肺塞栓症はいそくせんしょう

肺はいとは、肺臓はいぞうを意味いみする医学いがく用語ようごです。

塞栓そくせんとは、物質ぶっしつのかたまり（ふつうは血ちのかたまり）で、これは血流けつりゅうに乗のって移動いどうします。塞栓そくせんはふつう、細ほそい血管けっかんにたどりつくとそこでつまります。つまると、血流けつりゅうがさえぎられます。血流けつりゅうがさえぎられると、臓器ぞうきがダメージを受うける可能性かのうせいがあります。

つまり、肺塞栓症はいそくせんしょうとは、 物質ぶっしつのかたまりが血流けつりゅうに乗のって移動いどうし、肺はいの血管けっかんをふさいでしまう病気びょうきです。

• 肺塞栓症はいそくせんしょうでは、塞栓そくせんによって肺はいの血管けっかんがふさがれるため、血液けつえきが肺はいを通とおって酸素さんそをもらうことが難むずかしくなります。

• 肺はいの血管けっかんをふさぐ塞栓そくせんの大おおきさが小ちいさければ危険きけんではないかもしれませんが、大おおきくなるほど、より多おおくの害がいが生しょうじます。

• 最もっともよくある症状しょうじょうは、呼吸こきゅうが苦くるしくなることです。

• 肺塞栓はいそくせんの大おおきさが大おおきいと、すぐに死しんでしまうこともあります。

• 医師いしは肺塞栓症はいそくせんしょうを血液けつえきをサラサラにする薬くすりで数すうカ月げつの間あいだ治療ちりょうします。

• 肺塞栓症はいそくせんしょうが続つづく場合ばあいは、血液けつえきをサラサラにする薬くすりを生涯しょうがいにわたって飲のむ必要ひつようがあるかもしれません。

肺塞栓症はいそくせんしょうはふつう、血管けっかんの中なかにできた血ちのかたまりによって起おこります。すべての血ちのかたまりが害がいになるわけではありません。たとえば、切きり傷きずからの出血しゅっけつを止とめるために、血ちのかたまりが必要ひつようです。しかし、深部静脈血栓症しんぶじょうみゃくけっせんしょうでみられるように、血ちのかたまりが血管内けっかんないの不ふ必要ひつような場所ばしょにできることがあります。ほとんどの場合ばあい、このような不ふ必要ひつような血ちのかたまりは脚あしの深ふかいところにある太ふとい静脈じょうみゃくにできます。このようなかたまりがその場所ばしょからはがれて、肺はいや心臓しんぞうに移動いどうしていくことがあります。

次つぎのような場合ばあい、肺塞栓症はいそくせんしょうになる可能性かのうせいが高たかくなります：

• 高齢こうれいである（ふつうは60才さい以上いじょう）

• 以前いぜんに血管けっかんの中なかに血ちのかたまりができたことがある

• がんにかかっている

• 脚あしや股関節こかんせつを骨折こっせつしている

• 妊娠にんしんしている

• 過去かこ3カ月げつ以内いないに大おおきな手術しゅじゅつをした

• タバコを吸すっている

• エストロゲンというホルモン剤ざいやそれに似にている薬くすりを飲のんでいる

ふつうは、脚あしをあまり動うごかせない場合ばあいに、脚あしの血管けっかんに血ちのかたまりができる可能性かのうせいが高たかまります。脚あしを骨折こっせつしていると、あまり動うごけない可能性かのうせいがあります。また、手術しゅじゅつをしたり長ながい間あいだ病気びょうきにかかっている場合ばあいは、しばらくの間あいだ、ベッドで寝ねていなければならないかもしれません。飛行機ひこうきに長ながい時間じかん乗のることさえも、脚あしを十分じゅうぶんに動うごかすことができないため、危険きけんになる可能性かのうせいがあります。

ほかの物質ぶっしつが肺塞栓症はいそくせんしょうを引ひき起おこすこともあります。たとえば次つぎのような場合ばあいです：

• 折おれた骨ほねや骨ほねの手術しゅじゅつ（整形せいけい外科手術げかしゅじゅつ）中なかに脂肪しぼうが放出ほうしゅつされる

• 分娩ぶんべんがうまく進すすまないと、胎児たいじを子宮しきゅうの中なかで包つつんでいる液体えきたい（羊水ようすい）が母親ははおやの血液中けつえきちゅうに放出ほうしゅつされる

• 水中すいちゅうダイビングで血液中けつえきちゅうに気泡きほうができる

• 注射ちゅうしゃした違法いほうな薬くすりの中なかに異物いぶつが混まざっている

肺塞栓はいそくせんが小ちいさいと、何なにも症状しょうじょうがないかもしれません。症状しょうじょうが出でる場合ばあいは、多おおくの場合ばあい、次つぎのような症状しょうじょうが現あらわれます：

• 息切いきぎれ

• 胸むねの痛いたみ

• 頭あたまのふらつきや失神しっしん

脚あしの血管けっかんにできた血ちのかたまりで肺塞栓症はいそくせんしょうが起おこった場合ばあい、その脚あしに腫はれと痛いたみが生しょうじることがあります。脚あしに症状しょうじょうが現あらわれないこともあります。

医師いしが肺塞栓症はいそくせんしょうを認識にんしきするのは難むずかしい可能性かのうせいがあります。医師いしは、あなたに症状しょうじょうや肺塞栓症はいそくせんしょうになりやすくなる要因よういんがあるかをたずねます。

肺塞栓症はいそくせんしょうの症状しょうじょうは、心臓しんぞうや肺はいのほかの種類しゅるいの病気びょうきの症状しょうじょうと似にているために、医師いしはふつう、次つぎのような一般的いっぱんてきな検査けんさから行おこないます。

• 胸部きょうぶのX線検査せんけんさ

• 心電図検査しんでんずけんさ

• 指先ゆびさきに取とり付つけたセンサーで血液中けつえきちゅうの酸素さんその量りょうを測定そくてい

あなたの症状しょうじょうや検査結果けんさけっかから肺塞栓症はいそくせんしょうではないかと疑うたがわれる場合ばあい、医師いしは次つぎのことを行おこないます：

• 血液検査けつえきけんさを行おこなって、血ちがとてもかたまりやすい状態じょうたいになっていないかを調しらべる

• 超ちょう音波検査おんぱけんさを行おこなって脚あしの血管けっかんに血ちのかたまりができていないかを調しらべる

• 血管けっかんがよく見みえるようにするために静脈じょうみゃくに約やく60ミリリットルの液体えきたいを注射ちゅうしゃし、胸部きょうぶのCT検査けんさを行おこなう（CT血管造影けっかんぞうえい検査けんさ）

それほど頻度ひんどは高たかくありませんが、医師いしは肺はいシンチグラフィーという検査けんさを行おこなうこともあります。肺はいシンチグラフィーでは、医師いしが静脈じょうみゃくに放射性ほうしゃせいの液体えきたいを少量しょうりょう注射ちゅうしゃします。そして、放射線ほうしゃせんを検出けんしゅつするカメラで胸部きょうぶの写真しゃしんをとります。肺はいシンチグラフィーによって、肺はいのすべての部分ぶぶんに血液けつえきが流ながれているかどうかを確認かくにんできます。

医師いしは、塞栓症そくせんしょうがどれぐらい重おもいかによっていろいろな治療ちりょうを行おこないます。

治療ちりょうでは：

• 入院にゅういんをさせて必要ひつようなケアをする

• 血ちのかたまりができるのを防ふせぐために、血液けつえきをサラサラにする薬くすりを投与とうよする

血液けつえきをサラサラにする薬くすりは、口くちから飲のんだり、静脈じょうみゃくに直接ちょくせつ投与とうよしたり、皮膚ひふの下したに注射ちゅうしゃしたりします。退院たいいんしたら、数すうカ月間げつかん、血液けつえきをサラサラにする薬くすりを飲のみます。深刻しんこくな要因よういんがある場合ばあいや、何度なんどか肺塞栓症はいそくせんしょうになったことがある場合ばあいは、血液けつえきをサラサラにする薬くすりを一生いっしょう飲のむ必要ひつようがあるかもしれません。

肺はいに大おおきくて危険きけんな血ちのかたまりがあり、死しんでしまうかもしれない場合ばあいは、医師いしは次つぎのことを行おこないます：

• 血ちのかたまりをとかすために、血栓溶解薬けっせんようかいやくという薬くすりを静脈じょうみゃくから投与とうよする

• まれに、特殊とくしゅな静脈じょうみゃくカテーテルを使用しようしたり、手術しゅじゅつを行おこなったりして、血ちのかたまりを取とり除のぞくことを試こころみる

血液けつえきをサラサラにする薬くすりを飲のむことができない場合ばあいや、血液けつえきをサラサラにする薬くすりを飲のんでいるにもかかわらず、血ちのかたまりができる場合ばあいには、医師いしは次つぎのことを行おこなうことがあります：

• ワイヤーでできた網あみの目めのついたフィルターを腹部ふくぶの太ふとい静脈じょうみゃくに入いれて、脚あしの血管けっかんにできた血ちのかたまりが肺はいに移動いどうしないようにする

下大静脈かだいじょうみゃくフィルターによる肺塞栓症はいそくせんしょうの予防よぼう

肺塞栓症はいそくせんしょうを予防よぼうするために、医師いしはふつう、血ちがかたまろうとするのを制限せいげんする薬くすりを使つかいます。しかし、医師いしは一部いちぶの人ひとに、下大静脈かだいじょうみゃくの中なかにフィルター（傘かさの骨組ほねぐみのような形状けいじょうをしたフィルター）を一時的いちじてきまたは永久えいきゅうに入いれておくことをすすめる場合ばあいがあります。ふつう、このフィルターは薬くすりが使用しようできないとき（たとえば、その人ひとに出血しゅっけつもみられる場合ばあい）にすすめられます。このフィルターは、塞栓そくせんが心臓しんぞうに達たっする前まえにそれをとらえますが、血液けつえきは自由じゆうに通過つうかさせることができます。フィルターにとらえられた塞栓そくせんは自然しぜんにとけてしまうこともあります。

あなたが次つぎに当あてはまる場合ばあい、ふつうは予防策よぼうさくを講こうじる必要ひつようがあります：

• 肺塞栓症はいそくせんしょうにかかったことがある、または脚あしの血管けっかんに血ちのかたまりができたことがある

• 特定とくていの種類しゅるいの手術しゅじゅつ、特とくに腰こしまたは脚あしの整形せいけい外科手術げかしゅじゅつを受うけている

• がんや血ちがとてもかたまりやすくなる病気びょうきにかかっている

• 長ながい間あいだ入院にゅういんしていて、ベッドから起おき上あがることができずにいる

あなたの状況じょうきょうに応おうじて、医師いしはいろいろな方法ほうほうをアドバイスします。たとえば次つぎのようなことをすすめます：

• 手術しゅじゅつの直後ちょくごしばらくの間あいだ、血液けつえきをサラサラにする薬くすりを飲のむ

• 以前いぜんに肺塞栓症はいそくせんしょうや血管けっかんの中なかに血ちのかたまりができたことがある場合ばあいは、血液けつえきをサラサラにする薬くすりを長ながい間あいだ飲のみ続つづける

• 長ながくてきついストッキング（弾性だんせいストッキング）をはくか、ふくらませることにより膝ひざから下したの筋肉きんにくを圧迫あっぱくしたりゆるめたりできるブーツをはいて、血液けつえきがよく流ながれるようにする

• 手術後しゅじゅつごできるだけ早はやくベッドから出でて歩あるき回まわる

飛行機ひこうきのフライトで血栓けっせんを予防よぼうするには、次つぎの方法ほうほうがあります：

• 脚あしの運動うんどうを行おこなう

• もっと動うごくようにする（たとえば、少すくなくとも2時間毎じかんごとに立たったり、ストレッチしたり、歩あるき回まわったりする）