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高カルシウム血症
高カルシウム血症とは,血清総カルシウム濃度が10.4mg/dL(2.60mmol/L)を上回るか,または血清イオン化カルシウム濃度が5.2mg/dL(1.30mmol/L)を上回ることである。主な原因には副甲状腺機能亢進症,ビタミンD中毒,癌などがある。臨床的特徴には多尿,便秘,筋力低下,錯乱,昏睡がある。診断は,イオン化カルシウムおよび副甲状腺ホルモンの血清中濃度による。カルシウムの排泄を増加し骨のカルシウム吸収を抑制する治療では,生理食塩水,ナトリウム利尿,パミドロン酸などの薬物が用いられる。
病因
高カルシウム血症は通常は過剰な骨吸収に起因する。高カルシウム血症には多数の原因があるが( 高カルシウム血症の主な原因を参照),最も頻度が高い原因は,副甲状腺機能亢進症および癌である。
高カルシウム血症の主な原因
病態生理
原発性副甲状腺機能亢進症は,1つまたは複数の副甲状腺による副甲状腺ホルモン(PTH)の過剰分泌に起因する全身疾患である。おそらくは,特に非入院患者において,高カルシウム血症の最も頻度の高い原因である。発生率は年齢とともに上昇し,閉経後女性ではさらに高い。頸部放射線照射後30年以上経過した場合にも高い頻度で生じる。家族性および散発性の病型がある。副甲状腺腺腫による家族性のものが,他の内分泌腫瘍を有する患者に生じる( 多発性内分泌腫瘍 (MEN) 症候群)。原発性副甲状腺機能亢進症は,低リン血症および過度の骨吸収を引き起こす。無症候性高カルシウム血症が最も頻度の高い所見であるが,特に長期にわたる高カルシウム血症によって高カルシウム尿症が起きている場合には腎結石症も多くみられる。組織学的検査では,原発性副甲状腺機能亢進症患者の約85%で副甲状腺腺腫が明らかにされるが,腺腫と正常腺との鑑別はときに困難である。症例の約15%が,2腺以上の過形成によるものである。副甲状腺癌は症例の1%未満に発生する。
家族性低カルシウム尿性高カルシウム血症の症候群(FHH)は,常染色体優性形質として遺伝する。大半の症例ではカルシウム感知受容体遺伝子の不活性型変異が関与しており,PTH分泌の阻害に必要となる血清カルシウム濃度が上昇する。引き続いて起こるPTHの分泌によって,腎臓からのリン酸(PO4)排泄が誘発される。持続性の高カルシウム血症(通常は無症候性),ならびにしばしば若い頃から,正常範囲内またはやや高値を示すPTH,低カルシウム尿症,および高マグネシウム血症が認められる。腎機能は正常で,腎結石症はまれである。しかし,重度の膵炎がときに起こる。この症候群は副甲状腺過形成と関連があるが,副甲状腺亜全摘術によって緩和されるものではない。
二次性副甲状腺機能亢進症は,進行した慢性腎臓病において認められることが最も多く,腎臓での活性型ビタミンDの産生低下およびその他の要因により低カルシウム血症が起こり,PTH分泌の慢性刺激に至った場合に生じる。慢性腎臓病に反応して発生する高リン血症も寄与する。一度発症すると,高カルシウム血症が起こるか,またはカルシウム濃度が正常範囲内であることもある。副甲状腺のカルシウム感受性は,著明な腺過形成およびカルシウムのセットポイント(すなわち,PTH分泌を減少させるために必要なカルシウム量)の上昇によって減弱している可能性がある。
三次性副甲状腺機能亢進症では,自律的なPTH分泌過剰が血清カルシウム濃度にかかわらず引き起こされる。三次性副甲状腺機能亢進症は一般に,数年間経過する末期腎臓病の患者のように,二次性副甲状腺機能亢進症が長期間存在する患者に生じる。
癌は,通常は入院患者における,高カルシウム血症の一般的な原因である。いくつかの機序があるが,骨吸収の結果として最終的に血清カルシウムの上昇が生じる。癌の体液性高カルシウム血症(すなわち,骨転移を伴わない,またはごく軽微な骨転移を伴う高カルシウム血症)は,扁平上皮癌,腎細胞癌,乳癌,前立腺癌,および卵巣癌に付随して起こることが最も多い。癌による体液性高カルシウム血症を伴う症例の多くは,以前はPTHの異所性産生が原因とされていた。しかし,このような腫瘍の一部は,骨および腎臓の両方のPTH受容体に結合して破骨細胞性骨吸収など多くのPTH類似作用をもたらすPTH関連ペプチドを分泌する。造血器悪性腫瘍(多発性骨髄腫が最も多いが,ある種のリンパ腫やリンパ肉腫も含む)は,破骨細胞を刺激して骨を再吸収させる一群のサイトカインの産生によって高カルシウム血症を引き起こし,骨溶解性病変,びまん性骨減少,またはその両方をもたらす。高カルシウム血症は,破骨細胞を活性化するサイトカインまたはプロスタグランジンの局所産生,転移性腫瘍細胞による直接的な骨吸収,またはその両方に起因すると考えられる。
ビタミンD中毒は,内因性1,25(OH)2D濃度の高値により引き起こされる場合がある。血清中濃度は固形腫瘍を有する患者の大半で低値となるが,リンパ腫およびT細胞白血病を有する患者では,腫瘍細胞中に存在する1-α-水酸化酵素の調節異常によりときに上昇する。薬理学的用量の外因性ビタミンDは,過度の骨吸収,および腸管からのカルシウム吸収増加をもたらし,高カルシウム血症や高カルシウム尿症を引き起こす( ビタミンD中毒)。
サルコイドーシス,結核,ハンセン病,ベリリウム中毒,ヒストプラズマ症,コクシジオイデス症などの肉芽腫性疾患は,高カルシウム血症や高カルシウム尿症につながる。サルコイドーシスでの高カルシウム血症および高カルシウム尿症は,25(OH)Dから1,25(OH)2Dへの変換が調節されないことが原因とみられ,おそらくはサルコイド肉芽腫内の単核細胞に発現する1-α-水酸化酵素による。同様に,結核および珪肺症を有する高カルシウム血症患者における血清1,25(OH)2D濃度の高値が報告されている。高カルシウム血症およびハンセン病を呈する患者の一部には1,25(OH)2D濃度の低値がみられるため,症例によっては別の機序が高カルシウム血症の原因となっているはずである。
不動状態,特にリスクのある患者の長期床上絶対安静( 高カルシウム血症の主な原因参照)が,骨吸収の加速による高カルシウム血症をもたらす可能性がある。高カルシウム血症は,床上安静開始後数日から数週間で発症する。体重負荷がかかる状態に戻れば高カルシウム血症は迅速に回復する。複数の骨折のある若年成人および骨パジェット病患者は,床上安静時に高カルシウム血症を特に起こしやすい。
乳児の特発性高カルシウム血症(ウィリアムズ症候群— 隣接遺伝子欠失症候群の例)は極めてまれな散発性の疾患であり,顔面形成異常,心血管異常,腎血管性高血圧症,高カルシウム血症を伴う。PTHおよびビタミンDの代謝は正常であるが,カルシウム注入に対するカルシトニンの反応が異常なことがある。
ミルク・アルカリ症候群では,通常,炭酸カルシウム制酸薬を用いた消化不良の自己治療または骨粗鬆症予防の目的で過剰量のカルシウムおよび吸収性アルカリ剤が摂取され,結果として,高カルシウム血症,代謝性アルカローシス,腎機能不全が生じる。消化性潰瘍および骨粗鬆症に効果的な薬物が市販されるようになり,本症候群の発生頻度は大幅に低下している。
症状と徴候
軽度の高カルシウム血症では患者の多くが無症状である。高カルシウム血症の臨床症状には,便秘,食欲不振,悪心・嘔吐,腹痛,イレウスがある。腎濃縮機構の障害は多尿,夜間頻尿,多飲につながる。血清カルシウム濃度が12mg/dL(3.00mmol/L)を上回ると,情緒不安定,錯乱,せん妄,精神病,昏迷,昏睡が起こる可能性がある。高カルシウム血症は,骨格筋の筋力低下を含む神経筋症状を引き起こしうる。腎結石症を伴う高カルシウム尿症がよくみられる。より頻度は低いが,遷延性または重度の高カルシウム血症が,腎石灰化症(腎実質内のカルシウム塩沈着)による可逆的な急性腎不全や不可逆的な腎障害を引き起こす。消化性潰瘍および膵炎が,高カルシウム血症とは関連しない理由により副甲状腺機能亢進症患者に生じることがある。
重度の高カルシウム血症は,心電図でQTc間隔の短縮を引き起こし,特にジゴキシン服用患者では不整脈が生じることがある。18mg/dL(4.50mmol/L)を上回る高カルシウム血症では,ショックや腎不全が生じる場合があり,死に至ることもある。
診断
高カルシウム血症は,血清総カルシウム濃度が10.4mg/dL(2.60mmol/L)を超える,または血清イオン化カルシウムが5.2mg/dL(1.30mmol/L)を超える場合に診断される。この病態はしばしばルーチンの臨床検査スクリーニングで発見される。血清カルシウムは人為的原因で高値となりうる( 高カルシウム血症を引き起こす疾患における臨床検査および臨床所見を参照)。高カルシウム血症は,血清タンパクの低値によって覆い隠される場合もある。タンパクおよびアルブミンが異常である場合,およびイオン化カルシウム高値が臨床所見により(例,高カルシウム血症の症状により)疑われる場合は,血清イオン化カルシウムを測定すべきである。
初期評価
初期評価では,病歴の確認(特に過去の血清カルシウム濃度に関するもの);身体診察;胸部X線;ならびに電解質,BUN,クレアチニン,イオン化カルシウム,PO4,PTH,アルカリホスファターゼ,および血清タンパク免疫電気泳動を含む臨床検査を行うべきである。原因は,95%以上の患者で臨床データおよびこれらの検査から明らかである。この評価で高カルシウム血症の明らかな原因がみられない患者では,インタクトPTHおよび24時間尿中カルシウムを測定すべきである。
無症候性高カルシウム血症が何年もの間存在するか,または数人の家系員にその病態がみられる場合は,FHHである可能性が高くなる。原発性副甲状腺機能亢進症は一般に中年期以降に発症するが,症状出現の数年前から存在する可能性がある。原因が明らかでない場合,血清カルシウム濃度が11mg/dL(2.75mmol/L)未満であれば副甲状腺機能亢進症またはその他の非悪性の原因が示唆されるが,13mg/dL(3.25mmol/L)を上回れば癌が示唆される。
インタクトPTHの濃度測定は,PTH介在性の高カルシウム血症(例,副甲状腺機能亢進症またはFHHにより引き起こされるもの),これはPTH濃度が高値または正常高値である,とその他(PTHとは無関係)の大半の原因とを鑑別する助けになる。原因がPTHと無関係である場合は,濃度は通常20pg/mL未満である。
胸部X線は特に有用であり,結核,サルコイドーシス,珪肺症など大半の肉芽腫性疾患のほか,原発性肺癌や,肩関節,肋骨,胸椎の骨溶解性病変および骨パジェット病病変が明らかになる。
胸部および骨(例,頭蓋骨,四肢)のX線では,二次性副甲状腺機能亢進症の骨への影響も描出される場合があり,これは長期透析患者で最も頻度が高い。嚢胞性線維性骨炎(しばしば原発性副甲状腺機能亢進症による)では,PTHによる過剰刺激によって破骨細胞活性が亢進し,線維性変性,嚢胞形成,および線維性結節形成を伴う骨希薄化を引き起こす。特徴的な骨病変は比較的進行した疾患にのみ認められるため,症状のある患者でのみ骨のX線検査が推奨される。X線検査では典型的に骨嚢胞,頭蓋骨の不均一な外観,指節骨や鎖骨遠位端の骨膜下骨吸収が認められる。
副甲状腺機能亢進症
副甲状腺機能亢進症では,血清カルシウム濃度が12mg/dL(3.00mmol/L)を上回ることはまれであるが,血清イオン化カルシウム濃度はほぼ常に高値を示す。血清PO4濃度が低値であれば,特に腎臓からのPO4排泄増加と組み合わさっている場合,副甲状腺機能亢進症が示唆される。副甲状腺機能亢進症によって骨代謝回転が亢進すると,血清アルカリホスファターゼがしばしば上昇する。インタクトPTHの高値,特に不適切な上昇(すなわち,低カルシウム血症がない状態での濃度上昇)または不適切な正常高値(すなわち,高カルシウム血症があるにもかかわらず)の存在が診断的である。副甲状腺機能亢進症では,尿中カルシウム排泄量は通常正常範囲内または高値である。慢性腎臓病は二次性副甲状腺機能亢進症の存在を示唆するが,原発性副甲状腺機能亢進症も存在する可能性がある。慢性腎臓病患者では,血清カルシウム濃度が高く血清PO4濃度が正常範囲内であれば原発性副甲状腺機能亢進症が示唆され,一方でPO4値が上昇していれば二次性副甲状腺機能亢進症が示唆される。
副甲状腺手術の前に副甲状腺組織の局在を確認する必要性については議論が続いている。高分解能CT(CTガイド下生検および甲状腺静脈還流路血の免疫測定法を併用,または非併用),MRI,高分解能超音波検査,デジタルサブトラクション血管造影,ならびにタリウム201-テクネチウム99スキャンのいずれもが使用されており極めて正確であるが,熟練した外科医が執刀する副甲状腺摘出術の治癒率は通常高く,これらの検査によって改善されてはいない。副甲状腺の画像検査に使用される比較的新しい核医学検査薬であるテクネチウム99セスタミビは,従来の物質よりも高い感度および特異度を有し,孤立性腺腫の同定に有用となりうる。
副甲状腺の初回手術後に副甲状腺機能亢進症が残存または再発した場合には画像検査が必要であり,頸部から縦隔の全域の通常とは異なる部位で異常に機能する副甲状腺が明らかにされることがある。テクネチウム99セスタミビはおそらく最も感度の高い画像検査法である。副甲状腺摘出術を再度実施する前にいくつかの画像検査(テクネチウム99セスタミビに加えて,MRI,CT,または高分解能超音波検査)を用いる必要がときに生じる。
癌
血清カルシウム濃度が13mg/dL(3.00mmol/L)を上回る場合は,副甲状腺機能亢進症以外の高カルシウム血症の原因が示唆される。癌では,尿中カルシウム排泄量は通常正常範囲内または高値である。癌の体液性高カルシウム血症ではしばしば,PTHは低値または検出不能である;PO4もしばしば低値を示す;代謝性アルカローシス,低塩素血症,低アルブミン血症がしばしば認められる。PTHの抑制によって,癌の体液性高カルシウム血症は原発性副甲状腺機能亢進症と鑑別される。また,癌の体液性高カルシウム血症は血清中にPTH関連ペプチドが検出される場合にも診断できる。
多発性骨髄腫は,貧血,高窒素血症,および高カルシウム血症が同時に存在すること,または単クローン性免疫グロブリン血症が存在することにより示唆される。骨髄腫は骨髄検査により確定される。
FHH
ミルク・アルカリ症候群
その他の原因
サルコイドーシスやその他の肉芽腫性疾患,一部のリンパ腫による高カルシウム血症では,1,25(OH)2Dの血清中濃度が高値を示すことがある。ビタミンD中毒も1,25(OH)2D濃度の高値を特徴とする。高カルシウム血症の原因が甲状腺中毒症やアジソン病などの他の内分泌疾患である場合は,基礎疾患の典型的な臨床検査所見が診断確定に役立つ。パジェット病が疑われる場合は,単純X線検査( 骨パジェット病)を最初に実施すると,特徴的な異常が示される場合がある。
高カルシウム血症を引き起こす疾患における臨床検査および臨床所見
治療
血清カルシウムを低下させる戦略には,以下の4つがある:
用いる治療法は高カルシウム血症の程度と原因の両方に依存する。
軽度の高カルシウム血症
軽度の高カルシウム血症(血清カルシウム濃度< 11.5mg/dL[< 2.88mmol/L])で症状が軽い場合は,治療は確定診断まで延期する。診断後に基礎疾患を治療する。症状が顕著であれば,血清カルシウム濃度の低下を目標とした治療が必要である。経口PO4を用いてもよい。これは食事とともに服用すると一部のカルシウムと結合して吸収が妨げられる。開始量はPO4元素250mg(ナトリウム塩またはカリウム塩として),1日4回である。下痢が生じない限り,必要に応じて500mg,1日4回まで増量してもよい。別の治療に,等張食塩水およびループ利尿薬を投与して尿中カルシウム排泄量を増加させる方法がある。有意な高カルシウム血症がある患者では,ほぼ全例で循環血液量が低下しているため,有意な心不全がない限り,まずは等張食塩水1~2Lを2~4時間かけて投与する。約250mL/時の尿量を維持する(1時間毎にモニタリング)ために,必要に応じてフロセミド20~40mgを2~4時間毎に静注する。体液量の減少を回避するための注意が必要である。低カリウム血症および低マグネシウム血症を回避するため,治療中は4時間毎にカリウムおよびマグネシウムをモニタリングし,必要に応じて静脈内投与で補充する。2~4時間で血清カルシウム濃度は低下し始め,24時間以内にほぼ正常範囲まで下がる。
中等度の高カルシウム血症
中等度の高カルシウム血症(血清カルシウム濃度が11.5mg/dL[2.88mmol/L]を上回るが18mg/dL[4.51mmol/L]未満である)は,軽度の高カルシウム血症と同様に等張食塩水やループ利尿薬で治療するか,原因によっては骨吸収を抑える薬物(通常はビスホスホネート系薬剤,カルシトニン,または頻度は低いがプリカマイシンもしくは硝酸ガリウム),コルチコステロイド,またはクロロキンを用いて治療する。
ビスホスホネート系薬剤は破骨細胞を阻害する。これらは通常,癌による高カルシウム血症に対する第1選択薬である。癌による高カルシウム血症には1回量を30~90mgとしてパミドロン酸を静注することがあり,再投与は7日後以降にのみ行う。これにより血清カルシウム濃度が最大2週間低下する。ゾレドロン酸も4~8mgを静注する場合があり,平均で40日間を上回る期間にわたって血清カルシウム濃度を効果的に低下させる。癌関連の高カルシウム血症に対しては,イバンドロン酸4~6mgを静脈内投与できる;約14日間にわたって効果的である。パジェット病および癌による高カルシウム血症の治療には,エチドロン酸7.5mg/kg,1日1回を3~5日間静注する。維持量は20mg/kg,1日1回経口投与であるが,GFRが低値の場合は減量しなければならない。転移性骨疾患または骨髄腫に関連する高カルシウム血症の治療を目的とした,ビスホスホネート系薬剤の静脈内投与の反復使用は,顎骨壊死との関連が報告されている。この所見がゾレドロン酸でより一般的に認められる可能性があることを示唆する報告もある。ゾレドロン酸の投与を受けた患者に腎毒性が報告されている。経口ビスホスホネート系薬剤(例,アレンドロン酸またはリセドロン酸)は,カルシウムを正常範囲内に維持するために投与できるが,高カルシウム血症の迅速な治療には通常使用されない。
カルシトニン(サイロカルシトニン)は,正常では高カルシウム血症に反応して甲状腺のC細胞から分泌される速効性ペプチドホルモンである。カルシトニンは,破骨細胞活性を阻害することによって血清カルシウム濃度を低下させると推定される。用量4~8IU/kgのサケカルシトニンを12時間毎に皮下投与する方法が安全である。作用持続時間が短く,タキフィラキシーが起こり(約48時間後が多い),40%以上の患者では反応がみられないことから,癌関連の高カルシウム血症の治療におけるその有用性は限られている。しかし,サケカルシトニンおよびプレドニゾンの併用によって,一部の癌患者では数カ月間にわたって血清カルシウム濃度を制御できる場合がある。カルシトニンが作用しなくなれば,2日間中止し(その間プレドニゾンは継続)その後再開する。
コルチコステロイド(例,プレドニゾン20~40mg,1日1回経口)は,カルシトリオールの産生,ひいてはカルシウムの腸管吸収を抑制することにより,ビタミンD中毒,乳児特発性高カルシウム血症,およびサルコイドーシスを有する患者の大半において,補助療法として高カルシウム血症のコントロールに役立つ可能性がある。骨髄腫,リンパ腫,白血病,または転移性の癌患者の一部では,プレドニゾン40~60mg,1日1回が必要となる。しかし,このような患者の50%超がコルチコステロイドに反応せず,反応がみられる場合でも数日を要することから,通常は他の治療が必要になる。
リン酸クロロキン500mg,1日1回を経口投与すると,1,25(OH)2D合成が阻害されサルコイドーシス患者の血清カルシウム濃度が低下する。用量依存性の網膜傷害を検出するためにルーチンの眼科検査(例,網膜検査を6~12カ月毎)を必ず実施する。
プリカマイシン25μg/kg,5%ブドウ糖液50mLに溶解し,1日1回,4~6時間かけて静注する方法も癌による高カルシウム血症患者で効果的であるが,他の治療の方が安全であるため,使用されることはまれである。
硝酸ガリウムも癌による高カルシウム血症に効果的であるが,腎毒性があり,臨床での使用経験が限られているという理由でまれにしか使用されない。
重度の高カルシウム血症
重度の高カルシウム血症(血清カルシウム濃度 > 18mg/dL[> 4.50mmol/L]または重度の症状を伴う)には,他の治療に加えて低カルシウム透析液による血液透析が必要となりうる。腎不全患者の重度の高カルシウム血症の是正に完全に満足のいく方法はないが,血液透析がおそらくは最も安全で信頼できる短期治療である。
PO4静注(リン酸二ナトリウムまたはリン酸一カリウム)は,高カルシウム血症が生命を脅かすもので他の方法に反応しない場合と短期血液透析が不可能な場合にのみ用いるべきである。24時間に1gを超えて静注すべきではなく,通常は2日間で1~2回投与すれば,血清カルシウム濃度が10~15日間にわたり低下する。軟部組織の石灰化や急性腎不全が生じることがある。(注:硫酸ナトリウムの静注は,PO4静注より危険性が高く,効果は小さいため,用いるべきではない。)
副甲状腺機能亢進症
副甲状腺機能亢進症の治療は重症度に依存する。
手術適応のない無症候性原発性副甲状腺機能亢進症患者は,血清カルシウム濃度を確実に低値に維持する方法により保存的に治療できる。患者は活動性を維持し(すなわち,高カルシウム血症を増悪させうる不動状態を回避し),低カルシウム食を摂り,水分を大量に摂取して腎結石症の可能性を最小限に抑え,サイアザイド系利尿薬など血清カルシウム濃度を上昇させうる薬剤の使用を避けるべきである。血清カルシウム濃度および腎機能を6カ月毎にモニタリングする。骨密度は12カ月毎にモニタリングする。ただし,無症候性の骨疾患,高血圧,および余命が懸念事項である。骨粗鬆症はビスホスホネート系薬剤により治療する。
手術は,症候性または進行性の副甲状腺機能低下症がみられる患者に対して適応となる。無症候性の原発性副甲状腺機能亢進症患者の手術適応については議論がある。副甲状腺摘出術は,骨密度を上昇させ,QOL関連の症状にわずかに影響する場合があるが,大半の患者では生化学的異常または骨密度に進行性の悪化はみられない。それでもなお,高血圧および余命に関する懸念が残る。以下の状況では,多くの専門家が手術を推奨する:
手術は腺腫様の副甲状腺の切除からなる。PTH濃度は,異常が推定される副甲状腺の切除の前後に,迅速測定を用いて測定できる。腺腫の切除から10分後に50%以上低下した場合は,治療が成功したことを意味する。複数の副甲状腺病変がみられる患者の場合は,いくつかの副甲状腺を切除するとともに,しばしば,副甲状腺機能低下症を予防するため,正常に見える副甲状腺の小片を胸鎖乳突筋の筋腹内または前腕の皮下に移植する。持続性副甲状腺機能低下症が発症した場合に後日自家移植ができるように,副甲状腺組織の凍結保存もときに実施される。
副甲状腺機能亢進症が軽度であれば,血清カルシウム濃度は術後24~48時間以内に正常範囲の直下まで低下する;血清カルシウム濃度をモニタリングする必要がある。重度の嚢胞性線維性骨炎患者では,術前の数日間にカルシウム元素10~20gが投与されない限りは遷延性で症候性の低カルシウム血症が術後に生じうる。術前にカルシウムを投与しても,骨カルシウムが不足している間は大量のカルシウムやビタミンDが必要になる可能性がある( 低カルシウム血症 : 治療)。
腎不全での副甲状腺機能亢進症は通常二次性である。治療に使用する方法は予防にも使用できる。目標の1つは高リン血症の予防である。治療法は,食事性PO4の制限と炭酸カルシウムまたはセベラマーなどのPO4吸着剤の組み合わせである。PO4吸着剤を使用しても食事からのPO4摂取制限は必要となる。アルミニウム含有化合物は,PO4濃度を制限するために使用されているが,重度の骨軟化症を来す骨へのアルミニウム蓄積を防ぐために避けるべきである(特に長期透析患者において)。ビタミンDの投与はPO4の吸収を促進し,高カルシウム血症に寄与する恐れがあるため,腎不全では有害となる恐れがある;投与する場合には,カルシウムおよびPO4の頻繁なモニタリングが必要である。治療は以下のいずれかが認められる患者に制限すべきである:
二次性副甲状腺機能亢進症を抑制するために経口カルシトリオールが経口カルシウムとともにしばしば投与されるが,末期腎臓病患者での成績は様々である。非経口投与用のカルシトリオール,またはパリカルシトールなどのビタミンD誘導体の方がこのような患者の二次性副甲状腺機能亢進症の予防に優れており,これはより高い血清中濃度の1,25(OH)2DがPTHの放出を直接抑制するからである。単純性骨軟化症はカルシトリオール0.25~0.5μg,1日1回経口投与に反応しうるが,副甲状腺摘出術後の低カルシウム血症の是正にはカルシトリオール2μg,1日1回経口投与,および2g/日以上のカルシウム元素の長期投与を要する場合がある。カルシウム模倣薬であるシナカルセトは,血清カルシウムの上昇を伴わない透析患者において,副甲状腺細胞上のカルシウム感知受容体のセットポイントを調節し,PTH濃度を低下させる。アルミニウム含有PO4吸着剤の大量摂取に起因する骨軟化症がみられる患者では,カルシトリオールの投与により骨病変を抑制する前に,デフェロキサミンを用いてアルミニウムを除去する必要がある。
FHH
要点
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高カルシウム血症の原因で最も頻度の高いものは,副甲状腺機能亢進症および癌である。
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臨床的特徴には,多尿,便秘,食欲不振,および腎結石を伴う高カルシウム尿症などがある;カルシウム濃度の高値がみられる患者は,筋力低下,錯乱,および昏睡を呈する場合がある。
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胸部X線を施行する;電解質,BUN,クレアチニン,イオン化カルシウム,PO4,PTH,およびアルカリホスファターゼを測定し,血清タンパク免疫電気泳動を行う。
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軽度の高カルシウム血症(血清カルシウムが11.5mg/dL[2.88mmol/L]未満)は,原因の治療に加え,経口PO4または等張食塩水とループ利尿薬の併用により治療する。
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中等度の高カルシウム血症(血清カルシウムが11.5mg/dL[2.88mmol/L]を上回るが18mg/dL[4.51mmol/L]未満である)では,ビスホスホネート系薬剤,コルチコステロイドおよびときにカルシトニンを追加する。
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重度の高カルシウム血症では,血液透析が必要になる場合がある。
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