSHは正常TSHに比べて生物学的活性が高い。TSH分泌性下垂体腺腫の患者では,血中TSHのα-サブユニットが増加する(鑑別診断に有用)。
胞状奇胎妊娠,絨毛癌,および妊娠悪阻では,弱い甲状腺刺激物質であるヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)の血清中濃度が上昇する。hCGは妊娠中の第1トリメスターに最大値に達し血清TSHを低下させ,また同時に血清遊離T4の軽度上昇がときに観察される。甲状腺刺激の亢進は,部分的に脱シアル酸化されたhCGの濃度上昇によって引き起こされている可能性があり,この変異型hCGはシアル酸化されたhCGよりも強い甲状腺刺激物質であると考えられる。胞状奇胎妊娠,絨毛癌,および妊娠悪阻に伴う甲状腺機能亢進症は一過性であり,胞状奇胎の娩出,絨毛癌の適切な治療,または妊娠悪阻の緩和により正常な甲状腺機能が回復する。
常染色体優性遺伝の非自己免疫性甲状腺機能亢進症は乳児期に発現する。これは持続的な甲状腺刺激をもたらすTSH受容体遺伝子の突然変異が原因である。
単結節性または多結節性の中毒性甲状腺腫(プラマー病)はときに,TSH受容体遺伝子の突然変異が甲状腺の持続的な活性化を引き起こすことにより生じる。中毒性結節性甲状腺腫の患者には,グレーブス病患者にみられる自己免疫症状や血中抗体はみられない。また,グレーブス病とは対照的に,単結節性および多結節性の中毒性甲状腺腫は通常寛解しない。
炎症性甲状腺疾患(甲状腺炎)には,亜急性肉芽腫性甲状腺炎,橋本甲状腺炎,および橋本甲状腺炎の亜型である無痛性リンパ球性甲状腺炎などがある( 無痛性リンパ球性甲状腺炎)。合成亢進ではなく,甲状腺の破壊的な変化および貯蔵ホルモンの分泌により甲状腺機能亢進症が引き起こされる。甲状腺機能低下症が引き続き起こることもある。
薬物性の甲状腺機能亢進症は,甲状腺機能亢進症を伴う甲状腺炎や他の甲状腺疾患を誘発するアミオダロンおよびインターフェロンαにより生じる可能性がある。リチウムは,甲状腺機能低下症を引き起こすことの方が多く,甲状腺機能亢進症を引き起こすことはまれである。これらの薬剤を投与する場合,患者を注意深くモニタリングすべきである。
作為的甲状腺中毒症は意識的または偶発的な甲状腺ホルモンの過剰摂取によってもたらされる甲状腺機能亢進症である。
過剰なヨード摂取は甲状腺放射性ヨード摂取率の低下を伴う甲状腺機能亢進症を引き起こす。これは,ヨードを含有する薬物(例,アミオダロン,ヨード含有去痰薬)の投与を受けているか,またはヨードを多量に含む造影剤を用いた放射線学的検査を受けている,基礎に非中毒性結節性甲状腺腫のある患者(特に高齢患者)でしばしば発生する。病因は,過剰なヨードが機能的に自律した(すなわちTSHの調節下にない)甲状腺領域に,ホルモン産生のための基質を供給することによると考えられる。通常,循環血液中に過剰なヨードが残存する限り,甲状腺機能亢進症は持続する。
転移性甲状腺癌も考えられる原因である。機能性の転移性濾胞癌,特に肺転移が甲状腺ホルモンを過剰に産生することがまれにある。
卵巣甲状腺腫は,卵巣奇形腫が真の甲状腺機能亢進症を引き起こせるだけの十分な甲状腺組織を含んでいる場合に生じる。放射性ヨードの取り込みが骨盤でみられ,甲状腺による取り込みは通常は抑制される。
病態生理
症状と徴候
大半の症状および徴候は原因にかかわらず同じである。例外にはinfiltrative ophthalmopathyおよびinfiltrative dermopathyなどがあり,これらはグレーブス病でのみ生じる。
臨床像は劇的なこともあれば軽微なこともある。甲状腺腫または結節が認められる場合がある。甲状腺機能亢進症に一般的な症状の多くはアドレナリン過剰症状に類似しており,神経質,動悸,多動,多汗,暑さに対する過敏性,疲労,食欲亢進,体重減少,不眠症,筋力低下,および頻回の排便(ときに下痢)などがみられる。過少月経を呈することもある。徴候には,温かく湿った皮膚,振戦,頻脈,脈圧開大,心房細動,動悸などが含まれる。
高齢患者,特に中毒性結節性甲状腺腫がある患者は,抑うつや認知症により近い非定型的な症状を呈することがある(無関心または潜在性の甲状腺機能亢進症)。大半には眼球突出や振戦はみられない。心房細動,失神,意識状態の変化,心不全,および筋力低下などの症状がみられる可能性がより高い。症状および徴候は単一の器官系にのみ関与していることがある。
眼徴候には凝視,眼瞼遅滞(eyelid lag),眼瞼後退,結膜の軽度充血などがあり,主にアドレナリン刺激過剰によるものである。これらの徴候は治療の成功とともに通常は寛解する。infiltrative ophthalmopathyはより重篤な状態であり,グレーブス病に特異的で,甲状腺機能亢進症の何年も前または後に生じる可能性がある。特徴としては,眼窩痛,流涙,刺激感,羞明,後眼窩組織の増殖,眼球突出,外眼筋へのリンパ球浸潤があり,このリンパ球浸潤はしばしば複視に至る眼筋の筋力低下をもたらす。
infiltrative dermopathyは脛骨前粘液水腫(粘液水腫は甲状腺機能低下症を示唆するため紛らわしい用語である)とも呼ばれ,特徴としてタンパク性基質による圧痕の生じない浸潤を通常は前脛骨部に認める。グレーブス眼症がない状態で発現することはまれである。病変は初期にしばしばそう痒および紅斑を伴い,徐々に硬く腫れ上がる。infiltrative dermopathyは甲状腺機能亢進症の何年も前または後に発現することがある。
甲状腺クリーゼ
甲状腺クリーゼは,甲状腺機能亢進症の急性型であり,未治療または治療が不十分な重度甲状腺機能亢進症に起因する。甲状腺クリーゼはまれであり,グレーブス病患者または多結節性の中毒性甲状腺腫患者に生じる(単発性の中毒性結節は比較的まれな原因であり,通常はそれほど重度の症状を引き起こさない)。感染,外傷,外科手術,塞栓症,糖尿病性ケトアシドーシス,または妊娠高血圧腎症によって突然生じる可能性がある。甲状腺クリーゼでは,突然激しい甲状腺機能亢進症状が生じ,発熱,著明な筋力低下および筋萎縮,大きな感情の揺れを伴う極度の不穏,錯乱,精神病症状,昏睡,悪心,嘔吐,下痢,軽度の黄疸を伴う肝腫大の内のいずれかもしくは複数の症状を伴う。心血管虚脱およびショックを来すこともある。甲状腺クリーゼは生命を脅かす緊急事態であり,迅速な治療を必要とする。
診断
診断は病歴,身体診察,および甲状腺機能検査に基づく。病因がTSH分泌型の下垂体腺腫または甲状腺ホルモンによる正常な抑制に対する下垂体の抵抗性である場合などのまれな例を除いては,甲状腺機能亢進症患者のTSHは抑制されているため,血清TSH測定が最良の検査である。特定の集団を対象としたTSH濃度のスクリーニングを行う必要がある( 甲状腺機能の概要 : 甲状腺機能の臨床検査)。甲状腺機能亢進症では遊離T4が上昇する。しかし,重度の全身疾患がある患者,およびT3中毒症においては,真の甲状腺機能亢進症でありながらT4が見かけ上正常範囲内となることがある(重度全身疾患の場合はeuthyroid sick syndromeで生じる偽性低値に類似)。甲状腺機能亢進症の軽微な症候が認められる患者で遊離T4値が正常範囲内かつTSHが低値の場合は,血清T3を測定してT3中毒症を検出すべきであり,高値であれば診断が確定する。
原因はしばしば臨床的に診断できる(例,薬物への曝露,グレーブス病に特異的な徴候の存在)。そうでなければ,123Iを使用し甲状腺の放射性ヨード摂取率を測定する方法もある。甲状腺機能亢進症がホルモン過剰産生による場合は,甲状腺の放射性ヨード摂取率は通常上昇する。甲状腺機能亢進症が甲状腺炎,ヨード摂取,または異所性ホルモン産生による場合は,放射性ヨード摂取率は低下する。
グレーブス病検出のためTSH受容体抗体を測定してもよいが,新生児グレーブス病のリスク評価のために第3トリメスターで測定する場合を除いて測定を必要とすることはまれである;TSH受容体抗体は容易に胎盤を通過し胎児の甲状腺を刺激する。グレーブス病患者のほとんどに血中抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体がみられ,より少数に抗サイログロブリン抗体が認められる。
不適切なTSH分泌はまれである。血中遊離T4およびT3の上昇,ならびに血清TSH値正常または上昇が甲状腺機能亢進症とともに認められる場合に診断が確定する。
作為的甲状腺中毒症が疑われる場合には,血清サイログロブリンを測定してもよい;血清サイログロブリンは通常,甲状腺機能亢進症の他の全ての原因における場合とは異なり,低値または正常低値を示す。
治療
治療は原因により異なるが,以下のものがある:
チアマゾールおよびプロピルチオウラシル
これらの抗甲状腺薬は甲状腺ペルオキシダーゼを阻害し,ヨードの有機化を抑制し,カップリング反応を減少させる。高用量のプロピルチオウラシルは末梢でのT4からT3への変換も阻害する。グレーブス病患者の約20~50%は,いずれかの薬物を1~2年間使用した後に寛解状態を維持する。甲状腺の大きさが正常まで回復するか著明に縮小する,血清TSH値が正常範囲内に戻る,治療前の甲状腺機能亢進症がさほど重度ではない,などは長期寛解の良好な予後を示唆する徴候である。抗甲状腺薬療法とl-チロキシンの併用によるグレーブス病患者の寛解率向上はみられない。中毒性結節性甲状腺腫が寛解に至ることはまれであるため,抗甲状腺薬療法は外科治療または131I療法の前処置でのみ投与される。
プロピルチオウラシルは,40歳未満の患者の一部,特に小児でみられる重度の肝不全のため,現在では特別な状況(例,第1トリメスター,甲状腺クリーゼ)でのみ推奨されている。チアマゾールが望ましい薬剤である。通常の開始量は,チアマゾールが5~20mg,1日3回経口投与,プロピルチオウラシルが100~150mg,8時間毎経口投与である。T4およびT3の値が正常化すれば,用量を最小有効量(通常チアマゾールで5~15mg,1日1回,プロピルチオウラシルで50mg,1日3回)まで減らす。通常は2~3カ月でコントロールが得られる。プロピルチオウラシルの用量を150~200mg,8時間毎まで増量することによって,より迅速なコントロールが可能となる。このような用量またはさらなる高用量(最大400mg,8時間毎)は,一般的に甲状腺クリーゼ患者などの重症患者における,T4からT3への変換の阻害を目的とした使用に限られる。チアマゾールの維持量を,臨床状態をみながら1年間または数年間継続することがある。欧州で広く用いられているカルビマゾールは,急速にチアマゾールに変換される。通常の開始量はチアマゾールの開始量と同様であり,維持量は5~20mg,1日1回経口投与,2.5~10mg,1日2回,または1.7~6.7mg,1日3回である。
有害作用には発疹,アレルギー反応,肝機能異常(プロピルチオウラシルによる肝不全を含む),および約0.1%の患者にみられる可逆性の無顆粒球症などがある。患者が1つの薬物にアレルギーを示したときには別の薬物に変更してもよいが,交差感受性が生じる可能性がある。無顆粒球症が生じた場合,他の薬剤への変更を行うことはできない;別の治療法(例,放射性ヨード,外科手術)を施行すべきである。
それぞれの薬剤に長所と短所がある。チアマゾールは1日1回の投与のみでよく,アドヒアランスを向上させる。さらに,チアマゾールを40mg/日未満で投与する場合は,無顆粒球症の発症は比較的まれである;プロピルチオウラシルではいかなる用量でも無顆粒球症が起こりうる。チアマゾールは,胎児または乳児の合併症を起こすことなく妊娠中および授乳中の女性に支障なく投与されているが,まれに,新生児の頭皮欠損および消化管異常,およびまれな胎児障害との関連が報告されている。こうした合併症のため,第1トリメスターにはプロピルチオウラシルが使用される。プロピルチオウラシルは甲状腺クリーゼ治療に選択されるが,これは使用用量(800~1200mg/日)にて末梢でのT4からT3への変換が部分的に阻害されるからである。
高用量プロピルチオウラシルと,同じくT4からT3への変換を強力に阻害するデキサメタゾンとの併用は,1週間以内に重度の甲状腺機能亢進症状を緩和し,血清T3値を正常範囲内に戻すことができる。
β遮断薬
アドレナリン刺激による甲状腺機能亢進症の症候はβ遮断薬に反応することがあり,プロプラノロールが最も汎用されているが,アテノロールまたはメトプロロールが望ましい場合もある。
その他の症状は典型的には反応しない。
プロプラノロールは甲状腺クリーゼに適応となる( 甲状腺クリーゼの治療)。経口投与では通常2~3時間以内に,静注では数分以内に急速に心拍数を減少させる。エスモロールは慎重な用量調節およびモニタリングを要するため,ICUで使用されることがある。また,プロプラノロールは甲状腺機能亢進症に伴う頻脈,特に高齢患者での頻脈に適応となるが,これは抗甲状腺薬が十分な効果を発揮するまでに通常数週間を要するからである。β遮断薬が禁忌の患者では,カルシウム拮抗薬により頻拍性不整脈を調節することがある。
ヨウ素
薬理学的用量のヨードは,T3およびT4の放出を数時間以内に抑制しヨードの有機化を阻害するが,数日から1週間持続する一過性の効果であり,その後これらの効果は通常消失する。ヨードは,甲状腺クリーゼの緊急治療や,甲状腺以外の緊急手術を受ける甲状腺機能亢進症患者,甲状腺亜全摘術を行う甲状腺機能亢進症患者に対する術前処置(甲状腺の血管分布を減少させるため)に用いられる。ヨードは一般的に甲状腺機能亢進症の治療ではルーチンには使用しない。通常量は,飽和ヨウ化カリウム溶液2~3滴(100~150mg),1日3回または1日4回経口投与,またはヨウ化ナトリウム0.5~1gを加えた生理食塩水1Lの12時間毎緩徐静注である。
ヨード療法の合併症には,唾液腺の炎症,結膜炎,発疹などがある。
放射性ヨウ化ナトリウム( 131 I,放射性ヨード)
米国では,131Iが甲状腺機能亢進症の最も一般的な治療である。放射性ヨードは,小児を含む全てのグレーブス病患者および中毒性結節性甲状腺腫患者に対する第1選択の治療としてしばしば推奨される。131Iは,甲状腺の反応が予測できないため用量調節が困難である;一部の医師は標準量として8~15mCiを投与する。甲状腺の推定サイズおよび24時間の摂取率に基づいて用量を調節し,甲状腺組織1g当たり80~120μCiの用量を投与する医師もいる。
甲状腺機能の正常化に十分な131Iが投与されると,約25~50%の患者で1年後に甲状腺機能が低下し,その割合は年々上昇を続ける。したがって,大半の患者では最終的に甲状腺機能が低下する。しかし,低用量の場合は再発率が上昇する。10~15mCiといった大量投与では,しばしば6カ月以内に甲状腺機能低下症が生じる。
放射性ヨードは,母乳中に移行して乳児に甲状腺機能低下症を引き起こす可能性があるため,授乳中は使用されない。放射性ヨードは胎盤を通過し,胎児に重度の甲状腺機能低下症を引き起こす可能性があるため,妊娠中は使用されない。腫瘍,白血病,甲状腺癌,過去に甲状腺機能亢進症であった女性がその後妊娠し生まれた小児の先天異常などの発生頻度を,放射性ヨードが増加させるという証拠はない。
手術
外科手術は,抗甲状腺薬治療後に甲状腺機能亢進症が再発したが131Iによる治療を拒否するグレーブス病の患者,抗甲状腺薬に耐えられない患者,非常に大きい甲状腺腫を有する患者,中毒性甲状腺腫および多結節性甲状腺腫を有する一部の若年患者に適応となる。外科手術は巨大結節性甲状腺腫を有する高齢患者で行われることもある。
通常,手術によって正常な機能が回復する。術後の再発率は2~16%と幅がある;甲状腺機能低下症のリスクは,手術の範囲と直接関連している。声帯麻痺および副甲状腺機能低下症はまれな合併症である。甲状腺の血管分布を減少させるため,術前にヨウ化カリウム飽和溶液3滴(約100~150mg),1日3回を10日間経口投与すべきである。ヨード投与前に患者の甲状腺機能を正常化する必要があるため,チアマゾールも投与しなければならない。デキサメタゾンを追加して迅速に甲状腺機能を正常化させることもできる。過去に甲状腺切除術または放射性ヨード治療を受けた患者では,外科処置がより困難になる。
甲状腺クリーゼの治療
甲状腺クリーゼに対する治療レジメンを 甲状腺クリーゼの治療に示す:
甲状腺クリーゼの治療
Infiltrative DermopathyおよびInfiltrative Ophthalmopathyの治療
要点
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甲状腺機能亢進症には多くの原因がある;これらの原因には,正常な甲状腺の過度の刺激(例,TSH,hCG,ヨードまたはヨードを含有する薬剤の摂取による),甲状腺の異常による過度のホルモン合成(例,グレーブス病,一部の甲状腺癌),または甲状腺ホルモンの合成は正常であるが放出が過剰である場合(例,甲状腺炎により)などがある。
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多くの症状および徴候があり,頻脈,疲労,体重減少,神経過敏,および振戦などが含まれる;またグレーブス病患者は,眼球突出およびinfiltrative dermopathyを来す場合もある。
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遊離T4,および/または遊離もしくは総T3が上昇し,TSHは抑制される(ただし,よりまれな例である下垂体性の甲状腺機能亢進症を除く)。
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甲状腺クリーゼ(未治療または治療が不十分な重度の甲状腺機能亢進症に起因する)は,生命を脅かす緊急事態である。
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ホルモン合成はチアマゾール(または特定の症例では,プロピルチオウラシル)により抑制でき,アドレナリン性の症状はβ遮断薬により緩和できる;長期治療では,放射性ヨードによる甲状腺の破壊または手術が必要となる場合がある。
無症候性甲状腺機能亢進症
無症候性甲状腺機能亢進症は,血清遊離T4およびT3が正常範囲内にあり,甲状腺機能亢進の症状を全く呈していないか,わずかにみられる患者における,血清TSH低値の状態である。
無症候性甲状腺機能亢進症は,無症候性甲状腺機能低下症( 無症候性甲状腺機能低下症)と比べるとはるかにまれである。血清TSHが0.1mU/L未満の患者では,心房細動の発生率の上昇(特に高齢患者),骨密度低下,骨折の増加,および死亡率の上昇がみられる。正常範囲をわずかに下回る程度の血清TSHを示す患者はこれらの特徴を呈する可能性は低い。無症候性甲状腺機能亢進症患者の多くはL-チロキシンを使用している;こうした患者では,甲状腺癌がある場合にTSH抑制の維持を目標として治療を行っているのではない限り,用量の減量が最も適切な管理法である。無症候性甲状腺機能亢進症のその他の原因は,臨床的に明らかな甲状腺機能亢進症の原因と同一である。
内因性の無症候性甲状腺機能亢進症患者(血清TSHが0.1mU/L未満),特に心房細動または骨密度低下を呈する患者では治療が適応となる。通常の治療は131Iによる。症状が比較的軽度(例,神経過敏)である場合,抗甲状腺薬療法を試行する価値がある。
* これはプロフェッショナル版です。 *




