大半の先天性消化管異常は,何らかの腸閉塞を引き起こし,出生時または生後1~2日までに哺乳困難,腹部膨隆,および嘔吐で発症することが多い。回転異常など転帰が非常に良好な先天性消化管奇形もある一方,死亡率が10~30%と比較的高い先天性横隔膜ヘルニアなど,転帰が不良な消化管奇形もある。
奇形の種類としては閉鎖が多いが,これは消化管の一部が正常な形成および発育を遂げられなかったことによる。最も頻度の高い病型は食道閉鎖であり,これに空回腸閉鎖と十二指腸閉鎖が続く。
緊急処置として,腸管の減圧(持続的な経鼻胃管吸引で嘔吐[誤嚥性肺炎や呼吸困難を伴うさらなる腹部膨隆の原因となりうる]を予防する)を行い,新生児手術が可能な専門施設に紹介する。また,手術に向けて最善の状態に整えるため,体温の維持,10%ブドウ糖および電解質の静注による低血糖予防,ならびにアシドーシスおよび感染症の治療または予防が極めて重要である。
消化管奇形のある乳児は,約3分の1の頻度で他の先天奇形を合併する(先天性横隔膜ヘルニアの患児では最高50%,臍帯ヘルニアの患児では最高70%)ため,他の器官系(特に中枢神経系,心臓,および腎臓)の評価も行うべきである。
上部消化管閉塞
空回腸および大腸閉塞
( See page 胎便性イレウスおよび see page 胎便栓症候群。)
空腸および回腸の閉塞は,空回腸閉鎖,回転異常,または胎便性イレウスの結果として発生する。大腸閉塞は胎便栓症候群か,結腸または肛門の閉鎖(鎖肛)に起因するものが典型的である。
母親に羊水過多の病歴がみられない症例が全体の75%に及ぶが,これは胎児が嚥下する羊水の大部分が閉塞部より口側の腸管だけで吸収できるためである。これらの疾患のうち回転異常症,腸管重複症,ヒルシュスプルング病以外は,典型的には生後数日以内に哺乳困難,腹部膨隆,胆汁性または糞便性嘔吐などの症状で発症する。本症の新生児は最初に少量の胎便を排出するが,その後は便の排出がみられなくなる。回転異常,腸管重複症,およびヒルシュスプルング病は,生後数日で発症することもあれば,数年経ってから発症することもある。
一般的な診断アプローチと術前管理としては,以下のものが挙げられる:
経口栄養の禁止
腸管のさらなる膨満と吐物の誤嚥を予防するための経鼻胃管挿入
水・電解質平衡異常の是正
腹部単純X線
下部消化管造影による解剖学的形態の明確化(注腸には胎便栓症候群または胎便性イレウスにおける閉塞を軽減する効果もある)
ヒルシュスプルング病には直腸生検が必要である。